面倒くさいので、取り敢えず寝る ~IS編ifストーリー~   作:とんこつラーメン

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面倒くさいので、少しだけ幕間に入る

 セシリアが破滅し、同時に一夏の性癖が大勢の生徒達に暴露された日の夜。

 夏姉妹は完全防音処理がされた自分達の部屋にて、ガウルンと密かに通信をしていた。

 

「お久し振りです。先生」

『おう。どうやら元気にやってるみたいで安心したぜ』

「「ありがとうございます」」

 

 彼女達にとって、ガウルンの言葉は絶対であり、彼の存在こそが自分達にとっての全てであった。

 故に、こうして安心させられただけでも姉妹にとっては非常に嬉しいことなのだ。

 

『カシムとはどんな感じだ? ちゃんと仲良くやってるか?』

「はい。加奈は我々の思惑を全て理解した上で私達の事を受け入れてくれました」

『はっはっはっ! そうかそうか! そうこなくっちゃな!』

 

 画面の向こうで膝を叩きながら爆笑するガウルン。

 最初から加奈が姉妹の事を無下にはしないと思ってはいたが、まさか本当に友人として接しているとは思わなかった。

 

『…ま、アイツの事だ。いざって時はちゃんと動けるように、自分の心にある程度の『余裕』は持たせているだろうよ』

「かも知れません。ですが…」

『あぁ。余程の事がねぇ限りは、そんな事態にはならねぇだろうよ。アイツの最も恐ろしい所は、お人好しの癖に絶対に油断をしないことだ。心の切り替え方はある意味じゃプロの傭兵すらも凌駕してやがるからな』

 

 そここそがガウルンが加奈を最も評価している部分だった。

 普段は歳相応の少女のように笑顔を見せるのに、いざという時には冷酷非情な戦闘兵器へと姿を変える。

 だからこそ面白い。

 だからこそ殺し甲斐がある。

 

『そういや、例のイギリスの候補生の雑魚。遂に破滅したらしいな』

「はい。マドカによって完膚なきまでに叩きのめされた挙句、女王の逆鱗に触れた事で全てを失ったようです」

『マドカ…あぁ、カシムのダチ公の一人か。はは…! 俺に瞬殺された雑魚がカシムの友人に勝てる道理はねぇわな』

「全くです」

「その直前に生身でいた私達にISを使った強襲を仕掛けてきたんですけど、それも私とお姉ちゃんと加奈の三人で易々と制圧できましたし」

『おーおー。馬鹿な事をしたもんだ。んなことをすりゃ不利になるのは自分だろうによ。しかも、カシム相手に生身なら勝てると思い込むって時点でゴミクソ以下って証明してるようなもんだ』

 

 傭兵時代、加奈は生身の状態でISを纏った権利団体の連中を何人も制圧した事がある。

 それは彼女が実の両親によって『強化』された恩恵もあるが、それとは別にそんな芸当が出来る実力と技術を学習し、それを迷う事無く実行できる精神力が非常に大きい。

 

『今頃は、どこぞのクソ野郎の所でたっぷりと可愛がられているだろうぜ』

 

 別にセシリアがどうなろうとガウルンにはどうでもいいことだが、その行く末は長年の経験から容易に想像が出来る。

 自分の感情を優先して好き勝手動く愚か者は碌な目に遭わないと相場が決まっている。

 それが国に所属しているような立場なら尚更だ。

 

『さて…と。世間話はここらで終わりにして、ここからは仕事の話だ』

「「はい」」

 

 ガウルンの表情が変わり、姉妹もまた背筋を伸ばす。

 

『俺が介入した一件で謹慎処分という名の拘束状態にある天災の妹を発見、拘束の後に拉致しろ』

「天災の妹…というと、加奈から聞いた篠ノ之箒のこと…ですか?」

『あー…そんな名前だったか? 弱い奴の名前は覚える価値すらねぇからな。ま、とにかくソイツだ』

「…どうして拉致するのか聞いても?」

『こいつはあの『相良博士』達からの依頼でな。俺自身も詳しいことは聞かされてないんだが…なんでも、とある実験に使いたいからってことらしい』

「人体実験?」

『十中八九そうだろうな。どれだけゴミでも、一応はあの天災と同じ血が流れてるしな。それなりの価値があるってことなんじゃねぇか? 知らねぇけどよ』

 

