面倒くさいので、取り敢えず寝る ~IS編ifストーリー~   作:とんこつラーメン

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面倒くさいので、取り敢えず相打ちになる

 最大出力のΛ・ドライバ同士の激突。

 その凄まじい威力はアリーナを覆い尽くしていた全てのシールドバリアーを一瞬で粉々にし、ステージ全体に渡って超巨大なクレーターを作り出した。

 まるで、ステージそのものが巨大な何かによって抉り取られたかのような光景。

 最早、観客席にいる生徒達は恐怖心なんてものを完全に忘れてしまうほどに呆然とし、世界最強の性能を誇る二体のISの死闘を眺めていた。

 

「「……っ!」」

 

 右拳を突き出したままの態勢で完全に静止したアーバレストとコダール。

 幾ら、ラムダ・ドライバの障壁があるとはいえ、それもまた絶対ではない。

 同じ性質の最強の一撃を超至近距離でお互いに見舞ったのだ。

 加奈とガウルンがその身で受けたダメージは計り知れない。

 

「く……ははは……! やる…じゃ…ねぇか……カシム…」

「う…っさい…!」

 

 二体のISは全身に渡って装甲に痛ましいレベルの罅が入り、至る所から紫電を発している。

 中でも特に攻撃の起点となった右拳は見るも無残な事になっていて、装甲の罅の隙間から大量出血をして地面に血溜りを作り出していた。

 

「こいつはひでぇ…な…。右手の骨が粉々になっちまった……肋骨も折れて肺にブッ刺さってるかもしれねぇな……がはぁ…!」

「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…!」

 

 ガウルンがワザとらしく自分の今の状態を報告する。

 同じ威力の同じ攻撃を繰りだした加奈も同じ状態になっているんだろうと言っているかのように。

 

(アル…状況報告……)

(アーバレストは全体の約85%以上が損壊。幸いにもコアユニットやΛ・ドライバは無傷です)

(私の身体はどうなってる…?)

(右腕は全体に渡って複雑骨折。肋骨が数本折れ、更には頭部に激しい衝撃と揺れを受けた事で脳震盪一歩手前の様な症状になっています)

(…良く生きてるな私…)

 

 常人ならば確実に致命傷。下手をすれば死亡する可能性すらもある怪我。

 皮肉にも、この世で最も憎々しいと思っている両親によって改造された体だからこそ辛うじて息がある状態だった。

 

 パキ…パキパキパキ…。

 

 今までずっと顔面を覆い隠していたフェイスガードが崩れ、一部が地面に落ちる。

 それにより、初めてお互いの素顔を見る事となった。

 

「あんなに小さかったガキが…いっちょ前に女の顔になりやがって…」

「お前は相変わらずの老け顔だな…ガウルン。あの頃から全く変わってない…」

 

 強気な言葉を吐いているが、二人とも口の端から血を流している。

 誰が見ても強がっているようにしか見えない。

 

「その様子なら…もう機体は動かないだろ…年貢の納め時だな…ガウルン…」

「意外とそうでもねぇさ」

「なに…?」

 

 この期に及んで何を言っている。

 ガウルン謎の強気な態度を訝しんでいると、突如として上空にISの反応が現れた。

 

「なんだこれ…! 上空にまたISが…!? しかもこれは…」

『軍曹殿。上空に出現したISはコダールと同じ反応が出ています。これはもしや…』

 

 アルが分析をしていると、阻む物が無くなったアリーナに二体のISが悠然と降り立った。

 

「コダールが…もう二機…!?」

「おいおい…俺は一言も『コダールの同型機なんていない』なんて言ってねぇぞ? 確かに俺のコダールは試作実験機ではあるが、だからこそ、その性能やデータを反映された『量産型コダール』も存在してるんだよ」

「量産機…!」

 

 冗談ではない。

 アーバレストと真正面から渡り合えるような化物が量産なんてされたら、それこそこの世の終わりだ。

 既存のISでは手も足も出ず、あっという間に蹂躙されていくことだろう。

 

「お待たせしました、先生」

「大丈夫ですか?」

「あぁ…派手にやられちまったよ。最高に楽しかったけどな」

 

 ガウルンの事を『先生』と呼ぶ二機の量産型コダール。

 形状だけならば試作実験機と全く同じだが、操縦者の声は年若い少女のようだった。

 

「よくも先生を…今ならここで…」

「止めとけ。お前等とアイツとじゃ、例え瀕死の重傷を負っていてもカシムの方が圧倒的に上だ。勝ち目なんて1%もねぇよ。寧ろ、普通にいいハンデになるだけだ」

「だけど…!」

 

 余り強気な事は言いたくないが、ガウルンの言っている事は正しかった。

 加奈自身も、降りてきた量産型コダールの動きを見た瞬間に『これなら勝てるかもしれない』と思ったから。

 矢張り、どれだけ機体が優れていても、操縦者次第でどうとでもなるのだ。

 

「それよりも、とっとと撤退するぞ。早くしないと余計な連中が来るかもしれねぇからな。ほれ…噂をすれば…だ」

「「え?」」

 

 加奈の後ろにあるピットから、専用機を纏ったロランと乱、ヴィシュヌとマドカの四人が加奈を回収する為に飛び出してきた。

 

「大丈夫か加奈!」

「加奈さん! しっかりして!」

「急いで保健室に運ばないと!」

「余り揺らすなよ。少しの振動が痛みに直結するかもしれない」

 

 ボロボロのアーバレストを優しく持ち上げながら、四人は同じように瀕死となっているガウルンと、そんな彼を回収しに来た二体の量産型コダールを睨み付ける。

 

「この借りは必ず返してやる…!」

「今度はアタシ達が相手してやるから…!」

「絶対に強くなって、加奈さんの背中を守れるようになります…!」

「お前達は…私達の手で倒す…!」

 

