面倒くさいので、取り敢えず寝る ~IS編ifストーリー~   作:とんこつラーメン

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面倒くさいので、取り敢えず事情を聞く

 案の定、レナードは専用機であるベリアルの性能を見事に発揮し、ラウラ・ボーデヴィッヒを一方的にフルボッコにしていた。

 

「どうした? どこを見ている? 俺はこっちにいるぞ」

「ぐっ…! がはぁっ…!? う…動きが…うぐっ…! 捉えられない…!」

 

 ここまで一方的だと逆に面白い。

 ボコられている相手が、ついさっきまで素人相手にイキっていた奴だから尚更。

 

「な…なぁ…加奈…」

「んー? どったのロラン」

「大丈夫…なのか? あれは流石に…」

「レナードなら大丈夫だよ。ちゃんと力はセーブしてるっポイし、感情の制御も出来てる。一方的なのは、単純にあの小娘が弱すぎるだけ」

「そうなのか…」

 

 まだロランは心配なご様子。

 なら、いい例え話でもしようか。

 

「もしレナードが感情的に行動する奴だったら、今頃は『どこぞの男装フランス人』の死体が学園内に転がっていたよ。でも、実際には転がってない。だから大丈夫。OK?」

「これ以上ない程の説得力だな…」

「でしょ?」

 

 あの女は今頃、権利団体の連中にたーっぷりと可愛がられてるだろうねー。

 

「加奈…ちょっといいか?」

「今度はマドカか。どったの?」

「どうして、奴のような人間が軍人で特殊部隊の隊長で代表候補生なんて立場にいるんだ?」

「と言うと?」

「実力も無く、性格は最悪。力に溺れて、他者への思いやりも無ければ、歳上への敬意も無い。そんな奴がどうして、今のような立場にいる? どう考えてもドイツ軍にとってデメリットしかないような気がするんだが…」

「あー…それな」

 

 流石はマドカ。

 私が言いたい事を全て言ってくれた。

 だから私がマドカがいっぱいちゅき。

 

「そこら辺の『事情』を知ってるであろう人物に、今から電話をするところなんだよ」

「そう…なのか?」

「そうなのです。てなわけで、ぽちぽちぽち…ってな」

 

 私のスマホに登録してある『とある人物』に電話を掛ける。

 国際電話は料金が高いから、早く出てくれると助かるなー。

 

「あ。繋がった。もしもしもしもし?」

『このお声は…もしや、相良軍曹殿ですか?』

「え? この声って…まさかのクラリッサ? なんで?」

 

 どうしてクラリッサが電話に出てる?

 これはちょっと予想外だな。

 

「一応、私はそっちの基地司令さんの直通の電話をしたつもりなんだけど…」

『そう言えば、アナタは司令とは個人的にも親しかったですね』

「まぁね」

 

 子供とか大人とか関係なく、私の能力を純粋に評価してくれた人間の一人だからね。

 そりゃ自然と親しくもなるもんですわ。

 

『司令は現在、所用により席を外しております』

「ってことは、こうして電話に出たクラリッサが司令代理をしてるってこと?」

『はい。今の基地内で司令の次に階級が上なのは私ですから』

「それもそっか」

 

 ちょっと趣味がアレなだけで、人間的にはかなりしっかりとしているからね。

 私が基地司令でも迷わずクラリッサを代理に指名するわ。

 

『それで、本日などのような用事で? 私の記憶が正しければ、軍曹殿がこうしてこちらに電話をしてきたのは、これが初めてだと存じますが』

「そちらさんの『隊長殿』が好き放題に暴れた挙句、今は二人目の『男性IS操縦者』にボコられてる真っ最中なんだよねー」

『…貴方が何を仰りたいのかが分かりました』

「マジか。やるなクラリッサ」

『軍曹殿は私の推しですから』

「おいこら。どこで知った、その言葉」

 

 まーた、何処からか間違った日本の知識を学習しやがったな。

 誰が推しだ。誰が。

 

「なんだろうか…またライバルが一人増えたような気がする」

 

 そして、隣りでロランがニュータイプみたいな事を言いだした。

 

「ついさっき友達も言ってたんだけどさ、どうしてあんな奴が今の地位にいるの? 少なくとも、私がドイツにいた頃にはあんな奴はいなかったでしょ」

『はい。彼女は軍曹殿と入れ替わるような形で部隊に配属されましたから』

「やっぱりか」

 

 またなんとも奇妙な因果だこと。

 実に私らしいわ。

 

「…当ててやろうか? あの小娘が軍人で候補生で隊長なんてのになった理由」

『…言ってみてください』

上層部(うえ)の連中の道楽。暇潰し。もしくは実験。どーよ?」

『…正解です。アナタは探偵ですか?』

「今はただの女子高生だよ」

 

 その前に色んな経歴が付くけどね。

 

『これは本来、機密事項なのですが…貴女ならば大丈夫でしょう』

「わー。私ってば信用されてるぅー」

『当然ですとも。アナタは我がドイツ軍にとって盟友も同然ですから』

「盟友って…」

 

 そんな風に呼ばれるような事…何かしたっけ?

