面倒くさいので、取り敢えず寝る ~IS編ifストーリー~   作:とんこつラーメン

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面倒くさいので、取り敢えず忘れる

 それは、例のドイツ女の『VTシステム暴走事件(仮)』から数日後の事だった。

 

 昼休み、皆と一緒に食堂でいつものように食事をしていた時。

 

「このオムハヤシもうま~…ん?」

 

 急に私の制服のポケットが震える。

 中に入れているスマホのバイブレーションか。

 

『軍曹殿、お電話です』

「分かってるよー。おや?」

 

 ディスプレイを見ると、掛けてきたのはクラリッサだった。

 またぞろ国際電話なんぞしおってからに。

 

「ポチッとな。もしもしもしもし?」

『相変わらず『もし』の数が多いですね。大佐殿』

「あ…もう私の階級は大佐で固定なのね」

 

 軍曹から大佐って…二階級特進ってレベルじゃないぞ。

 一体何回戦死すればいいんだ。

 

「取り敢えず、今は昼食中だからスピーカーモードにするよー」

『了解しました』

 

 普通ならここで『後でかけ直す』という選択肢を取るのが普通かもだが、生憎と私は二度手間と言うのが嫌いなのです。

 だから、多少の面倒くささを考慮しても、ここで話す事にした。

 

「んで、また電話なんて掛けてきて、一体どうしたのさ? また何かあった?」

『いえ。今回はこの間の一件についてのご報告をしようと思いまして』

「報告ね。それは別にいいけど、私はクラリッサの上官とかじゃないんですが?」

『何を仰います! 大佐殿は我ら全員の大恩人にして教官! ハッキリ言って、上官以上の存在です!』

「さよかー…」

 

 ここまで信奉されると逆に怖い。

 そこまで大したことをした覚えは無いんだけどなー。

 

「ほほぅ…? 今のが前に加奈が話してくれた、ドイツにいた頃の教え子と言う『クラリッサ・ハルフォーフ』嬢かな…?」

「え? まぁ…うん」

 

 ロランの目が座ってて普通に怖い。

 

「幼い頃から加奈は凄かったんだな…。きっと、幼少期の加奈もとても可愛らしかったに違いない」

 

 レナードはレナードで黙ってろ。

 さもないと、今度からロリコン認定するぞ。

 

「んで、報告は? アイツはあれからどうなったのさ?」

『はい。大佐殿とレナード殿のお蔭で無事にドイツへの移送に成功した後、裁判が開始されるまでの間、基地内にある捕虜収容施設内にて幽閉。その後に裁判が執り行われ、候補生と軍人としての資格を全て剥奪した後に国外追放処分と成りました』

「ふーん…国外追放ねー」

『ご不満ですか?』

「別にー? ただ、随分とお優しい処分にしたもんだなーと思って。普通なら、アイツの生まれややって来た事を考慮して『遺伝子強化素体研究所(生まれ故郷)』に逆戻りにすると思ってた」

『当初はそれも考えられていたのですが…』

「何か問題が?」

『仮に研究所へ戻したとしても、これといった利益は得られないと判断され、研究所からも拒絶されたそうです』

「あーらら」

 

 哀れなもんだねー。

 文字通り、どこにも居場所が無いなんてさ。

 

「でもじゃあ、アイツは今、どこにいるのさ?」

『IS委員会の日本支部に売却されたと聞きます』

「え?」

 

 それ…マジ?

 憧れの教官殿と同じ場所に売られたってこと?

 

「売値は?」

『日本円にして100円』

「例え超格安でもいらないわ」

 

 どれだけ見た目が良くても、中身が最悪じゃ意味が無い。

 いっそのこと、人格でも消してしまってから肉人形にでもした方が、まだマシだろ。

 

「ま…いっか。アイツがどこで何をしようと、もう私には関係ないし」

『そうですね。それよりも大佐殿』

「なんじゃろほい?」

『実はですね…この不肖クラリッサ・ハルフォーフ…只今、教員免許を取得しようと猛勉強&実習の毎日を送っております!』

「…にゃんですと?」

 

 きょ…教員免許って言った?

