面倒くさいので、取り敢えず寝る ~IS編ifストーリー~   作:とんこつラーメン

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面倒くさいので、悔しいけど同感する

 ゲイツ。

 私が知る中では、実力でガウルンを超える唯一の傭兵。

 その実力はガウルンを以てしても『常軌を逸している』と言わしめるほど。

 そう…実力はあるんだ。実力は。

 指揮官としての能力もあるし、作戦遂行能力もある。

 こうして良い所だけを箇条書きしていけば、まるで凄い奴に思えてくるだろう。

 まぁ…ある意味では凄い奴だよ。勿論、悪い意味でね。

 

「加奈…彼が言った『ゲイツ』という人物の事を知っているのかい?」

「あー…うん。一応ね…」

 

 案の定、ロランがゲイツについて聞いてきた。

 正直、ガウルン以上に思い出すのも嫌な奴だけど。

 ぶっちゃけ、名前を言われなきゃ永遠に記憶の片隅で埃を被って貰っている所だよ。

 

「どんな人物なのですか?」

「「「変態モミアゲ星人。え?」」」

 

 なんか私と同時に玉芳と玉蘭も一緒に言ったんだけど。

 もしかして、二人もアイツの事を知ってるの?

 

「玉芳さんと玉蘭さんも知ってるんですか?」

「うん…先生と一緒にいた頃に…ね」

「普通に生理的に無理だったけど」

 

 分かる。マジで超共感できる。

 

「と言うか『変態モミアゲ星人』って…どこが変態なんだ?」

「「「顔」」」

『ブッ!』

 

 受話器の向こうでガウルンが吹き出しやがった。

 そんなに面白かった?

 

『あははははははははは! 変態モミアゲ星人って…顔って…はははははは!』

 

 なんかツボに入ってるし。

 ここまで爆笑されてるゲイツに少しだけ同情した。

 

『滅茶苦茶に面白いことを聞いちまったぜ…ひー…! 後でゲイツの野郎に教えてやろう』

「やめれ。流石に哀れだわ」

 

 仮に聞いても笑って誤魔化しそうだけど。

 

「つーか、どうしてゲイツの奴が女性権利団体にスパイとして潜り込んでるワケ? まずはそこをちゃんと説明してよ」

『おっと…そうだったな。あんまりにも面白かったもんで普通に忘れてたぜ』

 

 忘れるなし。

 

『まず大前提として、ゲイツの野郎も俺と同じように相良夫妻に雇われてる。ここまではいいか?』

「うん。つーか、そんな事、今初めて知ったわ」

『だろうな』

 

 あのアホ親共…あんな超危険人物を雇って何をする気なんだ…?

 

『あの二人が権利団体をウザいと思っている事はさっきも話したよな?』

「話したね」

『その気になれば武力に訴える事も出来るが、お前らも知っての通り、アイツ等はどれだけ潰しても、ゴキブリのような勢いで次々と現れやがる。キリが無いんだよ』

 

 ゴキブリに例えられて可哀想に……ゴキちゃんが。

 あんな奴等、どう考えてもゴキブリ以下だろ。

 今すぐにこの世に存在する全てのゴキブリに土下座して謝れ。

 

『ならどうすればいいか。そこで二人はある方法を考え付いた』

「それは?」

『あま~い蜜で奴等を誘い込み、永遠に外部に出れないように隔離すればいい…ってな』

「隔離って…どうやって? あと、『甘い蜜』って何?」

『『アーコロジー』だよ』

 

 ……それマ? 冗談でしょ?

 

「かなかな~。アーコロジーってなに~?」

「簡単に言うと、生産と消費活動が完全に自己完結している建造物の事だよ。広義的には『都市に匹敵する人口を内蔵する建造物』の事を指してるんだけどね」

 

 因みに、この『アーコロジー』と言う言葉は、アメリカの建築家である『パオロ・ソレリ』が作り出した建築(architecture)と生態学(ecology)の混成語だったりする。

 

『太平洋のど真ん中に人工島を作り上げ、そこをアーコロジーにしてから権利団体の連中を初めとする『女尊男卑主義者』達を放り込んでから隔離する。いや…正確には『もう二度と外の世界には出たく無くさせる』…かな』

「何をどうする気かは全く分からないけど、たった一つだけ分かる」

『なんだ?』

「あいつ等は、その人工島に外じゃ決してありえない程の『楽園』を作ろうとしてるってこと。文字通りの『女だけの楽園』に」

『へっ…分かってるじゃねぇか』

 

