面倒くさいので、取り敢えず寝る ~IS編ifストーリー~ 作:とんこつラーメン
時間はあっという間に過ぎて放課後。
今日も今日とて、私達は皆で整備室に行きアーバレストの修理に勤しむ事に。
「…で? どーして『オマエ』がいるワケ?」
「フッ…君の行く所にならば、俺はどこにでも行くよ」
「答えになってないし」
なんでかフツーにレナードの奴が私の右隣でスパナを握ってた。
余りにも自然すぎて気が付かなかった…不覚。
「ぐぬぬ…レナード・テスタロッサ…強敵だ…!」
「「「そうなの?」」」
んで、私の左隣ではロランがペンチを握ったまま歯軋りをしていた。
私の目の前で火花を散らすのは止めて欲しいなー。
乱ちゃんとヴィシュヌとマドカは完全に傍観者モードになってるし。
「おぉ~…かなかなが完全に少女漫画のヒロインになってる~」
「本音ちゃんは楽しそうだね…」
もしかしたら、この子こそが真の意味での学園最強かもしれない。
この超合金メンタルの前には私も勝てる自信が無い。
「加奈…大丈夫?」
「なんか顔が青くなってるけど…」
「ん…こーゆー体験は初めてだけど、大丈夫…だと思う。多分」
「「多分なんだ…」」
遂には本気で夏姉妹に心配されてしまった。
今更ながら、ガウルンには勿体無いぐらいに良い子達じゃんか…。
「それにしても…これが君の専用機にして、あの相良博士たちが最初に手掛けたIS『アーバレスト』か…」
「最初は『ガーンズバック』だったけどね」
「それは聞いているよ。ガウルンとの戦いで大きく損傷したと聞いていたが…もう随分と修復はされているようだね」
「やっとここまで来たって感じだよ。最初はマジで酷かった。所々にフレームとかが剥き出し状態だったし」
自分の専用機のあんな状態を見せられたら、そりゃ本気で修理してやるって気にもなりますがな。
だから、今もこうして頑張っている訳でして。
「約八割ぐらい修復は完了した感じじゃないかな? その辺どーよ? アル」
『はい。軍曹殿の御予想通り、現在のアーバレストは全体の約八割程度が修復完了しています。この調子で進めば、今度開催される予定である『学年別トーナメント』にはなんとか間に合うかと』
学年別トーナメント…そんなのもあったっけ…。
色んな頃が立て続けに起きまくってるせいで、普通に頭の中から忘却されてたわ。
「この声…そうか。君が加奈の相棒にして、アーバレスト搭載のAIのアルか」
『はい。レナード・テスタロッサ。これからよろしくお願いします』
「こちらこそ、よろしく頼むよ」
なんだろうか…心なしかアルの口調が明るくなってないか?
もしかして、私を巡ってロランとレナードがバチバチしてるのを楽しんでる?
「もしよかったら、俺もアーバレストの修復を手伝おうか?」
「…マジで?」
「大マジさ。力にはなれると思うよ。一応、俺は自分の専用機をコア以外は全て自分一人で製作しているからね」
「「「えぇっ!?」」」
「なん…だと…!?」
「ほわぁ~…すごいね~」
ある程度の予想はしてたけど…やっぱ持ってたか…専用機。
しかも、全部自分一人で造ったとか…自慢かコノヤロー。
「本当の目的は?」
「少しでも加奈の役に立って好感度を上げたい」
「変に言い訳をされるよりはマシだけど…少しはオブラートに包めバカ」
「気を付けよう。で、手伝わせてくれるかい?」
「まぁ…いいか。少しでも早くアーバレストが直るに越したことはないし。何か変な事をすれば、すぐにアルが教えてくれるだろうしね」
『お任せください。軍曹殿』
「あはは…信用が無いなー。ま、それはこれからじっくりと得ていくさ」
「あっそ」
こうして、アーバレストの修復にレナードも加わることになった。
それに対抗してか、いつも以上にロランが頑張っていたのは内緒。
