初めまして。深緑乖離と申します。初投稿です。よろしくお願いいたします。
傘は雨から人を守る。守るというと語弊があるかもしれない。傘は必要のないときは持っていて正直邪魔だ。彼女もまた幻想郷では邪魔物であったのかもしれない。彼女は傘を利用して驚かすことが好きであった。でもそこで驚くのはほんの一部の人間。ほとんどは馬鹿にされて、その場から駆除されていた。「多々良小傘」傘の大好きな妖怪である。
春の曇。文茂が見ている雲はまるでその雲は多くのストレスを抱えている社会人の心である。文茂は今年県内の県立高校生になったばかりの一年生である。行きたかった高校には入れたのでそれなりに満足はしているが、なんかいまいちやる気を起こすようなものはない。部活もとりあえず文化系の部活に入った。運動部でも良かったが、ただ単に休日を潰すのがめんどうくさかった。勉強などこれからやってみないとわからないものばかり。学校が始まり1週間が過ぎた日曜の曇りの日のこと。ゲームをしている彼のもとに文茂の祖母が突然、「商店街で傘を買ってきてくれないか」と言ってきた。青年はいやいやながらも祖母の願いを受けた。十分ほど歩くてとその商店街がある。商店街といっても、文茂の住んでいる地域の商店街は二つある。一つは普通に活気のある商店街。それと、寂れた商店街。商店街の陽と陰である。青年は最初活気のある商店街に行ってみた。しかし、傘を売る店らしきものはない。あるのは、本屋とそば屋、花屋などである。そもそも、なぜ傘を買うのに、傘屋までいくのかが青年にとっては不思議である。普通にコンビニで買えばいいと思っていた。ただ祖母が言うには、そこの傘屋には古い友達の娘がいると。という訳でそこでどうしても買ってきて欲しいと。理由になっていない。とにかく、活気のある店にはないので、寂れている商店街に行く。そこで探してみるが、なぜかここにもない。あるのは、スナックとか居酒屋らしきもの、魚屋など・・・でもスナックとかはともかく、ほとんどの店はシャッターが降りている。普通ならば、あいていてもおかしくないのにと文茂は思う。仕方なく、もう1度だけ探すことにした。活気のある方はやはりなかった。残っているのは寂れた商店街。ないだろうなと思い、探す。ちょっと道が曲がっているとこがある。青年が行ったことのない道である。そこを曲がってみると、行き止まりであったが、一つ店があった。「傘屋多々良」多々良など聞いたことのない苗字である。店に電気がついている。文茂は何も思わず店に入る。店に入ると、いろんな傘が文茂の目に入る。普通の傘。時代劇によく出てくる和傘まである。どんな専門店だよと思いながら文茂は傘を見て回る。祖母に似合った傘をとりあえず、選んで買おうとしたが、店内には誰もいない。こんなのだと、普通に万引きにあいそうになるシステムである。防犯システムがなってない。「すみません。」と、文茂は声をだしたが、何も返事がない。「すみません。誰かいませんか」文茂はすこし大きな声を出して呼んだ。だが、店内は静まり返っている。なんだか不気味さを感じる。「ああ、もうなんだよ!」と文茂は傘を置いて後ろをむいて帰ろうとした。その文茂の顔にいきなり女性の顔が映る。文茂はびっくりする。文茂の前には、青い髪をした少女がつったっている。ショートヘアー。そしてなんだ。目の色が左右違う。ていうか、目の色が外人。いろいろ予想外のことが起きて、文茂は腰を抜かしてしまった。その腰を抜かした彼の姿を見て彼女はにっこりして「驚いた?」と言う。何か買いに来たのと聞く。文茂は恐る恐る指で傘の位置を指し、彼女はその傘を手に取る。彼女は値段を言い、彼からお金を受け取る。そしてまたにっこりとした。
「ありがとうございました。大切に使ってね。」
少女はそう言って青年は傘を受け取った。青年はまだ驚きを隠せない。そしてこの場をすぐにでも出ていってしまいたかった。傘を受け取った青年は一目散に自分の家へと向かった。
家に帰ってみると祖母は雑巾で廊下を拭いていた。掃除がすきな祖母である。
「傘は買えたかい?」
そういう祖母に青年は傘を祖母に差し出した。祖母は満足そうな顔をしてありがとうといった。青年はあの傘屋について聞いてみた。
