面倒くさいので、取り敢えず寝る ~IS編ifストーリー~ 作:とんこつラーメン
6月頭の日曜日。
私はいつもの友達連中と一緒に外に遊びに出かけていた。
最近は、その『友達連中』に夏姉妹や簪、本音ちゃんも含まれているので、結果としてかなりの大所帯となっている。
しかも、今回はそれだけに留まらず、意外な人物まで加わっていた。
「いやー…こうして外で買い物をするってのも久し振りだなー」
この間の作戦で一緒に行動した『ダリル・ケイシー』先輩もしれっと加わっていた。
当然のように最初は皆揃って驚いていたけど、事情を説明したら納得してくれた。
というか、皆して聞き分け良すぎ。
(しっかし…私の周りも随分と国際色豊かになってきたもんだわ…)
これはマジで織斑一夏の事は言えなくなってきたかもしれない。
オランダに台湾、タイに中国、トドメはアメリカと来たもんだ。
そういや、二年生にはギリシャの候補生がいるって聞いたことがあるな…。
いや…まさかね…。
「それにしても、いきなり『一緒に買い物にでも行かない?』と誘われた時は驚いたよ。嬉しくはあったが」
「何かあったんですか?」
「ちょっと…ね。『臨時収入』があってさ」
「「「「「「臨時収入?」」」」」」
この『臨時収入』とは、この間ガウルンが言ってた『一本』の事だ。
いやさ…金自体は誰から貰っても不変の価値があるから文句は無いけど…。
「出かける前に説明したでしょ? この双子の仕事を手伝った際に貰った『バイト代』だよ」
「あぁ…アレですね」
「そ。アレ」
うーん…流石はヴィシュヌ。
往来じゃ言葉に出して言えないから、敢えて濁して言ってくれた。
その気遣いに、私の中にいる全私が拍手喝采しているよ。
「一言言ってくれれば、私も一緒に手伝ったのに…」
「あの時はマドカはいなかったし、いきなりの事だったからね~。ま、次のそんな機会が有ったらお願いするよ」
「むぅ…絶対だぞ」
ほっぺを膨らませながら上目遣いをするマドカが可愛過ぎて辛い。
「まさか、虚さんも一枚噛んでるとは思わなかった」
「驚きだよね~」
「虚先輩に関しては、向こうから勝手にやって来たと言いますか…」
「あれにはマジで驚いたよな…」
本当に突然だったからね。
あーゆーのを『昼行燈』って言うのかもしれない。
「そう言えば、加奈って先生に幾ら貰ったの? 口座に振り込んでおくって言ってたけど…」
「あの時は『一本』って言ってたよね。お姉ちゃん」
「そうね。一本と言えば普通は日本円にして約『一千万』ぐらいだけど…」
「「「「「「一千万ッ!?」」」」」」
これは流石に声に出しちゃうか。
けど、本当は違うんだな~…これが。
「残念だけど、一千万じゃないんだよね…」
「そうなの?」
「じゃあ幾ら?」
「教えても良いけど…大声じゃ言い難い。少なくとも『普通』じゃないとだけ」
つーわけで、皆を手招きして道の端っこへと誘導。
そこで小さく話になってからヒソヒソ話。
「…一億」
「え?」
「だから…一億円…振り込まれてた。私の口座に」
「「「「「「「……………」」」」」」」
皆、絶句。
当然の反応ですわな。
「ど…道理で加奈が『今日は全て私の奢り』なんて言い出すわけだ…」
「まさか億だったなんて…」
「これは流石に予想出来ません…」
「一体どこからそんな大金を…なんてツッコんだら負けなんだろうな…」
「かなかな…一夜にして大金持ちだ~…」
大金持ちね~…。
別にそれに関しては今に始まった事じゃないんだけど。
「実を言うと、私は昔から金持ちではあったよ?」
「え? そうなの?」
「うん。ほら、これも前に話したと思うけど、私って糞親のせいで幼少期の殆どを戦場でライフル片手の傭兵生活を送っていたわけで。傭兵同士の情報ネットワークって想像以上に広くて速いのよ。で、そのせいもあって色んな所から依頼なんかがあったりして…」
「その報酬で?」
「そ。最初は『何だこのガキは』的な感じで見下されてて、それにカチンと来た私はその日の内に仕事を終えてやったの。そしたら態度を180度変えて大喜びからの『こんなにも素早く完璧な仕事をしてくれるとは思わなかった。報酬は通常の倍…いや、三倍支払おう!』って言われて。それがまた情報として広まっていった結果…私の預金通帳には小国の国家予算級の個人財産が出来上がっていましたとさ」
「「「「「「「…………」」」」」」」
あ。また皆を沈黙させてしまった。
「具体的な数字はマジで忘れたけど、その気になれば国からISを一括で買えると思う」
「って事は…今回の一億って金も…」
「まぁ…私的には普通に『バイト代』って感じの額。でも、そこまで散財するような性格でもないし。どれだけ儲けても、金って溜まっていく一方なんだよね。だから前に思い切って、匿名希望で色んなボランティア団体に募金と称して大金を送りまくった事がある」
「その人達も滅茶苦茶驚いたでしょうね…」
「実際には見てないけど、そうなんじゃないかな。でも、少しするとまた元の額に戻ってた」
「それは…傭兵の仕事でか?」
「うんにゃ。暇潰しに株やってたら大当たりした」
「株までやってるんですね…」
波乱万丈で最低最悪の過去しかないけど、なんでか金運にだけは恵まれてるんだよな~。
もしかして、私って『黄金律(EX)』だったりする?
