面倒くさいので、取り敢えず寝る ~IS編ifストーリー~   作:とんこつラーメン

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面倒くさいので、取り敢えず交代する

 レナードが原作通りの暴挙を行ったラウラ・ボーデヴィッヒをボコボコにし始めて、気が付けば20分近くが経過した。

 

「おーおー…もう哀れなほどにボッコボコですなぁー」

 

 シールドバリアーがあるから辛うじて人の形を保っているが、それが無かったらとっくにISも中身も原形すら残さずにグッチャグチャになっていた事だろう。

 そう思うと、ある意味であのISも犠牲者だな。

 

「アレでドイツの代表候補生を名乗っているのか…?」

「奴が偽りの力と暴力に溺れていたと言う良い証拠だな。同じ負けるでも、実力ある代表候補生ならば最低でも一矢報いるぐらいの事は絶対にやってのける筈だ」

「でも、実際にはー…」

「一矢報いるどころか、最初からずっとレナードさんに翻弄されっぱなしになってますね」

 

 うーん…私の大切な友人達が今日も毒舌で飯が美味い。

 

「あら?」

「ん? どした玉芳?」

「急にレナードが倒れ伏したアイツに近づいて何か話しかけてる」

 

 ホントだ。

 アイツは一体何をやってんでっしゃろ。

 

「アル。集音機能」

『了解』

 

 これで二人の会話が私達にもよく聞こえるようになった。

 さてはて、レナードはアイツに何を言っているのかにゃ?

 

「おい…ラウラ・ボーデヴィッヒ。お前…サッカーは好きか?」

「な…ん…だと…?」

「サッカーだよ。サッカー。俺は好きだ。キーパー以外は決して足以外は使えず、足だけで全てのパフォーマンスを行うサッカー選手は本当に凄いと思う」

 

 いや…マジで急にどした?

 サッカーは私も普通に好きだけど。

 少なくとも、テレビでワールドカップが放送された時、日本チームを応援するぐらいには。

 

「特にゴール際の駆け引きは手に汗握ると思わないか?」

「それ…が…どう…し…」

「分からないか? 俺の言いたい事が」

 

 なんとなくだけど、私は分かった。

 元ネタはかなり古いけど。

 

「今からサッカーをしよう。勿論、ボールは……」

 

 レナードが無機質なベリアルの顔を少佐殿に近づけながら『死の宣告』を放った。

 

「お前だ」

「なっ…!?」

 

 眼帯女の髪を引っ張ってから地面に放り投げ、ゴロゴロと転がった後にボーデヴィッヒ少佐殿は恐怖に顔を引き攣らせながら全身を震わせた。

 それに向かって静かに、ゆっくりと歩いてくるベリアルの姿は確かに怖い。

 普通なら発狂もんだろう。

 

「おいクソガキ」

「ひぃっ!?」

「小便は済ませたか? 神様にお祈りは? 部屋の隅でガタガタ震えて命乞いをする準備はOK?」

 

 おーっとー?

 とある英国最強老人執事さんの名台詞を言いやがりましたよー?

 何故か不思議と似合っているから怖い。

 

「それじゃあ…」

 

 ベリアスの姿が掻き消え、一瞬で接近する。

 もう既に右足は大きく後ろに振り上げていて…。

 

「キックオフだ」

「や…やめ…ぶっ!?」

 

 遂に出た命乞いも虚しく、レナードの蹴りはラウラ・ボーデヴィッヒの顔面にクリーンヒット。

 文字通り、豚のような悲鳴を上げながらアリーナの壁に向かってぶっ飛んでいった。

 

「が…あ…あぁ……」

 

 白目を剥き、鼻血と涎と涙を流しながら壁から崩れ落ち、大の字で地面に倒れた。

 

 そして、そのタイミングでスコールさんとオータムさん、山田先生の三人が駆けつけてきた。

 

「加奈ちゃん! みんな!」

「状況はどうなってやがんだっ!?」

「ご覧の通りです」

「えっ…!?」

 

 三人はステージの惨状を見て絶句した。

 見た事の無い謎の黒いISが、同じ色のISをボッコボコにしていたんだから。

 