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これまた時間は過ぎ、今は夕飯の時間。
私達はいつものメンバー(今回は簪も一緒)でご飯を食べていた。
因みに、今日の私の夕食は『マーボーカレー』。
最近出た新メニューで、これがまた妙に美味い。
「あの…相良さん」
「ん~? どったの?」
「そこにいる彼って…昼休みに会った彼…だよね?」
「そ。もう完全に私達と行動を一緒にする気満々みたい。こいつの事は背景の一部と思ってくれてていいよ」
「あはは…辛辣だな~。そんな君もまた魅力的だけどね」
「…ダレカタスケテ」
「相良さんも大変だね…」
はいそこ簪ちゃん。お願いだから引かないで。
君にドン引きされるのは普通にキツい。
「…ところで加奈。実は君にずっと聞きたい事があったんだ」
「ん~? 私に聞きたい事? 体重とスリーサイズと過去のこと以外なら答えられる範囲で教えてあげるよ」
「体重とスリーサイズはもう知っているから問題無いよ」
「うん。いつか必ず殺す」
一体どこ経由で調べたんだよコノヤロー。
乙女の秘密を何だと思ってるんだ。
「君は…いや、君達は…」
そこでレナードがチラっと一瞬だけ余所を向いた。
視線の先には、一人で静かに食事をしているシャルル・デュノアの姿が。
「いつ、シャルル・デュノアの『正体』に気が付いたんだ?」
「ふーん…そーゆー事を言うって事は、お前も『知ってる』と見ていいんだ?」
「まぁね」
成る程…伊達にあのクソオヤジ達に認められてるだけはあるってことか。
因みに、悪と危ないことを話してるけど、今の時間の食堂はかなりの喧騒になっているので、意識して聞き耳を立てない限りは問題は無い。
「最初はアルの情報経由で。実際に本人を見て確信に変わったけど」
本当は原作知識があるから…なんて言えるわけがないから黙っていよう。
「私達もそんな感じだな。加奈やアルから話を聞き、当人をこの目で見た瞬間に『彼』が『彼女』であると分かった」
「そうね。見た目からして怪しさ全開ではあったけど…」
「本当に『モロ』だったからな。隠す気があるのか疑問に感じたほどだ」
わ~お。マドカってば辛辣ぅ~。
私もめっちゃ同意見だけど。
「私の場合も同じですね。仕草の端々に女性らしさが隠し切れていないし、歩き方、手足の癖、声の質、他にも言い出して行けばキリがありませんが、本当に至る所にシャルル・デュノアと言う人物の『正体』を示すヒントが散りばめられていました」
「そうか…ヴィシュヌ…君は代表候補生であると同時にムエタイの心得もあったんだったね。格闘技に精通している人間の目は、どうあっても誤魔化せないか…」
流石はヴィシュヌだね。
こと身体に関する話で、彼女以上に説得力のある言葉は出せない。
「そうね…私もヴィシュヌの意見に同感だわ。私達も遠目に少しだけ目撃したけど…」
「なんて言うのかな…素人感が丸見えなのよね。取り敢えず、胸を隠して男っぽい服装さえしていれば大丈夫…そんな感じがするって言うか」
玉芳と玉蘭が言ってくれた意見には私も同感する。
ほんの少しでも変装の勉強をすれば、絶対にあんなお粗末な事態にはならない筈だ。
「ならば、加奈たちにはもうアイツの目的が分かっているのか?」
「分かってるっていうか…」
『シャルル・デュノアに目的があるとすれば、それはたった一つしかないでしょうね』
おっと。
このままだと、またアルに良い台詞を取られてしまう。
悪いが今回は譲らないぞ?
「男性IS操縦者のデータ…あわよくば専用機も一緒に…って感じ?」
「矢張り、そうか。奴の本来のターゲットは『織斑一夏』だったんだろう。だがしかし…」
「あいつは実姉と一緒に駆け落ちした」
「「「「駆け落ちって…」」」」
え? 何か私、間違った事でも言った?
