魔法科高校のアイとま!   作:無淵玄白

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stage.66『勝手なやつら』

 

夕食会にて、結局の所……色んな意味で自分の勝ち筋に対して疑義を持つ連中は多くて、戦後の日本で雀聖と呼ばれた男のように自分の玄人技を説明する羽目になった。

 

「つまり水のゲートと同じく俺は影のゲートを使ってチカラを君等の陣側の氷柱に及ぼしていたんだよ」

 

「そんなことを―――それならばモノリスの様に地面を叩くなりしなければ出来なかったはず!!」

 

「影なんて何処に―――まさか!?」

 

先程から手をポケットの中に入れていた啓太。別に定まらぬチ◯ポジをベストポジションに収めようとしていたわけではない。

 

ポケットの中は影の中ということであるのだ。

 

そして次の瞬間には雪姫が会場内に用意してくれていた氷柱。

上方にある巨大な明かりで氷柱から影が伸びていたので影の中から魔力波動(パワーウェイブ)が針状に放たれて何本、いや……何万本も放たれた。

 

後には一瞬にして、氷柱を砕いて会場内に鮮やかなダイヤモンドダストが出来上がる。

 

その状態のあとには、すかさず指パッチンをした啓太の術で、ガラスの器に山盛りのかき氷が3つは出来上がり、そこに抹茶シロップと小豆と練乳を合わせて馴染みのJC2人とアンジェリーナに渡すのだった。

 

「まぁ試合ではバレないように、ここまで強烈ではなかったがな。最後には単一の加重魔法、移動魔法でぶっ壊れるように、爆弾仕掛けのようにしておいた」

 

確かにピラーズの予選2試合で、この男の勝因魔法はそれだった。

 

ここまで聞かされた星野と三上が唖然とした表情をしている。

 

「だ、だが! なぜ俺達は―――自陣の異常にそこまで気付けなかった!?お前は何か誘惑系統や催眠系統の術を俺達に掛けていたんじゃないか!?」

 

「己の不注意・散漫な集中力及び無能の限りを棚に上げて、随分な言いざまだねぇ」

 

「「――――――――」」

 

そこまで言われては2人も何も言えなくなる。確かにあの時、自分達は自分が勝つビジョンしか見えなかったわけだが、それにしたって……ワケが分からないという表情と困惑だけが見えたが、雪姫に小突かれて更なる説明をする。

 

「まぁ俺が田中太郎という劣等生だから舐めていたんだろう―――という事実で収められないならば、見せてやるよ」

 

再びの指パッチン。雪姫が用意してくれていた氷柱の2本目に対して干渉をすると、モノリス・コードで見せたような水の美女が氷柱の中に現れるのだった。

 

「「「「「なっ!!!!?????」」」」」

 

男子が驚き、女子がその様子に白けた目を見せる中、水の中にいる『水精』は、魅惑の『香水ダンス』(メマーイダンス)投げキッス(スレイブアロー)を披露するのだった。

 

「現代魔法は基本的に魔法をかける対象に対する偏執的なまでの過干渉があるからな。例え自分の眼球情報になくてもその中にいるものに目を奪われるようにすることは不可能じゃない」

 

「「―――」」

 

「ベースケな男どもの視線を釘付けにしろとでも命じておけば『ウンディーナ』はそういう風にするだけだ。お前たちはどこぞのシリアルキラーよろしく女性の手に興奮するがごとく氷柱相手に勃起していたのさ」

 

ここまで二重三重に策を張り巡らして、自分たちを敗北に導いたのかと思うと、何も言えない。

 

俯いて落ち込む2人を見たあとには2本めの氷柱を砕いてから再びのかき氷作り。沓子とカトラに差し出したあとにはもはや氷柱は無いのだった。

 

「……一条君や時逆君に使ったような術……俺達には『闇の魔法』を出す必要もなかったということ、か?」

 

「打者一巡に全力投球だなんて頭の悪いピッチングする投手はすぐさま崩れる。まぁ流石に偽装が過ぎたとは思うがね」

 

結局のところ、浦島啓太にとって、九校戦は戦いではなく作業仕事なのだった。

 

トボトボと落ち込んで自校集団の中に戻っていく2人の姿がかなりアレである。

 

次にやって来たのは……一条将輝であった。

 

「なんか用かい?」

 

「……俺は他の連中と違ってアレコレ言わない。敗軍の将は兵を語らず。ということを己の字名から分かっているからな」

 

「あっそ。んじゃ何だよ?」

 

追加のかき氷を作りながら『次はみぞれキントキ!』とアンジェリーナに言われ練乳ありか?と聞いておきながら、一条は何の用事やらと尋ねることに。

 

ただカッコつけが過ぎる男だなとは感じた。

 

「君が言っていた司波深雪さんを倒したという技、俺を倒したのと同じなのか!?ペアルックコーデ出来ていたのか!?」

 

何故にそれでペアルックコーデになるのか些か疑問を覚えながらも、何か司波深雪が喚いているが、エックスに再生をさせることに。

 

『ほんぎゃらあっぱぱぱしにさらしゃんせー!!!!』

『ふんぬらばうふゃふゃしにさらしゃんせー!!!!』

 

戦いの様子を2画面で投影表示させたことで、一方は喜び。もう一方は苦悩をするのであった。

 

そして、その捨て身の一撃を阻止したのも同じ技であったことで、2人の美男美女にシンパシーが生まれることは確実!!!