 あのクラリッサが? 先生?

 

『勿論、免許取得の暁には、即座に日本へと向かい、IS学園の教師になろうと考えております!』

「だと思った…」

『もう少しお待ちください! 必ずや大佐殿の元へと馳せ参じます!』

「そっかー…ガンバレー」

『はい! 頑張ります!』

 

 なんだろう…話しているだけで猛烈に疲れた気がする…。

 レナードだけでも一杯一杯だってのに…。

 

『それと、もう一つだけお知らせしておきたい事が』

「今度は何よ…」

『もし何かがあれば、すぐにこちらにお知らせください。ドイツ全軍を以てすぐに大佐殿達の援軍に駆けつけます!』

「過剰戦力過ぎるから結構です!!」

 

 確かにこれから先、何があるか全く見当もつかないけどさ!

 それでもたった一つだけ断言できることがある!

 お前らが来た時点でオーバーキルだから!

 私が直に鍛えたから良く分かるんだよ!

 今のハーゼ隊が来るって事は、台所に出たゴキブリ相手に水爆を使うようなもんだって事が!

 それに加えてドイツ全軍まで来るだぁッ!?

 庭の害虫駆除にΛ・ドライバを使うのと同義だぞっ!?

 

「そ…その気持ちだけ受け取っておくよ…ありがと…」

『大佐殿からお礼を言われた…感無量です!』

「さよか…」

 

 なんだろ…急に午後の授業を乗り切れる自信が無くなって来た…。

 このまま保健室にでも言って不貞寝でもしようかな…。

 

『では、そろそろ失礼します! またお会い出来る日を楽しみに待っています!』

「うん…そだねー…またねー…』

 

 やっと通話が切れた…。

 パトラッシュ…私はもう疲れたよ…。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 通話後、私はぐったりと疲れ果てた。

 なんだか猛烈にお茶が飲みたい気分になった。

 

「加奈が幼い頃から凄かったってのは先生から聞いてたけど…」

「なんか…別の意味で凄かったね…お姉ちゃん…」

 

 うわー…玉芳と玉蘭にドン引きされたー…。

 地味にショックー。

 

「どうやら…強力なライバルになりそうだね…フフフ…!」

「ロ…ロランさんの目が凄いことになってる…」

「完全に獲物を狙う獣の目になってますね…」

「加奈が直々に指導したドイツ軍人か。相当な実力者なのだろうな」

 

 マドカだけがちゃんと別の話題を振ってくれてるー。

 そんな彼女が私は好き。

 

「さっきの人…本当に先生になってIS学園に来るのかな…?」

「あの迫力からして、マジでなりそうだよな…」

「もしそうなったら凄いよね~!」

 

 やめて~!

 簪とダリル先輩と本音ちゃんで変なフラグを立てないで~!

 流れ的にマジで回収しちゃいそうだから~!

 

「はぁ…ま、これでようやくIS学園も静かになるか…」

『後はもう我々には関係が無い話ですからね』

「だねー」

 

 本気でどうでもいいから、一刻も早くあいつら五人の事なんて忘れよう。

 覚えていても何もいい事なんて無いし。

 

「話は変わるけどさー…もうすぐ臨海学校だよね?」

「そーいや、もうそんな時期かー。懐かしいなー」

 

 そっか。

 ダリル先輩は三年生。

 今から二年前にも一度、臨海学校に行ってるんだっけ。

 

「臨海学校って主に何をするんですか?」

「別に大したことはしねーよ。一日目は丸一日自由時間で、二日目は訓練機を使った各種装備の試験運用とデータ取りをする。んで、三日目の午前中に片づけをして、午後にIS学園に帰ってくる…てな流れだ」

 

