面倒くさいので、取り敢えず寝る ~IS編ifストーリー~ 作:とんこつラーメン
アリーナに突撃する直前に、まずは狙撃砲の一発を脳天目掛けて撃ったのだけど、案の定と言うべきか、呆気なく単分子カッターで真っ二つにされた。
あの動き…やっぱり間違いない。
正直な話、こうして直に動きを見るまではギリギリまで信じたくは無かった。
けれど…ここまで来たらもう納得するしかない。
あの未知のISを操っているのは間違いなくアイツ…ガウルンだ。
私にとって最も因縁深く、そして最も殺したいと思う相手。
普段は平和主義を貫く私だが、相手がガウルンとなれば話は別になってくる。
奴は…こっちの常識じゃ測れないような人間だから。
「よぉ…久し振りだなぁ…カァシィムゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!」
「その名前で呼ぶな。私の本名は『相良加奈』だよ」
「あー…そうだったか? 別にいいじゃねぇか呼び名なんてよ。重要なのは、俺とお前がこうしてまた戦場で出逢ったって事実だろ?」
「知るか。こちとら、お前が来なけりゃこんな場所になんて立つ気も、ISを纏う気も微塵も無かったッつーの」
狙撃砲のトリガーに指を添えたまま、私はステージへと降り立った。
ガウルンの後ろには馬鹿丸出しで倒れている原作キャラ共がいる。
バカな奴等…身の程も弁えずに戦おうとするからこうなるんだよ。
お前らは今までも、これからもアホ面しながら恋愛ごっこでもしてりゃ良かったんだ。
「今すぐにでも、お前の事をぶち殺してやりたいけど…その前に幾つかどうしても聞きたい事がある。それを聞かないと集中してお前を殺せない」
「別にいいぜぇ…カシムの質問にならなんにでも答えてやる。なんせ俺はよぉ…お前の事を世界一愛してるんだからよぉぉぉっ!!!」
また嘘にもなっていない事を。
こいつの『愛』は常人が考えているソレとは全く意味合いが違う。
ガウルンは一種の狂人…戦争狂の類だ。
こいつは常に、殺す価値がある強者しか『愛』さない。
つまり、ガウルンにとっての『愛』とはイコール『殺す価値がある相手』という事になる。
それ以外の相手は路傍の石以下の扱いしかしない。
「さて…そんじゃ、何から話してやろうか…ん?」
私がガウルンから情報を聞き出そうとした時、背後で倒れている連中を回収する為にロランたちが向かい側のピットからISを纏った状態で出てきて、奴らの体を持ち上げた。
何も言わずに黙っているのは、自分達に注意を向けさせない為か。
って…皆に混じってしれっとスコールさんやオータムさんもいる?
同じ教師なのに、あの暴力女とは雲泥の差だな。マジで頼りになるわ。
後で私の秘蔵の焼酎でも御馳走しよう。
「あいつ等は…違うな。さっきの糞どもとは動きも顔つきも違う。俺の方が強くはあるが…成長が楽しみでもある。成る程…あの連中がカシムのダチ公か」
「だったら何? もしも手を出したら、生まれてきた事を後悔させるよ」
「おいおい…お前は俺の事をどんな風に見てんだよ? 俺だって鬼じゃないんだぜ? 誰かを守りたいって気持ちぐらいは持ち合わせてるッつーの」
「どうだか」
この世で最も信用できない言葉だな。
(ロラン…お願い)
(任せてくれ、加奈)
プライベート・チャンネルを使うまでも無い。
私とロランはアイコンタクトでお互いの意思を確認し合った。
…自分で言うのもなんだけど、私ってめっちゃロランに惚れてるな…。
「あー…そーゆーことね。邪魔なゴミを回収しに来てくれたって訳か。気の利いたダチ公じゃねぇか」
「当たり前。私の大切な人達だからね」
「大切…ね」
こんな事を言ってしまえば、普通は『人質にされるかも』なんて嫌な想像をしてしまうかもだが、ことガウルンに限ってそれは無い。
その理由は単純明快で、そんな回りくどいことなんてしなくてもガウルンは真正面から余裕であらゆる相手を蹂躙できるから。
下手な小細工なんてものともしない化け物ほど質の悪い存在は無い。
皆が生ごみを回収し終えたタイミングで、私は改めて質問をする事に。
「まず一つ。どうして生きてる?」
「ん~? 俺が生きてちゃ悪いってのか?」
「誤魔化すな。私とお前が最後に会ったのは今から五年前のアフガン…当時、お前は末期の膵臓癌で、医者からも余命宣告を受けてたじゃない。だからこそ、お前は自分の命を勘定に入れないような作戦ばかりを立て、同時に己の命を顧みないような戦いばかりを繰り広げた。皮肉なことに、お前は死を宣言されてからタダでさえ強かった実力に拍車が掛かった。お前一人に潰された組織や部隊は両手だけじゃ数えきれない」
常に顔は真っ青に染まり、ことあるごとに吐血をする。
憎いと思っていても思わず心配してしまいそうになる程に体調が最悪だった筈。
それなのに、目の前にいるコイツの口調からはそんな感じが全くしない。
(…アル)
(分析完了。敵ISの操縦者ガウルンのバイタルは正常…いや、絶頂と言っても過言ではありません)
あれからもう五年も経過している。
普通に考えれば、ガウルンはとっくの昔に病気で死んでいる筈だ。
「その質問の答えは簡単だ。俺の膵臓癌を治療してくれた奇特な奴がいるからだよ」
「誰よ…その現代のブラックジャックみたいな奴は」
「お前もよーく知ってる『夫婦』さ」
…その言葉だけでなんとなく予想がついてしまった。
