面倒くさいので、取り敢えず寝る ~IS編ifストーリー~   作:とんこつラーメン

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面倒くさいので、取り敢えず叫ぶ

 敵ISの圧倒的な力の前に成すすべなく倒されてしまった一夏と鈴。

 特に鈴は専用機を木端微塵にされた挙句に派手に吹き飛ばされて意識を失った。

 友人と想い人を手に掛けた相手に向かい、怒りを爆発させて飛び出したセシリアと箒であったが…。

 

「おいこら…テメェら、割とマジでいい加減にしろよ?」

「くっ…! どうしてコチラの攻撃が全く当たりませんのッ!?」

 

 セシリアの撃つレーザーライフルの一撃は全く命中する様子を見せず、その全てを最小限の動きで回避されてしまい、銀色の装甲に掠りもしない。

 

「ちょこまかと…ならば! お行きなさい! ブルーティアー…」

「おせぇよ」

 

 セシリアの専用機『ブルーティアーズ』の最大武装『ビット』を射出しようとした瞬間、一瞬で懐まで潜り込まれてしまう。

 自分は空中に控え、相手はずっと地上にいたにも拘らず…だ。

 

「あーらよっと!」

「キャァァァァァァァァァァァァァァッ!?」

 

 単分子カッターを何回か振ったかと思ったら、全てのビットが粉微塵に切り裂かれ、手に持っていたレーザーライフルもまたバラバラにされていた。

 

「これなら、さっきの中国チビの方がまだ幾分かマシだったぜ。歯応えすらねぇ。これで本当に代表候補生なんだってんだから笑えるよなぁ」

「あなた…私の事も知って…!」

 

 全ての武装を破壊されてもまだ、怒りによって戦闘意欲を消さないセシリア。

 だが、その怒りが仇となった。

 

「よっぽどイギリスってのは人材不足なのかねぇ。流石に同情しちまうぜ。今の自分の状況すらも碌に把握出来ねぇアホに国の旗を任せないといけない事によ」

「このセシリア・オルコットを侮辱しましたわね…! 許せませんわ!!」

「別に、テメェみたいなガキに許して欲しいとか思ってねぇよ。それよりも、もっと自分の機体を見た方が良いと思うぞ?」

「何を言って……はっ!?」

 

 ここでようやくセシリアは気が付いた。

 あの時、相手がビットとライフルを切り裂いた時、同時に残された武装の一つである『ミサイルビット』も同時に攻撃されていたのだという事を。

 

「し…しまっ…!」

 

 しまった…そう叫ぶ事すら出来ず、セシリアは二基のミサイルの誘爆に巻き込まれ自爆。

 機体はズタボロになりながら強制解除、セシリアもまた白目を剥きながら口から煙を吐きつつ地面に落下した。

 

「かっ……はっ…!」

「お嬢様よぉ…最後にいい事を教えといてやるぜ」

 

 ガシッ…っと地に伏したセシリアの頭を踏みつけながら、男は低い声で静かに言った。

 

「生き死にを賭けた戦場で『教科書通りにやってます』ってのはなぁ…馬鹿がする事なんだよ。少なくとも…テメェは俺が今まで戦ってきた代表候補生の中でもぶっちぎりで最弱だったぜ。雑魚って言葉すら勿体ねェレベルで…なっ!」

「がはぁっ…!?」

 

 ついでのように腹部を蹴りあげ、そのまま鈴と同様に壁まで吹き飛ばす。

 そのまま壁に激突し、全身をピクピクと痙攣させながら完全に戦闘不能になる。

 

「よくも…よくもセシリアをぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

「うっせぇわ。候補生ですらねぇ、専用機すら持ってねェゴミが無駄に粋がるんじゃねェ。普通にうぜぇぞ」

「黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 

 箒は打鉄に搭載されている近接ブレード『葵』で攻撃を仕掛けるが、その一撃はあろうことか指一本で防がれてしまう。

 

「ったくよぉ…折角、こっちがハンデとしてさっき使った『Λ・ドライバ』を停止してやったってのに…メインディッシュの前の前菜にすらならねぇとか…逆にふざけ過ぎて笑えねぇぞ」

「わ…私の剣を指一本でっ!?」

 

 どれだけ力を込めてもビクともしない。

 相手は普通に立っているだけなのに。構えてすらいないのに。

 

