海馬コーポレーション主催のデュエルモンスターズ大会、バトルシティ

様々な強豪デュエリストが参加する熾烈な戦場の中、ある一人のメスガキも参加していた。
彼女はマイペースでバトルシティを順調に勝ち進む中、路地裏での喧騒に興味を持って潜り込む。

これはそんなお話。

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デッキ破壊系メスガキがいる、バトルシティの話

「ふんっふふんふふ~ん♪」

 

 とある町の北方面に当たる地区、その歩道を一人の少女が鼻歌交じりに歩いている。

 銀色の髪を緩くウェーブのかかったショートヘアにし、紅色の瞳をした少女。背丈は小柄で恐らく中学生だろう彼女は、まるで近い未来にどこかの学校の制服になりそうな赤い服を着てその上から黒猫を模したネコミミつきのパーカーを着用。左腕に鋭角的で何枚かカードを置くことが出来るような見た目をした機械をつけて鼻歌を歌い歩いている。

 

 

「バトルだ! 双頭の雷龍(サンダー・ドラゴン)でダイレクトアタック!!」

 

「ぐあああぁぁぁぁっ!!」

 

 その横の道路のど真ん中で、二つの口をしたドラゴンから放たれた雷撃が一人の青年を撃ち抜く。

 無論このドラゴンは本物ではないし雷だって本当に発生しているわけではない。これらは投影された立体映像、このデュエルモンスターズの大会――バトルシティを開催するにあたって優秀と認められたデュエリストに配布されたデュエルディスク――少女が左腕につけている機械もそれだ――によってソリッドビジョンと呼ばれる鮮明な立体映像を投影することに成功、よりデュエルを盛り上げるようになったのだ。

 そしてこの鼻歌を歌いながら歩いている少女もその参加者。バトルシティの決勝トーナメントに進むためのパズルカードも順調に集まってきてるし、せっかくこの大会に参加するために数日がかりの旅行を許可されたんだから童実野町の観光もして旅行も楽しもうかな、と彼女が考えていた時だった。

 

 デュエリスト達の喧騒に混じって路地裏の方から怒号が聞こえたような気がし、彩葉はその路地裏へと続く道に細めた目を向けるのだった。

 

 

 

 

 

 さて、少し時間を戻してみよう。

 

「何寝ぼけたコトぬかしてやがんだぁーっ!!」

 

 童実野町北区、そこの路地裏にそんな怒号といくつかの打撃音が響く。

 

「そんなクソカードじゃオレ様のレアとは釣り合わねぇんだよ!」

 

「で……でも、デュエルを始める前にこの賭け札(アンティ)で納得してたじゃないか!」

 

 金髪を逆立てるようなオールバックにして蜘蛛のペイントをしたノースリーブシャツを着た青年の怒号を上げて迫り、その怒号に尻もちをついて何発か殴られた跡のある青年が言い返すが、オールバックの青年は「気が変わったんだよ!」と彼の言い分を一蹴。

 

「いいかぁ、オレはデュエルに勝った!! 負けた野郎は勝った人間の言う事はなんでも訊かなくちゃならねぇんだよ! オレのレア[ダイヤモンド・ドラゴン]と釣り合うカードを差し出すか! さもなきゃ十万払うか……残る最悪の選択で二度とデュエルができねぇ体にしてやるかよ!」

 

 そしてオールバックの青年は左手で殴られている青年の胸倉を掴み、右手でダイヤモンド・ドラゴンのカードを見せながら迫る。どこから見ても恐喝の現場だった。

 

「ねーねーおにーさん達、何してるのー?」

 

「なんだぁ!?」

 

 突然声を掛けられ、名蜘蛛はそっち向けて睨みつける。そこには前かがみになりながらこちらを見てくるネコミミパーカーの少女の姿があった。

 

「なんだガキか。ガキの相手してる暇はねえんだ。とっとと失せな!」

 

「あっは♪ カツアゲしてるとこだから忙しいって? こわーい。運営委員会にちくっちゃおうかなー?」

 

「なんだとテメエ!? いいか、オレはこいつとのデュエルに勝ったんだ! だがこいつがクソカードしか差し出さねえから悪いんだよ!」

 

「ち、違う……彼はちゃんと納得してたのに、デュエルが終わった途端――」

 

 少女の言葉にオールバックの青年は怒号を飛ばすが少女は怯えることなくにまにまと笑うのみ。被害者らしい青年が証言しようとするもオールバックの青年が睨みつけると黙りこくってしまった。

 

「ふ~ん……まあいいや。じゃあおにーさん、私とデュエルしない?」

 

「はっ! 言ってんだろ、テメエみたいなガキの相手してるほど暇じゃねえんだよ! とっとと失せろ!」

 

「え~。私だってバトルシティの参加者なんだよ? アンティもそうだね……さっきおにーさん、ダイヤモンド・ドラゴンがレアだとか言ってたっけ?」

 

「ん? おお……?」

 

 オールバックの青年の脅すような声を少女は飄々と受け流しながら突然そう問いかけ、青年も思わずこくこくと頷く。「じゃ、これでいっか」と少女は予備のカード入れなのだろうか小さなカードホルダーから一枚のカードを取り出した。

 

「さっき、そこのおじさんとのデュエルで勝ったアンティだよ。デッキに入れてたわけじゃないんだけど、私のアンティこれでいーい?」

 

「そ、そいつぁ、[ホーリー・ナイト・ドラゴン]!」

 

 少女がそう言って見せたカード――ホーリー・ナイト・ドラゴンを見た青年が目の色を変え、ニヤリと笑う。

 

「ああ、いいぜ! 俺も[ダイヤモンド・ドラゴン]を賭けてやる!…(…あんなガキなら目じゃねえ。せっかくだ、あのカードやパズルカード以外に、有り金も全部いただいてやる……)」

 

 少女のデュエルの挑戦及びそのアンティに青年も了承、勝利の後を考えてにやつく。

 

 

 

「な、なんか騒ぎが起きてるって通報があったから見に来たけど……だー、まずはあいつを止めないと……」

 

 そこに駆けつけた小学生らしい少年、バトルシティ運営委員会の会長で現場責任者である海馬モクバ。どうやら彼は通報を受けて駆け付けたらしいが、その時には既にその通報の元である恐喝の犯人と思しき青年と突然首を突っ込んだらしい少女がデュエルスタート。

 これでは事情聴取に回る事も出来ず、モクバは頭をガリガリかきながらまずは運営委員会会長権限でこのデュエルを止めて、恐喝未遂事件についての事情聴取を始めようかと考え出す。

 

「待て、モクバ」

 

「兄サマ?」

 

 しかしそれを彼の横に立つ青年――海馬瀬戸が留める。

 

「面白い。あの男が網にかかったグールズの一味かと思って来てみたが、それを見定めるにも丁度いい。やらせておけ」

 

「わ、分かったぜい!」

 

 敬愛する兄からの言葉にモクバは了承、二人は物陰に隠れてデュエルを見物し始めるのだった。

 

「私は彩葉、よろしくね。おにーさん」

 

「へん、名蜘蛛だ。テメエを泣かす男の名前くらい教えといてやるよ」

 

「「デュエル!!!」」

 

 少女――彩葉の言葉に青年――名蜘蛛も名乗り、二人はデュエルディスクを構える。

 そして二人の声が重なり合い、このデュエルのスタートを宣言するのだった。

 

「私の先攻、ドロー……私はモンスターをセット、カードを二枚セットしてターンエンドだよ」

 