「というわけで、お話終了」
「また加奈の凄い部分を垣間見た気がする…」
「大抵の事を聞かされても、もう驚かないとは思ってたけど…」
「まだまだですね…流石は加奈さんです」
「感心すべき事なのかは疑問だがな…」
言わないでマドカ。
それは私自身が一番よく理解してるからさ。
「さーて。今度は何処に行きますかねー。欲しい物が有ったら何でも言ってね。全部お姉さんが奢っちゃる」
「この中で一番年上のオレがそれを言われると複雑だな…」
それこそっか。
なんかゴメンナサイ、ダリルパイセン。
つーわけで行進再開。
そういや、今って何時ごろだっけか?
『もうすぐお昼の12時になろうという所です。軍曹殿』
「またいきなりの介入。さっきまで黙ってたのに」
『お懐かしいお話をしていたので。無粋な真似をするのは野暮かと思いまして』
「そこら辺の人間よりも気遣いが出来てやがるぞ…このAI…」
それには激しく同感ですよパイセン。
アルみたいなAIが増えれば最高なのに。
「でも、もうすぐお昼なのか。どこかで昼食にでもする?」
「それもそうだな。腹が減っては戦は出来ぬとも言うし」
「つーわけでアルさんや。どこかにいいお店はありますかな?」
『私はスマホじゃありませんよ軍曹殿』
「知ってるよ。アルはスマホよりもずっと高性能だもん」
『当然です。仕方がありません…検索を開始します。暫くお待ちください』
「「「「「「「「「「はーい」」」」」」」」」」
してくれるんだ。
やっぱりアルは頼りになりますな。
『…検索完了。ここから12.5mほど直進した場所に昔懐かしの大衆食堂がある模様です』
「店名は?」
『【五反田食堂】です』
げ…マジか。
よく知らずに適当に歩いてたけど…まさかあの店の近くだったとは。
まさかとは思うけど、織斑一夏が遊びに来てないよな?
「…どうする?」
「別にいいんじゃないか? 我々も箸の扱いには慣れてきたし」
「日本の食堂って入った事無いんですよね~。地味に楽しみです」
「どんな料理があるのでしょうか…興味があります」
「オレ的には、腹が膨れれば何でもいいゼ」
「「同じく」」
「右に同じ」
これもう殆ど満場一致じゃん。
反対意見を出したくても出せないやつじゃん。
はぁ…仕方がない。
ここは潔くあの馬鹿男がいないことを祈りますか。
精々、大好きな姉貴と好きなだけ盛っててくれや。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「いらっしゃいませー」
あーあ…遂に入っちゃったよ。
よくは知らなかったけど、意外と中は広いんだな。
こっちはかなりの大人数なんだけど、これなら大丈夫そうだわ。
「えーと…何名かしら? 1…2…3…」
なんか若い女の人が私の人数を数え始めた。
そういや、今って合計で何人いるんだ?
私にロラン、乱ちゃんにヴィシュヌ、マドカに夏姉妹に簪と本音ちゃん。
それからダリル先輩でしょ?
「まぁ…10人もいるのね。流石に一つのテーブルには座りきれないわね…」
「大丈夫ですよ。ちゃんと二つに分かれて座りますから」
「あらそう? ありがとう」
そっか…二桁行ってたんだ…。
道理で道行く人達が私達に注目するはずだわ。
こんな美少女集団が10人で歩いてるんだから。
そりゃ嫌でも目立つわな。
「なにぃ? 10人だぁ? こりゃまた随分な大所帯だな」
「大勢で押しかけちゃってすいませーん」
「なーに、気にすんな。寧ろ、作り甲斐があるってもんよ」
おぅ…厨房にいる、やたらと筋骨隆々なお爺ちゃん…見た目に反していい人だ。
あの腕なら重たい中華鍋とか楽々と振り回せるんだろうなぁ…。
私もやろうと思えば出来るけど、無駄に疲れるから猛烈に中華料理が食べたくなった時以外は絶対にしない。
いやはや…なんか悪い気がするなぁ。
でも、来てしまった以上はもう引き返せない。空気的な意味で。
因みに、班分けはこんな感じ。
一つ目のテーブル:私。ロラン。玉蘭。乱ちゃん。マドカ。
二つ目のテーブル:ダリル先輩。簪。本音ちゃん。玉芳。ヴィシュヌ。
「さーて…何にしようかな~」
流石にメニューは和食中心か。
それでもラーメンやうどん、お蕎麦と言った麺類もある所に好感が持てる。
麺類が好きな人間に悪い奴はいない。世界の法則だ。
「折角の外食だし、どうせなら学食じゃ食べれないメニューとかを注文したいよねぇ」
「確かにそうだね。こうして外出するのも『外出届』を出してからじゃないと不可能だし、この貴重な機会を無駄にはしたくは無いな」
「けど、ここに書いてあるメニューの殆どが、学食には無いような物ばかりよね」
「言われてみれば確かに…」
「学園の食事は、基本的に色んな国の人間が食べることを前提にしているからな」
けど、同じ名前のメニューでも店ごとに味が違うのは当たり前。
何も知らないが故の、ここの選択は重要だ。
勇気を持って未知なるメニューに挑戦するか。
もしくは無難なメニューで安全策を取るか。
「おい蘭! 悪いが接客を頼んでも良いか!?」
「お客さん? はーい!」
なんか、いきなりお爺ちゃんが大声で二階に向かって叫んだし。
蘭って、もしかして…?
「お待たせしましたー。ご注文は決まりましたかー?」
やっぱり…例のIS学園に行きたがってる妹ちゃんだ…。
ここは私達が大人しくしてれば問題は無いか…?
「あ…あのー…いきなりで申し訳ないんですけど…」
「ん? どしたの?」
「もしかして…ですけど…皆さんってIS学園の人…だったりします?」
まさかのそっちから言ってくる!?
お前はニュータイプかっ!?