 原作じゃ、その二日目で例の福音が暴走して大騒ぎ…なんだけど、今回は大丈夫だろ。

 あのバカどもとは違って、ここには私やレナードがいるし、ロラン達だって物凄く強くなってる。あのガウルン子飼いの玉芳や玉蘭までいるんだ。

 ここまでの戦力が揃ってれば、福音なんて楽勝だろ。

 それ以前に、本当に福音暴走事件が起きるかどうかも不明だけど。

 一応、原作通りにゴーレムは襲撃してきたけど、何かをする前にガウルンにスクラップにされてたし。

 最悪、今回もガウルンのようなイレギュラーが先回りして福音をボコボコにする可能性だって十分に有り得る。

 ぶっちゃけ、その方がこっちとしては非常に楽で助かるんだけど。

 

「臨海学校と言えば海かー。良い機会だし、新しい水着でも買いに行こうかなー」

 

 丁度、可愛いデザインの水着が出てたんだよねー。

 金なら幾らでもあるし、マジで買いに行こうかしら?

 

「加奈の…」

「水着…」

 

 またロランとレナードが変な顔になった。

 あの顔は知ってる。

 頭の中で変な妄想をしてる時の顔だ。

 

「加奈!」

「一緒に!」

「「水着を買いに行こう! え?」」

 

 どうしてまた言葉が被る?

 本当に息ピッタリだな。

 

「良いよ別に。つーか、皆で一緒に行こうよ」

「いいですね! 私も新しいのを買おうと考えてたんですよー!」

「日本に来てから水着なんて買ってませんでしたし、私も同行させて頂きます」

「なら私も行くか。水着なんてそれこそ、学園指定のしか持ってないしな」

「じゃあ…私も行こう…かな…」

「かんちゃんが行くなら私も行くー!」

「お姉ちゃんはどうする?」

「私達も一緒に行きましょうか。去年のは入らなくなってるし」

 

 ハイ決定…っと。

 一気に賑やかになったね。

 

「んじゃ、オレはお土産でも頼むかな。あそこの土産物屋には面白いもんが揃ってるからな」

「そうなんだ…じゃあ、何か買ってきますよ」

「おう。任せたぜ」

 

 にしても…臨海学校かー。

 地味に楽しみなんだよなー。

 海沿の旅館に行く機会なんて滅多に無いしねー。

 それは同時に新鮮な魚介類が食べれるってことでもあるし。

 個人的にそれはかなり嬉しい。

 海鮮丼とか超食べたい。

 山葵醤油を掛けて、一気に食いたい。

 

『軍曹殿。その臨海学校の事で幾つか補足が』

「どったのアル?」

『まず一つ。どうやらオータムが今日から臨海学校の視察と言う事で旅館に行っているようです』

「あー…だから今日は姿を見かけなかったのかー」

 

 原作じゃ山田先生だったけど、今のあの人は一組の担任。

 流石に行かせられないよな。

 その代りにオータムさんが視察に行ってるってことか。

 良い機会だし、ゆっくりと休んで来てほしい。

 

『もう一つは、実は臨海学校で行くことになっている予定の『花月旅館』ですが、どうやら温泉の名所としても知られているようです』

「「「「「温泉ッ!?」」」」」

 

 主に反応したのは、私と簪と本音ちゃんとマドカの日本人組と、乱ちゃんの五人。

 やっぱ日本人と温泉は切っても切れない関係ですなー。

 

「いいなー…温泉…」

「高級旅館に行く機会自体が滅多に無いのに、その上に温泉だなんて…」

「最高だね~。本当に今から楽しみだね~」

「夢にまで見た温泉に入れるのか…」

「日本の温泉なんて初めて~♡ どんな感じなのかな~…」

 

 一応、原作知識で温泉があることは知っていたけど、まさか名所だったとは。

 これはいやでも期待が高まりますな~。

 臨海学校の話のお蔭で、クラリッサと話した時の疲れが吹き飛んだ。

 やっぱり温泉は最高だぜ!

 まだ早いけど。

 

 

 

 

 

 

  

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