 そして先攻を取った彩葉はカードをドローした後、モンスターをセット。カードを二枚セットするという基本に忠実な守りの布陣を敷いてターンエンドを宣言。

 

「へへ。俺のターンだ、ドロー!」

 

 名蜘蛛はニヤリと笑いながらカードをドローし、手札を取る。

 

「俺は[ホーリーナイツ・レイエル]を召喚し、効果発動! レイエルの召喚に成功した時、デッキからホーリーナイツ魔法・罠カード一枚を手札に加える! 俺は[聖夜の降臨(ホーリーナイツ・アドベント)]を手札に加えるぜ! バトルだ!」

 ホーリーナイツ・レイエル 攻撃力:1800

 

 名蜘蛛の場に聖夜(ホーリーナイツ)の名を持つ天使の戦士が出現。さらにその力によって新たなカードがサーチされ、名蜘蛛はさらに果敢にバトルを宣言。

 しかしその時彼女の場の伏せカードの一枚が翻った。

 

「トラップカード[メタバース]を発動するね♪ デッキからフィールド魔法カード一枚を選び、手札に加えるか自分フィールドに発動する。私はデッキからフィールド魔法[ゴーストリック・パレード]を選んで、発動するよ♪ ゴーストリック・パレードが存在する限り、お互いのフィールド上のモンスターは裏側守備表示のモンスターに攻撃できず、相手フィールド上のモンスターが裏側守備表示のモンスターのみの場合、相手プレイヤーに直接攻撃できる。また、相手モンスターの直接攻撃宣言時、自分のデッキからゴーストリックカード一枚を手札に加える事ができるよ♪」

 

 フィールド魔法カードがデュエルディスクの専用部分に読み込まれた瞬間、ソリッドビジョンが展開されて路地裏が星空の街角へと変化。さらにそこをどこからともなく現れた数多くのどこかファンシーなお化け達が行進(パレード)し始めた。

 

「さ、どーするおにーさん♪ これで私の守備モンスターには攻撃出来ないよ?」

 

「へっ! かえって都合がいいぜ。そのままお前に直接攻撃で大ダメージを与えてやる! ホーリーナイツ・レイエルでダイレクトアタックだ!!」

 

「この直接攻撃宣言時にゴーストリック・パレードの効果発動。デッキから[ゴーストリック・マリー]を手札に加えるね」

 

「それがどうした! 攻撃は止まらねえ、顔面に一撃ぶち込んでやれ!」

 

 果敢に攻撃を命じ、その瞬間パレードに参加していたゴーストリックの一体がその姿をカードに変えて彩葉の手札へと飛び込む。しかし攻撃を止められるわけではなく、レイエルの一撃が彩葉を襲い大ダメージを与える結果となった。

 

「く……けど、私が戦闘またはカードの効果によってダメージを受けた事でさっき手札に加えた[ゴーストリック・マリー]の効果を発動するよ。このカードを手札から捨てて、デッキからゴーストリックモンスター一体を裏側守備表示で特殊召喚するよ。セットサモン、[ゴーストリックの人形]!」LP4000→2200

 ゴーストリックの人形 守備力:1200(セット)

 

「ヘッ、壁を出したって無意味なんだろうがよ。俺はカードを二枚セットしてターンエンドだ」

 

 ふよふよと浮かぶ鏡台、その鏡の中にいる女の子に呼ばれるようにパレードの中にいた人形のように可愛らしい女の子が彩葉の場に立ち、姿を隠す。その姿を鼻で笑いながら名蜘蛛はターンを終了した。

 

「私のターン、ドロー」

 

 ターンが移り、カードをドローする彩葉。そこで彼女は思い出した、というようにポンと手を打った。

 

「そーそー。ゴーストリック・パレードの効果を一つ言い忘れてた♪」

 

「なんだぁ?」

 

「ああ、まあ大したことじゃないんだけどね」

 

 彩葉はそう含め、ニコッと微笑んだ。

 

「ゴーストリック・パレードがフィールド上に存在する限り、相手プレイヤーが受ける全てのダメージは0になるんだ♪ よかったね、おにーさん♡」

 

 そして彩葉はそう、ゴーストリック・パレード最大のデメリットを口にした。

 

 

「え……えぇっ!? つまりあいつ、あのフィールド魔法がある限り相手にダメージを与えられないって事かよ!? 一体なんのつもりなんだ……?」

 

 その言葉を聞いたモクバが仰天したように声を出し、横の海馬はふぅんと鼻を鳴らす。

 

「っ……はっははははは! 俺にダメージを与えられないだと!? とんだ役立たずのフィールド魔法だ。だがテメエのアンティをさっさと受け取れるのなら楽でいいな!」

 

 そして名蜘蛛もそれを聞いて大笑いし、デュエルを続けるように促す。その瞬間彼女の場の守備モンスターカードが翻り、モンスターが姿を現した。さっきのターンにリクルートした人形ではない、もう一体の方だ。

 

「私は[デス・ラクーダ]を反転召喚して、効果を発動するよ♪ このカードが反転召喚に成功した時、自分のデッキからカードを一枚ドローするね♪」

 デス・ラクーダ 守備力:600(セット)→攻撃力:500

 

 彩葉の場に現れたのはボロボロの包帯を巻き、しかしところどころ干からびた肉体の露出したラクダのミイラ。その効果により彩葉はカードをドローした。

 

 

「ドロー加速……」

 

「ふぅん。ゴーストリック、裏側守備表示を主体とするカードと見たが。そう考えればあのカードとのシナジーの面では有効ではあるか……」

 

 そしてモクバと海馬は彼女の戦法を分析していた。

 

「さらに[ゴーストリックの人形]を反転召喚して、効果を発動するよ。このカードがリバースした場合に発動して、このターンのエンドフェイズに、フィールドの表側表示モンスターは全て裏側守備表示になる。その後、この効果で裏側守備表示になったモンスターの数以下のレベルを持つゴーストリックモンスター一体をデッキから裏側守備表示で特殊召喚できる♪

 さらに私はモンスターをセットしてぇ、カードを二枚セットしてエンドフェイズ。ゴーストリックの人形の効果により、私の場の人形とデス・ラクーダ、おにーさんの場のホーリーナイツ・レイエルを裏側守備表示に変更。その数以下のレベルのゴーストリックモンスター[ゴーストリック・キョンシー]を裏側守備表示で特殊召喚するよ♪ ターンエンド♪」

 デス・ラクーダ 攻撃力:500→守備力:600(セット)

 ゴーストリックの人形 守備力:1200(セット)→攻撃力:300→守備力:1200(セット)

 ゴーストリック・キョンシー 守備力:1800(セット)

 

「チッ……」

 ホーリーナイツ・レイエル 攻撃力:1800→守備力:700(セット)

 

 彩葉の場にさらに一体モンスターが追加され、さらにカードがセットされる。名蜘蛛は鬱陶しそうに舌打ちを叩いて眉間に皺をよせながら、俺のターンと宣言してカードをドローした。

 

「俺はレイエルを反転召喚し、[ホーリーナイツ・フラムエル]を召喚! リバースカードオープン! 永続罠[聖夜の降臨]を発動! 自分または相手のメインフェイズに一度だけ、手札からドラゴン族・光属性・レベル7モンスター一体を特殊召喚する!

