面倒くさいので、取り敢えず寝る ~IS編ifストーリー~   作:とんこつラーメン

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面倒くさいので、取り敢えず食べる

「あー…やべー…メシうめー…」

『軍曹殿。ご飯粒が頬に付いています』

「ふふ…アルの言う通りだ。加奈。私が取ってあげよう」

「ん…ありがと。ロラン」

 

 なんか昨夜、妙に騒がしい気がしたけど、気にせずに寝た次の日。

 私はのんびりとしながら『TKG定食』を食べていた。

 

「加奈さんの今日の朝ご飯は卵かけごはんかー。偶にはいいかもなー」

「そうだな。時間が無い時や疲れた時とかには、こういう簡単に作れるものが一番だよな」

「分かる。お姉ちゃんなんて、よくバター醤油ご飯とか食べてるし」

「べ…別にいいでしょ…美味しいんだから…」

 

 うあー…玉芳の気持ち…チョー分かるわー。

 色んな食べ物を食べていても、結局は最終的に人類はバター醤油ご飯に帰結する運命なんだよ。

 健康に悪いと理解している。カロリーお化けだって知っている。

 でも上手いんだから仕方ないじゃん。

 だから良いんだよ。グリーンだよ。

 女の子は可愛いが正義。

 食事は美味いが正義。

 

「そう言えば、よく加奈さん達は生もの系を食べていますね。お刺身定食とか」

「ある意味、日本の食文化の象徴みたいなもんだし」

「そーだねー。私もお刺身だーいすきー」

 

 そういや、未だにヨーロッパ系の子達が刺身とかを食ってる場面って見た事が無いかも。

 警戒する気持ちは分かるけど、だからこそ知って欲しいなー。

 一度でも食べれば、間違いなくその味の虜になるだろうし。

 

「…………」

「ん? おい加奈…急に黙ってどうした?」

「あ…ダリル先輩。なんか今日はいつもよりも静かだなーって思って」

「静かね…確かにそうかもな。多分…『アイツら』がいないせいじゃないか?」

「あー…」

 

 先輩に言われて、改めて食堂を見渡してみると、確かに『奴等』の姿が見当たらない。

 まだ来ていないだけかもしれないけど。だとしても一人もいないのは流石におかしくないか?

 

「アールー。何か知ってるー?」

『はい。ですが、これは私よりも『彼』に聞いた方が早く確実かと』

「彼とな?」

 

 このIS学園で『彼』って言われるのは…アイツか。

 

「やぁ加奈。そして皆。おはよう。今日も素晴らしい朝だね」

「おはよ、レナード」

 

 無駄に爽やかな笑顔を振りまきながらレナードの登場。

 今日はいつにも増して眩しくないか?

 それでも一応は礼儀として挨拶は返す。

 

「なんか妙に機嫌良くない? なんかあったの?」

「良く分かったね。流石は俺の加奈だ」

「い・い・か・ら・は・な・せ」

 

 朝から本当にウザい奴だな…。

 

「いやね。ようやく念願の『一人部屋』になれたのさ。これからはのびのびと寝る事が出来るよ」

「一人部屋って…あぁー…そゆことね」

 

 その一言だけで全てを察したわ。

 他の皆も同じみたいで、納得したいみたいに頷いていた。

 成る程ね。

 アルは全てを知った上で、敢えてレナードに説明役を押し付けたのか。

 因みに、そんなレナードの今日の朝食はトーストとサラダとコーンスープのセット。

 

「で、具体的には何があったのさ?」

「別に大したことじゃないよ。『アイツ』が俺に対して夜這いを仕掛けて来たんだが、それを途中で阻止したら、その様子を伺っていた『ヤツら』が部屋に入って来て、そのタイミングで例の『楽園』とやらが完成したみたいでね。そのまま『アイツ』はペットとして強制連行されていったよ」

 

 うーわー…。

 なんかもうさ…なんも言えねぇ…。

 クッソどうでもいいし、興味も無いけど…敢えて一言。

 

「良かったじゃん。今度からはゆっくりと熟睡できるね」

「全くだ。どうやら、『連中』を含めた面々は今日付けで退学届けを出されているようだ。多分、今日の朝のHR辺りで何か言うんじゃないか?」

「成る程。学園内が静かになったのはそれが原因か」

 

 存在するだけで騒がしかった奴等が根こそぎいなくなったら、そりゃ一気に静かになるわな。

 しかも、ついでに男装女まで連れて行ってくれたんだから。

 それだけは感謝してやるよ。

 

「ところで加奈…何を食べてるんだい?」

「TKG」

「ティーケージー?」

「卵かけごはんの略称」

「な…生卵を白米にかけるのか…?」

「驚くかもだけど、これが美味いんだよ。日本にいるつもりなら、こう言う食文化にも慣れておくんだね」

「さ…流石は様々な食文化が交わる国…日本…。まだまだ俺が知らない事は多いようだ…」

 

 当たり前だっつーの。

 どんな超天才でも、この世の全てを知ってる奴なんて一人もいないよ。

 篠ノ之束も、あのクソ両親も含めてね。

 

「こ…今度チャレンジしてみるか…?」

 

 いや。別に無理して食べなくても良いよ?

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 一年一組の朝のホームルーム。

 織斑千冬がいなくなったことで副担任から担任に昇格した山田先生の口から、案の定な言葉が出てきた。

 

「えー…急ではありますけど皆さんにお知らせがあります。諸事情により、デュノア君が本国に帰ることになってしまいましたー…はぁ…」

 

 何とも大きな溜息ですこと。

 気持ちは分かるけど。

 一人いなくなったことで、また色々と仕事が増えたんでしょ?

