面倒くさいので、取り敢えず寝る ~IS編ifストーリー~   作:とんこつラーメン

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まだまだ序盤だけど、早くも超強敵が出現です。

元となった作品でも猛威を振るった『アイツ』です。

スパロボでもよく苦労させられたなぁ~。







面倒くさいので、取り敢えず乱入する

 それは、突如として『空』からやって来た。

 

 学年別トーナメント第一回戦。

 一組代表『織斑一夏』と、二組代表『凰鈴音』との試合。

 最初こそは中国代表候補生である鈴の優勢であったが、徐々に一夏に押されていく。

 その様子を、アリーナの片隅で三人の少女達が静かに眺めていた。

 

「あれは、この間の『イギリス代表候補生』の時と同じパターンですね」

「口では威勢のいい事を言っていても、心の中じゃ『所詮は素人』と思って油断をしていたって事だよね」

「と言っても、私達からすればどちらも『どんぐりの背比べ』だがな」

 

 タイの代表候補生『ヴィシュヌ・イサ・ギャラクシー』。

 台湾の代表候補生『凰乱音』

 そして、とある事情からテストパイロットを務めている『高田マドカ』。

 彼女達もまた、ロランと同じように加奈にとって掛け替えのない友人達であり、頼りになる仲間達でもある。

 

「明らかに動きのキレが悪いよね。途中から完全に攻撃が衝撃砲中心になってるし」

「本来、衝撃砲のような武装は、奇襲や強襲の時にこそ最大の力を発揮します。それなのに、あんな風に乱発なんてしたら…」

「ヴィシュヌの言う通りだ。幾ら、消費SEが少ないとはいえ、すぐに枯渇してしまう。『塵も積もれば山となる』…だな」

 

 三人の冷静な分析を余所に、ステージにいる二人の試合は佳境に入ろうとしていた。

 仮にも従姉妹である鈴の試合を、乱は冷めた目で見つめ続ける。

 IS学園に来た事で恋に盲目的になり過ぎた結果、変わり果ててしまった鈴に完全に愛想を尽かしたのだ。

 

「そもそも、まだISに乗り始めて一ヶ月も経ってないような素人に追い詰められるって…どうなの?」

「織斑一夏は間違いなく弱い部類に入ります。しかも武装が剣一本しかないとはいえ、その攻撃力は一撃必殺な上、あの機体は機動力や運動性がかなり高い」

「それを上手く活用すれば、剣だけでも十分に戦える。それは決してアイツの経験が足りないとか、そんな次元の話じゃない。猪突猛進な性格のせいで、白式の機動力が逆に仇となってしまっているんだ」

 

 何事もにも真っ直ぐ過ぎる性格は、その戦い方にも顕著に表れている。

 背後から攻めようとせずに、どこまでも真っ向から突撃していくスタイル。

 これでは『どうぞ避けてください』と言っているようなものだった。

 

「ルールさえ破らなきゃ、ISの試合に『卑怯』なんて言葉は無いのに。勝手に自分ルールを設けて縛りプレイをするとか、普通に馬鹿なんじゃないの?」

「馬鹿なんですよ。そうでなければ、今のような事にはなっていません」

「同感だ。セシリア・オルコットと同様に、凰鈴音の命運が尽きる日も近いやもしれんな……なんだ?」

 

 不意にマドカがアリーナの上空を見つめる。

 本来ならば、そこは高出力のシールドエネルギーに覆われ、余程のことでもない限りは破壊される事は無い代物。

 

 だが、今まさに『余程の事』が目の前で起きようとしていた。

 

「何かが…落ちてくる…!? 乱! ヴィシュヌ!」

「えぇ。なにやら、よからぬ気配が上空からやって来るのを感じます」

「なんだろう…すっごい嫌な予感がするんだけど…!」

 

 マドカが警戒を促してから5秒も経たないうちに、真っ黒な『ナニか』がアリーナの天井とも言うべきシールドエネルギーをぶち抜いて落下してきた。

 そう…『落下』だ。

 決して『降下』してきたのではない。

 単純な重量だけでシールドエネルギーを破壊したと言う事になる。

 

