面倒くさいので、取り敢えず寝る ~IS編ifストーリー~ 作:とんこつラーメン
食堂にてセシリア・オルコットとサラ・ウェルキンの二人と話した後、私達は最近の日課でもある格納庫でのアーバレストの修復作業をする為に移動を開始する。
「なんつーか…凄く面倒なことになってきたなぁ…」
「私が候補生になる云々の話が出てから、どうも事態がおかしな方向へと向かっているような気がする…」
その言葉は間違っていない。
ま、より正確に言えば『イギリスがセシリア・オルコットを合法的に社会的抹殺を行う為にマドカを利用し始めてから』と表現するべきだろう。
「はぁ…候補生になるというのは、こんなにも面倒なことなのか…?」
「それは国にもよると思うけどね…」
ロランの言う通りかもなー。
それでも、国の中枢が腐っているというのは、どこも共通しているとは思うけど。
腐っていなきゃ、こんな世界になんてなってない。
「ところで加奈…」
「どした? 玉芳」
「
「あぁ…」
視線だけを後方に向けると、そこにはまぁなんとも気配だだ漏れな状態でこっちをストーキングしているイギリス女がいた。
まさかとは思うけど…あれで本気で尾行をしているつもり? 冗談でしょ?
「さっきの今でもう、こんな事をし始めるとは…よっぽど追い詰められているんでしょうね。どうでもいいことですけど」
「なんか最近…ヴィシュヌの性格が加奈さんに似てきているような気がする…」
「そうですか?」
え? まさかヴィシュヌが私に感化され始めてる?
それは…喜んでいいのか、悲しんでいいのか…どっち?
『軍曹殿の近くにいたせいで、性格が若干ながらうつったのかもしれませんね』
「私は病原菌か何かか?」
失敬な事を言うAIですこと。
こんな子に育てた覚えはないわよ!
はい。育てられたのは私ですね。知ってます。
「取り敢えず、今はまだ放置って事で。でも、念の為に油断しないように。何があってもすぐに対処できるように構えていよう」
「「「「「「了解」」」」」」
ん。いい返事。
なんか、いつの間にかチームとして纏まりが生まれつつある感じ?
そこに玉芳と玉蘭が加わっているのが不思議だ。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
今日もやって来ました格納庫。
段々と人気が無くなり、もうここにいるのは私達を除けば、アホ丸出し状態でお粗末な尾行をし続けているイギリス女だけ。
後は、こっちと同じように格納庫に簪と本音ちゃんがいると思われる。
…彼女達を巻き込むような真似だけはしたくはないかな。
今回の事とは完全に無関係なんだし。
「心なしか、人気が無くなるにつれて尾行の仕方が段々と雑になって来ているような気がするんだけど」
「奇遇だね玉蘭。私も全く同じことを考えてた」
「いや…それは、ここにいる皆が二人と同じことを考えてたでしょ…」
あらら。
玉蘭と少しだけ仲良くなれたと思ったら、乱ちゃんによって見事にツッコまれてしまった。
うーん…出来る。
「ここで問題です。あの女がこれからするであろう行動はなんだと思いますか?」
「さっきと同じように、またマドカに試合をするように言ってくる?」
「一番妥当な線だけど…どうだろうな…」
ロランらしい意見が出たけど、あの女が一度失敗した方法をもう一回するとは思えない。
奴はもう、かなりの崖っぷちに立っている状態だ。
しかも、さっきの会話でマドカに自分の言葉は『暖簾に腕押し』だってことは身を持って理解している筈。
失敗すると分かっていながらも、もう一回同じ事はしないだろう…普通は。
あの女が、そんな事すら分からない程に精神的に追い詰められていれば話は変わってくるけど。
「じゃあ、暴力に訴えて試合をするよう脅迫する…とか?」
「それが現状、最も考えられるパターンだろうね」
なんせ、アイツを筆頭に原作ヒロインは全員が例外なく癇癪と暴力がセットになっているような連中だ。
常識的に考えても絶対におかしい。
明らかに精神異常を抱えているとしか思えない。
「けど…パッと見で銃とかナイフとか携帯しているようには見えないけど…」
「忘れたんですか乱さん」
「あいつはもう既に、銃やナイフなどよりも遥かに危険な『武器』を所持しているじゃあないか」
「あぁ~…そうだったわ。ヴィシュヌとマドカの言う通りだった」
そう。それこそが最も有り得る可能性であり、最もやってはいけない事。
もし、それを本当に実行してしまったが最後、試合の結果云々に関係なく、あの女の破滅は完全に決定してしまう。
どうして、その事が理解出来ていない?