末期の膵臓癌を難なく治療し、その上でガウルンのような男を使える者達と言えば…もう『あいつら』しかいない。
「…そのISは何だ。どうして乗れている。どこで手に入れたんだ」
「今の俺達の『
コダール…それがあのISの名前か。
…そうだよな。どんなに否定しても、私の記憶が全てを肯定する。
そもそもの話、『Λ・ドライバ』を内蔵した全身装甲のISなんて作れるのは、この世に『あいつら』しかいないじゃないか。
「ついでに言うと、俺がここにいる理由は、そのスポンサーから言われた仕事の為でもある」
「仕事?」
「あぁ。『大事な大事な愛娘の様子をどうか見てきておくれ』…ってな。ま、こんな事を言わなくても、もうお前のことだ…とっくに真実に辿り着いてるんだろ?」
「…………」
何も言わない。正確には言いたくない。
頭じゃ分かっていても、口に出して認めたくはないから。
「じゃあ、これが最後の質問だ。…どうして、アイツ等をボコッた? お前からしたらゴミ以下のような奴等だろ」
「お前が来るまでの暇潰し&準備運動&デモンストレーション」
「はぁ?」
「俺がここに来た時にはまだお前はこっちにいなかったからな。だから、俺の事に気が付くように花火を打ち上げといてやったのよ。ま、実際には花火は花火でも線香花火みたいに儚かったけどな。正直、どいつもこいつもクソすぎてつまらな過ぎたぜ。専用機持ちってのはみ~んなあんな雑魚ばかりなのか?」
「あいつ等と私の親友たちを一緒にしないで」
「…それもそっか。なら、あの4人が特別に糞雑魚過ぎたってだけか。道理でな…納得したよ」
はぁ…原作キャラに関する見解だけガウルンと完全に一致しているのが本気で腹立つ。
悔しいけど、こいつは根っこの部分に冷静な自分を残している…だからこそ最も恐ろしい相手でもある。
「カシムよぉ…こっちからも一つだけ聞いてもいいか?」
「何よ」
「お前よぉ…まさかとは思うが、本気で『
「…どういう意味よ」
「誤魔化すんじゃねぇよ。テメェだって理解してんだろ? Λ・ドライバ搭載機と戦うって事がどういう意味なのかって事をよ。幾ら、俺とお前の実力が互角だっつっても、機体の性能の差が出ちゃ意味がねぇし、面白くもねェ」
…そんな事はガウルンに言われなくても十分に理解してる。
ハンデがあるとか、そんな次元の話じゃない。
ぶっちゃけ、勝負にすらなりはしない。
『妖精の目』を使えばΛ・ドライバの産み出す『障壁』は貫通出来るけど、それだけだ。
奴が繰り出す攻撃を防ぐことは絶対に出来ない。
それこそ…こっちが同じΛ・ドライバを持っていない限りは。
「まさか、俺が何も知らねぇと思ってんじゃねぇだろうな。こちとら全部聞いてんだぜ? お前の専用機『ガーンズバック』が……」
「言うな馬鹿。黙ってろ。言ったら殺す」
「『
「言うなっつってんだろうが!! このクソ難聴野郎が!!!」
余計な事を言ったガウルンにプッツンした私は、思わず感情に任せて狙撃砲を撃ってしまった。
だが、奴はそれを見えない障壁によって簡単に防御、砲弾を消滅させた。
「いつの間にΛ・ドライバを…!」
「んなもん、いちいち声になんて出さなくても発動は出来るんだよ」
「ちっ!」
どうする私…悔しいけど、本当に悔しいけど!
ガウルンの言っている事は全て正しい。
このままじゃ私はガウルンには勝てない。
こいつを倒すには…私も奴と『同じ土俵』に立つしかない。
立つしかない…けど…!
『軍曹殿。もう躊躇っている場合ではないかと』
「アル…?」
『あの男…ガウルンの恐ろしさを最も知っているのは軍曹殿でしょう? 奴とΛ・ドライバの組み合わせは計算などするまでも無く脅威です』
「…………」
『軍曹殿…御決断を』
……アルの言う通り…か。
ここで馬鹿みたいに躊躇ってしなかったら、後で後悔するのは他でもない私自身。
本当は私も分かっていた。
ガウルンが生きている可能性がある時点で、この選択肢しかないって。
さっきまで理性がブレーキを掛けていたけど、もう完全に吹っ切れた。
もう私は迷わない。自分に出来る全力でこいつを倒す!
「…アル。
『
一旦、全身に装備していた武装を拡張領域へと仕舞う。
体を楽にし、精神を集中させる。
「おぉぉ…!」
なんかガウルンが嬉しそうに声を上げているが無視する。
ガーンズバックの全身に紫電が走り、装甲が眩しく光り輝く。
光は徐々に巨大になり、周囲の空間全てを覆い尽くす。
その中で私は確かに感じていた。
私とアル、そして機体が一段階上の存在に昇ろうとしているのを。
機体形状が有機物のように変化し、それに伴い機体色も変化していく。
グレー一色だったガーンズバックとは異なり、白と青を中心としたカラーリングに。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……はぁっ!!」
両拳を突き出して光を貫き、それをそのまま切り裂くように横へを動かす。
光の中から現れたのは、装甲が眩しい新たに生まれ変わった愛機の姿だった。
『型式番号ARX-7。機体名称『
「…よし」
苦渋の選択だったとはいえ、もう私は後悔しない。
躊躇うのはもう止めだ。
無害な女子高生を演じるのはここまで。
今だけは…『昔』に戻ってやる。
例えそれが、あの『クソ両親』の掌で躍らされていることだと分かっていても。
この心の中にある確固たる意志だけは誰にも否定させない。
これは…私の戦いだ。