面倒くさいので、取り敢えず寝る ~IS編ifストーリー~ 作:とんこつラーメン
クラス対抗戦。別名『ガウルン襲撃イベント』から結構な日数が経過した。
因みに、別名の命名は私。
今は一年一組の朝のホームルームだが、そこに織斑千冬の姿は無い。
教壇に立っている山田先生曰く『織斑先生は短期の出張に行っている』とのこと。
けど、私と友人達だけは知っている。
彼女が今、どこにいるのかを。
若い女教師がたった一人で男達のいる場所へと向かわされる。
これはどう考えてもR-18関連だろう。
それしか考えられない。
性格はともかく、確かに見た目だけは凄いからな。
スタイルもよくて美人。それは認めよう。
けど、それだけだ。本当にそれだけだ。
幾らスタイル抜群の美人でも、中身が脳みそ筋肉のブラコンじゃあ全く意味が無い。
(今頃…油ぎった中年ジジイ共にたっぷりと可愛がられて『女』にされてるだろうな。いや…女じゃなくて『雌豚』って言った方が正しいか)
内容次第じゃ、もう元の姿には戻れないかもしれない。
思う存分に調教されまくって、最悪の場合は妊娠とかしてたりして。
その気になれば、織斑千冬はその無駄に高い身体能力を駆使して普通に撃退できるだろうが、あの女の立場を考えればそれは出来ないだろう。
これはあくまで私の予想だが、織斑千冬はIS委員会に弟である織斑一夏を半ば人質のようにされていると思われる。
完全な人災であるとはいえ、あの男がISを動かしたのは紛れもない事実。
それをやってしまった時点で、あいつの立場は色んな意味で非常に危うい。
治外法権であるIS学園にいてもそれは決して変わらない。
その気になれば、規則の裏を掻い潜る方法なんて星の数ほどあるんだから。
だからこそ、あの女は自らを犠牲にして委員会に弟の身を守って貰っているのだろう。
哀れなもんだ。
普段から病的なまでに『守る。守る』と連呼している当の本人が、常日頃から守られている立場にあるとは。
それを知らない、理解しようとすらしないのが本人だけってのが皮肉が効いてて最高だ。
(…そういや、その織斑一夏も今日は来てないな。腹でも壊したか?)
ま…普通にどーでもいーけど。
「山田先生。織斑君は休みなんですかー?」
おっと。以心伝心か?
誰かが私が心の中で僅かに思った疑問を声に出してくれたぞ。
「はい。そうみたいです。どうやら体調がすぐれないみたいで、今日はお休みするそうです」
ふーん…ってのが素直な感想。
どーせ、女だらけの環境に未だに慣れなくて、朝からムスコが元気爆発しちまって、発情したサルみたいに脳内で大好きなお姉ちゃんを犯しまくる妄想をしながらベッドの上で自己発電でもしてるんだろ。
(そんな事よりも気になるのは……チラ)
チラッと右に視線だけを動かすと、そこには戻ってきた金髪縦ロールが席に座っていた。
前みたいな元気は微塵も感じられず、さっきからずっと俯いている。
因みに、私の席は窓際の一番後ろと言う最高の場所だったりする。
(話によるとガウルンにフルボッコにされたらしいけど…相手が悪すぎたな)
寧ろ、命があるだけ幸運だと思ってた方が良いよ。いやマジで。
でもまぁ…アイツ一人だけなら何の害も無いだろ。
織斑一夏は脳内近親相姦で忙しいし、凰鈴音は事実上の死亡扱い。
篠ノ之箒に至っては未だに牢獄の中ときてる。
知り合い全員がいない状態の今の一組は、アイツにとって孤独以外のなにものでもないだろう。
バカのケツを追い駆けてばかりいたツケが回ってきた感じだな。
(ん…? ポケットのスマホが震えてる…?)
流石に教室の中ではマナーモードにしてある。
ちゃんとそこら辺の常識は弁えてるんだよ、私は。
(軍曹殿。どうやらスコールからのメールのようです)
(スコールさんから? また珍しい…)
脳内会話でアルからメールの相手を知らされる。
ロラン達からならともかく、スコールさんからのメールなんて本当に激レアだ。
よっぽど大事な用があるのか、もしくは…。
(どれどれ…?)
机の下にスマホを潜らせ、教壇からは見えないようにしながらメールを確認。
スコールさんはなんて言ってきてるのかな?
