面倒くさいので、取り敢えず寝る ~IS編ifストーリー~ 作:とんこつラーメン
放課後になって、私達はいつものように整備室へと向かってアーバレストの修理を行っていた。
本当なら、これこそが私達の本来の予定なんだけどね…。
気のせいか、最近は妙に来れてなかったような気がするし。
でも、それももうおしまい。何故なら…。
「お…お…お…」
「「「「「終わったぁ~…」」」」」
ようやく、アーバレストの完全修理が完了したから。
今だけはIS学園にいてよかったって思うよ。
設備が整ってくれてたから、こうして修理も捗ったことだし。
『お疲れ様でした。軍曹殿』
「うん。アルもご苦労様。なんとか学年別トーナメントには間に合ったね」
『そうですね。これならば問題は無いでしょう。Λ・ドライバの使用にも支障はありません』
「よかった。よかった。皆もありがとね。修理を手伝ってくれてさ」
私一人だけだったら、間違いなくもっと時間が掛かってたよ。
頼れる友人がいるってのは良いわよねぇ~。
「「礼には及ばないよ。加奈の為なら、なんのそのさ。え?」」
…レナードとロランの長文が綺麗に被った。
こんな事ってあるんだな…。
「簪も、自分の方も大変なのに手伝ってくれてアリガトね」
「気にしないで。いい気分転換になったし、いい勉強にもなったし」
どうやら、簪も簪で原作と同じように自分の機体の製作が途中で行き詰っていたらしく、その気分転換と後学の為と言う理由で私達の事を手伝ってくれていた。
いやー…プログラムに強い子がいるってのはマジで心強かった。
流石の私も、OS周りは専門じゃないからね…。
「御礼代わりと言っちゃなんだけど、今度は私が簪の機体製作を手伝うよ」
「え? でも…」
「気にしない。気にしない。ここまで来たら一蓮托生だって。それに…」
「それに?」
「アルやレナードならマルチロックオンの事も分かるかもだよ?」
分かるよな?
そんな意味を込めてアルの本体であるアーバレストとレナードにアイコンタクトをした。
「フッ…当然だ。加奈の友人ならば俺の友人も同然。喜んで手伝わせて貰おう」
『私もです。マルチロックオンシステムの事ならば、世界中のネットワークを通じて無数に資料をご用意できます』
「だってさ」
そして、この二人が手伝うと言うのなら、他の皆も名乗りを上げてくるわけで。
「なら、私達も手伝おうじゃあないか」
「当然よね。もう簪と私達は友達なんだし」
「そうですね。困っている友人を助けるのは当然の事です」
「お前の事を早々に見切った愚かな倉持の連中に思い知らせてやれ。自分達が逃がした魚の大きさをな」
「みんな…」
ダリル先輩や夏姉妹も笑顔で頷いている。
少なくとも、この場にこの提案を断るような薄情な奴はいない。
「良かったね! かんちゃん!」
「うん…うん…!」
さーて。
また明日から忙しくなるぞー!
でも流石に今日ぐらいはゆっくりとしたいかな。
「んじゃ、皆で食堂にでも行って休みますか」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
ひと仕事終えた後のデザートはマジで格別ですなー!
いつも食べてるチョコレートパフェがいつも以上に美味く感じるー!
「そう言えば、先程マルチロックオンシステムと言っていたが、君の専用機は多弾頭ミサイルでも内蔵しているのか?」
「うん。他にも荷電粒子砲が二門と、後は中距離での白兵戦用に刀身が振動する薙刀を装備する予定」
そういや、確かそんな装備構成だったっけ。
マジで後方支援機としては超優秀だよね。
アーバレストにも多数の射撃武器はあるけど、その殆どが近~中距離がメインになってるし。
アサルトライフルやらボクサーやら。
一応、狙撃砲も有りはするけど、それはあくまで複数人での作戦行動をする時にしか使わないしな。
少なくともアリーナで試合をする時には絶対に使わない。
自分も相手も見える場所で狙撃するなんて普通に馬鹿丸出しだし。
「かんちゃんは、薙刀がちょーちょー強いんだよー」
「へー…」
って事は、安易に懐に飛び込んでも柄の部分とかで普通に切り返してくる可能性が高いってことか。
長柄武器だからって油断をして『懐に飛び込めば楽勝じゃん』って思ってる奴を容赦なくぶっ飛ばす…と。
大人しそうな顔をして、やることエゲつねー。
「遠近共に隙が無い…か。同じ候補生として、どこかで試合をする機会もあるかもしれないし、その時は手強い相手になりそうだね」
「ですねー…。上手くミサイルの弾幕を避けられるか…に掛かってるんだろうけど…あんまし自信ないなー…。アタシの機体は近づいてからが本領発揮出来るのに…」
「マルチロックオンがある以上、避けるのは至難の技でしょうね。接近戦が主戦場なのは私も同じなので、簪さんは手強い相手になりそうです」
「そうだな。私のゼフィルスのビットでも手数は足りないだろうし…シールドビットで防げるミサイルの数もたかが知れてるだろう」
「いざとなれば『肉を切らせて骨を断つ』の精神で突貫するって手もありかもだけど…」
「そこまで来ると、もう殆ど賭けだよね、お姉ちゃん。ミサイルだけじゃなくて荷電粒子砲まであるんだし…単純な火力勝負じゃ絶対に勝てない。となると…」
「オレの『ヘル・ハウンド』の炎でミサイルを誘爆させるって手もありはするが…流石に荷電粒子砲は炎じゃ防げねぇしな…」
専用機&候補生組が一斉に簪の対策を練り始めてるし…。
それだけ彼女は将来的に強敵になり得るって証拠なのかもな。
「おぉ~…皆がかんちゃんに注目してるねー」
「あわわ…まだ機体も完成してないのに…」
機体が完成したら、簪も私達の特訓に参加させるのも良いかもね。
私から見ても簪は筋が良いし、鍛え甲斐がありそうだ。
いっそのこと、めちゃめちゃに強くして姉を超えさせるのも面白そう。
ホッコリとした空気の中『明日から楽しくなりそうだなー』なんて久々に人気な事を考えていると、いきなり私達の耳に気になる声が聞こえてきた。
「ねぇねぇ。なんか友達から怖いLINEが来たんだけど」
「何それ? どんなの?」
「なんか、第三アリーナで専用機持ちが暴れてるんだって」
「マジで? その専用機持ちって誰? 一言に『専用機持ち』って言っても今年は割と沢山いるじゃん」
「えっとね…友達も名前はよく知らないんだけど、一年一組の転入してきた、妙に名前の長いドイツの子…らしいよ?」
「なんじゃそりゃ。そんな子なんていたっけ?」
「私もよくは知らなーい。専用機持ちも、大勢いればそこまで珍しくはないしねー」
それは…もしや『アレ』か?