 お前のような雑魚に見せるのも勿体ないが、見せてやる! [聖夜に煌めく竜]を手札から特殊召喚! そして効果発動! このカードが手札からの召喚・特殊召喚に成功した場合にフィールドのカード一枚を対象として発動し、そのカードを破壊する。さっきのターン伏せたカードの内一枚を破壊しろ!」

 ホーリーナイツ・レイエル 守備力:700(セット)→攻撃力:1800

 ホーリーナイツ・フラムエル 攻撃力:1500

 聖夜に煌めく竜 攻撃力:2500

 

 名蜘蛛の命令が飛ぶと共に、竜が星空の中でもひと際輝く火球を放ち、彩葉の場の伏せカードへと着弾。まるで聖火のように伏せカード――強制終了が燃え上がって消滅した。

 

「ハハッ、防御カードを失ったか。それじゃあ一思いに終わらせてやるよ! 総攻撃だ!」

 

 名蜘蛛は彩葉が防御カードを失ったと見て総攻撃を命令、同時にホーリーナイツ達が武器を構えて突撃し、聖夜に煌めく竜も再びブレスの準備を始める。

 

「この直接攻撃宣言時に、パレードの効果で[ゴーストリック・アウト]を手札に加えるね」

 

 絶体絶命、しかしその状況でも彩葉は冷静にパレードの効果によってゴーストリックカードを手札に加える。

 そして総攻撃のため突撃を始めたホーリーナイツ達が、ゴーストリック・パレードの効果により攻撃対象から外れている裏側守備モンスター達を踏み越えようとしたその時、突如そのカード達が翻ったと思うとゴーストリックの人形、ゴーストリック・キョンシー、そしてどこかゴーストリック達に似た雰囲気の妖精が勢いよく飛び出してレイエルとフラムエルを驚かす。

 

「うおわっ!?」

 

 思わず名蜘蛛も飛び上がり、レイエルとフラムエルも怯んだように仰け反って動きを止める。まさかの光景に驚いたのか聖夜に煌めく竜もブレスを吐こうとした息が止まったせいでごふごふ咳き込んでいた。

 

「トラップカード発動、[ゴーストリック・パニック]。私の場に裏側守備表示で存在するモンスターを任意の数だけ表側守備表示にし、その中のゴーストリックと名のついたモンスターの数まで、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターを選んで裏側守備表示にするよ♪」

 ゴーストリックの人形 守備力:1200

 ゴーストリック・キョンシー 守備力:1800

 ゴーストリックの妖精 守備力:1000

 

 イタズラ成功とばかりに人形、キョンシー、妖精がケラケラ笑いながらハイタッチ。同時にレイエルとフラムエル、そして聖夜に煌めく竜の姿が星空の闇夜の中に紛れ始めた。

 

「私が表側守備表示にしたゴーストリックは三体。つまりおにーさんの場の三体のモンスター、全員裏側守備表示になってもらうね♪」

 

「な、くそっ!?」

 ホーリーナイツ・レイエル 攻撃力:1800→守備力:700(セット)

 ホーリーナイツ・フラムエル 攻撃力:1500→守備力:1000(セット)

 聖夜に煌めく竜 攻撃力:2500→守備力:2300(セット)

 

 星空の闇夜に紛れて姿を消した名蜘蛛のモンスターが、横向きのカードになって彼のフィールドに姿を現す。

 

「でも、まだまだ終わんないよー? 人形の効果発動、このカードがリバースしたターンのエンドフェイズに、フィールドの表側表示モンスターは全て裏側守備表示になる。その後、この効果で裏側守備表示になったモンスターの数以下のレベルを持つゴーストリックモンスター一体をデッキから裏側守備表示で特殊召喚できる。

 チェーンしてキョンシーの効果発動、このカードがリバースした時、自分フィールド上のゴーストリックモンスターの数以下のレベルを持つ、ゴーストリック一体をデッキから手札に加える事ができる。私の場のゴーストリックは三体。

 さらにチェーンしてゴーストリックの妖精の効果発動。このカードがリバースした時、私の墓地のゴーストリックカード一枚を対象とし、そのカードを自分フィールドにセットする。ただし、そのカードはフィールドから離れた場合に除外される。

 その後、自分フィールドにセットされているカードの数まで相手フィールドの表側表示モンスターを選んで裏側守備表示にできる効果もあるけど、どうせおにーさんのフィールドに表側表示モンスターはいないしこれはいっか。

 

 チェーンの逆順処理をスタートするね。妖精の効果で私は墓地の[ゴーストリック・パニック]をセット。キョンシーの効果でレベル1の[ゴーストリック・スペクター]を手札に加えるね。で、人形の効果も発動の処理を通して終了っと♪」

 

 そこに彩葉はリバースしたゴーストリック達の効果の処理を淡々と終了、そして名蜘蛛に向けてにまっと微笑んだ。

 

「ね、ね、おにーさん♡ これからどーするの♪ 一思いに終わらすんだよねー?」

 

 にまにまと笑う彩葉に名蜘蛛がぐっと唸り、手札を見る。しかしやがて何もせずに両手を下ろした。

 

「ターンエンドだ……」

 

「えー? なにー? 聞こえなーい☆」

 

「ターンエンドだっつんだんだよクソガキ! さっさと進めやがれ!!」

 

 小さな声でのエンド宣言にわざとらしく聞こえないと、よく聞かせてというように耳に手を当ててその耳を名蜘蛛に向けるジェスチャーをする彩葉に名蜘蛛がヤケクソになったように怒鳴りつける。彩葉はニヤニヤと笑いながら「はーい」と進めた。

 

「それじゃエンドフェイズに、ゴーストリックの人形の効果を処理するね。フィールドの表側表示モンスターは全て裏側守備表示になる。その後、この効果で裏側守備表示になったモンスターの数以下のレベルを持つゴーストリックモンスター一体をデッキから裏側守備表示で特殊召喚できる。

 裏側表示になったモンスターは三体、よってレベル3の[ゴーストリック・スケルトン]を裏側守備表示で特殊召喚するね♪」

 ゴーストリックの人形 守備力:1200→守備力:1200(セット)

 ゴーストリック・キョンシー 守備力:1800→守備力:1800(セット)

 ゴーストリックの妖精 守備力:1000→守備力:1000(セット)

 ゴーストリック・スケルトン 守備力:1100(セット)

 

 これで彩葉の場の全てのモンスターゾーンが埋まり、そのままエンドフェイズの処理が進んでターンチェンジ。ターンプレイヤーになった彩葉が「私のターン、ドロー」と宣言してカードをドロー。そして彼女は赤い瞳に色を覗かせ、ぺろりと舌で口元を舐め上げた。

 

「さあ、ここからが本番だよ。おにーさん♡」

 

 そう呟くと共に、「まずは[デス・ラクーダ]を反転召喚☆」と宣言してデス・ラクーダを出し、その効果でドローを加速。その後、彼女の場のゴーストリック達が一気に姿を現しだした。

 

「私はゴーストリックの人形、妖精、キョンシー、スケルトンの順番で反転召喚。妖精の効果は発動せず、キョンシーの効果でデッキからレベル1の[ゴーストリック・フロスト]を手札に加えるね。

 そしてこれが最後、[ゴーストリック・スケルトン]の効果発動」

 デス・ラクーダ 守備力:600(セット)→攻撃力:500

 ゴーストリックの人形 守備力:1200(セット)→攻撃力:300

 ゴーストリックの妖精 守備力:1000(セット)→攻撃力:900

 ゴーストリック・キョンシー 守備力:1800(セット)→攻撃力:400

 ゴーストリック・スケルトン 守備力:1100(セット)→攻撃力:1200

 

 ニヤァ、と彩葉の笑みが深くなる。

 

