魔法科高校のアイとま!   作:無淵玄白

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stage.67『うる星やつら』

 

 

盛大な爆発音。それを聞いたあとには九郎丸と啓太は虚空を駆けて高速で現場に向かっていった。

 

一色愛梨、他の人間をポカンとさせながらも、虚空を渡った啓太と九郎丸は、火煙棚引く現場に駆けつけた。空から舞い降りた自分たちを見たものなど殆んどいない。

 

「啓太君!」

 

日本の国防軍、昔懐かしのJSDFから発展した士官の一人であるヒトが気付いてきたが。状況は悪いようだ。

 

「何があったんやら……旗色は悪いようで」

「見れば分かるやろ!!……状況を説明すると、かくかくしかじか」

「まるまるうまうま。成程、いつまでも地下牢に拘束しておいたあんたらの不手際だな」

 

この『かくかくしかじか まるまるうまうま』というのはある種の思念通信の一種でもあり、ある程度のレベルのマギステルの間では公に口頭で伝えたくない情報のやり取りの際に行われるテレパティアマジックである。

 

思わず関西弁が出ちゃった響子によると、この九校戦前に拘束しておいた無頭龍の幹部とやらが、「あのような状態」になったということ。

 

「魔素を吸いすぎてもはや上位悪魔も同然になってやがるか」

「身体も完全に人型(じんけい)から逸脱している。完全な身体変性だよ……まさか無頭龍とやらは!?」

 

なにかに気付いたらしき、九郎丸が響子に問いかける。

 

「―――お察しのとおりよ九郎丸君、構成員の殆どは大亜ではなく魔法界は桃源など中華系の国家からの『渡航者』。もっとも半世紀以上前に、こちらに渡ってきた人間だけど」

 

だが、何かの交流はあったのだろう。魔素による身体変性。ある種の精霊化はマギステルの術ではかなり高度だが無いわけではない。

 

自分の闇の魔法などでなくとも………。

 

そんなわけで。

 

「兵隊どかして下さい。俺の攻撃の流れ弾で死んでも弔慰金なんて出せないんですから」

「ど、どうかしらねー。とにかく分かったわ!お願いするわ!!」

 

戸惑った響子に特に思うこともなく啓太は、自分の影からひなを取り出して構える。

 

「ったく闇の賭けをするってんならば八百長するために生徒ぐらい買収しておけよな」

 

ピッチディーラーを使うべきだったという嘆きだけだった。

 

「金額次第では寝返った?」

「どうせ、俺は劣等生だしな。負けても別に怪しまれないよ」

 

そういう問題じゃないと端で聞いていた響子は既に縦も横も伸長膨張を果たして10m級の四足の化け物となったダグラス・ウォンを見ながら、この後の展開をなんとも無いようにするのは無理だと悟っていた。

 

(とりあえず余計な人間が入らないように、シャットアウトするようね)

 

特に魔法科高校の面子が野次馬としてやってくるのはマズイと想いながら、ソニックブームを発生させる攻撃を連発で行う啓太を見ながら、煽られるようにしながらも、そうするのであった。

 

 

騒ぎの大きさはホテルにて待機していた人間達を叩き起こしてあまりに盛大なまでの揺れはあらゆる意味で危機意識を煽った。

 

「お兄様!何が!?」

「俺にも分からん。とにかく向かうぞ」

 

野次馬根性というほどではないが、これほどの危機を前に自分達に火の粉が降りかかる前に払うことは当然で、その事態の中に浦島がいれば――――――などという達也の懸念をぶった切るかのように、七草会長が『STOP』をかけてきた。

 

「深雪さんも達也くんも待って!―――先ほど、国防軍から通達が来てこの富士演習場にいる魔法科高校の生徒たち全員に待機命令が出たわ!!」

 

その言葉に、端末を確認すると確かに国防軍よりの通達が緊急速報メールという形で布告されていた。閉会式を終えて全員がホテルで待機していたことが、幸いとなった。

 

「とにかく全員がいるかどうかを端末と実地で点呼確認するわ。協力してくれるわよね?」

 

七草会長がそんな言葉で、ここにいるように念押ししてくるのだった。

その思惑を掴みきれないが、あのモノリスの際の女子陣の動揺を抑えてくれということも含まれているのだろうが……。

 

(おそらく一高では、『いない人間』がいる。それは確実に一人は確実に……)

 

変な重複表現を使ってしまうぐらいに、それを予測するのだった。

 

そして……。

 

「いますよ。って―――なんですかそんな呆けた顔をして?」

 

訪れた部屋。部屋をコールしたあとに3人が驚くぐらいにあっさりと『浦島啓太』は現れたのだ。

 

そんなバカな!?という想いに囚われながらも、確かに浦島啓太であることは間違いなくて、「ケータ!そろそろ対戦再開よ!」部屋の中には更にアンジェリーナ・クドウ・シールズもいたわけで、その事実に驚きながらも一高生全員の安否が確認出来たことは間違いなかった……。

 

★ ☆ ★ ☆

 