 試合をしていた二人は勿論、会場全体が騒然となる。

 つい先程まで歓声で五月蠅い程に賑わっていた会場は、一瞬にしてシーンという擬音が聞こえてきそうな程の静寂に包まれた。

 

「あれは……残骸…か?」

 

 頭部の装甲だけ展開し、ハイパーセンサーを用いてステージに落ちてきた物を凝視するマドカ。

 よく見ないと分からないが、元は人型であることが辛うじて分かる。

 全身の至る所が見るも無残に破壊され、そこから色んな色のコードがはみ出て、オイルがまるで出血しているように零れ続ける。

 もう完全に稼働していないのか、ピクリとも動く気配が無い。

 

「なんで、あんなのが…?」

「何者かによって破壊された…? だが、一体誰に…」

「はっ!? マドカさん! 乱さん! 上です!!」

「「えっ!?」」

 

 焦った様子でヴィシュヌが上空を指差すと、残骸が落下してきた時に出来たバリアーの穴から何かがゆっくりと降りてきた。

 

「全身が白銀の装甲に覆われた…IS…?」

「あの頭頂部から生えているのは…まさか放熱索…?」

「加奈さんの機体以外に全身装甲のISがあっただなんて…」

 

 三人は得体の知れない存在を前に、冷や汗を掻きながらじっとそれを見つめていた。

 

「…どうしますか?」

「恐らく、あの黒い残骸は奴の仕業だろう。その時点で碌な奴じゃない事は確実だ。ここからでも分かる…あいつは恐ろしいまでの実力者だ。もし仮に私達三人で掛かっても、勝つことは難しいだろうな…」

「ってことは……」

 

 乱の声に、マドカが苦虫を噛んだような顔をしながら頷く。

 

「悔しいが…加奈を呼ぶしかあるまい。学園内で奴に勝てる可能性がある存在は加奈ぐらいしかいないと思う」

「普段は只管に実力を隠してはいますが、その真の実力は凄まじいですからね」

「ぶっちゃけ、学園最強は間違いなく加奈さんだよね」

 

 下手にプライベートチャンネルを使えば、却って『銀色のIS』に感づかれる可能性がある。

 なので、ここは敢えてメールを使って加奈を呼び出すことにしたマドカだった。

 

(さっきから嫌な予感がずっと拭いきれない…。頼む加奈…気付いてくれ…!)

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 

 ステージに降りてきた銀色のISは、その金色の放熱索を振り回しながら、静かに周囲を見つめていた。

 

「……………」

「な…なによコイツ…!」

「IS…なんだよな……?」

 

 突然の乱入者に、一夏も鈴も攻撃の手を止めて銀色のISを注視する。

 全身が装甲で覆われているせいで、相手の表情や体格は全く分からないが、こんな事をしている時点で普通じゃない事は確かだった。

 

「ど…どうする…?」

「こっちに聞かれても分からないわよ…。けど、少なくとも試合は中止でしょうね…」

「だよな…」

 

 混乱しているのは何も一夏達だけではない。

 アリーナに観客として集まっている生徒達や教師たちも、余りにも突然すぎる出来事に体が固まっている。

 

 そして、その機体から聞こえてきた声に、全員が大きく目を見開いて驚愕した。

 

「これがIS学園かよ…。こんな馬鹿でかいアリーナを6つも建ててやがってるとは…一体どこにそんな金があるのやら」

 

 聞こえてきたのは男の声。

 しかも、明らかに成人男性のそれだった。

 

「お…男ッ!? 一夏以外の男のIS操縦者っ!?」

「俺だけじゃ…無かった…!?」

 

 最も近くで声を聴いた二人は勿論、他の生徒達もまさかの事に口をパクパクとさせる。

 

「今のって…男の人の声…だよね…?」

「う…うん…」

「え…? 織斑君だけじゃなかったってこと…?」

 

