面倒くさいので、取り敢えず寝る ~IS編ifストーリー~   作:とんこつラーメン

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面倒くさいので、取り敢えず情報を聞く

 夕食後、私達は基本的に寝るまでの時間を誰かの部屋で一緒に過ごす事にしている。

 誰の部屋になるかは、その日の気分で決まっていて、今日はなんとなく私の部屋になった…のはいいんだけど…。

 

「どーしてお前もここにいる?」

 

 何故かレナードもしれっと一緒にいる不思議。

 余りにも自然すぎて、部屋に入ってベッドに座ってスマホを手にした瞬間に初めて気が付いた。

 

「加奈の行く所に俺の姿アリ…だよ」

「普通にキモいこと言うなし。マジの鳥肌が立ったじゃん」

 

 全身に鳥肌が立つなんて、こんなのガウルンと初めて会った時以来だよ。

 アイツレベルのキモキモ星人ってこと?

 

「なんてのは半分冗談で」

「半分は本気なのか…」

 

 いつもは余裕たっぷりのロランが本気で引いてる。

 これはこれでレアな光景を見た。

 

「少しでも、あのシャルル・デュノアとの接点を少なくする為さ」

「接点?」

 

 あー…そういや、同じ『男』のよしみで、あの男装女と同じ部屋にされたって夕食の時にぼやいてたっけ。

 

「同室ともなれば、嫌でも話す機会が生まれてくる。無論、俺はそんなのは気にしないが、変に付き纏われる理由になるのも御免被る」

「それには同感」

 

 あんな『悲劇のヒロインごっこ』をしているような奴と四六時中一緒とか死んでも御免だわ。

 誰かに依存することでしか生きられないなら、とっとと死んでしまった方がマシだろうに。

 

「それに、あそこまで無防備過ぎると、ふとした拍子に正体を暴いてしまいそうだ。最悪の場合、意図的にこちらが正体を暴くように仕向けてきて、同情を誘ってきそうな気さえしてくる」

「けど、あなたはそんなにの乗らないでしょ?」

「当たり前だ。俺の心は常に加奈と共に有る。あんな女の事なんて本気でどうでもいい」

 

 玉芳の言葉が切っ掛けで、またもやキモい言動をしてきやがった。

 アイツの事がどうでもいいってのには同感だけど、それ以外は本気で止めて。

 

「かといって、何も仕掛けてないってわけではないけどな」

「と言いますと?」

「ベッドの上に態と、俺の荷物が入っている鞄を置いてきた。当然、中身は見られても全く問題が無いような物ばかりだがな」

「あー…分かった。そゆことね」

 

 こいつ…やってる事は殆ど探偵なんだが。

 こんな場所に来ないで、どこかの探偵事務所とかで助手とかしてろよ。

 

「加奈さんは、レナードさんが何をしたのか分かったんですか?」

「まぁね。鞄を無防備に置いておくことで、向こうの出方を伺ったんでしょ?」

「正解だ加奈。流石は俺の花嫁」

「勝手に花嫁にすな」

 

 まだ私達は未成年だし、お前と結婚する気なんて毛頭ないわ。

 それに反応して、隣りに座ってたロランが私の事をギュッと抱きしめてきた。

 うん…これは許す。もっと抱いて。キスも良し。

 なんならBまでOK。

 

「アイツの目的はレナードの情報、もしくはISだ。もしも部屋に戻った時に鞄に触れた形跡があれば、その時点で『自分を怪しんでください』と言っているようなもの。形跡が無ければそれでよし」

「その通りだ。アイツからしたら、何も無いかもしれない可能性を考慮しても、探らずにはいられないだろうが」

 

 どこから、どんな情報が得られるか分からないからな。

 流石にその辺の管理は徹底してるだろうけど。

 

「因みに、見られて困る系の代物は全て、自分の専用機の拡張領域に収納してある」

「普通はそうするわな」

「「「「「「「うんうん」」」」」」」」

 

 これは専用気持ちの中では常識。

 本音ちゃんは専用機持ちじゃないから小首を傾げていたけど。

 

「これからは、アイツがどうにかなるまでずっと自室は寝るだけの場所になるだろうな」

「明らかに寮の部屋の無駄遣いだけど、こればっかりは仕方がないか」

 

 怪しさ100%の相手と同居とかストレスしか溜まらない。

 私なら絶対に嫌だね。

 そんな事をするぐらいなら、校庭にテントを立てて過ごすわ。

 

「ん?」

 

 プルルルルル…プルルルルル…。

 

 こんな時間に私のスマホに着信?

 一体どこの誰が……あ。

 

(この番号は…まさか…)

 

 嫌だけど…猛烈に嫌だけど…この番号には見覚えがある。

 そして、仮にここで出ようとしなかった場合、出るまでずっとこの状態である可能性が非常に高い。

 つまり、この状況では『着信に出る』という選択肢以外に無いわけで。

 

「…もしもし」

『よぉ…カシムゥゥ…久し振りだなぁぁ…』

「うっさい。じゃ、もう切るから。こう見えても私、超絶忙しい女子高生なんで」

『おいおい…つれねー事を言うんじゃねぇよ。折角、耳よりな情報を教えてやろうって言うのによ』

「はぁ?」

 

 耳寄りな情報? こいつが?