どう考えても駆け落ちでしょ。
「レナード…もしかしてアイツに?」
「あぁ…休み時間に一度だけ話しかけられた。明らかな愛想笑いを浮かべながら。本来の標的がいなくなったことで、標的を俺に変えたんだろう」
「話しかけられて、そこからどうしたの?」
「適当にあしらった。見るからにガチガチに緊張していたし、あそこまで露骨にされたら同情する気すら起きない」
その光景なら私と本音ちゃんも教室で遠目から見ていた。
第三者目線でも、あの男装野郎は怪しさ全開だった。
「それで良かったと思うよ。変に親切にしたら、確実にそこから付け込んでくると思うから」
あの手の奴は、自分の境遇を話して同情して貰い『悲劇のヒロイン』を演じる事で目的を達成しようと考えるタイプだ。
正直言って『ふざけるな』とか言いようがない。
「加奈たちは、アイツの目的にはもう目星は付けているのかい?」
「まぁ…ね。『デュノア』と堂々と名乗られたら嫌でもねェ…」
「業界内じゃ割と有名になっている話だからね」
「『デュノア社』の経営不振…ですよね」
「量産型ISのシェアが世界第三位で、あの『ラファール・リヴァイヴ』を生み出した会社と言う大きなアドバンテージはありますが…」
「未だに第三世代機の製造が出来ていないと言うのがデカすぎる。一応、スコールの専用機である『ゴールデン・ドーン』はデュノア社製ではあるが、あれはあれで製造過程で色々とあったせいで、表向きにはデュノア社の名前は出せないようになってるしな…」
どんなに大きくて有名な会社も不景気には勝てないってことか。
なんとも世知辛い話ですなぁ~。
「奴の目的がレナードに変わったって事は、部屋も…?」
「あぁ。名目上は『同じ男同士』と言うことで一緒の部屋にされたよ」
「やっぱりか」
原作でも織斑一夏が同じ道を辿った。
流石にレナードは、アイツみたいなアホな真似はしないと思うけど。
『現在、フランスは『イグニッション・プラン』から外されかけているという状態にあります。イギリスの『ティアーズ型』やドイツの『レーゲン型』などが次々と台頭してきたせいで追い詰められているのでしょう』
「文字通りの崖っぷちってことね…」
「私達が所属している中国には関係ないけど、それでも決して他人事じゃないしね…」
イグニッション・プランはあくまで『欧州』の中だけの話だけど、それがアジア圏などに広まらないとは限らない。
そうなれば必然的に、夏姉妹やヴィシュヌ、簪なんかも当事者になってくる。
「私達は、アイツから何かしてこない限りは傍観を決め込むつもりだけど…レナードはどうする気?」
「俺も加奈たちと同じ…と言いたいが、同じ部屋になる以上は、そうはいかないだろうね。危険性は低いとは思うが、取り敢えずの警戒ぐらいはしておくつもりだ。いざとなれば簡単に制圧できるし、加奈たちや教師側にも味方がいるお蔭で、多少強引な事は出来る」
「賢明な判断だ」
もし私がレナードと同じ立場であっても、きっと似たような判断をする事だろう。
こっちの場合は、いざって時には友人皆を総動員して、利用できる者は何でも利用して徹底的に追い詰めるけどね。
「少なくとも、俺は彼女に対して温情を掛けるつもりは無い。そこにどんな理由や事情があっても、シャルル・デュノアがスパイ行為をしているのは覆しようのない事実だ。情けを掛ける理由が無い」
「激しく同感。じゃ、あの男装野郎の事はヨロシク」
「任せてくれ」
ヨッシャー。
図らずも厄介事を一つ減らせたぞー。
シャルル・デュノア…いや、シャルロット・デュノア。
残念だが、この世界じゃ原作みたいに甘い結果には絶対にならないぞ。
状況に流されて、自分を救ってくれる理想の『王子様』を待つだけしかしない『悲劇のヒロイン擬き』なんか、どんな事になっても心の底からどうでもいい。
自分の力で歩く事をしないどころか、『歩く』という選択肢すら最初から排除している時点で同情の余地なんて微塵も無い。
この世には、お前以上に不幸な目に遭っている人間なんて掃いて捨てるほどいるんだよ。
それに比べたら、お前の境遇なんて圧倒的に『幸福』なんだって事実に気が付きもしない馬鹿なんて、私の知らない所で勝手に破滅でもしてろ。
自分についてるその『足』の使い方も知らず、『運命』に抗おうともしない奴に生きている資格は無い。
いや…違うな。
アイツは最初から『生きて』なんていない。
ただ『死んでない』だけだ。
ラクーンシティの中を蠢き彷徨うゾンビと一緒。
この学園には、お前を救ってくれる『
いつの世も、最後の最後に自分を救い守るのは『自分自身』なんだって簡単な事に気が付かなければ…その先に待っているのは死ぬよりも辛い『地獄』だけだ。
それがどんな『地獄』なのかは…堕ちてみないと分からないけどね。
少なくとも、このままだとお前の未来は碌なことにはならないってのは確実だよ…シャルル・デュノア。