 微塵も分かりたくは無かったけどね。

 

『情報拡散自体はネットで楽に出来るからな。特に今は権利団体だけが独占しているルートも存在している。そこに入り込めば特定の奴等だけをピンポイントで誘き出す事も余裕で可能だ』

「だろうな。あいつ等の頭の中身はそこらの子供にすら遥かに劣る」

 

 こんな事を言うって事は、レナードも奴等の事は嫌悪してるってことか。

 今の世では、これが普通の反応なんだろうけど。

 

『ゲイツの役目は、奴等をより確実にその『楽園』に送り込む事だ』

「万が一の事も考えて念には念を入れる…か。あいつ等らしいやり方だ」

 

 本当に天才であるが故に、あのクソ両親は常に『完璧』を欲している。

 けど同時に『完璧』なんて概念がこの世のどこにも存在していない事もまた知っている。

 だからこそ、限りなく完璧に近い結果を求め続けている。

 

「でも、一体どうやってゲイツは権利団体に入り込めたんだ? 確かに傭兵としての実力は最強クラスだけど、お世辞にも交渉事が得意とは言い難かったでしょ?」

 

 寧ろ、その手の人身掌握術はガウルンの方が得意だった。

 こいつの口八丁手八丁に騙されて、どれだけの敵兵たちが攪乱させられてきたことか。

 

『その辺はゲイツ本人も夫婦も分かってたみたいでな。権利団体の奴が最も欲しがってる『手土産』を持たせて向かわせて、ついでにそれっぽく臭い芝居したら簡単に信じたらしい』

「マジか…因みに『手土産』とは?」

『夫婦お手製の最新型のIS。と言っても、意図的に欠陥を埋め込まれてるんだけどな』

「だと思った。欠陥って?」

『十分以上稼働させたら、即座にコアごと木端微塵に爆発する。勿論、その際にはコクピットを強制固定させて緊急脱出とか出来ないようにしてな』

 

 うわぁ…。

 我が親ながらやることえげつねー…。

 私だけじゃなくて、他の皆もマジのドン引きしてるし。

 あのレナードも顔を青くして引いてる。

 

『それを約十数機持って行ったらしい。博士たちは篠ノ之束とは別にコアを独自に生み出せるからな』

「それはそれはまた…さぞかし喜んだだろうね」

『みたいだな。奴らは泣いて喜んだらしいぜ? そのISが自分達にとっての棺桶だとも知らずにな』

 

 何とも哀れな…なんて感情すらも勿体無い。

 アイツ等に抱く感情なんて嫌悪感だけで十分だ。

 

『そういや、ゲイツもお前に会いたがってたぜ? 久し振りに顔が見たいーってな』

「えー…私は嫌だ。だってあいつ、顔がキモいんだもん。あと、モミアゲが普通にウザい」

『ヒデー言い様。ま、同感だけどよ』

 

 遂にはガウルンと同じ感想を抱いてしまった。

 私も遂に終わりかもしれない。

 

『ま…そーゆー訳だから、さっき言った通り、シャルル・デュノア…いや、シャルロット・デュノアに関してはガン無視を決め込んどけば勝手に自滅するだろうぜ。もしかしたら、アイツ等の手で『楽園』に強制連行されたりしてな』

「うーん…普通に有り得そう」

 

 完全に世捨て人になっているとはいえ、彼女が美少女であることには違いない。

 アイツ等がそれをそのまま逃がしたり、使い潰すだけで終わるとは思えない。

 絶対に自分達の性欲処理とかに使おうとするはずだ。

 

『ガウルン。話が終わりかけている所で恐縮なのですが、一つだけ質問があります』

『この声は…アルか。お前さんと電話越しに会話をするってのもおかしな感覚だな』

 

 まさかのアルがここで話に割り込んできた。

 この子が自分からガウルンに話しかけるなんて珍しい。

 

『アーコロジーに女尊男卑主義者を封印したとして、奴等はその後どうなるのですか? そのまま閉じ込めたまま全滅を待つのですか?』

『あー…その事か。最初はそのまま放置ってのも考えたらしいが…』

『違うと?』

『そうだ。生活環境をアーコロジー化させたんなら、主義者達の身体もアーコロジー化させれば真の意味で奴等を永遠に封印できると考えたみたいだ』

『体をアーコロジー化…? それはもしや…』

 