 明日は核兵器の雨でも降るのかしら。

 

『シャルル・デュノア』

「!!!」

 

 こいつ…どうして、その名前を…。

 

『そいつについての面白い話を聞かせてやろうと思ってよ。どうだ?』

「興味はあるけど…なんで、そんな事をする?」

『単なる暇潰し』

「だと思った」

 

 ガウルンに人間らしい倫理観なんて期待するだけ無駄無駄。

 こいつはゲーム感覚で他人の人生で遊ぶからな。

 

『それに、少し関係は遠くなるが、お前の両親も少なからず関わってるんだぜ?』

「…今からスピーカーモードにする。皆とも情報共有したいから」

『いいぜ』

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

『よぉ…お前ら。久し振りだな。特に玉蘭と玉芳。元気にしてるか?』

「「先生っ!?」」

 

 テーブルの上にスピーカーモードにしたスマホを置くと、即座に反応したのは案の定、夏姉妹だった。

 

「ガウルン…どうして加奈の番号を知っている?」

『その声…レナードも一緒にいるのかよ…』

「加奈のいる所に俺の姿アリだ」

『…難儀してんだな…お前も』

「お前に心配された時点で私もいよいよな気がする」

 

 逆に言うと、それ程の相手なんだよねレナードって。

 

「で、とっとと話してくれる? お前が持ってる情報ってのを」

『良いぜ』

 

 ムカつく野郎で殺したいと本気で思ってはいるけど、同時に所有している情報に信頼性が高いのもまた事実だから腹が立つ。

 それに頼ろうとしている自分自身の事も。

 

『まず最初に念の為の確認なんだが、お前らはもうシャルル・デュノアの正体が女で、奴がデュノア社の社長であるアルベール・デュノアの愛人の娘って事は知ってるよな?』

「勿論」

『ならいい。説明の手間が省けるからな』

 

 流石にそれぐらいはね。

 それよりも、どうしてガウルンがあの女の事を知っているかが知りたい。

 

『シャルル・デュノアは実の父であり社長であるアルベールの命令でIS学園まで来た。その目的は男性IS操縦者である織斑一夏の遺伝子情報、もしくはISの情報か機体そのものを手に入れる事にあった。だが…』

「アイツが来た時にはもう、当の本人はIS学園を退学していた」

『そうだ。ま、その辺の事も把握してるんだがな』

「なんでだ…なんて事を聞くのは野暮なんだろうね」

『当たり前だ。テメェだって知ってるだろ? 傭兵って職業柄、必要と思った情報は常に収集し続け、リアルタイムで更新をし続けなくちゃいけないって事はよ』

 

 情報にも『鮮度』というものが存在している。

 故に、古い情報などに価値は無い。

 現代社会に於いて金の次に価値がある物、それが情報であると私は思っている。

 

『けどよ、ここで一つの疑問が浮かばねぇか? どうして奴さんは男のISなんぞに興味を示したのかってよ』

「言われてみれば確かに…」

 

 現状、男でISを動かせるのは、織斑一夏を除けばレナードとガウルンだけだ。

 けど、そのいずれもが非常に特殊な事情で動かしているから、仮に情報なり機体なりを手に入れても全く役には立たない。

 大会社の社長ともあろう人物が、詳しい事情を知らないとしても、そのような考えに至らないのは流石におかしい…。

 

『正確には、織斑一夏の情報や機体なんてどうでもよかったんだよ』

「は? なにそれ?」

 

 どでもいいって…マジでどゆこと?

 

『女性権利団体だよ』

「…なに?」

 

 どうして、そこで奴なの名前が出てくる?

 

『実はな、前々からデュノア社は女性権利団体から脅迫されてたんだよ。お前達の会社を寄越せってな。あの娘っ子を人質にする形でな』

「あいつ等の考えそうなことだわ」

 

 権利団体の名が出た途端、一気に皆の表情が険しくなった。

 多分、私も同じような顔になってると思う。

 

『普通ならここで『助けてやろう』って思うのが人情ってもんだろうが…これで終わらないのが面白いんだよ』

「ふーん…?」

 

 こいつの『面白い』は、基本的に『相手の不幸』で成り立ってるからな。

 人の不幸は蜜の味って言葉を世界で一番理解してるんじゃなかろうか。

 

『あの娘の父親と義母は、娘だけでも助けようと考えた結果、権利団体の心理を使用して『娘を利用して日本にいると言う男性IS操縦者のデータを取りに行かせる』って形で日本に逃がそうと考えた』

「まぁ…妥当な判断じゃない? 穴は多そうだけど」

『そう…そこまでは良かった。だが、カシムの言うその『』を突かれるまではな』

「…何があった?」

『簡単な事さ。男装して日本行きを指示した瞬間、権利団体の奴等が横から介入してきやがったのさ』

「うわー…」

 