試合にさえ勝てば、それで全てが丸く収まると本気で信じているのか?
幾らなんでも、世の中を舐め過ぎでは?
織斑一夏も相当に頭の中がお花畑だったけど、それと同じぐらい…いや、それ以上に頭の中がパッパラパーだな。
「…いざって時は、私と玉芳と玉蘭の三人で制圧する。出来るでしょ?」
「楽勝。任せておいて」
「先生から、生身でのISの制圧の仕方も教えて貰ってるから」
「フッ…上等」
流石はガウルンと言うべきか。
悔しいが、アイツはそういう所だけはマジで抜け目がないからな。
その抜け目のなさに、一体どれだけの奴等が殺されてきた事か。
「んじゃ…格納庫に入るよ」
因みに、今までの会話はずっと格納庫前の扉の前で色々と弄っている振りをしながらしていた事だったりする。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「おじゃま~」
「「あっ…」」
いつもと同じ感じで格納庫へと入ると、案の定って感じで簪&本音の主従コンビが作業を行っていた。
ここまではいい…ここまでは。
「さーて…っと。今日はどの辺をしましょうかねー」
『本日は、胸部辺りをするのが宜しいかと』
「アルがそう言うなら、そうしますか」
「無論、我々も手伝うよ加奈」
「ん…あんがと」
敢えて、イギリス女の存在に気が付いてない振りをしながらハンガーへと近づいていく。
それに伴い、あいつも格納庫入り口付近へと移動した。
「あ…あれって…」
む…流石は暗部。
普通にアレの存在に気が付いたか。
「ちょっといい?」
「「え?」」
小さく二人を手招きしてから、小声で彼女達に手短に事情を説明する。
すると、彼女達は頷きながらすぐに納得してくれた。
「食堂でそんなことが…」
「そ。でも大丈夫。二人は無関係なんだし、何があっても私達が守るよ。ね?」
「えぇ。無関係の人間を巻き込むほど、私達は馬鹿じゃあない」
「あんな女ぐらい楽勝。だから、安心してていいわ」
「う…うん…ありがとう…」
これでよし…っと。
後は、あのバカがどのタイミングで仕掛けてくるか…だけど。
『軍曹殿! 反応が!』
「え? マジ?」
まさか…いきなり!?
幾らなんでも猪突猛進過ぎるだろ!?
猪でも、もうちょっと色々と考えるわ!
「高田マドカァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」
マドカの名を叫びつつ、イギリス女がブルー・ティアーズを展開しながら突っ込んでくる!
その手には思い切りライフルが握られていて、しかもトリガーに指を添えている!
めっちゃ撃つ気満々やん! 本気の本気で真正の大馬鹿野郎だ!!
「「「甘い!!!」」」
「なっ!?」
打ち合わせ通り、私と夏姉妹で馬鹿の制圧をする事に。
まず、玉蘭がティアーズのライフルを蹴り上げて射線を逸らす。
「し…しまっ…!」
「余所見してる場合?」
次に、玉芳が突っ込んでくる勢いを利用し、合気道の要領で投げ飛ばす!
普通なら、それだけでも相当に肉体に負荷が掛かる筈だけど、この姉妹は明らかに『普通』じゃないので大丈夫だろう。
「こ~んにちはぁ~…そして」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「さような…ら!!」
飛んできたイギリス女の顔面に添えるように手を当てて、そのまま鉄の床に叩き付ける!!