「このカードがリバースした時、自分フィールド上のゴーストリックモンスターの数まで、相手のデッキの上からカードを裏側表示で除外する」

 

「なっ!?」

 

「私の場のゴーストリックは人形、妖精、キョンシー、そしてスケルトンの四体。よって四枚のカードを裏側表示で除外するね♪」

 

「くっ!?」デッキ枚数:32枚→28枚

 

 まるで死神のような格好をした骸骨――ゴーストリック・スケルトンはケタケタと不気味に笑いながら鎌を振るい名蜘蛛のデッキのカードを除外する。

 

 

「デ、デッキ破壊!?」

 

「やはりな。相手にダメージを与えられん以上、あの女の勝ち筋はそれか特殊勝利のみ」

 

 彩葉のとった戦法にモクバが驚愕するも、海馬は予想していたというように腕組みをして答える。

 あのデッキはデス・ラクーダのようなドロー加速カードや、ゴーストリックの人形やキョンシーのようなサーチ・リクルートカードでアドバンテージを取りつつ徹底的に相手の攻撃を防いでいる隙にゴーストリック・スケルトンの効果で徐々にデッキ破壊をしていくデッキ。と所感を述べた。

 

「私はカードを二枚セットしてエンドフェイズ、人形の効果によって表側表示モンスターは全て裏側守備表示になる。おやすみー♪」

 デス・ラクーダ 攻撃力:500→守備力:600(セット)

 ゴーストリックの人形 攻撃力:300→守備力:1200(セット)

 ゴーストリックの妖精 攻撃力:900→守備力:1000(セット)

 ゴーストリック・キョンシー 攻撃力:400→守備力:1800(セット)

 ゴーストリック・スケルトン 攻撃力:1200→守備力:1100(セット)

 

 そしてその間に彩葉は六枚にまで増えた手札の内二枚を伏せ、ターンエンドを宣言。同時に彼女の場のゴーストリック達(&デス・ラクーダ)はまるで眠りにつくように静かに姿を消し、横向きのカードの姿になって彼女の場に潜むのだった。

 

「チッ。俺のターン、ドロー!」デッキ枚数:28枚→27枚

 

 名蜘蛛は彩葉の戦法に対して眉間に皺を寄せながらカードをドローすると、そのカードをすぐにデュエルディスクに差し込んだ。

 

「速攻魔法[リロード]を発動! 自分の手札を全てデッキに加えてシャッフル。その後、デッキに加えた枚数分のカードをドローする!」

 

「きゃっは♡ 引きが悪かったからやり直し? ダサーい♪」

 

「うっせえ! 俺の手札は残り三枚、これを全てデッキに戻してシャッフルし、三枚ドロー!」デッキ枚数:27枚→30枚→27枚

 

 悪い手札を引き直し、流れを変えようと狙う名蜘蛛。そして三枚のドローカードを見て彼はニヤリと笑みを見せた。

 

「速攻魔法[サイクロン]を発動! テメエの伏せカード、さっき伏せられた[ゴーストリック・パニック]を破壊だ!」

 

「っ、ゴーストリックの妖精の効果でセットされたカードは、フィールドを離れた時に除外される……」

 

「これでさっきみたいに守るのは出来なくなったな! 俺は[聖夜に煌めく竜]を反転召喚し、手札の[ホーリーナイツ・シエル]の効果発動! このカードが手札に存在する場合、ホーリーナイツ・シエル以外の自分フィールドの、ホーリーナイツモンスターまたはドラゴン族・光属性・レベル7モンスター一体を持ち主の手札に戻し、このカードを特殊召喚する!

 俺は聖夜に煌めく竜を手札に戻してシエルを召喚! そしてホーリーナイツ・シエルと裏側守備表示のホーリーナイツ・フラムエルを生贄に捧げ、[聖夜に煌めく竜]を召喚!

 そして聖夜に煌めく竜の召喚に成功したことで効果発動! さっきのターン伏せたカードの内一枚を破壊だ!」

 聖夜に煌めく竜 攻撃力:2500

 

「[宮廷のしきたり]が……」

 

 姿が消えたかと思うと二体の聖夜の天使を贄に再び現れた竜、そのブレスが彩葉の場のカード一枚を再び燃やし粉砕した。

 

「まだ終わらねえぜ! 聖夜の降臨の効果発動! 手札からドラゴン族・光属性・レベル7モンスター一体を特殊召喚する!」

 

 そして名蜘蛛が宣言し、最後の手札をデュエルディスクのモンスターゾーンに叩きつけると同時、彼の場に翻ったカードから一体のドラゴンが出現する。聖夜に煌めく竜にも劣らぬその輝き、それは宝石の王とも言われる宝石の如く。

 

「現れろ、[ダイヤモンド・ドラゴン]!!」

 ダイヤモンド・ドラゴン 攻撃力:2100

 

 彼がアンティとして賭ける激レアカード――ダイヤモンド・ドラゴンが彼の場に降臨した。

 

「はっははははは! どうだ驚いたか!? ま、ダイヤモンド・ドラゴンが攻撃するまでもないだろうがな。俺はホーリーナイツ・レイエルを反転召喚し、バトルだ! ぶちかませ、聖夜に煌めく竜!!」

 ホーリーナイツ・レイエル 守備力:700(セット)→攻撃力:1800

 

「その攻撃宣言時に、ゴーストリック・パレードの効果でデッキから[ゴーストリック・ロールシフト]を手札に加えるね」

 

「今更何しようが遅いんだよ!」

 

 名蜘蛛の高笑いじみた雄叫びと同時に聖夜に煌めく竜が炎のブレスを、彼女の場に潜むモンスター達を飛び越えて彩葉へと浴びせかける。これで俺の勝ちだ、と確信した名蜘蛛が拳を握ったその時、火炎放射がまるでが彼女から離れるように弾かれていった。

 

「なっ!?」

 

 名蜘蛛は驚きに叫ぶが直後気づく。彼女の場に半透明の障壁が張られている事に。そして彼がそれに気づいたのに気づくと、彩葉は「にゃは♪」と笑みを見せ、このデュエルの最初のターンに伏せていたカードを見せた。

 

「残念でした~♡ 永続罠、[スピリットバリア]を発動してたんだよ。おにーさん♪ 私の場にモンスターが存在する限り、私への戦闘ダメージは0になるの☆」

 

「な、んだとぉっ!?」

 

 彩葉の言葉に名蜘蛛が目を剥く。

 現在、ゴーストリック・パレードの効果により彩葉の場の裏側守備表示モンスターに攻撃することは出来ず、その場合はダイレクトアタックを強制される。しかし彼女の場にモンスターが存在する限り彼女への戦闘ダメージは0になる。

 

 

「つまりあいつ、あれをなんとかしないと戦闘ダメージを受けないも同然って事かよ!?」

 

 その強固な防壁にモクバも驚愕の声を上げていた。

 これ以上の攻撃も無駄に終わる。名蜘蛛は自分の思い通りに動けない状態にぐぎぎと唸り声を上げながらターンエンドを宣言した。

 

「私のターン、ドロー」

 

 彩葉はにやにやと笑いながらターン開始を宣言し、ドロー。デス・ラクーダを反転召喚してさらにドローを進める。

 そして再びゴーストリックの人形、妖精、キョンシー、スケルトンの順番で反転召喚。妖精の効果は発動せず、キョンシーの効果でデッキから今度はレベル2の[ゴーストリックの人形]を手札に加える。

 