 相良博士たちは自分にとってスポンサーではあるが、だからと言って彼ら自身に興味がある訳ではない。

 それは博士たちも同様で、ガウルンは『加奈と全力で殺し合う』という点で、博士たちは『最強の傭兵と加奈が全力勝負をした時の計測がしたい』という点で利害が一致しているだけだった。

 

『方法自体はお前らに任せるが、それだけで頼むとは流石に言わねェ。今からお前らのスマホに学園内の機密通路が示された地図を転送する。そいつを使え』

 

 そう言われた瞬間、彼女達のスマホに通知のような音が鳴り、確かめてみると本当に地図のような映像が映されていた。

 

『その赤く光っている場所があるだろ? そこが目的地だ』

「中々に奥深い場所にいますね」

『姉の威を借り吠える事しか出来ない雑魚なんぞ存在するだけで邪魔だからな。可能な限り誰の目にも触れない場所に追い遣ったんだろうよ』

「それは良いのですが、一つだけ懸念することが」

『なんだ?』

「姉である篠ノ之束の介入が予想されます」

『それに関しては問題ねぇだろ』

「どうしてですか?」

『考えても見ろ。もし妹を本気で救おうとするなら、幽閉される前に何らかのアクションを起こしている筈だ。だが、実際には…』

「何にも行動をしていない。それどころか、干渉しようとする様子すらない…」

『そういうこった。流石の天災サマも呆れちまったんじゃねぇか? 都合のいい時に自分を利用する事しか考えねぇ馬鹿な妹によ』

 

 渇いた笑いを浮かべながら煙草を咥え火を着ける。

 一瞬だけ画面が煙で白くなるが、すぐにガウルンの姿が現れた。

 

『だから遠慮は無用だ。ついでに、学園の警備系のセキュリティを無効化するプログラムも送っておいた。これで余計な邪魔は入らねぇ筈だ。更識の連中も、お前らに掛かれば雑魚同然だろうしな』

「更識と言えば、現当主の妹と接触しました」

『おぉ! マジか!?』

「はい。加奈とはもう殆ど友人のようになっていて、私達もよく話します」

『ははははは! そいつはまた望外の幸運だな!』

 

 まさか、更識の関係者ともう既に関わりを持っていたとは思っておらず、ガウルンは再びの大爆笑。

 

『いざとなればカシムに手伝いを頼んでも良いかもしれねぇな。アイツの事だ。奴さんの事は道端に落ちてる犬の糞と同価値ぐらいにしか思ってねぇだろうし、それを排除できるんなら嬉々として協力してくれるだろうぜ』

「考えておきます」

『そうしろ。っと…そうだ。最後にこれを教えておくか』

「なんでしょうか?」

『…どうやら、あのガキ…レナードがIS学園に向かっているらしい』

「「……は?」」

 

 一瞬、本気で意味が分からなかった。

 レナードの事は彼女達もよく知ってはいるが、だからこそ分からない。

 どうして彼ほどの男がこんな場所に来ようとしているのかを。

 

「な…なんで…?」

『カシムに一目惚れしたからだと』

「「はぁっ!?」」

 

 もう意味不明。

 加奈が好きになったからIS学園へと入学する?

 何がどうなればそんな結論に至るのか。

 

『もう入学手続きは済ませてあるんだとよ。今は飛行機で日本に向かっている真っ最中だ』

「「はぁ…」」

『まぁ…その…なんだ。これから別の意味で大変になるだろうが…頑張れ。カシムの奴の支えになってやれ。アイツが胃痛で倒れないようにな』

「「分かりました…」」

 

 今回ばかりは本気で加奈に同情した。

 それと同時に、これからは加奈の事を本気で労ってあげようと決意をする姉妹でもあった。

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 一方その頃。

 日本に向かっている某旅客機の機内のファーストクラス。

 その座席の一つにレナードはタブレットを眺めながら優雅に座っていた。

 

「成る程…これが加奈の通っているIS学園か。中々に金を掛けているじゃないか。施設の充実っぷりやデザインなども悪くは無い。問題があるとすれば、それは学園ではなく、学園に属する人間達の方か」

 