「あの傘屋はばあさんとどのような関係があるんだい」
「私の古い友人のところだ」
「外人がいたんだけど」
「うまぁ。そうかもしれねえべ」
といって、そのまま祖母は傘を持ったままどこかへ行ってしまった。
文茂はもう1度その傘屋に行ってみることにした。同じ商店街についてもう1度探す。しかし、見つからなかった。その傘屋へ通じる道がなかった。
あったはずの道には閉じたままのシャッター。傘屋などなかった。狐に化かされたのか。史茂はそういうことなんだなと思った。苦笑いして家に帰ることにした。
寂れた商店街から帰る中、独特の雨の匂いがする。妙に懐かしさを覚える匂いだ。天気は曇りから雨へと変わっていった。あいにく傘を持っていなかった文茂は雨に濡れながら歩いていた。見慣れた風景を見ていた。小さなビルに寂れた喫茶店。少しばかり新しいアパート。どこかの研究室の田んぼ。文茂が住んでいる街自体、どちらかといえば田舎なので都会みたく大きな高層ビルがずらずらと並んでいるわけではない。文茂自体は自分の住んでいる街自体は嫌いではなくどちらかといえば好きな方ではあった。ただ、都会に行ってから帰ってみたときの地元の小ささには虚しさを覚えることはあった。
家に帰ってみると史茂の母親が晩御飯の準備をし始めていた。青年は自分の部屋がある2階へ向かっていった。
しとしと雨が降るなか、ベッドの上であの傘屋のことを思い出していた。自分が見たものは人間だったのだろうか。それとも人間ですらなかったのだろうか。人間でなかったらなんだろう。いろいろ考えているうち意識が朦朧とし、そのまま眠りについてしまった。
暗い暗闇。その中に二人の男女がいる。眠りの中で泣き叫ぶ声がする。男は何かを捨てた。後ろにはボロボロの服を着た女性。乱れた髪に傷だらけの顔。血が流れ落ちる。その女性に見向きもしないで平気な顔をして男は進んでいく。
目が覚めた。文茂はまたかと思う。この手の夢は昔からよく見ていた。この夢に関して祖母には冗談交じりに「お主が過去に悪いことしたからだろう」とかいうから気味が悪かった。この夢は一体。
夕食。今日は天ぷらだった。エビの天ぷらは好きだけど、レンコンの天ぷらは嫌いだった。青年はレンコンの天ぷらだけ残して、食事を終えた。皿に残るレンコンの天ぷらを見た祖母は
「食べ物を残すんじゃない。食べ物一つ一つに神様が宿ってるんだよ。」
と説教してきた。
「他の人が食べればいいじゃないか。わざわざ嫌いなものをいやいや食われるのも神様は嫌がると思う。」
「あんたに食われたくてこの皿に乗ってるのさ。」
「嫌だね、ごちそうさま」
そう言ってさつまいものレンコンを残した。キッチンで洗い物をしている母親はその様子を無視していた。
部屋に戻って缶のジュースを飲んだ。飲んだ缶はそのままゴミ箱に捨てた。いつものことである。
翌日の月曜日。学校の廊下にゴミが落ちていた。拾わなかった。めんどくさかったから。2ヶ月はそんな調子で過ごしていた。学校も・・・楽しくなかった。彼女どころではない。男の友達ですらいない。
5月の中頃にテストがあった。各教科の担当の先生にテストを返却されて愕然とする。どれも平均点なかった。さらに新しく習った教科の勉強法がわからなく、その科目に関しては赤点に近かった。テスト用紙は全部ぐちゃぐちゃにして捨てた。テストのこともあったのか、あの傘屋のことはすっかり忘れていた。祖母もあの日以来傘屋に用事を頼むこともなかった。
6月に入り梅雨に入った。そんな梅雨の寂れた商店街での出来事。いつもみたいに文茂の前になにか物が落ちていた。いつもみたいに無視するつもりで近づいてみると、その物体は傘だった。紫の傘だった。金具が折れているみたいだ。今回は無視するどころか、踏みつけた。無意識のうちに。静寂とした商店街に幽かに小さな声が聞こえた。文茂は立ち止まる。少し用心深く耳を澄ます。
「ひどい」
その声は隣から聞こえていた。隣を見て、隣の人の目を見て文茂はその場から動くことができなくなった。オッドアイの瞳に涙が映っていた。
「なんで傘踏んだの~」
「いえ、気づかなかったもので・・・」
