魔法科高校のアイとま!   作:無淵玄白

62 / 72
stage.61『GIL GAMES』

 

 

「モノリスでは戦えなかったからな。そのフラストレーション解消ぐらいは構わないぜ」

 

その言葉に、誘われた九郎丸は否など無く受けるのだった。

九校戦での先輩方の戦いを見るのも一つだろうが、九郎丸としてはそんな礼よりも最高の魔法剣士との戦いの方が優先事項だったのだ。

 

ミニスカ和メイド服(Neko Mimi Mode)という木乃香様(おエライさん)指定の服で向き合い戦うことになった。

 

人払いの結界を張っての激しく楽しい戦いであったが、その余波が震わせてどうやら招かれざる客をこの空間に招き入れていた……。

 

気付いた啓太は―――。

 

河岸(かし)を変えよう」

「そうだね」

 

そのやり取りで結界を引き払い三高のプリンセスの為に、場所を譲ったのだが……。

 

「ま、待ってください!! う―――田中君!!」

「待ちたくない。俺はこちらのミニスカ和メイド服の剣士との戦いを中断したんだ。そんな俺を引き止めるほどの理由をお持ちか? 一色さん」

 

そんな風に自分のことを優先してくれる啓太に顔が赤くなるのを隠せない。そんな言葉は必死な様子の一色愛梨へ優越感を覚えさせる。

 

浅ましい自分の心だが……別に俗との関わりを断った修行僧ではない九郎丸なので、その心に従って啓太に擦り寄った。

 

それにあからさまに悔しげな顔をする一色愛梨を見つつ、何を言うのか楽しみにしていたのだが……。

 

「よ、用向きは……わ、私に空を飛ぶ秘訣を教えて―――」

 

「そんなもの。とっくにFLTとかって会社が飛行魔法とそのデバイスを出してんじゃん。おまけにあの理論首席様が、総合首席様に使わせて大混乱だったそうで―――どうせ、あの理論首席様に全ての魔法科高校に魔法のコードを公開しろとか委員会が言っているんじゃない?」

 

一挙に言われたセリフ。ところどころに愛梨では分からない単語があったが、それでもその言葉から察するに……。

 

「決勝は飛行魔法でミラージの選手全員が対決だろうな」

「そ、そんなことに―――」

「残念ながらそんなことになりそうだよ。愛梨」

 

その言葉は、啓太でも九郎丸でもなく現れた闖入者の言葉であった。三高女子数名を引き連れてきた水尾とかいう三高の先輩。

 

いい加減、これ以上はこの場にいるべきではないだろうな。とオサラバしようかと思っていたのだが、一瞬早くカトラと沓子が自分と九郎丸に絡んできたことで、まだこの場にいることを余儀なくされてしまう。

 

その間にも一色と水尾の話は続いていく。やはりエックスの予想通りに飛行魔法のフィッテイングとでもいうべきプログラムコードは全魔法科高校に公開されたようだ。

 

骨◯スネ夫のように、

『のび太(?)。悪いがコレは深雪専用なんだよ』

 

という風なことは許されなかったようだ。青狸に泣きつくのび太は、さしずめ運営委員というところだろうか。

 

練習時点で啓太が一応は言っておいた懸念が的中したことに、今頃苦虫を噛み潰していることだろう。

 

司波達也 ザマァ。という気持ちを持ちながらも、その手のことを周囲にいるカトラや沓子に言ったのだが。

 

「なのに使ったのかあの女?」

 

驚きの表情をするカトラに苦笑しながら話す。

 

「俺の懸念なんざ一高では、棒きれ以下の価値しかないしな」

 

これが卓球でのしゃがみ込みサーブ、将棋におけるプロ棋士考案の〇〇システム、〇〇流、〇〇戦法みたいにある種のオーソリティー(第一人者)な面があるならば、ともかく……飛行魔法とそのデバイスは、発表・発売されているとはいえ、それはまだ限られた人間の手にしか渡らないものだ。

 

どちらかといえば、2008年頃に世界水泳の場で使われたレーザー・レーサーと呼ばれる競泳水着を使っているようなもの。

 