 真の強者とは、自然と周囲の者達も強くする。

 見事にそれを体現してみせた加奈に、ガウルンは本気で敬意を示した。

 

「良い目をするじゃねぇか…! 俺が遊んでやった雑魚共とは全く違う…戦士の目だ。まさか、カシム以外にもワクワクさせられるような連中に恵まれるとはな…やっぱりIS学園に来て正解だったぜ…」

 

 自分達の『先生』に認められる。

 それは量産型コダールを駆る彼女達にとっては看過できない事だったようで、装甲越しにマドカ達の事を睨みつけた。

 

「先生の手を煩わせる必要なんて無い」

「あいつ等は私達の獲物…!」

 

 コダールを持ち上げながらふわりと浮かび上がり、上空にまで達した時点でシンクロした言葉が聞こえた。

 

「「Λ・ドライバ発動」」

 

 その声と同時に、三体のコダールは凄まじい速度で空の彼方まで消え去っていった。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 やっばー…全身の至る所が超絶痛い。

 マドカ達に支えられながらピットまで辿り着くと、出迎えてくれたのはスコールさんとオータムさん、その後ろの方で織斑千冬と山田先生がいた。

 ガウルンの野郎に完璧に倒された原作主人公&ヒロインズは床に転ばされていた。

 まぁ…ここには上等なベットなんて無いし、これが普通だよな。

 緊急事態じゃ人だって呼べなかっただろうし。

 

「大丈夫? 加奈ちゃん」

「なんとか…って言いたいけど、ぶっちゃけ超キツい…」

「だろうな…色々と聞きたい事もあるけどよ、まずは休め。な?」

「ん…遠慮なくそうさせて貰うわ…」

 

 床に足を着いたところでアーバレストを解除。

 それでようやく明らかになる私の身体の怪我の数々。

 右腕はもう完全にグッチャグチャになってて血で真っ赤になってるし、頭や口からも出血、後はどう考えても肋骨が折れてるとしか思えないような痛みが体にある。

 控えめに言っても普通に瀕死の重傷だなこりゃ。

 凄い久し振りだなぁ…ここまでド派手に怪我したの。いつ以来だっけ?

 

「か…加奈っ!?」

「ちょ…大怪我してるじゃないのっ!!」

「しゅ…手術! 今すぐに手術の手配を!!」

「くっ…! 私達が不甲斐無いせいで…!」

 

 これぐらい平気…って強がりたいけど、今は普通に無理。

 さっきから眩暈に頭痛、吐き気のオンパレードだし。

 こうして意識を保ってるのが奇跡に近いかも。

 やっぱり、タイマンの最後は気合と根性だわ。

 

「…山田先生。すぐに手術室の手配を」

「は…はい織斑先生! 相良さん! 待っててくださいね!」

 

 …意外だ。てっきりまた愛しの弟を最優先にするとばかりに思ってた。

 それはそれとして、慌てふためく山田先生が面白い。

 

「相良……」

「なんだよ」

「…助かった。感謝する」

「礼を言われる筋合いはない。私は単純にあの野郎が嫌いだからぶっ飛ばそうと思っただけ。別にこの学園の事も、アンタの事も、そこで馬鹿面して寝ている連中の事も本気でどうでもいい」

「それでも、お前に助けられたのは事実だ。もしも駆けつけてくれなかったら今頃……」

 

 まぁ…確実に殺されてたな。

 ガウルンにとっては勿論、その後ろにいるであろう『クソ両親』にとっても『男性IS操縦者』なんて肩書は微塵も役には立たない。

 その気になれば、それこそ男のIS操縦者なんて腐るほどに量産出来るんだし。

 

「お前の機体や襲撃者の事など、色々と聞きたい事は山ほどあるが…今は怪我を治す事だけを考えてくれ」

「言われなくても、そのつもりだから。それと、何を聞かれてもアンタには何も話すつもりはないよ」

「なに…?」

「別に情報開示をしないって訳じゃない。私は私が信用している人にしか情報を話さない…それだけ」

「私は…お前に信用されてないのか…」

「寧ろ、どうして信用されていると思った? 信用するような要素なんて皆無だろうに」

 

 教師としても、一人の人間としても、大人としても微塵も信用も信頼も出来ない。

 したくもないし、しようとすら思わない。

 

「だから、怪我が治って落ち着いたら、ちゃんとスコールさんやオータムさんに話す。どうしても聞きたかったら、後で二人に聞け」

 

 スコールさん達は複数の意味でめっちゃ信用してる。

 大人なんてクソだって思ってる私が『将来はこんな大人になりたい』と思わせる唯一の存在だから。

 山田先生はー…微妙?

 嫌な人物でも悪い人物でもないのは知ってるけど、同時に状況に流されやすくもあると思うから、良くも悪くもその時次第だな。

 

「はぁ…アーバレストも修理しなくちゃなぁ…」

『その通りではありますが、今は体の治療に専念すべきかと』

「分かってるよ…いたた…!」

 

 こりゃ…マジでガウルンが言った通りに折れた肋骨が肺に刺さってるかも…。

 呼吸をする度に激痛が走る…。

 

「しゅ…手術室の手配、完了しました! 今、こっちに医療班が向かってるそうです!」

「これで少しは楽になるかな…」

 

 安心したら急に眠くなってきた…。

 瞼が超重いんですけど…。

 

「大丈夫よ。私達が付いてるわ。だから…今はゆっくりとお休みなさいな」

「ん…そうする…ありがと…スコールさん…」

 

 そうして、私は皆に見守られながら本能に身を任せて眠りについた。

 

 言っておくけど、別に死んでないからね!

 まだまだバリバリに生きまくる予定ですから!

 

 

 

 

 

 

 

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