「あの『天災女』の妹だからつって僅かな期待をしてたけどよ…やっぱ意味無かったな。所詮は感情に身を任せて彼我の戦力差すら碌に把握も出来ねェ単なる糞餓鬼だったか」

「天災…? まさか、私があの人の妹であるという事も知って…!」

「さぁな。それよりもテメェ…剣道の有段者だな?」

「!!?」

 

 たった一太刀で自分の事を見抜かれた。

 あの三人を圧倒してみせた時点で普通ではないと思っていたが、そんな陳腐な言葉で片付けられるような相手ではなかった。

 

「この俺も随分と舐められたもんだよなぁ。まさか、こーんな『チャンバラ』で本気で倒せると思われたんだからよ」

「貴様…!」

「それともあれか? これしか能がねぇって事か? ははははははっ! そうか! そうだったのかっ! 普通なら遠距離から牽制しつつの近接攻撃ってのがセオリーだもんなぁっ! そんな『当たり前』すら知らねぇ…いや、出来ねェの間違いか! どっちにしてもよぉ…」

 

 剣先を押さえていた指の数を一本から二本に変え、人差し指と中指でガッチリと摑み、少しだけ力を咥える。

 

「『武道』如きで戦場にいる兵士を倒せるとか思ってんじゃねぇぞ…っと」

「ば…馬鹿な…っ!?」

 

 パキン。

 そんな音を立てながら、剣が真っ二つに折られる。

 まるで、HBの鉛筆をベキッとへし折るかのように。

 

「そもそも、その程度の『怒気』なんぞで俺がビビると思ってんのか。俺のような奴を本気で戦慄させたきゃなぁ…この場にいる全員が気を失うぐらいの『殺気』を放て。それすら出来ねェなら……」

 

 空いた手で握り拳を作り、それを思い切り振り被る。

 それを見た途端、箒の背筋が恐怖で凍りついた。

 

「ぶぎゃぁっ!?」

 

 あろうことか、鋼鉄の拳を顔面にぶちかまされ、そのままの勢いて地面に叩きつけられる。

 その威力で巨大なクレーターが出来上がり、アリーナ全体に何かが破裂するような炸裂音が響き渡った。

 

「おめおめと出てきてんじゃねェ。どんな糞雑魚でも、殺すのにはそれなりの労力がいるんだからよ。ちっとは殺す方の身にもなりやがれ」

「が…ぁ……」

 

 メリメリメリィ…!

 顔面にぶつけた鋼鉄の拳を何度も何度もグリグリとし、すり潰すように動かす。

 ISには操縦者を保護するシステムとシールドエネルギーが存在しているが、それも決して絶対ではない。

 圧倒的な力の前では、そんな物は簡単に貫ける。

 

「はぁ……頼むからよぉ…マジでとっとと出てきてくれよ…じゃねぇと仕事も出来ねぇし、ストレスも溜まる一方になっちまう。俺だって『弱い者イジメ』は趣味じゃねぇンだぞ?」

 

 専用気持ち三人と量産機を纏った生徒一人。

 合計四人を倒すまでに掛かった所要時間…約10分。

 

 その力はまさに圧倒的だった。

 観客席にいる生徒達から逃げる気力すら奪うほどに。

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

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・・

 

 

 

 

 

 追加で出てきたセシリアと箒が倒されるのを見ていたマドカ達。

 特に教師であるスコールとオータムは非常に渋い顔をしていた。

 

「織斑君や凰さんはともかく…」

「オルコットと篠ノ之の馬鹿は後で説教確定だな。この状況を無事に乗り切れれば…だけどよ」

 

 二人は揃って腕組みをし、相手がどんな行動に出るのかを注意深く観察する。

 一挙手一投足すらも見逃さないように。

 

「…スコール。オータム…お前達に一つ聞きたい」

「どうしたのマドカ」

「…お前達二人なら、あの男とどれだけ戦える?」

 

 その質問に教師二人は無言になる。

 沈黙こそが全てを物語っていた。

 

「恐らく…こっちが入念に準備に準備を重ねて…辛うじて互角…って感じかしら」

「嘘でしょ…オータムさん達でも難しいの…!?」

「悔しいけどな。野郎の動きは明らかに素人のそれじゃねェ。銃弾飛び交う戦場を生き抜いてきた超一流の『兵士』の動きだ。アタシ等だって戦場に出た事が無いわけじゃねぇが…それでもあの領域には全く届いてない」

「ハッキリ言って…次元が違い過ぎるわ。下手に立ち向かっても簡単に返り討ちになるだけよ。あの子達みたいに…ね」

「……そうか」

 