 表向きには何も公表などされてはいないが、IS学園は一般的にエリート校という側面が大きい。

 それは実際に通っている生徒達も理解しているようで、他校の生徒達に上から目線でマウントを取っている事も少なくは無い。

 故に、お世辞にもIS学園の生徒の評判は宜しいとは言い難いのだ。

 最終的には、それが卒業生の就職率の低さにも直結しているのだが、そんな事など知らずに『卒業後はIS関連の企業に確実に入れる』と疑っていない大半の一般生徒達は気にも留めていない。

 

「加奈も、その友人達も、ガウルン子飼いの夏姉妹も哀れとしか言いようがないな。仕方がないとはいえ、こんな場所に入れられているとは。せめてもの救いは、加奈の周囲の友人達も彼女と同じ考えである事か」

 

 例え少数派であっても、同じ考えを持つ仲間の存在と言うのはそれだけで精神的な余裕を持たせてくれる。

 それが今の加奈を支えていると言っても過言ではない。

 

「まぁ…学園に関しては一先ずは大丈夫だろう。いざとなればいかようにも出来る。だが……」

 

 タブレットをスライドさせて別の画面を映し出す。

 そこには二つの顔写真と簡単なプロフィールが記載されていた。

 

「フランスとドイツからのいきなりの転入…これはなんだ? どうして、このタイミングで二ヵ国から同時に転入生が来る? しかも、二人ともが代表候補生。更にフランスの方は…」

 

 その写真を指でなぞりながら、レナードは怪訝な顔になる。

 

「性別の項目が男になっている。だが、これはどう見ても女だ。男装をしているにしても下手過ぎる。少し勘のいい素人でも簡単に気が付くレベルだ」

 

 どうして、こんなお粗末な変装をしてまで性別を偽るのか。

 その名前を見た時、レナードはすぐに答えに辿り着く。

 

「シャルル・デュノア…そういうことか」

 

 呆れたように息を吐き、傍に置いてあったアイスコーヒーを飲み干す。

 そこにタイミングよくキャビンアテンダントがやって来た。

 

「お客様。お替りはいかがですか?」

「いただくよ」

「畏まりました」

 

 空になったグラスを渡してから、再びタブレットに視線を落とす。

 

「もう一人はドイツから…軍人か? こいつも中々にワケありのようだな。人工的に生みだされた兵士…か。フン。どこの国も考えている事は同じって事か」

 

 最初こそは視線を動かして眺めていたが、すぐに興味を失い、画像を加奈の学園生活の一幕を写したものへと変える。

 

「矢張り、俺の心を癒してくれるのはこれだけだ。今から君に会えることが楽しみで仕方がないよ…加奈」

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 更にその頃。

 夜になり真っ暗になった学生寮の一室。

 ベットの上でシーツにくるまり丸くなった状態の一夏がブツブツと呟いていた。

 

「なんで…なんでこんな事になるんだよ…。俺は皆を守りたいだけなのに…どうして…」

 

 悔しさを情けなさで涙を流しながら歯を食いしばる。

 自分の友人達が次々と目の前からいなくなっていく。

 鈴。セシリア。箒も未だに戻ってこない。

 元も大事な姉である千冬も返って来る気配が無い。

 

「千冬姉…千冬姉…千冬姉…」

 

 灯りを消している上に夜という時間帯であることが一夏を油断させたのか。

 昼間に使った姉の下着の匂いを嗅ぐように自分の鼻に当て、懲りずに右手を動かして自分を慰め始める。

 

「千冬姉…俺は…俺は……うっ…!」

 

 だが、一夏は知らない。

 彼を見張っている監視カメラの全ては、夜になると暗視モードとなることを。

 暗くなると言うこと自体、何の意味も成さないと言うことを。

 

 こうして今夜もまた、己の痴態を見知らぬ者達に晒してしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 そして…次の日の朝。

 

「ふぅ…ようやく帰ってこられたか。ご主人様たちと一時的とはいえお別れするのは名残惜しいが…仕方あるまい。今暫くの辛抱だ。すぐにまたご主人様たちの元に戻れる。そして、その時はまた…ウフフ…♡」

 

 織斑千冬が帰ってきた。

 今までの事を思い出しながら、恍惚な表情で舌舐めずりをして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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