『実は、マドカの事で相談したい事があるの。放課後で構わないから、いつもの皆と一緒に生徒指導室まで来てくれる? お願い』
また放課後かよ…。
今回はこの間の夏姉妹とは違って、普段から世話になってるスコールさんからの頼みだし、マドカの話となれば無視する訳にはいかない。
こりゃ、今日の修理は少ししか出来ないと思っていた方がいいな。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
放課後になり、私達はスコールさんにメールで言われた通り、いつもの皆と一緒に生徒指導室へと向かった。
当然だが、流石に今回は夏姉妹は来ていない。
「しつれーしまーす」
「よく来てくれたわね。取り敢えずは座って頂戴な」
中にはいると、そこにはスコールさんだけじゃなくてオータムさんも一緒にいた。
この時点であんまし良い予感はしない。
「それで? 私に関する話とは一体何なんだ? スコール」
おっと。座って早々にいきなりマドカから話を切り出しましたよ?
中々に鋭い先制攻撃ですこと。
「…そうね。変に回りくどい説明をしても意味無いでしょうし…単刀直入に言いましょうか」
「だな。そっちの方が話が早くていいぜ」
どうやらオータムさんも話の内容を知ってる御様子。
割とマジでどんな話なんだ?
「皆…特にマドカ。心して聞いて頂戴」
「「「「「ゴクリ…」」」」」
そう言われると自然と緊張するじゃんかよ…。
こんなに緊張したのは、バイオ8のDLCをやった時以来だ。
「…実は今日の朝…学園…というか、私に向けてIS委員会イギリス支部から電話が来たのよ」
「どんな内容だったんで?」
「……マドカをイギリスの代表候補生にスカウトしたい…って」
……はい?
誰が…誰を…何にスカウトしたいですと?
「「「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!???」」」
「わ…私を候補生にしたいだとっ!?」
現役候補生三人はめっちゃ驚き、マドカすらも動揺を隠しきれない。
私もポーカーフェイスを装ってはいるけど、実際には皆と同じぐらいに驚きまくってますからね?
「そういえば…今のマドカって、イギリスに雇われているテストパイロットって立場だったっけ…」
「まぁ…一応はな…」
そうなのだ。
原作とは違い、この世界線のマドカはサイレント・ゼフィルスを強奪などしておらず、イギリスから正式にテストパイロットとして任命されている。
実際、マドカの操縦者としての能力は非常に高いし、ビット兵器の扱いも素晴らしいの一言に尽きる。
もう既に『
「どうやら、向こうさんはマドカの戦闘データなんかを見て、候補生として欲しいと思ったんだろうな…」
「確かに…マドカの実力ならば欲する気持ちも分からなくはないが…」
「なんか突然ですね…どうして今になってなんだろう…」
「もしや…この間の襲撃事件と何か関係が…?」
お? 流石はヴィシュヌ…鋭いですね。
私も同じことを考えていたんだけど、ここはこの子に説明を任せますか。
「考えても見てください。この間の襲撃事件の際、現イギリス候補生のセシリア・オルコットは無断出撃をした上に碌に抵抗すら出来ずに撃墜されました。しかも、専用機が破損するというおまけ付きで」
「無断出撃の時点で候補生としては相当にマイナスだ。例え、それがどれだけ緊急性があったとしても…だ」
「あたしたちも人の事は言えないけど、あの時は戦闘はしないで救助作業にだけ専念してたし、展開時間だって5分にも満たない。普段は小五月蠅い連中も、流石にこの程度じゃ文句は言わないけど…」
「それが戦闘になったとあれば話は別…か」
正確にはそれだけじゃないんだろうけどね。
「それ以外にも、彼女は候補生としてやってはいけない事をしています。明らかな男女差別発言だけに留まらず、IS発祥の地である日本を貶めるような真似までする始末。そして、偉そうな事を言ったくせに完全素人の男子にあと一歩の所まで追い詰められる。更には、彼女は自分の発言に関して全く謝罪をしていない。下手をすれば国家間の争いに発展する可能性もあったにも拘らず…です。トドメに、それからの彼女は色恋ばかりに目が行き、自己研鑽を完全に怠ってしまった。これらから考えられることは……」
もう一つしかないよねぇ……。
『現役の候補生であるセシリア・オルコットを切り捨て、彼女の完全上位互換とも言えるマドカを候補生にする…ですね』
わぉ…まさかのアルが締めやがったよ。
これはちょっと予想外。
なら、私も少し話に入ろうか。
「心技体。全てにおいてマドカはセシリア・オルコットよりも上だ。しかも、入学以来マドカは一度も問題なんて起こしてないし、成績も優秀だ。操縦技術だって非常に高いし、ビットを操る能力もピカイチだ。もうぶっちゃけた話さ…どれだけ貴重なビット適正者と言えど、イギリスが問題児であるセシリア・オルコットを切り捨てない理由が無いんだよ。だって、アイツよりも遥かに優秀な人材が見つかってるんだから」
それでも今までずっとセシリア・オルコットがクビにならなかった理由。
それは単純に『ビット兵器を操れる人間自体が貴重だったから』にすぎない。
けど、そのアドバンテージすらも意味を成さなくなる程にセシリア・オルコットはやり過ぎてしまった。
その結果、マドカに候補生としての話が来た…ってところか。
「か…加奈…」
「ん? どったの?」
「あ…あんまり褒めないでくれ…かなり恥ずかしい…」
顔を真っ赤にしながら目をウルウルさせつつ、私の制服の袖を握るマドカ。
なんだこりゃ可愛過ぎかコノヤロー。
これはあれですか?