それを司波達也は『当然』と『ルールの範疇』だからとゴリ押すだろうが……。

 

(どんな競技種目でも分かっていて踏み越えちゃならんバッドマナーというのは存在するのだ)

 

勝利のためならば強打者を三打席敬遠する。故意のデッドボール…危険球なんて真似は当然批判される。

アメフトの試合で相手QBを故障させるなんて真似も以ての他。

 

まぁつまりは……。

 

(相手の陥穽・想定外を突いてばかりいては恨みが募るばかりだ)

 

だからこそ、啓太はあんまり派手に振る舞わない。出来ることならば自分のチカラを隠しながら勝利だけをもぎ取る。

 

勝利の為ならば、地味に戦うのも一つだ。チカラを誇示していてばかりいてはヒドイしっぺ返しを食らうのだから。

 

それが不可能な状況に陥れば、やむを得ない。そういう違いなのだ。

 

ギャラリーとして水尾佐保と一色愛梨の会話を聞いていた啓太だったが……。

 

「―――浦島君、キミはどう考える?」

「さぁ。自分は一高生であって、更に言えば劣等生なんで何も言えません」

 

水尾という三高の上級生が何を思って俺に問うたかは分からないが、お座なりなセリフを返しておく。だが、それで納得いかないのが彼女だった。

 

「キミはウチの後輩たちをさんざっぱらコテンパンに叩きのめした人間なんだ。一条くんは熱中症になるわ。その後のモノリスでも殆どいいところ無しで最後には田中太郎だぞ!!! 少しは慈悲を持ってもらってもいいじゃないか!?」

 

怒る調子で言っても心動かされない啓太は更に言葉を重ねる。

 

「生憎ながら俺は俺の目的があって戦ってましたので一条君には少々、落ち込んでもらう必要があったのですよ」

 

「アンジェリーナ・クドウ・シールズの祖父にして、日本の魔法師界が放逐した魔法師の帰国……ケン・クドウ(九島 健)の帰還じゃな?」

 

ジョ〇ー・ライ〇ン(真紅の稲妻)の帰還みたいに言うのはどうかと思うが沓子の言葉にその通りだとしておく。

 

「……だ、だとしても!」

 

公的な理由とまではいかなくても、その辺りを語られては弱くなる水尾。ちょっとだけ違う理由で、落ち込むは一色と十七夜だったりする。

 

「あの雪女の飛行魔法以後のことは外野から見ていましたがね。今回の一件では飛行魔法のソースが全高校に公開されるよりも一高以外の全校連名で飛行魔法の使用禁止の方向に向けていくべきだったと思いますよ」

 

その言葉に、何名かの顔が固まる。しかし、話を続ける。

 

「水尾さんと司波深雪の戦いを見ていましたが、ジャンプだけならば随分といい勝負だった」

 

「ありがとう」

 

褒めてないです、と付け加えるのも無粋なので、言わずに話を続ける。

 

「けど、あれ(飛行魔法)が出た時点で全てが終わった。ミラージ・バットという競技であれは反則でしょ。結局のところ変則的ながらもあの競技は椅子取りゲーム。そんな中、椅子である光球を取るためにポールに着地することもなく滞空し続けていれば当たり前のごとく行動のための一歩目は速い―――あの時点で反則、チートとかその辺りを言っていれば良かったんですよ」

 

司波深雪だけが椅子を取るために他の人間のように音楽に合わせて回ることもなくただ一人有利なポジションに居座っているというふうな状況があの競技でダメだった点である。

 

「「「―――」」」

 

「ポールに落着することが絶対の義務ではないとはいえ、跳躍メインの他の選手に対してフェアじゃないとか言っておけば問題はなかったんですけどね」

 

というか当たり前のごとく魔法の効果切れの際に落着するためのポールが用意されている時点で、そういう大前提をぶっ壊す魔法など明らかに使用を控えるべきだと思うのは俺だけだろうかと思う。

 

手控えるということを知らない兄妹である。

 

ポールにいながらも『ゴムゴムのピストル!!』『ゴムゴムのカルヴァリン!!』などで光球を叩くことが許されていれば、また違ったのだろうが。

 