「そして[ゴーストリック・スケルトン]の効果発動。再びデッキの上から四枚のカードを裏側表示で除外させてもらうね♡」

 デス・ラクーダ 守備力:600(セット)→攻撃力:500

 ゴーストリックの人形 守備力:1200(セット)→攻撃力:300

 ゴーストリックの妖精 守備力:1000(セット)→攻撃力:900

 ゴーストリック・キョンシー 守備力:1800(セット)→攻撃力:400

 ゴーストリック・スケルトン 守備力:1100(セット)→攻撃力:1200

 

「ぐうぅっ……」デッキ枚数:27枚→23枚

 

 再びゴーストリック・スケルトンが鎌を振るい、名蜘蛛のデッキの上から四枚のカードを消し去る。

 

「リバースカードを二枚セットしてエンドフェイズに入るよ」

 

「待ちやがれ! 聖夜の降臨のもう一つの効果発動! 自分フィールドのドラゴン族・光属性・レベル7モンスター一体を持ち主の手札に戻す! 俺は聖夜に煌めく竜を手札に戻す!」

 

「んじゃ、改めてエンドフェイズ、人形の効果でまた皆は眠りにつく。おやすみ~♡」

 デス・ラクーダ 攻撃力:500→守備力:600(セット)

 ゴーストリックの人形 攻撃力:300→守備力:1200(セット)

 ゴーストリックの妖精 攻撃力:900→守備力:1000(セット)

 ゴーストリック・キョンシー 攻撃力:400→守備力:1800(セット)

 ゴーストリック・スケルトン 攻撃力:1200→守備力:1100(セット)

 

「ぐ、ぐぐぐ……俺のターン、ドロー!」

 

 そして再び眠りにつくゴーストリック達(&デス・ラクーダ)。完全にパターンにハマっており、名蜘蛛が声を荒げてカードをドロー。同時に彼の場の聖夜の降臨が光り出した。

 

「メインフェイズ、聖夜の降臨の効果発動! 手札からドラゴン族・光属性・レベル7モンスター一体を特殊召喚する! 来い、[聖夜に煌めく竜]! そしてモンスター効果発動! スピリットバリアを粉砕しろ!!」

 聖夜に煌めく竜 攻撃力:2500

 

「くっ……」

 

 またも現れた聖夜に煌めく竜の火炎放射が彩葉を、いや、彼女を守るバリアを狙う。そのバリアの出所であるカード本体が狙われて燃やされ、彼女を守るバリアが消滅した。

 

「オラァ! これで終わりだ! バトル、聖夜に煌めく竜でダイレクトアタック!!」

 

「まだだよおにーさん♪ トラップ発動[鳳翼の爆風]! 手札を一枚捨て、相手フィールドのカード1枚を持ち主のデッキの一番上に戻す!」

 

「なっ!?」

 

「私が戻すのは当然、聖夜に煌めく竜!」

 

 名蜘蛛が意気揚々とバトルの開始を宣言、聖夜に煌めく竜が攻撃指示を受けて炎を放つも、彼女の場に翻ったカードから放たれる爆風によってその炎がかき消されるだけでなく竜自体も吹き飛ばされて彼のデッキトップへと押し戻された。

 

「っ! ま、まだだ! いけ、ホーリーナイツ・レイエル! ダイヤモンド・ドラゴン!」デッキ枚数:23枚→24枚

 

「こっちもまだあるんだよね~♡ 永続罠発動[ゴーストリック・ロールシフト]! その効果により、私の場に裏側守備表示で存在するモンスター一体を選択して表側攻撃表示にし、そのモンスターがゴーストリックだった場合、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター一体を選んで裏側守備表示にする。私が表側表示にするモンスターは[ゴーストリックの妖精]!

 そしてゴーストリック・ロールシフトの効果により、ホーリーナイツ・レイエルには裏側守備表示になってもらうよ!」

 ゴーストリックの妖精 守備力:1000(セット)→攻撃力:900

 

「なっ!? だがまだだ! ダイヤモンド・ドラゴンの攻撃が残ってる!」

 ホーリーナイツ・レイエル 攻撃力:1800→守備力:700(セット)

 

「んふふ、残念でした~♪ ゴーストリックの妖精がリバースした事で効果発動。自分の墓地のゴーストリックカード一枚を自分フィールドにセットする。その後、自分フィールドにセットされているカードの数まで相手フィールドの表側表示モンスターを選んで裏側守備表示にできる。

 私はさっき鳳翼の爆風のコストに捨てた[ゴーストリック・ブレイク]をセット。そしておにーさんのホーリーナイツ・レイエルには裏側守備表示になってもらうね☆」

 

「な……ぐぅぅっ……」

 ダイヤモンド・ドラゴン 攻撃力:2100→守備力:2800(セット)

 

 妖精の不可思議な魔法によってダイヤモンド・ドラゴンが眠りにつき、その姿が消えたかと思うと横向きのカードの姿へと変化。彼の場に残るホーリーナイツ・レイエルも既に裏側守備表示になっている以上、もう攻撃の手段が存在しない。

 

「きゃっは♡ さっきから攻撃しまくってるのに一発も届かないねぇ? ねーねーどうしちゃったの~? もっと頑張って攻めてきてよー?」

 

「クソガキがぁっ!!!」

 

「きゃっ、こわ~い☆ こんな女の子の軽口真に受けちゃうなんてはっずかし~♪ それでどうするの~?」

 

「クソガキ、次のターンで身の程を分からせてやる! ターンエンドだ!」

 

 名蜘蛛は拳を握りしめながらターンエンドを宣言。彩葉はにやにやにまにまと笑いながらカードをドローした。

 

「ねーねー。次のターンって言ってるけどぉ。忘れてな~い?」

 デス・ラクーダ 守備力:600(セット)→攻撃力:500

 ゴーストリックの人形 守備力:1200(セット)→攻撃力:300

 ゴーストリックの妖精 守備力:1000(セット)→攻撃力:900

 ゴーストリック・キョンシー 守備力:1800(セット)→攻撃力:400

 ゴーストリック・スケルトン 守備力:1100(セット)→攻撃力:1200

 

 彩葉がにやにやと笑いながらそう言い、指をパチンと鳴らすと共に、再びデス・ラクーダ、ゴーストリックの人形、妖精、キョンシー、スケルトンが出現。

 デス・ラクーダの効果でドローし、妖精の効果は使わずキョンシーの効果でレベル3の[ゴーストリック・スケルトン]を手札に加えておく。これで手札は合計八枚だ。

 

「そしてゴーストリック・スケルトンの効果でデッキの上から四枚……そう、さっきのターン、デッキトップに戻した聖夜に煌めく竜とあと三枚、裏側表示で除外させてもらうよ」

 

「しまっ――」

 

 [ケケケケッ!]