 

今日の俺は『いい魔法使い』として活動出来ているようだ。

 

これを機に話が弾めば、『あとはお若い二人でごゆっくり』とひなた旅館の頃にはあっただろう見合いの席のようなことが出来るはずだ。

 

という俺のポン引きは片方には意味がなかったようだ。

 

「う、浦島君!!なんでこんなヒトの恥を晒すようなことが出来るんですかっ!?」

 

「意味が分からん。俺は3高の一条君の求めに応じただけだ。同じような混乱の言葉になったことまでは責任取れるかよ。俺は君をどうやって倒したのか、それが自分と同じだったのか?という疑問の解消をしてやっただけだ」

 

「そ、それはそうですけど!! もっと何かあっても良くないですかね!?」

 

「無いよ。俺は元来ドライなのさ。そして俺は差別主義者でもあるから、自分に関係のない他人なんてどうだろうと構わないのさ」

 

その言葉に少しだけぐずろうとする司波深雪。スカートの裾を握りしめてこらえようとする様子を見ながらも啓太はまったく心を動かされない。

 

「う、浦島!! すみません司波さん。俺が不躾な質問をしたばっかりにこんなことになってしまって……」

 

さり気なくボディタッチをしながら、司波深雪を慰める一条君を見て『計画通り』と悪い顔をしておく。

 

「いいえ、一条さんが悪いわけではありませんから……」

 

ぐずって泣き腫らす司波深雪だが、特に何も感じない啓太はそのままに、食事を楽しむのであった。

 

その様子に嫌悪感丸出しの司波達也を感じながらも、特に何も感じない。

 

「で、皆さん食事をしないので?」

 

その言葉で止まっていた食事が再開されるのであった。

 

ただいろんな意味で反発は大きすぎた……。

 

そんな中、一色愛梨がささやかな祝福を受けながらも、浦島啓太をチラチラと見ていたことだけは目聡く達也は認識しているのであった。

 

 

翌日、もはや総合優勝こそ決まっていたが、それでもミラージでのミソがついた勝利でのポイントは如何ともしがたいということで、モノリス本戦チームは怒涛のごとく進撃していき、勝利を刻むのであった。

 

そして各種競技のMVP表彰などがあったのだが、そこに啓太の姿は無かった……彼が優勝を決めた新人戦男子バトル・ボード、新人戦男子アイスピラーズ・ブレイク、どちらも……2位、3位の選手が表彰台に上がることになっている……。

 

「九郎丸、残念だったな」

「ううん。名よりも実、僕にとっては君と公式の戰場で戦えたことの方が有意義だったから」

「そう言ってくれると、少しだけ心が休まる」

 

一試合やり終えて、くさっぱらに寝転びながらこの九校戦に出たことで得られたものは、この少年との繋がりだなと思える。

 

それだけが収穫だ……などという考えを持っていたりしたのだが。

 

「相変わらず男同士でイチャイチャして、イチャイチャパラダイスの続行中ですか」

「君が気にするようなことかね?」

 

他人の友人関係にツッコミを入れるほど気安い関係ではない。やってきた一色愛梨とその他の人間に言いながらも、やれやれと思う。

 

「なぜ、そこまで一人でいたいのですか?」

「俺は全部を一人でやらなければならない。ネギ・スプリングフィールド大師が、出来なかった最後の始末をやるには一人でいなければならない。ヨルダは簡単に他者の肉体も心も魂も乗っ取り、その特性ごと自分のものにする。となれば、親しい人間なんてものが戦いの場にいれば、ソイツ次第では乗っ取られるわけだ」

「ユキヒメ・レポートという報告書の内容は存じています……けれど、それで―――」

「俺は田中太郎になりたい。それだけだ」

 

誰でもなければ、誰にも覚えてもらえない、誰かでもない、―――

そんな存在になりたいのだ。そんな普通になりたいのだ。そんな人間でありたいのだ。

 

そんな言葉を言ってから、ミラージ・バット新人戦MVP様の前から去ろうとした瞬間……盛大な爆発が聞こえてきた。

 

それは九校戦最後の幕を閉めることを嫌がった、ただ一人の男の妄執の火花であった……。

 

 

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