「カトが新人戦で虚空瞬動や舞空魔法を使わなかったのはそれが原因だろ?」

 

「まぁな。アタシも飛ぼうと思えば翔べたけどよ。明らかにそこまでやるのはルール違反だろ。一つの光球を落とした後に各自ポールに落着すれば、そこからリスタート。全選手が平等だ。もちろん光球の出現位置次第で有利不利はあるが、そこから先はお互いの力量勝負さ」

 

最後の言葉で、腕を上げて作った力こぶを叩く快活な様子で言うカトラ。

 

正しく正論であったわけで、一色愛梨はポロポロと泣き出した。

 

「そ、そんなこといましゃらいわれたってどうしようもないじゃないですか!! 私が欲しいのは現在に対する対策なんでしゅよ!!」

 

呂律が回っていない赤ちゃんのような言葉になる一色愛梨。それに対して、俺には何も出来ない。

 

「だから、飛行魔法を使ってみればいい。俺は水尾さんの意見に異を唱えつつ、勝つという前提ならばそっちを使えばいいんじゃない?と、そういうことを言っていたんだ」

 

「まずはやってみなよ。やる前から負けを想定するってのはどうなんだい?」

 

男子2人(?)の言葉に、とにもかくにも。ということで涙を拭った一色愛梨は栞が持ってきたデバイスを使って先ずは飛翔するのであった。

 

一通り動き回る一色愛梨の動きは初めて使ったにしては達者なものだが。

 

「どう思う?」

 

「そりゃ雪女の方に一日の長があるのは否めないだろ。かといってポールからのスタートが大前提の跳躍じゃあ勝てない」

 

水尾佐保が言っていたとおりに、司波深雪の方が当たり前に流麗なものである。見るものが見れば分かる差異。

 

だが、それは仕方ないのだ。スタート地点からして違うのだから。

 

「私は愛梨を勝たせたい……いえ、せめて―――」

 

一矢を報いさせたい。

 

十七夜栞の発言は、まぁ人間としてはおおむね正しい。

 

その言葉に対して何かしら解決策を授けるのも一つなのだろうが……。

 

仮宿(一高)に対する一宿一飯の恩義というのも発生しているわけで、なんともかんとも。

 

「跳躍とやらを組み合わせられないの? 飛行中に急加速を掛ける形にはなるけどさ。それぐらいしか出来なくない?」

 

「かなり無理筋だよ……けど、出来なくはないかな……」

 

アシスタンツのデバイス管理者である栞に素人考えではあるが、そういったことを伝えると、エイドス改変における『常識』を超えてるが……とりあえずやってみることにしたようだ。

 

「マギステルでは、そういうことは出来るの?」

 

「出来る。確かに飛翔『移動』という意味では箒や杖などの器具を使って飛んだ方が速いが……マギステルの戦いはハイレベルになればなるほど戦闘『飛行』という側面に移行するから」

 

民間用ヘリや軽飛行機で飛んでいたのが、その飛翔を戦闘に活かすとなると自ずとそれは戦闘ヘリ、戦闘機、攻撃機のような戦いに移行するのだ。

 

いまからそれを伝授するなど不可能だ。

 

(とはいえ、不公平ではあろうな)

 

自分の父親が魔法工学メーカーの重役だからといって、そういう器具と術式をいちはやく手に入れていたということは、確かに親の勤め先ゆえの特権かもしれないが……まぁ少しだけの手助けをすることにした。

 

転じて。

 

(そもそも俺は、あの剛〇武と骨〇スネ夫を足して2で割ったような司波達也とは仲良しじゃない)

 

あの同級生とはそりが合わない限りである。

未来トランクスが未来悟飯を殺した人造人間17・18号を認められないのと同じような感じ。

 

だからこそ……。

 

(頭カラッポの方が夢詰め込めるということをこまっしゃくれた同級生に教えてやる)

 

CHA-LA HEAD-CHA-LAと往年の名曲をイヤホンから響かせるエックスに感謝しながら、少しだけ試合を面白くしてやろうとハンター精神(マインド)で、亀仙人ならぬロリ仙人、デラックス仙人より教わりし、真理仙流(しりせんりゅう)のハシリだけでも教えてやることにした。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。