 

 彩葉のにやつきながらの言葉を聞いて名蜘蛛は初めて気づいたようにデッキトップに目をやるがもう遅い。

 ゴーストリック・スケルトンの鎌が一閃して彼のデッキトップの上から四枚のカードを弾き飛ばす。その中にはさっきまで彩葉の場を破壊し続けていた聖夜に煌めく竜も含まれていた。

 

「っ……」デッキ枚数:24枚→20枚

 

「私はカードを二枚セットしてエンドフェイズ、人形の効果で皆は眠りにつく。ターンエンドだよ♪」

 デス・ラクーダ 攻撃力:500→守備力:600(セット)

 ゴーストリックの人形 攻撃力:300→守備力:1200(セット)

 ゴーストリックの妖精 攻撃力:900→守備力:1000(セット)

 ゴーストリック・キョンシー 攻撃力:400→守備力:1800(セット)

 ゴーストリック・スケルトン 攻撃力:1200→守備力:1100(セット)

 

 流石にショックを受けたような名蜘蛛の姿に彩葉はクスクスと冷たく笑いながら、伏せカードを二枚増やす。これで彼女のフィールドが全て埋まり、彼女はターンエンドを宣言した。

 

「俺のターン、ドロー!――」デッキ枚数:20枚→19枚

「このドローフェイズにリバースカードオープン[手札断殺]。お互いのプレイヤーは手札を二枚墓地へ送る。その後、それぞれデッキから二枚ドローする……おにーさん、手札が悪そうだから交換させてあげるね?」

「――チッ!」デッキ枚数:19枚→17枚

 

 ドローしたカード含めた手札を全て早々に捨てられ、名蜘蛛は眉間に皺を寄せて舌打ちを叩きながらカードをドロー。しかしそのカードを見ると途端にニヤァと自慢げな笑みを見せた。

 

「ハッハハハハ! ありがとよ! お前のおかげでいいカードが手札に入ったぜ! 魔法カード発動[復活の福音]! 俺の墓地のレベル7・8のドラゴン族モンスター一体を特殊召喚する! そいつもさっきお前が捨てさせてくれたカードだ! 来い、[アークブレイブ・ドラゴン]!!」

 アークブレイブ・ドラゴン 攻撃力:2400

 

「え……」

 

 名蜘蛛の場に出現した新たな最上級ドラゴン。自分のプレイングが結果的にそんなモンスターを呼び出した事になり、彩葉が唖然とした顔を見せているのを見た名蜘蛛は高笑いをしながら続ける。

 

「アークブレイブ・ドラゴンの効果発動! こいつが墓地からの特殊召喚に成功した場合、相手フィールドの表側表示の魔法・罠カードを全て除外する! さらにこのカードの攻撃力・守備力は、この効果で除外したカードの数×200アップする!

 お前の顔面に直接ぶち込めるフィールド魔法がなくなるのは勿体ないが、お前の場のモンスターを一体ずつ痛めつけてからぶち込んでやるよ!」

 

「っ……!?」

 

 アークブレイブ・ドラゴンがブレスを放ち、ゴーストリック達がパレードをしている街角を粉砕していく。さらにゴーストリック・ロールシフトのカードまで破壊され、彩葉の守りの要が一気に破壊されることになる。

 

「これでアークブレイブ・ドラゴンの攻撃力は400ポイントアップだ! さらにレイエルとダイヤモンド・ドラゴンを反転召喚し、バトルだ! アークブレイブ・ドラゴンでテメエの邪魔なゴーストリック・スケルトンを攻撃だ!!」

 アークブレイブ・ドラゴン 攻撃力:2400→2800

 ホーリーナイツ・レイエル 守備力:700(セット)→攻撃力:1800

 ダイヤモンド・ドラゴン 守備力:2800(セット)→攻撃力:2100

 

 裏側守備表示とはいえさっきから散々リバースしては裏側守備表示に戻っていてはどれが何かは知れたもの。アークブレイブ・ドラゴンは主を苦しめた骸骨へと狙いを定める。

 

「く……でもゴーストリック・スケルトンがリバースした時、自分フィールド上のゴーストリックモンスターの数まで、相手のデッキの上からカードを裏側表示で除外する!」

 

 スケルトンがせめてもの抵抗に鎌を投げつけ、名蜘蛛のデッキから一枚のカードを弾き飛ばす。しかしその程度の抵抗しか出来ずにスケルトンは粉砕され、彩葉の目は思わず何かを見るように泳いでしまう。

 その視線の先、それに気づいた名蜘蛛はニヤリと笑った。

 

「ハッ、痛くもかゆくもねえな! 続けてレイエル、邪魔なラクダを破壊しろ!」デッキ枚数:17枚→16枚

 

「そんなっ!?」

 

 さらに名蜘蛛は彩葉の視線の先にいたモンスター――デス・ラクーダの破壊を命令、それを見た彩葉が目を丸くして口元を手で覆う。しかし彩葉にそれを止める手段はなく、聖夜の天使がデス・ラクーダを戦闘破壊するのを見ている事しか出来なかった。

 

「最後だ! ダイヤモンド・ドラゴン! ゴーストリック・キョンシーを攻撃! ダイヤモンド・ブラスト!!」

 

 そして最後に彼のエースにしてアンティ、ダイヤモンド・ドラゴンがブレスを放ってゴーストリック・キョンシーを攻撃する。

 

「ゴーストリック・キョンシーの効果! このカードがリバースした時、自分フィールド上のゴーストリックモンスターの数以下のレベルの、ゴーストリックモンスター一体をデッキから手札に加える事ができる! 私は[ゴーストリック・ランタン]を手札に加えるよ!」

 

「だが、邪魔くせえキョンシーは破壊だ!」

 

 キョンシーがせめて主の助けを呼ぼうと声を上げ、その声に導かれたゴーストリックの一体が彩葉の手札に加わる。だがキョンシー自体の破壊を免れる事はなく、あっという間に彼女の場の三体のモンスターが破壊されてしまった。

 

「ハッハハハハ! どうだ、俺様を舐めるからこうなるんだよ!」

 

「……予想通り」

 

「なんだと!?」

 

 得意気に笑う名蜘蛛に対し、彩葉は自分の場があっという間に蹂躙されたことにショックを受けているように口元を覆っていた手をどける。その口元はむしろ不敵な笑みを浮かべていた。

 

「私はゴーストリック・キョンシーの破壊をトリガーに手札の[ゴーストリック・スペクター]の効果発動。ゴーストリックモンスターが、相手のカードの効果または相手モンスターの攻撃によって破壊され自分の墓地へ送られた時に発動でき、このカードを手札から裏側守備表示で特殊召喚してデッキからカードを一枚ドローする。

 これにチェーンしてトラップ発動[ゴーストリック・ブレイク]。こっちもゴーストリックモンスター一体が戦闘または相手の効果で破壊され自分の墓地へ送られた時、破壊されたそのモンスターとカード名が異なる、自分の墓地のゴーストリックモンスター二体を裏側守備表示で特殊召喚する」

 

「な、なにぃっ!?」

 

「チェーン処理スタート♪ 私はゴーストリック・ブレイクの効果で墓地の[ゴーストリック・スケルトン]と[ゴーストリックの雪女]を裏側守備表示で特殊召喚♪ そして[ゴーストリック・スペクター]を裏側守備表示で特殊召喚して、デッキからカードを一枚ドローするよ☆

 これで私のフィールドは実質無傷だね♡」

 

 実際にはデス・ラクーダとゴーストリック・キョンシーがゴーストリックの雪女とゴーストリック・スペクターに入れ替わっている以上、無傷とは言えない。しかし確かにフィールドのモンスター増減という意味では差し引きゼロだった。

 

「テ、テメエ……」

 

「デス・ラクーダの破壊じゃスペクターもブレイクも使えないもんね~。わざとらしく心配そうな目でデス・ラクーダを見たらそっちを先に狙ってくれたから、おにーさん扱いやすかったよ♪ ありがとね~♡」

 

「ふざけんな! 次のターンこそ分からせてやらぁ! 俺はこれでターンエンドだ!!」

 

 笑顔で感謝の言葉を投げかけながら手をひらひらと振る彩葉の姿にむしろ名蜘蛛は激昂、ターン終了を宣言した。

 