「あ…あれは…?」

「レナードの専用機である『ベリアル』。私のアーバレストと同じ『Λ・ドライバ』搭載機みたいです」

「あ…彼の専用機ですってっ!?」

「しかも、あのアーバレストと同じ単一使用能力を持ってるって…」

「物凄い超高性能機なんじゃ…」

 

 まぁ…少なくとも、アーバレストよりは確実に機体性能は上ですわな。

 そこら辺は私の技量で十分にカバー出来るけど。

 

「問題は…」

「あっちの方だな…」

「ボーデヴィッヒさん…」

 

 もう見るも無残な姿。

 でも、因果応報なので誰も何も言わない。

 

「大丈夫ですよ。ちゃんとレナードは手加減してますから」

「あれでか…?」

 

 オータムさんが怪訝な顔をするのも無理は無い。

 手加減したとは思えないような惨状だから。

 

「もし本気でぶっ潰す気なら、とっくの昔に終わってますから」

「そ…そうですか…」

 

 山田先生がドン引き。

 ちょっと可愛いと思ったのは秘密。

 

「しかも、器用にISだけは傷つけないようにコントロールしてたみたいですよ?」

「本当だわ…。良く見たら、傷ついているのは操縦者だけで、ISは摩擦による細かい傷の他には土とかの汚れしかない…」

 

 Λ・ドライバの恩恵あってこそだな。

 いやマジでなんでもアリですな。

 私が言うのもなんだけど。

 

 でも…なんだろう。

 何か凄く『大事なこと』を忘れているような気が…なんだっけ?

 

『軍曹殿』

「どったのアル?」

『彼女のIS『シュヴァルツェア・レーゲン』に謎の反応があります』

「謎の反応とな? アルでも分からないの?」

『現状は…ですね』

「ふーん…」

 

 レーゲンの中にある謎の反応…………あ。

 

「アル。急いであの『シュヴァルツェア・レーゲン』を分析して」

『了解』

 

 すーっかり忘れてた。

 あれには『VTシステム』が入ってるんじゃン。

 うっわー…ハズカシー。

 

『分析完了。軍曹殿。レーゲン内の謎の反応の正体が判明しました』

「報告してー。ちゃんと皆にも聞こえるようにねー」

『はい。皆さん、良く聞いてください。あのIS『シュヴァルツェア・レーゲン』の内部には…』

 

 いきなり溜めるね。

 ここはクイズ番組の会場じゃないぞー。

 

『ヴァルキリー・トレース・システムが搭載されています。通称『VTシステム』です』

「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ――――――っ!!!???」」」

「「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――っ!!!!????」」」」

 

 見事な反応、ありがとうございましたー。

 良いリアクションをしてくれるねー。

 

『しかも、通常とは違い細工をされているようで、機体のSEが枯渇。もしくは枯渇寸前になり尚且つ、搭乗者の精神が追い詰められた時に強制発動する仕様になっている模様です』

「「「「「「「……え?」」」」」」」

「それって…」

「もしかして…」

「ヤバくね…?」

 

 皆が呆けて、簪が冷や汗を流して、本音ちゃんが目を丸くして、ダリル先輩が顔を引きつかせた。

 

「はぁ…しゃーない」

「加奈…?」

 

 丁度いいし、私も久し振りに動きますかね。

 いい加減、体も訛りそうだし。

 

「ちょっち行ってくる。ベリアルの性能を考えると、VTシステムが発動したら、どんなに手加減しても操縦者(中身)ごと潰しそうだ」

「分かったよ。気を付けてくれ…加奈」

「ん。ありがと、ロラン」

 

 本当なら学年別トーナメントで本格的な復帰をするつもりだったけど、こればっかりは仕方がないか。

 偶には運動もしないとね。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「てなわけで選手交代だよ」

 

 VTシステムが発動する前にレナードの元まで行って、全ての事情を説明する。

 私からの話なので素直に聞いてくれた。

 