原作で言う所の、あの『セシリア・オルコット&凰鈴音フルボッコ事件』か?
でも、当人達はもうとっくに学園からいなくなってるし…他の専用機持ちも全員ここにいる…。
なら、アイツは一体どこの誰に暴力を振るってるんだ?
あの小娘の逆鱗に触れそうなネームドキャラって他にいたっけか?
「ん? 余所の方を向いて、どうしたんだい?」
「あ…ロラン。実は…」
さっき聞こえてきた会話の内容を皆に説明すると、全員が一斉に大きな溜息を吐いた。
「今度は彼女か…。いや、こうなるであろうことは我々も予想はしていたが…」
「動くの早過ぎ。っていうか、マジで何やってんのって感じ」
「ですね…何が目的なのやら…」
「行ってみるか? どうするにしても、まずは現場を確かめてみない事には始まらない」
「マドカの意見に賛成。いざとなれば私達が介入すればいいだけの話だし」
「私達なら、あんな奴なんて楽勝だよ」
「だな。取り敢えず、行ってみようや」
「それがいいかも。でも、行く前に先生の誰かに連絡はしておいた方がいいと思う」
「怪我とかしてないと良いけど…」
「また妙な事になって来たものだ」
『念の為、私の方でもアリーナの監視カメラをハックしておきましょう』
うーん…本当に、このメンバーのいざと言う時の一致団結権が凄い。
癖が強いメンバーだけど、だからこそ本当に頼もしいし、全幅の信頼も置ける。
レナードは…まだ微妙だけど…。
「では、現場に急行するって事で満場一致ってことで。行きますか」
なんだろう…今の私達、なんかIS学園の風紀委員みたいになってない?
専用機持ちである以上、他の一般生徒達の代わりに学園内のIS関係のトラブルには率先して向かわなくちゃいけないのは理解してるんだけどね…。
なんて愚痴を言ってても仕方がないか。
行くと決まった以上は、グチグチ言ってても意味は無い。
兎に角、今は現場に急行だ。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
現場である第三アリーナに向かうと、それはもう酷いことになっていた。
「どうした? さっきまでの威勢はどこに行った?」
「もう…止めて…」
「私達が…悪かったから…」
打鉄を装備している名も知らぬ一般生徒二人が、自分の専用機『シュヴァルツェア・レーゲン』を装着したラウラ・ボーデヴィッヒによってボロボロにされた上で足蹴にされている。
あぁ…こう来ましたか。
退場済みの原作ヒロインの代わりに彼女達が犠牲になってしまったと。
でも…どうして彼女達なんだ?
あの女の拠り所となっている織斑千冬や、復讐相手である織斑一夏もいないのに、一体どうしてこんな事になっている?
今の状況だけじゃ、全く動機が分からない。
「ねぇ…あれ普通にヤバくない?」
「あのままでは命の危険がありますし、訓練機もただでは済みません。行きますか?」
「奴に自分から接触するのは正直、気が進まないが…致し方あるまいか…」
乱ちゃんとヴィシュヌ。マドカ達が今にも飛び出しそうになってると、それをレナードが静止した。
「ちょっと待ってくれ」
「ん? こんな時になんだ?」
「ここは…俺が行こう」
「「「え?」」」
レナードが行く…?
それって、専用機を見せるって事か?
「どこかの機会で俺の専用機を加奈に披露をしたいと思っていたし、実戦データも欲しいと思っていたところだ。どうだろうか?」
「別に、私に許可を求めなくても、行きたいなら勝手に行けばいいじゃん。暴力振るうしか能の無い雑魚なら、試運転には打って付けでしょ」
「ありがとう。では、行ってくる。俺の雄姿をどうか目に焼き付けておいてくれ!」
「へーへー」
多分だけど、今度は完全に立場が逆転するだろうな。
あのドイツ娘じゃ…レナードには天地がひっくり返っても絶対に勝てない。
自分でも不思議だけど、何故かそんな確信があった。
後は…先生達が来るのを待つだけか。