「がはぁっ…!?」
はい。制圧完了。
直に動きを見て分かったけど…こいつ想像以上の糞雑魚ブロッコリーじゃん。
「「「「「「おぉ~…」」」」」」
「即席の連携の割には、中々に良い感じジャン?」
「やっぱり…加奈は化け物級ね」
「まだまだ遠いな…」
それほどでも…あるかな。
因みに、床に叩き付けられたセシリア・オルコットは背中を強打したのか痛そうに蠢いていた。
「予想はしていたが…まさか本当に強硬手段に訴えてくるとはな。別の意味で恐れ入ったぞ。セシリア・オルコット」
「う…っくっ…!」
もう安全だと判断したのか、マドカが倒れているセシリア・オルコットを見下ろしながら睨み付ける。
念の為に、私の『全力』で踏みつけながら動きを封じている。
まだISは展開状態になっているから。
「私と…勝負をしなさい…! アナタに勝たなければ…勝たなければ…!」
「勝たなければ…なんだ? 言ってみろ。聞いてやる」
「勝たなければ…私は…私は…!」
なんとなーく…この先の言葉は分かるけど、敢えて何も言わないでおこう。
何故って? その方が面白そうだから。
「一夏さんと…一緒にいられなくなって…!」
「ククク……ハハハ…!」
「な…何がおかしいんですの!!」
「いや…おかしいに決まってるだろ。遂にお前の『本音』が聞こえたんだからな」
全く…ここまで愚かだとは…本気の本気で呆れて何も言えない。
こいつ、自分が何を言ったのか本気で理解してる?
「呼んだー?」
「「「「「「「呼んでないよ」」」」」」」
そうだった…ここには『本音ちゃん』がいるんだった。
そりゃ反応するわな。普通に反省。
「国の為だの、家の為だの、候補生でいる為だのと言いつつも、結局はそれがお前の本心なんだよ」
「え…? え…」
「まだ分からないのか? お前は国や家よりも、好いている男と一緒にいる事を選んだんだよ。候補生という地位さえも、その為の口実として使おうとしている。フン…その様でよくもまぁ日本人の事を『極東の猿』と言えたもんだな。お前の方がよっぽど猿じゃあないか。馬鹿な雄に欲情した愚かな白猿。いや…白豚か? どっちでもいいか。大差はない」
あーあ…言っちゃった。とうとう言っちゃった。
マドカから自分の言動について指摘され、思わず顔面蒼白となった。
だが、もう遅い。一度でも言った言葉は二度と消せない。
ついでに言うと、さっきの言葉はちゃんと私のスマホの機能で録音済みだ。
「ち…ちが…私…は…!」
「男の尻を追い駆ける為なら、国も家もどうでもいいってか? 最高だな。感動的ですらある。まるでメロドラマみたいじゃあないか。お前の家に仕えているメイドたちが聞いたら、なんて反応をするかな」
「あ…ああぁ…!」
もしもこれが恋愛小説や恋愛ドラマ、恋愛漫画とかなら素晴らしい言葉かもしれないが、残念ながらこれは現実で、しかもこの女は代表候補生…国に仕えている人間だ。
何があっても常に国を最優先に考えなくてはいけない立場なのに、あろうことか国よりも男の方を取ってしまった。
どう考えても、これは明確な裏切り行為だ。
「…お前を見ていたら気が変わった」
「え?」
「試合をしてやると言っているんだ。泣いて喜べ」
あらまぁ。
これはまたなんという…。
「あんな男に現を抜かして堕落した愚か者に、この私が特別に『現実』を教えてやろう。どう足掻いても絶対に覆せない『絶望』という名の現実をな。そして、思い知らせてやる。お前と私との間にある決定的な実力差を」
あーらら…私はもうしーらね。
この女…マドカを本気で怒らせちったわ。
こりゃ…あれですな。
普通に負けるだけじゃ済まされないな。
マジで徹底的に完膚なきまでにボッコボコにされる未来しか見えねぇわ。
ま…精々、無駄に足掻きな。
これが本当の『絶望までのカウントダウン』ってか?
次回、悲しい現実と言う名の実力差。