「私のターン、ドロー……さあ、皆。お目覚めの時間だよ?」

 ゴーストリック・スペクター 守備力:0(セット)→攻撃力:600

 ゴーストリックの雪女 守備力:800(セット)→攻撃力:1000

 ゴーストリックの人形 守備力:1200(セット)→攻撃力:300

 ゴーストリックの妖精 守備力:1000(セット)→攻撃力:900

 ゴーストリック・スケルトン 守備力:1100(セット)→攻撃力:1200

 

 パチンと指を鳴らすと共にまたも、今度はスペクター、雪女、人形、妖精、スケルトンの順番で姿を現すゴーストリック達。名蜘蛛がギリィと歯ぎしりを見せた。

 

「人形の効果発動、このカードがリバースしたターンのエンドフェイズに、フィールドの表側表示モンスターは全て裏側守備表示になる。その後、この効果で裏側守備表示になったモンスターの数以下のレベルを持つゴーストリックモンスター一体をデッキから裏側守備表示で特殊召喚できる。

 次にゴーストリックの妖精の効果発動。このカードがリバースした時、私の墓地のゴーストリックカード一枚を対象とし、そのカードを自分フィールドにセットする。ただし、そのカードはフィールドから離れた場合に除外される。[ゴーストリック・ブレイク]をセットするね。

 そしてゴーストリック・スケルトンの効果発動、私の場のゴーストリックモンスターの数、つまり五枚分デッキの上から裏側除外するよ」

 

 [ケケケケケッ!]

 

「クソがっ!!」デッキ枚数:16枚→11枚

 

 モンスターゾーン全てがゴーストリックとなり、スケルトンが力強く振るった鎌によって五枚分のカードが一気に除外される。

 

「そしてリバースカードを二枚セットしてエンドフェイズ、人形の効果で皆は眠りにつく。ターンエンドだよ♪」

 ゴーストリック・スペクター 攻撃力:600→守備力:0(セット)

 ゴーストリックの雪女 攻撃力:1000→守備力:800(セット)

 ゴーストリックの人形 攻撃力:300→守備力:1200(セット)

 ゴーストリックの妖精 攻撃力:900→守備力:1000(セット)

 ゴーストリック・スケルトン 攻撃力:1200→守備力:1100(セット)

 

「チッ。俺のターン、ドロー!」デッキ枚数:11枚→10枚

 アークブレイブ・ドラゴン 攻撃力:2800→守備力:2000(セット)

 ホーリーナイツ・レイエル 攻撃力:1800→守備力:700(セット)

 ダイヤモンド・ドラゴン 攻撃力:2100→守備力:2800(セット)

 

 またも全てのモンスターが裏側守備表示になり、ターンが回った名蜘蛛がカードをドロー。すると彼はニヤリと笑みを浮かべた。

 

「来たぜ! まず俺は全モンスターを反転召喚後、[ホーリーナイツ・アステル]を攻撃表示で召喚!」

 アークブレイブ・ドラゴン 守備力:2000(セット)→攻撃力:2400

 ホーリーナイツ・レイエル 守備力:700(セット)→攻撃力:1800

 ダイヤモンド・ドラゴン 守備力:2800(セット)→攻撃力:2100

 ホーリーナイツ・アステル 攻撃力:500

 

 名蜘蛛の場のモンスターが一斉攻撃の構えを取り、さらに新たな聖夜の天使が登場。しかしそこでさらに彼の場の聖夜の降臨が輝き始めた。

 

「聖夜の降臨の効果発動! さあ来い、[聖夜に煌めく竜]!!」

 聖夜に煌めく竜 攻撃力:2500

 

「二枚目!?」

 

 名蜘蛛の場に出現したのはスケルトンの効果で除外したものと同種のドラゴン。その姿は予想外だったのか彩葉も目を剥いていた。

 

「聖夜に煌めく竜の効果発動! 邪魔なゴーストリック・ブレイクを破壊しろ!」

 

「っ……!? ゴーストリック・ブレイクは除外される……」

 

 さっきのターンに苦渋を飲まされたゴーストリック・ブレイクから除去し、名蜘蛛は得意気に笑う。

 

「さあバトルだ! アステル、スペクターを攻撃!」

 

「くっ」

 

 攻撃力500といえど守備力0のスペクターより攻撃力は高い。その一撃にスペクターは粉砕され、さらに続けてとレイエルが雪女を惨殺する。

 

「ゴーストリックの雪女の効果! このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時に発動でき、このカードを破壊したモンスターは裏側守備表示になり、表示形式を変更できない!」

 

「チッ、まあいい。アークブレイブ・ドラゴンで人形を攻撃し、破壊! 次だ! ダイヤモンド・ドラゴン、ゴーストリック・スケルトンを攻撃! ダイヤモンド・ブラスト!!」

 ホーリーナイツ・レイエル 攻撃力:1800→守備力:700(セット)

 

「人形の効果発動、このターンのエンドフェイズに、フィールドの表側表示モンスターは全て裏側守備表示になる。さらにゴーストリック・スケルトンの効果、デッキから一枚裏側表示で除外する!」

 

「ふん、今更無駄なあがきだな! これで最後だ! 聖夜に煌めく竜で妖精を攻撃!」デッキ枚数:10枚→9枚

 

「妖精の効果発動! 墓地から[ゴーストリックの雪女]を裏側守備表示で特殊召喚!」

 ゴーストリックの雪女 守備力:1000

 

 どうにか耐えきったものの、再び彼女の場は壊滅。しかも今度は状況を立て直せるカードもなかったらしく、場に残ったモンスターは雪女の一体だけだ。

 

「ククク……次のターンを耐えられたらいいってとこだな! これでお前のレアカードは俺のもんだ! いや、俺を虚仮にしやがった迷惑料として二十万円は貰わねえとな! 俺はこれでターンエンド――」

「待って」

 

 名蜘蛛のエンド宣言を遮る彩葉。命乞いか、今まで得意気に自分を嘲笑ってきた相手からの情けない言葉なら聞いてやろうかと、名蜘蛛は嗜虐的な、それでいて相手を見下す視線を隠さずに彩葉に向ける。

 しかしそれに対する彩葉は、むしろ自分の方が有利だと言わんばかりににやついていた。

 

「おにーさん。もしかして……次のターンがあるとでも思ってる? もう、おにーさんはほぼ終わってるんだよ?」

 

「はぁ? ふざけた事抜かしてんじゃねえぞ! 俺の場にはモンスターが五体、一体動けなくなってようが次のターンお前を仕留めるには充分だ! 寝言言ってんじゃねえ!」

 

「じゃあ、分からせてあげるね? おにーさんのエンドフェイズにリバースカードオープン――」

 

 彩葉の言葉に名蜘蛛が怒号を上げるも、彩葉は全く気にせずにそう答え、伏せカードの発動を宣言する。

 

「――速攻魔法[皆既日蝕の書]を発動。フィールドの表側表示モンスターを全て裏側守備表示にする」

 

「何を……!?」

 アークブレイブ・ドラゴン 攻撃力:2400→守備力:2000(セット)

 ダイヤモンド・ドラゴン 攻撃力:2100→守備力:2800(セット)

 ホーリーナイツ・アステル 攻撃力:500→守備力:2000(セット)

 聖夜に煌めく竜 攻撃力:2500→守備力:2300(セット)

 