 なんちゅータイミング。

 それは流石に同情するかも。

 

『そこで命令を強制変更させられた。男の情報やISを持ち帰るんじゃなくて、ハニートラップをして織斑一夏を破滅させろ…ってな。『例え誰であっても、神聖なISに男が乗っている事なんて絶対に許せない』…なんだそうだ』

「普通にゲロ吐きそう。つーか、アイツを破滅させる…?。まさか、あのお粗末な男装もワザと…?」

『あぁそうだ。その気になれば簡単に看破できるレベルの男装をして、正体が判明した時には事情を話して同情を誘う。そうしたら、どうなると思う?』

「無駄にお人好しな、あの男の事だから…まず間違いなく『自分が何とかする』と言い出す。しかも、『皆に迷惑はかけられないから』って理由で一人で行動するだろう」

『あの娘がやってる事は間違いなくスパイ行為だ。後で知った事とはいえ、スパイを助けようとしたら、そこのどんな事情があろうともソイツも同罪になる。下手したら国家反逆罪とかになるんじゃねぇか?』

「なるへそ…。要は『シャルル・デュノアを利用して織斑一夏に罪を着せて人生を破滅させる』つもりだったわけね」

『そういうこった。だが、その計画があろうことか根本から覆っちまった』

「織斑一夏の退学。そして、レナードの転入か」

『あぁ。ターゲットがIS学園からいなくなったことで計画自体が破綻したに等しい。当然、本人は急いでレナードにターゲットを変えようとするだろうが…』

「残念だが、俺はあの女に何かをしようとは微塵も思っていない」

『ってことだ』

 

 なんつー哀れな…。

 図らずも織斑一夏は、IS学園から消える事で人生の破滅を免れたってことか。

 皮肉ってもんじゃないな…。

 

「あの女は少しでも抵抗しようとはしなかったの? やり方次第じゃ、割と普通に反逆とか出来そうだけど」

『全く。父親に男装&偽りのスパイを命じられた時から色々と諦めてたみたいでな。考えるの止めて楽な方に流されるのを選択しちまってるんだと。本人曰く『誰でもいいから自分の事を助けて欲しい。ここから連れ出して欲しい。考えるのも生きるのも、もう疲れた。もう何も考えたくない』らしいぞ』

「…くだらない」

 

 自分を助けて? 連れ出して? もう疲れた?

 じゃあ早く死ね。マジで死ね。

 生きている限り、人はどこまで歩いていかないといけないんだよ。

 それは人が人として生まれた瞬間から定められた絶対的な運命なんだ。

 どんなに疲れても。どんなに大変でも。どんなに辛くても。

 歩くという行為を止めてはいけないんだ。

 何があっても絶対に。

 ゆっくりでもいい。一歩ずつでも構わない。

 その先には必ず何かがある。

 少なくとも私はそう信じているし、地獄のような道を歩き続けたからこそ『今』に至っている。

 もし『歩み』を止める時が来るとしたら、それこそ本当に『死』が訪れる時だけだ。

 

『それには同感だな。生きる意志を放棄した奴に未来は無い。どんな形であれ、他人に自分の運命を委ねちまった時点で、そいつはもう死んだも同然だ』

「全くだな」

 

 またガウルンと意見が合ってしまった。

 後で何か甘い物でも食べて気分を紛らわせよう。

 

『因みに、権利団体の奴等は無駄に用意周到みたいでな。実はIS学園内に自分達の娘とかを密かに入学させておいて、あの娘の事を監視しているみたいだぞ』

「もしかして、食堂で演説してた連中の事か…?」

 

 女尊男卑にしても酷いと思っていたけど、権利団体の関係者だったのか…納得。

 

『つまりだ。このままレナードが何もせずに無視を決め込んでれば、向こうから勝手に自滅してくれるって寸法だ』

「それは楽でいいな。実際、俺は最初から干渉する気など微塵も無いしな」

 

 何にもしなくても勝手に自滅…か。

 楽過ぎて逆に疑ってしまうけど…。

 

「…なんで、そんなに色んな事情に詳しい? お前って、そんなにも情報通だったっけ?」

『あぁ…それか。実はな、相良博士たちも前々から女性権利団体の連中の事を目障りに思っていたみたいでな。それをどうにかする為に、アイツ等の所に密かにスパイを送り込んでやがったんだよ。俺が今言ったのも全て、そいつからの情報を聞いたからだ』

「ふーん…そいつって誰? 私も知ってる奴だったりする?」

『知ってるとも。カシムもよーく知ってる男だ』

「男なんだ…んで誰?」

『『ゲイツ』の野郎だよ』

「……マジで?」

 

 よりにもよってゲイツを送り込んだのかよ…。

 あのクソ両親もエグいことをするもんだ。

 急に権利団体の奴等が哀れに感じてきたよ…。

 

 

 

 

 

 

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