魔法科高校のアイとま!   作:無淵玄白

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stage.7『思惑だらけの昼食』

 

 

昼休み……指定されたとおりに、生徒会室に赴くと、そこには。

 

(十文字さんはいないのか)

 

男子の役員がいないことに少しだけ驚きつつも、招かれたことに礼をしたあとは、自己紹介となる。

 

既知・未知であれ一通り、生徒会室にいる面子に自己紹介されて、その後に昼食を取っっていく。

 

なかでも『弁当組』は、その色とりどりのソレに少しだけ話に花が咲いたりしたのだが……。

 

「さくらでんぶでオムライスとは……凝ったものを……」

 

「ケイタの得意メニューでワタシの好物ですので」

 

「へー……ん? ううん? ……シールズ後輩の弁当も作っているのか? 浦島君」

 

「ええ、一人分も二人分も変わらないので」

 

質問に返された答えは、微妙に予想していたものとは違っていた。だが、あれこれ追求するのもどうだと想うので、摩利はそれをスルーすることにしたのだった。

 

生徒会室での食事を終えると間を読んで、今日ここに司波兄妹と啓太、アンジェリーナを呼んだ理由を教えてくれた。

 

もっとも司波達也と浦島啓太は、「おまけ」みたいなものだが……。

 

「ウーン……どうしよっか?」

 

生徒会役員に就いてほしいという会長の言葉に考えるアンジェリーナ。

だが啓太へと、あえて意見を請われたので、一つの疑問を呈しておくことに、傍から聞いていて思ったことは……。

 

「何で今年は主席だけでなく次席まで取ろうと思ったんですか?」

 

「シールズ……いえ、アンジェリーナさんと深雪さんの成績―――特に実技は遜色ないものでして、生徒会としては2人を鍛えることで、来年以降の礎としたいのです」

 

理由としては、一応は納得出来るものだが……。アンジェリーナは、その言葉の裏を読んだ。

 

その意図は、どちらかといえば「客寄せパンダ」的な、我が家の懐かしいメモリーにあった『浪人生アイドル』を思い出した(イメージした)らしく―――。

 

「ソーリー、申し訳ないですがワタシは辞退させてもらいます……ミス・司波が主席であることは事実ですから、オマケではないんでしょうけれど、それでも選ばれるべき人間は一人(only one)―――という所は、譲らない方がイイですよ。大統領制も同然なんですよネ。この生徒会は」

 

慣例破りは、良くない。それは分断に繋がるという『もっともらしい意見』を述べられた会長は―――。

 

「それは……本当なの? もしかして貴方のお祖父様の関係で……私が……数字持ちがいる生徒会に所属したくないとか……そういうのではないの?」

 

昨日の放課後の出来事に絡めて、そんな疑念が不安げに出てくるのは当然だった。

 

「そうじゃないですから、ソレにワタシも入ると、ミス・ナカジョウの負担が増えちゃうのは、チョット……心苦しいですネ」

 

首を振って違うということを言葉でも示したアンジェリーナ。

 

「あうっ……えーと……」

 

言われた生徒会書記たる中条あずさが、先程から少し不安げにしていたのは見て分かる通り。しかし、だからと後輩に気遣われたことで、少しプライドが傷ついたのもあったりする。

 

「でしたらば兄を―――」

 

そのタイミングを見計らって、司波深雪はデスクワークが得意な兄。

理論テスト主席たる司波達也ならば、生徒会の役に立つ。あずさの負担にもならない。

アンジェリーナの代わりに入れてくださいと売り込みをかけるのだが……。

 

「申し訳ありませんが、当校では2科生が生徒会役員などの役職に就くことは規定で不可能です……昨日の校門前でのやり取りからしても―――少々にべもない規則ですけどね……」

 

生徒会会計・市原鈴音がそんな風に申し訳なさげに言うのであった。

 

「すみません。そろそろ次の授業のために準備があるので、退室させてもらいます」

 

どうやら、啓太には特に話は無さそうなので、退室させてもらおうと立ち上がった。市原の言葉が途切れたタイミングでの見事な間の入り方―――というのは、啓太の思い違いだったようだ。

 

「待て浦島―――お前にも話がある」

 