「うそおっしゃい」
文茂は説教を受けていた。説教しているのは傘屋多々良の店員だったあの彼女だ。表情はそこまで怖くないのだが怒ってることは文茂も感じていた。腕組しながら彼女は文茂を一周した。そして文茂の顔をじっと睨んだ。変に言えばキスがすぐできる距離だ。文茂はとりあえず謝ることにした。
「傘踏んで申し訳ございませんでした」
彼女は落ちた傘を拾い、丁寧に文茂が踏んだ土を払い落とした。傘を抱えている様子はすごく落ち着いた顔をしている。
「今度から踏まずにちゃんと捨てるなり、持って帰るなりしてね」
そう言って、彼女は歩き始めた。おそらくあの傘屋へ戻るのだろう。捨てるならあっても、持って帰ることはなかったと思うが、と文茂は心の中で思った。少しずつ遠ざかる彼女を見て、文茂は少し思った。
「あの人、一体何者・・・外人?ここら辺にもともと住んでた?婆の知り合い?」
そう思うと、あの彼女の後ろをついていくしかなかった。彼女に気づかれないようにと少し距離を置いて歩いた。付いた場所はやはり傘屋多々良であった。ついたとたんに彼女は振り返った。
「なんで付いてきたの。傘屋になにかよう?それとも…ストーカー?」
どうやら気づいていたみたいだが、それなら何故すぐに振り返らなかったのだろう。ともかく、何者かを聞いてみることにした。
「あなたは・・・この傘屋の経営者とか店員ですか?」
それを聞いたとたん彼女の顔が険しくなり、防衛的な態度をとった。完全に警戒されている。無理もない、後ろからこそこそついてきたのだから。
「なに・・・わちきを犯そうとでもいうのか」
過剰な警戒である。そして結構ダイレクトにものを言う人だなと思った。そしてできればそんなこと言わないで欲しい、妙に変な気が起こる。
「えっと・・・4月頃でしたっけ・・・一度傘に買いに来たことがあるんですけど」
「あら、よく見ればあの腰を抜かしたお客様じゃない」
どうやら思い出してくれたようだ。
「だったら傘屋によう?また何か買ってくれるの?」
本当は買う気などないが、とりあえず何か買わないと彼女の情報を聞き出せなそうなので、とりあえずなにか買うことにした。
といっても、傘だ。そう簡単に買えるものではない。彼女はとりあえず、店のなかに入れという。言われるがままに青年は店のなかに入った。品揃えは豊富だ。青年は傘を探し始めた。色とりどりの傘・子供用の傘・そして時代劇に出てくる傘。いろいろ傘を見ているうちにひとつの写真を見つけた。白黒の写真で黄色く変色していた。そこにはさっき会った彼女らしき人が写っていた。傘を持っている。大きな目の模様がついている。
「いまの時代に白黒写真が残っているとしたら今から50年以上は前の写真だ。だったら今さっきあったあの彼女の写真ではない。だとしたらこれは一体…だれの」
青年は聞いてみた。この写真の人物は。
「それは、わちき」
だとしたら彼女は何者だ。いったい何歳だ。青年は名前を聞いてみることにした。
「わちきは小傘だけど」
小傘・・・。どこかで聞いたことがある名前だった。遠い昔に聞いたような名前だった。
「お主はなんという?」
「大島文茂です」
「大島さんか…」
自分の名前は大島文茂である。小傘はその名前を聞いて首を横にかしげ口元に右手をつけ、少し考え始めた。どこかで聞いたことある名前だったのだろうか。なにか決心したかのように急に小傘の顔が凛々しくなった。そして手を差し伸べている。
「これからもよろしく。あなたとは仲良くなれそうだわ」
ちょっと前まではあんだけ警戒していたのに、まさか握手できるほどまで進展するとは思わなかったが、願ったり叶ったり。文茂は喜んで握手した。これで少しは話ができそうだ。
「あら、取り込み中だったかしら?」
誰かが来た。お客さんだろうか。小傘はいらっしゃいとその客の方へ向かっていった。やれやれと文茂は思い、近くにあった椅子に座ろうとした。
「いや!なんで来たのよ!」
いきなり大きな声がした。咄嗟に文茂は声がした方向へと向かった。