「成る程。確かに、VTシステムは発動自体に大量のSEを消費する為、本来ならば機体や操縦者を保護するためのシールドバリアーが消失し、その分のエネルギーを全てシステムの維持に回すから、必然的に中の人間は危険に晒される事になる。俺のベリアルでは中身を傷つけずにシステムだけを破壊するのは不可能だな。どうやっても中身ごと吹き飛ばしてしまう」

「でしょ? だから交代」

「分かった。ここは加奈に任せよう。今までずっと画面越しにしか見られなかった君の雄姿をこの目で見られると思うと、今から興奮してしまうよ」

「興奮言うな。せめてワクワクって言え」

 

 お前が言うと割と普通に洒落にならないんだよ。

 主にR-18的な意味で。

 

「では、そろそろ俺は行くよ。観客席から君の健闘を祈ろう」

「さんきゅ」

 

 そう言うと、レナードはベリアス姿のまま爽やかに手を振りながらピットに戻って行った。

 うん。普通にシュールだったな。

 逆に面白かった。

 

「さて…っと。アル」

『了解。アーバレスト展開します』

 

 私の身体が光りに包まれ、一瞬でアーバレストが展開される。

 試しに両手とかを動かしてみるけど、全く問題は無い。

 完璧に修復されていた。

 

『軍曹殿。シュヴァルツェア・レーゲンに動きが』

「ん?」

 

 さっきからずっと気を失っていたラウラ・ボーデヴィッヒの身体が、まるで操り人形のように四肢を躍らせ、突如として液状に変態したISに飲み込まれていった。

 

(さーて…一体どんな姿になるのやら)

 

 原作通りの織斑千冬の姿なのか。それとも…。

 

『軍曹殿。これは…』

「うん。まんまですな」

 

 ちょっとだけフラグを立てたけど、やっぱり無駄だったみたい。

 フツーに暮桜を身に纏った織斑千冬の姿を模しやがった。

 本当に芸が無い奴で加奈ちゃんはがっかりです。

 せめて、変化したのがコダールとかだったら本気を出せるのに。

 

『軍曹殿。どうしますか?』

「取り敢えず、Λ・ドライバ起動するよ」

『了解』

 

 VTシステムがこっちを見ている中、アーバレストの各部装甲が展開して力場が発生。

 ラムダ・ドライバもちゃんと発動できてる。

 修理に協力してくれた皆にはマジで感謝しかない。

 この借りは絶対に数百倍にして返そう。

 まずは高級レストランにでも誘ってみるか?

 

『武装はどうしますか?』

「単分子カッター。後は対戦車ナイフ。下手にボクサーとか使ったら、それこそ中身がミンチになっちゃうし」

『了解です。単分子カッターと対戦車ナイフを拡張領域から展開します』

 

 腰のアタッチメントに鞘に入った状態で単分子カッターが展開、装着され、顔にある専用のアタッチメントに対戦車ナイフが展開された。

 

「これでよし…っと。後は斬って斬って斬りまくるだけだな」

『敵VTシステム。攻撃態勢に入ります』

「およ?」

 

 アルの言う通り、VTシステムはその手に握っている黒い剣…恐らくは雪片を模したと思われる剣を両手で握りしめてから大きく振りかぶった。

 

「はぁ…アホくさ」

 

 両手の腕力と振り被りの威力を乗せた一撃は、本来なら凄まじいパワーを生み出していただろう。

 だが、このΛ・ドライバの前では、どんなに強大な力も等しく無意味だ。

 

「はい残念」

『Λ・ドライバ。安定して稼働しています』

 

 VTシステムの刃はΛ・ドライバの産み出した障壁に防がれ、アーバレストの装甲に触れることすらしていない。

 この時点で既に力の差は歴然だ。

 

「邪魔」

 

 軽く左腕を振るうと、それだけで私を見下ろすほどに巨大なVTシステムの身体が派手に吹っ飛んでから地面に倒れる。

 劣化しているから…とか、所詮は偽物だから…とか関係ない。

 仮にこれが本物でも結果は変わらないから。

 

「ほら…とっとと掛かって来いよ。金メッキ」

 

 サクっと片付けて、ドイツ軍に更なる借りでも作るとしますかねー。

 あと、ついでにアーバレストの修理後の試運転も兼ねて。

 

 

 

 

 

 

 

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