「もしかして……退学ですか!?」

 

「全然違うが、なんでそんなに嬉しそうなんだ……! 嬉しそうに言うなっ」

 

引き止めた摩利に対して、そんな風になった啓太だが、返されて少しだけションボリする。

 

ちなみにその間、アンジェリーナのローキックが何発も啓太の足にヒットしていたのだが。

 

「浦島……君には風紀委員として所属してもらいたい」

 

「それならば俺よりも適任がいますよ」

 

「ほう誰かね?」

 

「となりにいる司波達也くんです」

 

何というか責任逃れではないが、職務の押し付け合いのような様相になっている現在の室内に、少しだけ中条あずさは『イラつき』ながらも、話の推移を見守る。

 

啓太の言葉に疑わしい目をする風紀委員長の渡辺ではあるが、彼には風紀委員として相応しいスキルを持っていますと言ってから『セールス』を掛ける。

 

「―――成程、本当なのか? 帰り際にあの光井とかいう子に『名前』からカマ掛けただけかもしれないじゃないか」

 

セールスポイントを語ると興味を覚えつつも虚言ではないかという疑い。深雪が少しムカつきつつも、話は進む。

 

「そういった風ではありませんでしたケドネ」

 

もうひとりの証人であるリーナの言葉で空手形ではなくなる。

 

司波達也には、『起動式』の段階で術式の種類を理解することが出来る『眼』があると言う。昨日の帰り際での話を覚えていただけに、スラスラと啓太は説明を続けた。

 

「私が撃ち抜いたアレが閃光魔法だったなんて―――ちょっと悪いことしちゃったかしら?」

 

「攻性魔法であるという疑念は持っていて当然でしょ……浦島が説明した通り、俺にはそういう眼はあります。しかし、会長のようにそれ(発動)を阻止するスキルがありません」

 

自分のことを話されていて、自分は何も話さないことを不実と思ったのか、ようやく話に参加する司波達也。

 

だが最後の言葉には物申す。

 

「不思議な踊りで大ダメージのタツヤザイルは違うのか?」

 

「ダマレ」

 

タツヤザイルという単語に一年以外が疑問符を浮かべるが、ここぞとばかりに啓太に続いて売り込みをかけるのは、実妹である深雪であった。

 

「ふぅむ。私としては、直に実力を見せてもらった浦島を採用したいんだがな……その前に、何でお前は風紀委員をやりたくないんだ」

 

深雪の熱あるトークに気圧されつつも、冷静に『実力』を見ていないからと『保留』する摩利は、啓太がやりたくない理由を問うてきた。

 

啓太としては自分を生贄にして上級モンスターたる司波達也を召喚したつもりだったが、まだ摩利は諦めていなかったようだ。

 

よって最後の禁じ手を切ることに―――。

 

「いや、まぁ……自分のカメを無遠慮に握ってきた相手の下で働くとか、ちょっと…」

 

そう言うと真っ赤になって咳き込む摩利、同じく咳払いをする会長が出来るのであった。

生徒会役員全て、ことの顛末は知っていたらしく真っ赤になったりする辺り、とんでもない話である。

 

「こほん……それは置いてください。というか即刻忘却してくれると嬉しいんですけどね」

 

「そうしますよ」

 

啓太が、平素な声で言ったことで2人が妙な気持ちになったようだが、とりあえず採用したい本当の理由が話される。

 

「雪姫先生から説明を受けたし、実践してもらったが、お前の居合拳、無音拳……あれは、究極の『闇討ち技術』だからな。正直、こんな危険な技を持っている人間は、監視するよりも手元に置いておきたいというのが実だ」

 

その説明になるほどと思うが、それならばポケットに手を入れるなという、一世紀ほどは昔の校則というより訓告よろしく啓蒙すればいいだけな気もするが……。

 

汎用型CADを携帯するに相応しい衣類のスペースはどちらかといえばポケットだけなのだから、そういうのは無理筋なのだった。

 

もっとも、そういう個人用の危険物は預けるのが通常なのだから―――なんとも言い切れない。

 

「まぁ納得できたような出来ないような」

 

「代理での達也君の採用云々ではなく、お前は手元に置いておきたいところだ」

 