もっと褒めて褒めて褒めまくって『マドカちゃん可愛いー!』って褒め殺さなくちゃいけないパティーンか?
「けど、確かマドカは日本国籍じゃなかったかな?」
「そうよ。だから、候補生になる事を決めてくれたら、マドカに『自由国籍』を取得させて国籍をイギリスに変えて貰うつもりみたいよ?」
自由国籍…あの生徒会長がやってるアレか。
余り良い印象は無いが…。
「しかし…話が急すぎる…いきなり言われても私も困るぞ…」
「向こうもそう言っていたわ。だから、急いで返事をする必要は無いと仰られていたの。ゆっくりと考えて、その末に断ったとしても、それはそれで構わないって。これまで通り、テストパイロットをしてくれさえすれば」
「時間はあるのだな…そうか…」
けど、これはマドカにとっていい機会かもしれない。
まだ高校生とはいえ、自分の将来について真剣に考えることは決して悪いことじゃないからな。
「だが、代表候補生とはそう簡単になれたりするものなのか? そこの所はどうなんだ? そこの現役候補生の三人」
「私達に尋ねるのか…そうだな…」
そういや、地味に忘れがちだったけど、ロランと乱ちゃんとヴィシュヌって代表候補生だった。
いつも一緒にいると、どうもその事を頭の中から忘れてしまう。
「基本的に候補生になるには、筆記試験や実技試験を経た後に専門の施設に入り、そこで訓練生として特訓を重ねて行き、その中の一握りだけが候補生へとなれる…と言った感じか…」
「オランダはそうなんだー…。アタシの場合は、マドカみたいにスカウトされましたけど。ISの適性値が高かったからーって理由で」
「そういうパターンもあるようですね。実際、タイでもテストパイロットから候補生になった人物もいましたし…」
成る程ね…一言に候補生と言っても、そこに至るまでには色んなパターンがあるんだな。
絶対に役には立たないけど、勉強にはなるなー。
「私の場合は、まさにヴィシュヌが言ったようなパターンか。テストパイロットから候補生に…か」
別に候補生になること自体は決して悪いことじゃない。
大事なのは、なってからどうするか…なんだから。
ワンサマーの取り巻き共は、どいつもこいつもがなってからが最悪だったけど。
感情に身を任せ、気に食わない事があればすぐにISを展開してからの暴力。
精神的にあまりにも未成熟過ぎるゴミどもによくもまぁ候補生なんて地位と専用機を与えたもんだと感心するよ。
冗談抜きで頭の中に蛆でも湧いてるんじゃない?
もしくは、国ぐるみでアホの集団だったとか。
「けどまぁ…今回の事はイギリス的には賢明な判断だったかもな」
「どれだけ問題児だったとしても、候補生自体が貴重であること自体は変わりがない。インドや中国みたいに国民が沢山いる国は例外だけど」
だからこそ凰鈴音は簡単に捨てられたんだけどね。
「その候補生を切り捨ててでもマドカを欲したと言うことは、割と本気でイギリスも焦っているのかもしれないわ。セシリア・オルコットの言動によって相当に追い詰められていると見るべきでしょうね…」
スコールさんの考察は概ね正しいと思う。
確かにイギリスには『ビット兵器を生み出した』というアドバンテージがあるが、それの使用にはまた別の適性が必須となってくる。
逆を言うと、イギリスはビット兵器があるからこそ他国と対等に渡り合っている訳であって、それが無くなれば途端に立場が弱くなる。
そんな危ない橋を渡っている最中に、よりにもよって自国の候補生がとんでもない問題発言&問題行動をすれば、そりゃあ怒り心頭にもなるだろう。
切り捨てられても文句は言えない。
(そういや…今朝のセシリア・オルコットのあの顔…まさか、あいつも自分が崖っぷちに立たされたって事を知っているのか…?)
有り得るかもしれないな…。
だとしたら、次に起こるであろう出来事は…。