小傘の後ろ姿が見えた。文茂はびっくりした。小傘にびっくりしたのではない。小傘の前にいる人物が明らかに現代にいる人間ではなかったから。またしても人間らしくないものが来たようだ。そこには全体的に紫色の服をまとい、左手に扇子を持ち口に当て、右手に傘をもったちょっと年をとった気味の女性がいた。また、人間じゃないのが来たと文茂は思った。
「あら、そんなに警戒しなくてもいいのよ小傘」
妙におっとりした口調でしゃべる。紫の服の人。この彼女は小傘のことを知っているみたいだ。
「な、なによ。わちき、あんたのこと許さないから」
ゆっくりと不敵の笑みを浮かべる紫の彼女。文茂は二人の話を垣間見してしまった。垣間見しているところを紫の彼女にバレてしまった。
「あら、そこにかわいい坊やがいるじゃない。」
小傘が大きな大の字になって紫の彼女の行く手を塞ごうと構えている。
「ダメよ。わちきの目の前で人間を何処かへ連れて行くのは」
「連れて行くわけないじゃない。こんな錆びた坊や連れて行く価値ないわ」
地味にショックを受けた。何が錆びた坊やだ。失礼極まりない。そもそも坊やじゃない。俺はれっきとした高校生だ。そして錆びてない。
「おうおう、失礼なことをいうじゃないか。そこの婆さん」
文茂がそう言った途端小傘の顔は血の気が引き、この紫の人はなんか顔を下に向けた。そして紫の婆さんの顔がゆっくりとあがった。そして文茂は思う。何か禁句でも言ってしまったかと。
「な、なにが婆さんですって…こ、ここまできてまで婆さんとか言われる筋合いない…」
どうやら「婆さん」という言葉がタブーだったようだ。
「ば、ばか!と、とにかく謝れ!」
小傘が虎が顔を噛み付く勢いの形相で文茂に叫んだ。
「こ、殺してもいいかしらこの坊や。この八雲紫に「婆」とかいったらただじゃ置かないから!」
なんかやばそうだ。これは本当に生死が関わりそうだ。文茂はとっさに土下座した。
「ご、ごめんなさい!誠に失礼なことを申しました!ど、どうかお許しを!」
文茂は命をかけて謝った。これでもし命がなかったら文茂は悔やみに悔やめない。後悔たらたら未練たらたらと思った。なにか爆弾投げられ爆死したり、消されるかと思ったが何も起こらない。恐る恐る顔をゆっくり上げてみると・・・。
「グスグス・・・どうせ1000歳を超える婆さんですよ・・・私にだってピチピチの高校生だったことあるのに」
膝を抱え、小さくなっていじける八雲紫がいた。その姿を見て呆然としている小傘がいる。
「わ、わちき心臓止まるかと思った」
文茂も心臓が止まりそうだった。というか半分止まっていた。文茂の体から汗が吹き出していた。数分はこの沈黙の時間が続いた。沈黙を破ったのは紫だった。
「それで、小傘もうこの生活には慣れたかしら」
「もうとっくになれたわ。どれくらいここに居ると思っているの」
「さぁねぇ・・・4年かしら」
「あ、あんたの時は止まっているのかしら・・・ざっと60年よ!」
「充分短いわよ。私の一生から比べれば」
「わ、わちきだって結構長く生きているんだから!」
ふたりはやはり人間ではないようだ。年齢がやはり人間の年齢とは違う。では二人は何者なのか。全く想像ができない。
「私がここに来たのはついでよ。本当の目的は違うから私帰るね。」
「か、帰れ帰れ!」
「じゃあね、小傘・・・・坊や。あと年寄りは大切にね。」
なんか坊やのところだけものすごい目つきで見られたのは気のせいだろうか。気のせいだと思いたい。うんそうしよう。青年がそう思っているうちに紫はいなくなっていた。物音せずに。
「い、いなくなったな。よかったな小傘さん」
とりあえず生死を彷徨うことはなくなったようだ。文茂はほっとする。小傘はほっとした顔をしている。
「やれやれ、疲れたわ・・・。お茶でも飲も。」
そういって、小傘は部屋の奥へと入っていった。文茂はこっそりと覗き見した。そこにはたたみが6畳ある部屋に、小さな古さびた木の卓袱台があった。真ん中には美味しそうなあんこの和菓子に醤油味が濃いめのせんべい。ここの空間だけ時代が止まっているようだった。
「な、やっぱわきちを犯そうというのか!」
そしてまた小傘は文茂を見てはそういう。だからやめてくれ。変な気が起こる。なんかまだ警戒されているのかなと文茂は思い、少し苦笑いをした。小傘はそんな文茂にお構いなしにせんべいを食べた。せんべいを食べている姿はまるでうちの婆ちゃんそっくり。