 彩葉の発動したカードから出現した書物がひとりでに開き、不思議な光を放ち始める。

 その光を浴びた全てのモンスターが、まるで太陽が月によって隠されるかのように姿を消し、横向きのカードの姿となって主の場に出現する。

 その行動に名蜘蛛が呆けた声を出すが、直後その頭に疑問が浮かぶ。このカードを防御に使っていれば、ゴーストリック達がやられることはなかったはずだ、と。

 しかしその不可解な行動の理由はすぐに明かされる事となった。

 

「おにーさんがエンドフェイズに何もしないんなら進めるねー。このエンドフェイズに皆既日蝕の書の新たなページが開かれる。このターンのエンドフェイズに、相手フィールドの裏側守備表示モンスターを全て表側守備表示にする」

 

「!?」

 ホーリーナイツ・レイエル 守備力:700(セット)→守備力:700

 アークブレイブ・ドラゴン 守備力:2000(セット)→守備力:2000

 ダイヤモンド・ドラゴン 守備力:2800(セット)→守備力:2800

 ホーリーナイツ・アステル 守備力:2000(セット)→守備力:2000

 聖夜に煌めく竜 守備力:2300(セット)→守備力:2300

 

 そして書物の新たなページが開かれ、新たな光に照らされたと同時に、月に隠されていた太陽が現れるかのように彼の場のモンスターが守りの構えを取って姿を現す。これではただモンスターを守備表示にしただけ、その様子に困惑している名蜘蛛に、彩葉はさらに告げた。

 

「その後、この効果で表側守備表示にしたモンスターの数だけ相手はデッキからドローする。おにーさん、デッキからカードを五枚ドローして♪」

 

「ドロー!」デッキ枚数9枚→4枚

 

 彩葉に促しに名蜘蛛はデッキからカードをドローする。しかしそこから彩葉は何もすることはなく、名蜘蛛はニヤリと笑みを見せた。

 

「なんだ、何をするかと思えば結局俺に五枚もドローさせただけじゃねえか! もしかして機嫌でも取ってるつもりかぁ? だが容赦はしねえぞ、ホーリー・ナイト・ドラゴンに加えてレアカード、あと迷惑料二十万だ! 足りねえっていうのならその貧相な身体でも興奮するような変態相手に身体売ってでも稼いでもらうぜ!」

 

 ハッハハハと嘲笑しながら名蜘蛛はターンエンドを宣言。彩葉はどこか見下すような、軽蔑するような視線を彼に向けながらカードをドローする。そしてそれとは別の手札を手に取った。

 

「魔法カード発動[手札抹殺]。お互い手札を全て捨てて、その枚数分だけドローする。私の手札は六枚、これを全て捨てて六枚ドローするね」

 

「ふん、俺の手札は五枚。これを捨てて……!?」

 

 お互いに全ての手札の交換。彩葉が躊躇いなく全ての手札を捨てて新たにその枚数分ドローし、名蜘蛛もそれに合わせようとするものの、そこで気づく。

 今、彼のデッキは残り四枚、そこから五枚のカードを引くことは不可能。

 

「こ、これは……」

 

デッキ切れ(ライブラリーアウト)。デッキからカードをドローできなくなったおにーさんの……負・け♡」

 

 自分が置かれた状況に気づいた名蜘蛛が震え出し、今彼の置かれている状況を彩葉はにやつきながら答える。

 

「っ! そ、そうはいくかぁ! 手札抹殺にチェーンしてホーリーナイツ・アステルの効果発動! 自分フィールドの光属性モンスター一体を生贄に捧げ、手札からドラゴン族・光属性・レベル7モンスター一体を特殊召喚する! 俺はアステル自身を生贄に捧げ、[光の天穿バハルティヤ]を特殊召喚! これで俺の手札は四枚、手札抹殺の効果でこれを全て捨てて四枚ドローだ!」デッキ枚数:4枚→0枚

 光の天穿バハルティヤ 攻撃力:2000

 

 咄嗟の機転で敗北を免れる名蜘蛛。

 

「きゃっは♡ おにーさんってば、往生際が悪ーい♡」

 

 しかしそれはただの一時しのぎに過ぎない。彩葉がケラケラと笑い、ぺろりと舌を出す。

 

「じゃあ、これで本当に終わりだよ? ターンエンド♡」

 

「お、俺の……ターン……」

 

 彩葉のターンエンド宣言が終わり、ターンプレイヤーが名蜘蛛に移り、そのドローフェイズへと遷移。

 しかしそのドローフェイズにドローするカードがない。すなわちデュエルモンスターズのルール上名蜘蛛の敗北が確定。同時、デュエル終了を示すブザーが響き、名蜘蛛はがくりと膝をつき項垂れるのだった。

 

「ば、馬鹿な……あり得ねえ……嘘だ、嘘だぁ……」

 

「じゃ、おにーさんのアンティカードとパズルカード貰ってくねー」

 

 項垂れ、敗北が信じられないとばかりに震えながら呟く名蜘蛛。彩葉がそう言ってアンティであるダイヤモンド・ドラゴンとパズルカードを一枚持っていくのにも全く気づいていない辺り、完全に現実逃避に走っている。

 そして彩葉は、最初彼に絡まれていたデュエリストに向けてひらひらと手を振ると鼻歌を歌いながらその場を去っていく。名蜘蛛に絡まれていたデュエリストは、もはや自分はどうしたらいいのかも分からない様子で名蜘蛛の方を見るしか出来なかった。

 

 

 

 

 

「行くぞ、モクバ」

 

「え、いいの?」

 

 そしてそれを見守っていた海馬は踵を返して歩き出し、モクバが問いかける。

 

「あの程度のデュエリストがグールズの一味とは到底思えん。関わるだけ時間の無駄だ」

 

「うん、分かった!」

 

 海馬はそう言い捨てて歩みを進め、モクバもそれならいいやと頷いて彼の後を追いかけ始めるのだった。




《後書き》
 リアルの方が忙しくてマジで小説を書く余裕が取れず、他の方の作品を読んで感想を送るのがせいぜいな中、やっと一息つけそうになったので活動再開しようかなと思ったものの大分書けてないからまずはリハビリに単品一本上げようかなと考えていた中、なんとなく「相手を翻弄しながらじわじわとデッキ破壊して煽っていくメスガキ」を思いついたので書いてみました。
 ちなみに世界観が無印のバトルシティで相手が名蜘蛛なのはもうマジで単純に「相手及びデュエルに持ち込むシチュエーションが思いつかなかった」からです……GXでジェネックスという方向性も考えはしましたが。やっぱりGX世界でアカデミアに介入させるとサイバー・ダークを使っての自分なりのリスペクトデュエルの求道者ver彩葉ちゃんのイメージが出張ってくるので……。
 なお流れ的には名蜘蛛があのモブデュエリストに勝利してアンティにかこつけてカツアゲ働いてるシーンにモクバより先に彩葉が乱入した。みたいな感じで考えてください。あとゴーストリックはエクシーズも入ってるのは確かですが、今回その手のカードは一切使ってないので勘弁してくださいホント。

そして名蜘蛛のデッキはホーリーナイツにしてみました。はい、ビジュアル的に似合わないとか放っといてください。名蜘蛛の提示してたアンティカードがダイヤモンド・ドラゴンだった。というだけで選びましたから。
そして「これらのカードがあってアンティがダイヤモンド・ドラゴン?」とかのツッコミも受け付けません。あのダイヤモンド・ドラゴンがレア度的にめっちゃ価値があったとかその辺で補完してください。流石にそこまで言われたらキリがありませんマジで。

では今回はこの辺で。ご指摘ご意見ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。


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