 割とマジで記憶にない。

 

『彼女…ラウラ・ボーデヴィッヒは、ドイツ軍が密かに研究を進めてきた人工兵士…所謂『遺伝子強化素体(アドヴァンスト)』なのです』

「…やっぱりね」

 

 ま、最初から知ってたけど。

 ここは敢えて初見っぽい反応をしておこう。

 

『ですが、彼女は失敗作だった。身体、精神共に未成熟。更にはその目にナノマシンを投与することで自身の反応速度を向上させる改造にも適応できなかった』

「ソレ系の話も聞いたことあるかも」

 

 なんとかの瞳…だったっけ?

 興味なんて皆無だったから忘れた。

 

『だが、莫大な資金を費やして生み出した折角の素体を無駄には出来ないと言う事で急遽…』

「シュヴァルツェ・ハーゼ隊に入れられた…か」

『はい。勿論、そこでも彼女は落ちこぼれでした。彼女が教官として来るまでは』

「織斑千冬か」

『えぇ。彼女の指導の下、ラウラはメキメキと実力をつけていった。最初とは別人と呼べるほどに』

「その割には今でも超絶弱いけど?」

『確かに強くはなりましたが、それはあくまで『最初に比べれば』という話で、相対的に最強になった訳じゃありません』

「そりゃそーだ」

『上層部も、これで少しはラウラが使い物になればいいと思って織斑千冬を半ば無理矢理に近い形でドイツに呼んだのでしょうが…そこで致命的な誤算が複数発覚した』

「それは?」

『一つ目は、その性格が最悪に近い形で歪んでしまった事。それは実際に目にした軍曹殿もご存じであると思いますが』

「だね。まー…弱いくせにアホみたいに粋がってたわ。素人の一般生徒を痛ぶって足蹴にしてさ。この時点で軍人失格でしょ」

『ですね。軍人らしからぬ性格になってしまったせいで、彼女は調子に乗るようになっていった』

「だから、部隊長にして少しは落ち着かせようとしたってか? それ絶対に逆効果でしょ」

『その通り。暫定的に少佐と言う階級を与え、部隊長と言う地位を与えても彼女は全く変わらなかった。それどころか、前以上に調子に乗るようになっていった』

「だろうね。で、もう一つの誤算は?」

『どれだけ鍛えても、未だにラウラは部隊内最弱な事です。相良軍曹…貴女が私達全員を徹底的に鍛え上げてくれたお蔭で』

 

 私が皆を鍛えたからラウラと他の部隊員との実力差が全く埋まっていない?

 それはー……え?

 

『今から四年前…幼いながらも既に裏の世界で超一流の傭兵として大活躍をし、各国の軍にも名が知れ渡っていたアナタは、ドイツ軍に『依頼』と言う形で仕事を受け、まだ私が部隊長をしていた当時のシュヴァルツェ・ハーゼ隊に教官と言う形で派遣されてきた』

「そんなこともあったねー。懐かしいなー」

『正直、驚きました。こんな幼く、可愛らしい少女が現役の傭兵で、今日から自分達の教官でもあると』

「それが普通の反応だよ。誰だって驚く。私だって驚く」

 

 実際、当時の私も『なんで教官なんてさせられてるのッ!?』って思ったもん。

 仕事だから我慢してやったけどさ。

 

『その後に別の意味でもっと驚かされたんですけどね。小さな体から感じる歴戦の兵士顔負けの圧力に、異次元の実力。私達が束になっても掠り傷一つすら与えられなかった。そして、その卓越した指導力は私達全員の潜在能力を短期間で引き出していった。その結果、ハーゼ隊はドイツ軍屈指の強豪部隊になることが出来た』

「そこまで特別な事をした覚えは無いんだけどなぁ…」

『アナタはそうかもしれませんが、私達からすれば非常に特別なことなのですよ。織斑千冬も決して悪くは無かったが、貴女には到底かなわない。彼女はどこまで行っても『アスリート』であり、それ以上の事は指導できない。でも、アナタは違った。体術や戦術、技術などを全て徹底的に叩き込んでくれただけでなく、兵士としての大切な精神をも教えてくれた。アナタの教えは未だにハーゼ隊全体が守っているんですよ。無論、ラウラ隊長以外は…ですが』

 

 そこまで私に心酔してたんかい…普通に知らなかった。

 四年越しに知る真実ってか。

 