 おいこらそこ、ちょっと待て。

 そこから先は禁忌だぞ。

 

『人工島で生産できる物資の中に『両性具有になれる薬』を加えて、女が女を孕ませられるようにしたらしい。これでヤツ等は檻の中で永遠に繁殖を繰り返し続けるって寸法だ。勿論、薬の影響で生まれるのは女だけになるように細工してな』

『文字通り、何から何まで自分達だけで完結させる…と。成る程、納得しました』

『そりゃ何よりだ』

 

 マジで発想がぶっ飛んでるな…。

 普通の科学者は絶対にそんな事は考え付かないぞ…。

 

「私からも最後に一つだけ聞いても良い?」

『カシムから? 珍しいな…いいぜ。言ってみな』

「ラウラ・ボーデヴィッヒ。知ってる?」

『ラウラ…あぁー…ドイツにある例の特殊部隊の隊長か』

「知ってるんだ」

『一応な。ドイツ軍のIS専用の特殊部隊『シュヴァルツェア・ハーゼ隊』の隊長で階級は少佐。つっても、所詮はお飾りの部隊みたいだけどな。実戦経験は皆無に等しいらしい。やってる事は主にISを使った訓練と哨戒任務程度で、実際にISを使ったドンパチは一度も経験してない。軍人の名を被った単なる雑魚どもだな。所属している連中も女ばかりだと聞いてる』

「意外と情報持ってるんだ?」

『仕事柄だ。どれだけクソ雑魚でも、情報ってのは持ってるだけで価値があるからな』

「まぁね」

 

 情報と金は当価値。

 少なくとも私の中ではね。

 

『少佐って階級も、実際に何か功績をあげて得たってわけじゃなくて、単にお偉方が『隊長ならばこれぐらいの階級でいいだろう』的な判断でくだされただけらしいぜ? 本人は知らないだろうがな』

「だろうね」

 

 暴力だけでのし上がった…か。

 やってる事はもう軍人じゃなくて極道じゃんか。

 アイツはそっちの方が向いてるんじゃないか?

 きっと、従順な鉄砲玉になってくれるよ。

 

『そういや、その隊長サンもそっちにいるらしいな』

「もっと正確に言えば、ウチのクラスにいるよ」

『マジかよ…お前も大変だな』

 

 ガウルンに同情された…悔しい。

 

『織斑千冬を信奉してたって話だが…その教官殿がいなくなってて混乱してたんじゃねぇか?』

「全く以てその通りだよ。面白いぐらいに動揺してた」

『だろうな。噂じゃ、奴が来日したのは織斑千冬をドイツに連れ帰す為らしい』

「その相手がどこにもいないんじゃ本末転倒だけど」

『違いねぇ』

 

 今のところはまだ静かだが、いつどのタイミングで暴走するか分かったもんじゃない。

 その時は容赦なく実力行使で黙らせるけど。

 

『けどまぁ…仮に何かあってもカシムがいるなら問題ねぇだろ。あんなガキ一匹、お前にとっちゃ雑魚の範疇にすら入らねぇだろ』

「ぶっちゃけ、絵に描いたような軍人過ぎて逆に隙だらけだった。その気になれば一瞬で制圧できる。アイツが専用機を展開してても同じ」

『カシムは生身でもISとタイマンして勝っちまうからなぁ…。知らぬが仏とはよく言ったもんだぜ』

 

 生身でISを倒す技術も傭兵時代に培ったもんだけどね。

 あの頃はよく、ISを纏って調子に乗ってた権利団体のアホ共の首をへし折ってたっけ。

 

「そろそろ終わりで良い? 夜更しは乙女の大敵なんですけど」

『乙女ねぇ…戦乙女の間違いじゃねぇか?』

「あ?」

 

 だーれが戦乙女か!

 こちとら立派な女子高生じゃい!!

 

『ハハハハハハ! やっぱ、お前と話してると飽きねぇなぁ…カシムゥゥ!』

「うっさい! 良いからマジで切るよ!」

『へーへー。そんじゃなー。玉芳。玉蘭。お前らもしっかりやれよー』

 

 最後の最後に師匠らしいことをしやがって…。

 本当に…アイツと話している時に限って饒舌になってしまう自分が嫌いだ。

 

 

 

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