 二人目の男のIS操縦者。

 一夏からしたら、同じ境遇の相手がいる事で安堵しても不思議ではないのだが、声がしたISから発せられている気配がその気を削がせている。

 

「ったく…この『ガラクタ』も期待外れだったしな。あの『兎女』手製の機体だっていうから、ちっとは楽しめると思ってたんだがなぁ…」

 

 残念そうにしながら、銀色のISは足元に転がっている黒い残骸を軽く蹴飛ばして更に破壊する。

 

「聞いた話じゃ、ここに『アイツ』がいるんだよなぁ…。あぁぁ…早く会いたいぜ……ん?」

 

 一人で勝手に興奮し始める男に誰も何も言えない中、彼が目の前にいる一夏と鈴の存在に気が付いた。

 本当ならばすぐに分かりそうだが、それだけ興奮していたという事なのだろう。

 

「あの顔……そうか。あのガキがそうなのか…」

 

 鈴の方には全く目もくれず、男は一夏のことだけをじっと見つめる。

 敵としてではなく、興味の対象として。

 

「俺の事を見てる…?」

 

 あんな奴なんて知り合いにはいない。

 そもそも、こんな風に見つめられる覚えすらない。

 

 謎のISから放たれる威圧感に誰も何も言えなくなっている中、たった一人だけ発言が出来る者がいた。

 

『…そこの銀色のIS。貴様は何者だ。何の目的でこんな事をした! 答えろ!』

「ん~? なんだぁ?」

 

 織斑千冬。

 一夏の実姉であり、一年一組の担任。

 そして、嘗てはISの日本代表として活躍し、モンドグロッソと呼ばれる世界大会の第一回にして世界の頂点に君臨した事のある女。

 それ以外にも、彼女には重要な秘密が『二つ』隠されているが、それを知る者は殆どいない。

 

「俺が何をしに来たか…ねぇ~…。何が目的だと思う?」

『なんだと?』

「IS学園を滅茶苦茶にしに来た。目の前にあるISを奪いに来た。ここにいる人間を根こそぎぶち殺しに来た。どう答えればお前は満足するんだ? えぇ? ブリュンヒルデさんよぉ?」

『貴様…私の事を…! ふざけているのかっ!?』

「ふざけてなんかねぇよ。俺はいつだって真面目で本気だぜ」

 

 肩をすくませるような動きをし、やれやれと言った感じで首を振る。

 やろうと思えば、すぐに教師部隊を突入させて数で圧倒する事も出来るし、試合に出ていない他のクラスや学年の専用機持ち達を出す事も可能だ。

 相手もそれを分かっていないとは思えない。

 全てを承知した上で、千冬を挑発するような発言をしているのだ。

 画面越しにしか見ていない千冬ではあるが、それでも分かる。

 こいつは、そこらの有象無象では掠り傷一つすら与えられないだろうと。

 

「つっても、このまま何もせずにじっと待つだけってのは性に合わねぇしな。見た限りじゃ、『アイツ』はここにはいねぇみたいだし…。となりゃあ…やっぱ、ド派手なパフォーマンスでもして誘き出すしかねぇよなぁっ! 天岩戸の話みたいによぉっ!!」

 

 ここで初めて、白銀のISから明確な闘気が溢れ出た。

 学生同士の試合では決して見る事が出来ない、正真正銘の『戦士』の放つ気。

 それに呼応するかのように、頭頂部の放熱索も激しく逆立つ。 

 

「そんじゃあ…やるか」

 

 一歩。

 たった一歩足を踏み出しただけで、ほんの1メートル近づいただけで、その威圧感が爆発的に増した。

 それを明確に感じた鈴と一夏は、思わず空中にいたにも拘らず後ずさりをする。

 

「来な」

「「え?」」

「謎のお兄さんと将来有望な学生二人で行う、楽しい楽しい……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エキシビションマッチの始まりだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、フルボッコ&加奈参上。
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