 

「へー…あの子、居なくなったんだー」

「別に気にしないけどねー」

「うん。だからどうしたって感じ」

「ぶっちゃけた話さ、居ても居なくても特にこれといった影響ってないよね」

「だね。割と本気でどうでもいい」

 

 織斑一夏の一件で男子に対する不信感が生まれているせいか、誰も気にしていない様子。

 因みに、レナードは完全に例外として扱われているみたい。

 あれを異性として認識し始めたら女として色んな意味で終わりな気がする。

 

「それじゃあ、今日の連絡事項を言いますねー…」

 

 …うん。

 今度、絶対に山田先生を労おう。

 この分だと、スコールさんやオータムさんも忙しくしてるだろうし…。

 

(けど、これで問題児の片方は消えた。残っているのは…チラ)

 

 あのドイツの無能軍人(笑)だけか。

 

「あいつがいきなり消えた…だと…?」

 

 大人しくしてないと、お前もいずれ同じ運命を辿るんだよ。

 こいつには無理な話だろうけど。

 

(『楽園』に連行されたって事は、今頃は権利団体のゴミ共にたーっぷりと可愛がられてるんだろうな。でも、そうなるとデュノア社ってどうなるんだろう?)

 

 一応、念の為に朝のニュースを見てみたけど、デュノア社が倒産した的な話は聞いてないし…。

 デュノア社程の大きな会社が潰れたら、まず間違いなく大ニュースになるだろうしな。

 

(軍曹殿)

(どしたの? アル)

(デュノア社に関して少し調べてみましたが、どうやら表向きは何事も無いようになっているようです)

(実際は?)

(デュノア社の社長夫人であるロゼンダ・デュノアが行方不明になっています)

(それって…あの男装女の継母の?)

(はい。いなくなったのは昨夜の話のようです)

(昨夜って事は…)

(シャルロット・デュノアが『楽園』に連行されたのと同じタイミングで彼女も連行されたのかと)

(その可能性が高いだろうね)

 

 血の繋がりが無いとはいえ、母娘揃って連行されるとは。

 デュノア家って呪われてない?

 幾らなんでも受難が多すぎでしょ。

 近日中にアルベール・デュノアが自殺したとかなんてニュースが流れないだろうな…。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 お昼になり、再び皆揃って食堂に集合。

 今度は今朝はいなかった虚先輩も一緒に。

 

「なんだって?」

「デュノア社の社長夫人も居なくなった?」

「うん。アルが調べた情報だから間違いないよ」

 

 流石のレナードも情報収集能力に関してはアルに敵わないようで、新鮮な情報を教えてやったら見事に驚いていた。

 ちょっとだけ気分が良い。

 

「けど、あいつがいなくなると、残るのは…」

「彼女…ですね」

 

 乱ちゃんとヴィシュヌが横目で食堂の端の方を見ると、そこには一人寂しく食事をしている誇りあるドイツ軍人(笑)のラウラ・ボーデヴィッヒがカレーを食べてた。

 

「パッと見は大人しくしているが…」

「それは今だけだろうな。加奈や本音の話を聞く限り、奴の実態は爆発寸前の爆弾のようなもんだ」

「何が切っ掛けで爆発するか分からない…ってことね」

「あーゆーのが一番厄介だよね。暴走したら何をするか分からないし」

 

 ロランにマドカ、玉芳や玉蘭が神妙な顔をしながら語り合う。

 四人が言った通り、アイツは制御不可能な暴走列車みたいな存在だ。

 精神性が幼稚なのが更に質が悪い。

 ある意味、アイツの存在自体が織斑千冬がどれだけ教師に向かないかを証明しているに等しい。

 本人は全く自覚していないだろうけど。

 

「アイツに関しても、別にこっちから何かをする必要はないでしょ」

「どうして、そう思うんですか? 加奈さん」

「あーゆー無駄に自信過剰な奴は、自分から勝手に破滅していくからですよ。虚先輩」

 

 シャルロット・デュノア以上に単純明快だから、私達が知らない所でいつの間にか問題を起こして追放されるんじゃない?

 いざとなれば、ラウラ・ボーデヴィッヒ限定の『切り札』も使えるしね。

 昔取った杵柄ってやつだわな。

 どんな人間とも知り合いになっておくもんだなって実感するよ。

 どこで誰がどんな形で必要になって来るか分からないし。

 

「ウチのおばさんも大変そうにしてたけどよ、生徒会の方も大変な事になってんじゃねぇか?」

「そうですね。一度に大勢の生徒が退学したせいで仕事に追われています」

「本心は?」

「学園最大の問題が解決したので、大変だけどやり甲斐はあります」

「だと思った」

 

 他の高校とは違い、このIS学園の生徒会は学園上層部に限りなく近い位置にいる。

 なので、学園側の問題は即ち生徒会の問題でもあった。

 

「出来るだけ早く、なんとかして欲しいかも。お姉ちゃんが『疲れたー』って何度も電話してくるから」

「すみません…お嬢様。あの人には私から言っておきます」

 

 幾ら当主としての能力が無いからって、生徒会長らしい仕事ぐらいはしてくれよな。

 仮にも私達生徒のトップだろうが。

 

「そっちに関しては私達じゃどうにも出来ないから、今は一刻も早くアーバレストを完全修復することに専念しますかね。あと少しで終わりそうだし」

『はい。今のペースならば、今度開催される『学年別トーナメント』には間に合うかと』

 

 そんなのもありましたねー。

 開催の日にドイツ軍人女がいるかどうかは疑問だけど。

 

 

 

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