アンジェリーナとの「
弁当の用意。それを一緒につまみながらリクエストしたり、夕食を何にするかを相談したり……いま考えれば、そういうことなのだろうと思えた。
「なるほど……確かに今までのことからそこに思い至らなかったのは私の察しの悪さだな……」
目をつむりながら考える渡辺摩利は己の頭の血の巡りの悪さを恥じる。
「あえてそういうことを言おうとも俺は思いませんから、別にいいんじゃないですか?」
ふにゅんふにゅん。
「そうかもしれんが……お前は少々秘密主義すぎじゃないか?」
「本来的な異能力者というのは並べてそういうもんですよ」
「そういう問題じゃないだろ……」
ふにゅんもにゅん。
十文字の言葉にやれやれと思う。魔法師すぎて魔法師な人間は、
「が―――そんなことは今はいいとして……」
いいんかい。と誰もがツッコミたくなる。そして、十文字は口を開く。
「なんでお前は二高の天ヶ崎さんに後ろから抱きしめられているんだっ……しかも胸を頭に押し付けられる体勢で!」
悔しげな顔をする十文字に対して、啓太が答えるよりも先に二高 天ヶ崎猿奈が答えた。
「そら簡単やわ。ウチとケータは昔から知ってる『なじみ』やもん。ホンマやったら懇親会の時点でこうしたかったんやけど、今年は最終学年。他校の男子に甘い顔はできひん。けど、全てのプログラムが終わったら、こうしてケータ分を補給できるわ〜〜♪」
後ろのメガネ美少女。艶やかな黒髪が美しい人間から満面の笑顔で言われると、克人としても口を噤んでしまう。
「―――これも俺の秘密主義に入ります?」
『『『『『当たり前だっ!?』』』』』
多くの魔法科高校生(主に男子)から(理不尽気味に)怒るように言われて一応、言い訳しておく。
「といっても、えんな姉ちゃんから通信が来て『ウチは今年、般若になる!二高に優勝の栄誉を持って帰るために、ケータとはツラ合わせんよ!』って硬い意志を見せられたので、まぁ今まで話してなかったんですよ」
「ホンマつらかったわ〜」
「だとしてもちょっとスキンシップが激しすぎるだろ!!」
いっそう抱きしめを強くして浦島啓太の髪に鼻先をすりつける天ヶ崎の姿に3年間競ってきたこの女子が、こんな恋愛脳だったなど……摩利は色々と頭を痛める。
「そやそや!えんちゃん!!けーたに引っ付きすぎやで!!」
渡辺摩利の叱責に同調する形で関西弁丸出しで言うは二高の生徒会長たる水納見明子である。
それを受けて、天ヶ崎は顔をそちらに向けて口を開く。
「つまり?」
「交代や!」
その言葉で啓太の後ろに再び京美人が収まるわけで
「俺は司波こそ一高のモテモテ王子だと思っていたんだがな」
「神聖モテモテ王国の王子である司波達也クンのような人間と比べるのは山違いにもほどがある」
桐原というようやく名前を覚えた先輩の一人に返しながら、やれやれと思う。
「……なんだか納得いかないな」
「十七夜さん?」
それが自分に向けたものだと思えたのは、不機嫌な顔をこちらに見せていたからだ。
「浦島君は、色んなことが出来て色んな人と知り合っているのに……それを他人に教えないでいるなんて、なんかすごくイヤで納得できない―――ああ、愛梨への態度に関しては特に無いから」
その言葉に一色愛梨が少しだけ呻く様子だが……。
「私に気があるから……私を部屋に入れてくれたもんだと思っていたのに」
「君が勝手に入ってきただけでしょ。追い返すのも面倒だし、あの不良の偽装でオレを襲撃してきたビリーナンバーズで不安を覚えていたから、気遣っただけだよ」
いじけるような言葉と態度で言う栞に返事をしたが、周囲が沈黙した。
「ケ〜〜〜タ〜〜〜、シオリを
「かくかくしかじか」
「まるまるうまうま―――って納得出来ナイワヨ!!その時は――――ソウダッタわ。ワタシがミンナにお呼ばれした時のハナシなのね……」
「そういうことだ。まぁこちらはアリバイ証明はでき「出来ますよ」―――え」
あの時、アンジェリーナの護衛として就かせていたエックス。AIにとって物理的な距離は無いに等しいのかもしれないが、それでもまさか遠隔からでもこちらとのメモリーを録れているのだろうか。
「「だいこん」と「はんぺん」たちに、『ケータを見ておくように』と言付けて、まぁ端末に潜んでおくようには言っておいたので」
言われた瞬間に「えへん!」とでも言わんばかりにエックスの近くに出てきた
「というわけでメモリー再生!」
『『エックスさま!アイアイサー!!』』
更に10分後……。
「酔っちゃった……ってお前ら飲酒でもしたのか!?」
「そんなわけないでしょ。十七夜さんのからかいとなぜ分からん」
動画内ではミックスジュースを手に髪をかきあげてこちらを覗き込むような十七夜栞の様子が再生されて、その都度……三高の男子の殆どが意気消沈して、他校の男子も一部、落ち込んでいる。
理由が分からんほど啓太も鈍感ではない。要するに、憧れの女子が一人の平凡な男子に、あけすけに対応している様子に色々とアレな気分なのだろう。
栞は女子としては若干クールでドライな様子なのだから、こういう湿っぽく艶っぽい表情をしているのは男として敗北感を感じてる。などと分析しておくのであった。
「まさか一晩中、男子の部屋にいただなんて……」
「大丈夫。ちゃんと『膜』はあるから、ふざけて抱きつくぐらいはしたけど」
「―――」
絶句してからなんとも言えぬ表情で、啓太を見てくる一色愛梨。
「いややわ〜。一色はんが、ウチのけーたを睨んではるわ〜」
「ち、違いますよ!水納見会長!!」
「何度も言っているが俺はアナタとは関わり合いになりたくないんだ。俺は
再度の決別の言葉を吐く。
「誰よりも
「誰よりも
結局のところ、一色愛梨と浦島啓太は交わらない存在なのだ。
いや、結局のところ……魔法師という存在そのものが啓太にとっては交わらない
「で、皆さん。そろそろ今夜のメインであるダンスコンパに移行していいんじゃないですか?」
時間も押しているのではないかという疑惑の言葉と同時に、いつぞや『リンシェン』から渡された『懐中時計』を出した。それを見た全員に危機感をもたせることで、場を壊すことに成功した。
(なにもかもが、ヤツの掌の上だな)
一連の流れを傍から見聞していた達也は、浦島啓太の能力値とは単純な殴る蹴るとも違うところにあると思えた。
それが何代続いているか分からぬ名家の血筋として磨いていた人間能力にあるのか、分からないが、それでもチカラのみを頼みに社会にあろうとする魔法師では辿り着けぬものを感じるのであった―――。