そんな風に狐につままれるような状態に陥っていた司波兄妹と七草真由美だったが、当の浦島啓太は九郎丸とコラボしながら全てを終えるべく技を練り上げる。

 

ひなを使った高速斬撃の数々によって魔素の類を全て『斬り落とした』ことでダグラスウオンという中年男の素の姿が廃墟と成り果てた場所に現れた。座り込み茫然自失という様だが―――。

 

(精神に変調をもたらしているわけではないか)

 

容態を確認して回復術をかけておきながら、魔素の吸引装置だったろうナイフを手から抜き取る。気付いたらしきダグラスだったが、特に取り返そうとはしないらしく―――。

 

「斬魔剣!」

 

後ろに放り投げたあとには、それは木っ端微塵に砕けるのだった。

 

「しかし、擬似的なマギアエレベアの術剣なんて誰が作ったのやら」

「おそらくだけどメセンブリーナの強硬派だ。彼らは魔法師を『悪人』にしたいだけの理由があるからね」

 

その九郎丸の何気ない言葉で裏側を読むに、マギステル・マギとして公然と『魔法師』などを狩り尽くすためには、政府筋でも『マギクスは厄介な存在』として認識させる必要。

 

典型的なマッチポンプであったが、稚拙な手並みであったのは間違いなかった。

 

ともあれ全ては終わったわけで……。

 

「響子さん。あとはお任せしますよ」

「―――ええ、手数掛けたわね」

 

その言葉で全てを終えたわけだが、あんな小男が一人の男の命を奪ってまで特攻させたのかと思うと、なんとも間尺が悪い話でもあった。

 

(あんなものが民間の魔法師にまで出回るなんて、もはや火星と地球の間の戦いは待ったなしなのかもしれない)

 

少しだけ頭を痛めていると―――端末に連絡が入る。

特に気負うことも無く啓太は着信に応じる。どうせアンジェリーナだろうと出ることにしたのだ。

 

「はい、もしもし。こちら様々な揉め事に首を突っ込まざるをえない浦島工務店の店主 浦島啓太でございます〜」

 

戯けた応答をしてから、応対に出ると。

 

『フッフッフ。相変わらずのトリックスターっぷりネ。シカシ、ケイタ―――今回はサンザンだったようネ』

 

予想外の人間が出てきたのだ。端末に出た名前を確認しなかった啓太のミスだが、ともあれ内心の動揺を押し殺しながら応対することにした。

 

「そうでもないかもな。別に大した苦労はしていないし」

 

ただ魔法競技との兼ね合いで色々と気苦労は多かったとはいえる。

 

だが、通話口の相手はそんな四方山話をするために掛けてきたわけではあるまい。本題に入ってもらいたいと言う前に通話相手は口を開く。

 

『―――今回の一件で、裏火星はかなり焦ってイル。無頭竜は、火星にとっては世界維持魔力供給のルートの一つだったカラナ』

 

その言葉は鋭い刃のように啓太の真芯を貫いていた。

 

『旧世界に取り残された裏火星の末裔タチの中デモ、彼ラは故郷のために熱心だったからネ』

「いつ滅びるかすら分からない星の為に尽くすなんて商売人の息子としては理解しがたい感覚だ」

『そうネ。ケレド、そうしたいダケの理由があったヨ。追放されても故郷に帰りたいと願うヒトを―――ケイタも1人知っているダロ?』

 

その心が理解できないわけではない。そして、そこに故郷を救いたいと思う心もあれば。

 

それは正しい道なのだ。

 

「で、要件はそれだけか?」

『久しぶりに声が聞きたかったカラ……って言えば嬉しいカ?』

 

全然。と言うのも無情かもしれないが、特に答えずにおく。

 

「それじゃな。どうせフェイトが言っていたハマでの戦いにはお前も来るんだろ―――リンシェン(・・・・・)?」

 

からかいを終わらせるべく通信を切ろうとした瞬間、通話相手は最後の言葉を残す。

 

『一つアドバイスをしておこうカ、ケイタ、女と約束をするのナラ―――』

 

通話口の向こうにある声色が変化をしていくのを感じて……。

 

『―――先ずは女に言うことを聞かせるダケのチカラを持たなきゃダメなのネ♪』

 

それは彼女の経験談から来ていることなのだろうか?という疑問を持ちながらも声色の妖艶さを耳に残しながら、通話は切れた。

 

端末に残された着信履歴には。

 

『超 鈴音』

 

という名前だけが残されており、やれやれと思いながら端末を閉じると。

 

「―――不躾でプライバシーの侵害かもしれないけど、誰だい?」

 

おもっくそ不機嫌極まる九郎丸の膨れた顔が横にあって、確かに戦闘後に無視していたのは悪いよなと思いながら―――。

 

「和菓子でも食べるか?」

「僕、どちらかといえば今はパフェが食べたい気分だ」

「オーケー、奢らせてもらう」

 

ぷいっ!と顔を背ける九郎丸の機嫌を取る為に、ちょっとばかり小洒落た茶店に入ることになるのだった……。

 

そうして各々で夕方までの時間を潰していき、舞踏会は始まる―――。

 

 

 

 

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