「目が覚めるとそこには見知らぬ天井があった」
創作などでは汎用人型決戦兵器が登場するアニメで使用されてからというもの、よく病院に担ぎ込まれて目が覚めた時のテンプレートとして多用されている。
例にもれず私もそう思っていたのだが……
病院にしてはあまりにも豪華すぎるのだ、そうそれはまるでベルサイユ宮殿の様な……
「おおぉ!お目覚めになりましたか!おおい!皆を呼んでくだされ!」
白いひげを蓄えた老紳士がメイドのような女性に声をかけると彼女は弾かれる様に廊下へ飛び出した。
(……これは一体どういう事だ?)
確か自分は作業中に梯子から落っこちた筈、だとすれば病院に連れていかれる筈だが今の状況ではまるで自分が貴族か何かになったかの様だ。
「おっと、今はまだ安静にしていなければなりません、殿下」
「あ、あぁ、わかりまし…」
はい?今なんて言いました?
「…失礼ですが、今日の日付を教えてくださいませんか」
紳士に尋ねるとキョトンとした顔をした後、小さい子供に教える様にゆっくりと答えた。
「今日は中央暦1627年の8月7日で御座います、そして貴方のお名前はルディアス皇太子殿下で御座います、貴方は乗馬中に落馬なされたのです」
中央暦……?ルディアス皇太子殿下……?
それを聞いた自分は記憶の跡を辿り、とあるネット小説に出て来た帝国を思い出した。
若くして皇帝となった男が周辺国を侵略しながら繁栄を極めていくが、転移して来た日本の卑怯とも言える文明差で事実上の衛星国にされてしまう哀れな帝国の事を。
そして自分がその若き皇帝になっているという事……なのか?
恐る恐る部屋を見渡すと部屋の壁に国旗と思しき旗が掲げてあった。
旗にはリンドヴルム…少なくともネットで焼き付くまで見たあの帝国の旗であった。
「……う〜〜ん、BP-3C…」
私はひどい目眩に襲われて再び気を失ってしまった。
「大変だ!皇太子がまた気を失ってしまわれた!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「して……従医よ、ルディアスの容態はどうだ…」
先程の紳士に問いかけるは現パーパルディア帝国皇帝コルネアスであった、しかし彼は現在病床に伏せており体は痩せこけ、銀髪はくすみ往年の覇気は見る影もない。
「はっ、現在皇太子殿下は未だ意識を取り戻しておりません…しかしそれ以外の容態は何ら問題なく意識の回復も時間の問題と思われます。
ですが……どうやら落馬のショックによる記憶の断絶、混乱が見受けられます。」
「そうか……ルディアスの事は宜しく頼むぞ、わしはアイツこそがこの帝国を更なる繁栄へと導く、そう確信しておるのだからな…」
「はっ……」
侍医は皇帝の寝室を出るとそこには外1課長のカイオスがいた。
「……皇帝陛下のご容態はどうだ?」
「余り申し上げたく無いのですが……もって来年を迎えられるか怪しい所です。」
「そうか……皇太子殿下の方は?」
「皇太子殿下は現在意識不明の状態です、身体の方は問題無いのですが」
「やはり摂政として公務にあたられるにはまだ若すぎたか…」
すると侍医の腕輪から着信がなる、この着信は患者の意識が回復した事を意味するナースコールの様なものだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「殿下!!おお!よくぞ!ご無事で!」
侍医とカイオスが寝室に飛び込むと、使用人の他に1人の女性がルディアスに抱き着いていた。
「レミール様、いつからおいでなさってたのですか?」
「公務が終わってから直ぐに駆けつけたのだ、ルディアス様が倒れてからというもの気が気では無かった……意識が戻られて本当に、本当に良かった……」
そういうとレミールはルディアスを抱き締め、その頭を胸に傾けた。
(コイツが…あのレミールか…)
私はそう思いながらレミールのドリルを電話線の様に弄る。
レミール、いつもの格下の国にする様に見せしめに処刑した相手がガチギレして逆に捕まった哀れな姫君、大抵の二次創作でもろくな目に合っていない奴、よくよく見たら中々可愛い顔をしているなコイツ。
「レミール、貴様が私の意識が戻るまで付き添ってくれた事に感謝するぞ、他のみんなも迷惑をかけたな」
「いえいえ!とんでもありません!このレミール、ルディアス様の為なら何時間でも付き添います!」
「少なくとも数日は安静にしていてくだされ、公務の方は我々の方で回しますので」
「うむ有り難い、お言葉に甘えようかな」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
寝る前にこれからどうなるのか状況を整理する事にしてみた。
自分の記憶の他にじわじわと憑依する前のルディアスの記憶が染み出す様に思い出されて来た。
少なくとも今は中央暦1627年…原作が始まる前で、どうやら前皇帝が未だ存命だが余り長く無いらしい。
パーパルディア皇国はまだ列強ではなく準列強であり、この世界の列強はまだミリシアル、ムー、レイフォル、エモールの4カ国だ。
そしてこれからのことだが、1番は日本との問題であるが、戦争に発展していったのはまず我々が侵略戦争の末に慢心したからであり、その侵略戦争を始めたのは他でも無いこの私、ルディアスである。
つまり私が何もしなければ日本とも何も起こらないという訳だ。
この点を見れば先代と先先代の浪費で最初から火の車だったどっかの16世よりかははるかにマシだろう。
2番目が戦力の増強・強化だ。
これにはまず飛行機を実用化させる事が先決だ。
あわよくばクワ・トイネから零戦を得られれば一番良いが、ムーから買うのが安パイだろう。
他にも銃もマスケットからスナイドルの様な後装式にした方が良い。
3番目が列強に入るのでは無く、EUの様な第三文明圏連合の様な国家共同体構想を提唱するのだ。
はなから上手くいくとは思わない、しかし日本からしてみれば印象は良いだろう。
4番目 機甲戦力の実現。
パーパルディアが機甲戦力を持つとかは完全に私の趣味だ、菱形も良いが少なくともツァーリタンクの様な物を配備したい。これは完全に趣味、絶対的権力者バンザイ。
これらを書き終えると、ノートをしまい蝋燭を吹き消し横になる。
窓から僅かながらではあるが、皇都の灯りが入って来る。
その灯りを見ながら次第に眠りについていった。
取り敢えず原作のレイフォルとパーパルディアは即位してからの10年で逆転されたって事で。
まぁルイ16世の話に影響されたよね!