「まぁ、あんたも食べていきなよ。すこしびっくりしただろう。」
そう言いながらお茶をすすり舌を火傷する小傘。その姿を見てなぜかほっとした文茂。文茂は言われるがままに部屋の中へと入っていった。
曇り空も晴れ間が広がる午後となっていた。オレンジ色の夕日を浴びる傘屋は風物詩といえる雰囲気を醸し出していた。文茂はせんべいをかじりながらそう心に感じた。いい気分になりながら文茂は小傘にいろいろ質問をしていた。
「小傘さんって何者?」
小傘はせんべいをバリバリかじりながら文茂の方を向いた。欠片が焦げた茶色の木のちゃぶ台の上に落ちる。オッドアイの目が文茂の目を見つめている。
「わちきは人間じゃないからね」
そう小傘は平然と述べた。文茂に少し驚きはあったものの、薄々人間ではないことを感じ取っていた。
「わちきは妖怪よ。傘のおばけ。」
おばけってこんなに可愛かったかなと文茂は思った。もっと怖いものだと思っていた。
「それで先ほどあんたが失礼なことを言った女の人は八雲紫というもっと恐ろしい妖怪」
八雲紫という名前は前の出来後で覚えていた。八雲紫。八雲立つ・・・なんだったかなと思った。とりあえずあの人は怒らせない方が良いのだなと学習した。
「あんたよく無事だったな。殺そうと思えば楽に殺せるよ。」呆れ顔でそういう小傘。今度会うことでもあれば絶対に怒らせないことを心に誓った。
「どこ出身?妖怪の国でもあるの?」
「国…まぁ、国にみたいなものかなぁ…。幻想郷出身とでも言えばいいのかな」
幻想郷・・・それは小傘などの妖怪や妖精などが住む忘れされたものがこの世界には存在すると言われている幻の世界。風の噂で聞いたことがある。
「いいとこよ。みんな楽しそうに住んでいたわ。わちきはあまりいい思い出ないけど。」あまりいい顔ではなかった。小傘は幻想郷ではどのように過ごしていたのだろう。
「驚かしてた」
小傘はそう答えた。それだけではなんのことかわからない。
「え、何をどうやって」
「通りかかった人に、傘で驚かしてた。うらめしやーって」
頭の中で想像したがなんか可愛く思えた。実際驚かれていたのだろうか。
「・・・」
その様子だと本人が満足するほど驚いてくれなかったようだ。
「だいたいみんなしらけているのよ!」
少しばかり愚痴を聞いていた。幻想郷では色々な思いがあったみたいだ。愚痴を言ってすっきりしたのか、小傘は満足気な顔をしていた。
「文茂君は何者?」
文茂は小傘のことばっかり聞いて、自分のことを何も言ってなかった。ここで初めて自己紹介となる。
「俺は地元の高校在学中で今は1年生。4人家族。家には母さんと婆さんがよくいる。趣味として写真撮っている。だから写真撮らせてくれる?」
意外と趣味は写真というものがあった。高校でも写真部。部員がそんなに多くなく活気はゼロに等しいらしいが。デジタルカメラをいつも持ち歩いていた。
「わちき撮るの。それを外の中年のおっさんとかに売り込んで金とかにするんじゃねぇぞ。」
なぜそのようなこと言うのか不思議である。とりあえず撮った。
「ありがとう」
この写真を家に帰って婆さんにでも見せようと思った。
「婆さん・・・。婆さんには優しくね」
唐突に小傘はそのようなことを喋った。少し気になったがあまり気には止めなかった。
「そろそろ帰ったほうがいいんじゃない。日も暮れかけているよ」
もう外は薄暗くなっていた。時間が早く感じた。小傘に言われるままに文茂は家に向かって帰っていった。薄暗く人気のない商店街を一人で歩いた。文茂は帰ったら早速婆さんに小傘の写真を見せようと思った。今日はいい1日となったなと文茂は喜びながら家に帰っていった。その喜びが続けばよかったのだが。
家の門につきドアをゆっくりとあけた。ドアをゆっくりと開けている最中、母親の悲鳴が聞こえた。文茂は靴も脱がずに一目散に悲鳴のした方向へと向かった。声がしたリビングに行くとうつ伏せになり倒れている婆さんがいた。突然のできごとに文茂はその場に立ちすくしてしまった。
「れ、れんこ婆さん・・・」