 本当は二人だって話したくは無かったはずのこと。

 己の無力さを自分の口から語ることになるのだから。

 それでも、ちゃんと言って聞かせなければ、今度は彼女達が立ち向かっていくかもしれない。

 大人として、教師としてそれだけは絶対に許容できない。

 ステージで寝転がっている者達は、スコールたちの話を聞いても飛び出して行った可能性が非常に高いが。

 

「…どうするのですか? このままでは…」

「そう言えば、他の候補生の人達はどうしてるの?」

「四組の子はまだ専用機が組み上がってないし、二年のフォルテさんや三年のダリルはあなた達と同じようにちゃんと状況を読んで待機しているわ」

「フッ…流石は上級生。本当になすべき事を理解しているか」

 

 かといって、このままここでジッとしていても状況が好転する訳ではない。

 幸いなことに、銀色のISは首をコキコキと鳴らしながら何もせずにジッとしている。

 

「マニュアル通りならば、すぐにでも教師部隊を突入させるべきなんでしょうけど…」

「ンな事をすれば火に油を注ぐだけだ。教師部隊が蹂躙される結果ッつーおまけ付きでな」

「矢張り…加奈に全てを賭けるしかないのか…」

 

 ここまで来ると、どれだけ早く加奈が到着するかが運命を分ける鍵となる。

 これ以上遅くなれば、今度は千冬が打鉄に乗って飛び出してくるかもしれない。

 当人の実力は恐ろしく高いが、機体のスペックが天と地ほどの差がある。

 しかも、相手は操縦者自身も異次元級の実力者。

 どちらが勝者となるかなど、比を見るよりも明らかだった。

 

 重苦しく、極限まで張りつめた空気がアリーナを支配する…その時だった。

 

「皆! 待たせてしまって済まない!」

「この声は…ロランかっ!?」

 

 彼女達の元に走って来たのはISスーツ姿のロランだった。

 顔から汗を流している辺り、ここまで全力疾走してきたのだろう。

 

「ロランさんが来てるって事は、加奈さんも来てるんですかッ!?」

「勿論だとも。加奈はこっちは来ず、そのまま真っ直ぐに向かい側のピットへと直行したよ」

「そうなんですね…よかった…」

 

 この場にいる全員がほっと胸を撫で下ろす中、ロランはアリーナで起きた惨状を目の当たりにして渋い顔になった。

 

「…どうやら、想像以上に相手は圧倒的みたいだね」

「あぁ。我々が纏めて掛かっても、勝率は無いに等しい。だからこそ、この学園で唯一、勝ち目がある加奈を呼ぶしかなかったんだが…」

 

 話を聞き、ロランは自分を落ち着かせる為に大きく息を吸い、吐く。

 

「皆…良く聞いてくれ。加奈が出撃したと同時に、私達もすぐにステージに急行する。理由は…分かるね?」

「加奈の戦いの邪魔にならないように、あの倒れている連中を回収するのだな」

「その通りだ。自業自得とはいえ、このまま巻き添えにするのは忍びないし、なにより加奈の足かせになるような要素は可能な限り排除しておきたい」

「同感です」

「任せといてください!」

「もうそろそろ、教師らしいことをしないとね」

「へっ…そうだな!」

 

 全員が自分の今きている服に手を掛けると…バッっと脱ぎ去ってからISスーツ姿になる。

 こうして、後は加奈が出現するのを待つだけとなった。

 

 

 

 

 

・・・・・

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・・

 

 

 

 

 

 退屈過ぎて装甲の中で欠伸を噛み殺す。

 今はまだ辛うじて生きているが、まだ来ないようであれば見せしめと暇潰しに倒れ伏している四人を殺すのも面白いかもしれない。

 そう思い始めた時…自身のISに反応があった。

 

「熱源反応…後ろか!」

 

 振り向きざまに単分子カッターを一閃。

 自分の顔面目掛けて発射されていた弾頭を一刀両断した。

 

「この微塵も躊躇なく相手の急所を狙撃するのは…間違いねぇっ! アイツだっ!」

 

 視線の先には、全身各所のアタッチメントに様々な武装を設置し、その両手には長大な狙撃砲を構えている。

 全身がグレーの都市型迷彩に染まった無駄のないデザインの全身装甲のIS。

 

「型式番号『M9』ガーンズバック…ははは…あの機体だけは絶対に忘れねぇっ!! ようやく再会出来たぜ!! この時を…この瞬間をずっと待ってたんだっ!! お前もそうだろ…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カシムゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!!」

「ガウルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

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