悪罵ではないが、それでも悪意を向けられてあまりいい気分ではないが―――。

 

(約束の女の子―――それとの『縁』があるかもしれない……)

 

何となく魔法科高校にやって来たことで、少々……消極的すぎたかもしれないが―――それでも―――。

 

などと考えていた時に、他の人間が決意する。

 

「あの! 私は新人2人を教育するぐらいは大丈夫です!! これでも一年間は真由美さんのクソな無茶振りで鍛えられてきましたから!! だから―――お願いします!! アンジェリーナさん!! 生徒会に入って―――のちには私を助けてください!!」

 

中条あずさという小動物が、意を決して前のめりになりながらアンジェリーナに言った。ツインロールの髪が思わず揺れてしまうほどに、少しだけ驚いた様子。

 

だが、先程の言葉を発しただけに間が悪いと思いつつも……そこまで言われてはアンジェリーナも折れるしか無かった。

 

「……ワ、ワカリました。流石に軍隊に入ってほしいとか言う要望よりはマダいいでしょうから、デスクワークは覚えてみせます」

 

「軍隊?」

 

何気なく発した言葉に少し不穏なものがあったことからの疑問。アンジェリーナをフォローするために啓太は説明をする。

 

「USNAでは、基本的には『優秀な魔法師』というのは、軍に入隊させるという原則があるんです。魔法師のアンクルサム(兵隊募集)ってヤツでして、アンジェリーナもソレにスカウトされたんですよ」

 

啓太の発した証言に周囲は少しだけ驚いた。その理由は歴史にあった。

 

あの自由主義国家にして、マイノリティの人権にも気遣う合衆国が、チャイルドソルジャー(子ども兵士)を積極的に徴募していたということにである。

 

現に、ベトナム、アフガン、イラク……多くの戦争で彼らは、ゲリラとして放たれる彼らから痛い目を見てきたというのに、これなのだから少しだけ呆れる。

 

「アンジェリーナの場合はちょっと特殊でしたから。いっちゃ何ですが、日本の遺伝子解析による魔法師誕生というのは、まだまだプロテスタントの信者や政治団体が多い合衆国では忌避感がある話ですし」

 

「ダカラこそ、隔世遺伝のように魔法能力が高くなったワタシに目を着けて―――マァ、ソウだったんですけどネ」

 

「浦島君が何かしたの?」

 

七草会長の言い方は、ラブロマンス的なものを期待するようなものがあったが、どちらかといえば『家族愛』である。

 

「アンジェリーナの両親から連絡を受けた後には、家の方で動いて、あちこちの『伝手』を使って―――あとは、叔父さんが気合い入れて、その軍からの要求を突っぱねた形ですね」

 

「そう……いいお父さんね……」

 

そんな啓太の返答に少しだけ落ち込む会長。なんか複雑な家庭なんだろうかと思いつつも、ツッコまずに話をすすめる。

 

「まぁそういうことですよ。とはいえ、そんな優秀な魔法師なんてのは『造れない』、発掘されないから、あちらでは魔法師の教育制度が活発なんです。日本や欧州―――中華大陸ともちょっと違うかも」

 

それは、時代が求めた変化とも言える。実際、米国の魔法師教育プログラムというのは、ちょっとばかり変わっている。

しかし、入学時点では『低位の術技能』しかなくても、卒業時には『高位技能の保持者』に転化するだけの何か(・・)があるらしく、そういった意味では遺伝子分析からの高度技能の付与や、教条的な教育制度だけの日本は遅れているとも言える。

 

「それはやはり……九島 健の尽力もあってか?」

 

「まぁな。詳しいことはあまり言いたくないが『MIT』とかも関連していたりするんだな」

 

魔法分野のことと、高度電気電子工学の最先端が、どう組み合わさるのかは、いまいち質問を発した達也にも意味不明ではあったが、ともあれ―――そこで一端、話はお開きとなり。

 

「放課後、またここに来てくれないか? 入るか入らないかは……まぁその時に返事をくれ」

 

そんな風紀委員長の言葉が、生徒会室に響き―――昼休みは残り10分に迫っているのであった。

 

 

 

 

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