「っていうか、今でもあの女が最弱なら、どうして調子に乗ってるんだよ? それっておかしくない?」

『おかしくはありませんよ。それは単純に私達が上層部の命令で『お芝居』をしているだけですから』

「あたかも自分達が弱いように見せかけて、ラウラ・ボーデヴィッヒを立てるように?」

『そうです。それで少しは隊長としての自覚が芽生えれば…と思ったそうですが…』

「全く効果は無し。それどころか、今まで以上に増長していった。そんな奴をどうして日本に送り出した? それ確実に自国の恥を晒すだけだろうが」

『その理由は単純明快ですよ。ラウラ・ボーデヴィッヒを『合法的』に除隊させる為です』

「あー…なんか読めてきたわ」

 

 私の予想が本当なら、ドイツ軍も中々に面白いことをするじゃん。

 考えてる事はイギリスと殆ど一緒だよ。

 

『織斑千冬をドイツに連れ戻すと言う阿呆丸出しの理由を敢えて飲み込み、上層部は彼女を日本へと送った。そうすれば必ず、なんらかの形で問題を起こす可能性が高い。主に暴力事件などを』

「実際に私の目の前で起きたしね」

『それを理由にし、ラウラ・ボーデヴィッヒ少佐を処分と言う形で除隊。実際には廃棄処分にするつもりのようです』

「廃棄処分…ねぇ…」

 

 人工物には人権も無いってか?

 マドカが聞いたらマジ切れしそうだな。

 絶対に聞かせられないわ。

 

『なので、彼女に関しては好きにして構いません。どれだけ痛めつけてもドイツ軍は何も文句は言いませんし、国際問題にもなりません。この事はもう既にIS学園の上層部にも話を通してあると聞いています』

 

 学園上層部って…それIS委員会だから。

 うっわ…その時点でもう、あの小娘の末路確定じゃん。

 自業自得だから哀れとは思わないけど。

 

「なら、またクラリッサが部隊長に戻るんだ?」

『そうなります。もしかしたら、後に私が司令代行としてIS学園に赴き、ラウラ・ボーデヴィッヒの回収及び、学園側へのお詫びをしに来日するかもしれません』

「司令は来ないんかい」

『仕方がありません。先程も言いましたが、あの方は本当にご多忙ですから。今日の用事だって、ラウラの処分に関する会議をしに行ってますから』

「軍の幹部を引っ張り出すほどの不祥事をしてる時点で軍人人生終了のお知らせじゃない」

 

 もう完全にラウラと言う存在は、ドイツ軍にとって邪魔でしかないのか。

 最初こそは、哀れな人工兵士を見て楽しんでいたかもだが、織斑千冬の脳筋指導によって歪み、取り返しのつかない領域にまで至ってしまった。

 ある意味、彼女もまた『織斑』の立派な犠牲者であるとも言える。

 だからと言って同情はしないし、助けようとも思わないが。

 そうするだけの価値を奴には微塵も見いだせない。

 ドイツ軍へのコネも知り合いも既に吐いて捨てるほどに持ってるし、それらに対する信頼度なんてお互いにカンストしてる。

 つまり…ドイツ軍の『ラウラ・ボーデヴィッヒ処分』と言う決定に賛成して協力する理由はあっても、反対して彼女を助ける理由は皆無ってこと。

 実際に何かをしているのはレナードなんだけどね。

 

「もうすぐフルボッコタイムも終了するみたい。おーお…これまた器用な事をしてるじゃないの。機体は出来るだけ傷つけず、パイロットだけをボコボコにしてるよ。ちゃんと、後で修理をするドイツ軍の事も考えてるね」

『それは有り難いですね。ラウラの治療費に使う金は微塵もありませんが、シュヴァルツェア・レーゲンの修理はしない訳に行きませんからね』

「しれっと本心が垣間見えたけど…聞こえなかった事にする」

『アナタのそんな所が私は大好きなんです』

「はいはい」

 

 まるで息を吐くように好き好き言いやがって。

 私は忘れてないからな。

 教官時代、私のベットに鼻息を荒くして侵入してきたクラリッサの事を。

 あの時にはもう既に処女喪失してたから別に気にしなかったけど。

 

「んじゃ、もうそろそろ先生も駆けつけてくるだろうから、ここらで切るよ。久し振りに話せて割とマジで楽しかった。またね」

『はい。こちらもアナタと話せて楽しかったです。軍曹殿が元気だと知れば、きっと皆も喜びます』

「さよか。皆にもよろしく言っておいて」

『承知しました。では、これで私は失礼します』

「ばいばーい」

 

 ふぅ…クラリッサの奴…前にも増して日本語が上手になってやがった。

 本当に日本に来たりしないよな?

 来たら来たで、また面倒な事になりそうな予感がヒシヒシと感じるんだが…。

 

 

 

 

 

 

 




ヒロインにクラリッサ追加です。





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