「やあみんな! 俺だ! 赤ちゃんは泣くのが仕事! 俺は軽はずみな行動で歴史が壊れ始めてて泣く! それじゃ!」
それじゃあじゃねぇんだよ。どうすんだよ、ムーの奴らが来てんだぞ。技術士官来てんだぞ。困ったぞ俺、どうするんだ俺。
あまり日本転移直前まで歴史を壊さないように慎重に事をあたるつもりだったんだが……まぁ無茶があったか。精々引っ掻き回してやるさ。
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「技術開発の舵の切り方が余りにも妙だ」
来て兵研に通されたマイラスが得た第一印象がこれであった。基本第三文明圏国家の殆どが魔導文明国家であり、下地となる技術の殆どが魔法によって補われている。
しかし最近開発された兵器群は皆一応は魔法が使われているが科学技術でも十分応用が可能だ。
そしてそれらの殆どが何かしらにパーパルディア皇太子が絡んでいる、彼は科学文明について造詣が深い等という情報は無かった筈だが……。
「皇太子殿下に会う事ってできないかな……」
口に出すと国際問題になるので言わないが彼は異質だ。何故この様な兵器開発に至ったのか聞いてみたかった。
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漫画を見たときはムーの正装がタートルネックとは心底驚いたもんだ。
まぁ原作から10年前とはいえ1920年レベルの機体で大陸間を飛ぶというクレイジーな行動を今回も難なく行っているあたりその技術力に疑う余地はない。
……エンジン欲しいなー!!!
「ムーの人間が来ているのだろう? ぜひとも会って話をしたいものだ、なぁ、会わせてくれ」
従者に多少駄々をこねた後暫くしてムーの2人に謁見の許可が降りたとの事、迷惑かけるね。
どうせ呼びつけたんだから何か驚かす様な会談にしたい、何を話そうか……
「殿下、ムーの御二方が参られました」
「うむ」
そう言って彼らを私がいつも使っている執務室へ通した。
◆◇◆◇
「ルディアス殿下、わざわざお呼びいただきありがとうございます」
そう言ってマイラスとフォルベルは頭を下げる。
「いや、そんなに畏まらなくていい。私は列強国から見てこの国がどう写ったのが気になったのでね」
私は座るように促し、従者にコーヒーを頼んだ。
「どうだったかな? 兵研に行ってみた感じは?」
「えぇ、蒸気自動車という物はやはり素晴らしい物です、我が国は既に内燃機関となっていますが、やはり煙を吐いて進む蒸気機関は力強く私は大好きです。……もしやアレも殿下が関わっているので?」
マイラスの問いに満足げに頷きながらコーヒーをすする。
「如何にも、勿論ムーの蒸気機関も参考にしてもらったが。やはり機械文明最高峰の国だ、蒸気機関のロマンは私も大いに同意するよ」
ここで私は思わせぶりにコーヒーを飲んで見せ、一世一代の賭に出る。
「私は常々考えているのだが……魔導文明は現状で頭打ちなのではないかと思っている」
魔導文明国の皇太子からのカミングアウトにマイラスは思わず飲んでいたコーヒーを吹き出しかけ、それを耐えたところで気管に入った為盛大にむせた。
それを気にすることなくフォルベルは意見を出す。
「しかし、我がムーの上には魔導文明の神聖ミリシアル帝国が列強一位の座にいます。帝国はすべてにおいてムーに勝っている……頭打ちと考えるのは些か早計なのでは……」
「確かに現状ではな、しかしミリシアルは古の魔法帝国の再現で技術を得ているが、ムーは独学だろう。天の浮舟も飛行機械も端から見たら同じだ、皇国もいずれワイバーンから乗り換える必要があるだろう」
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帰国後、数日間フォルベルとマイラスは報告書の制作に大わらわであった。
「まだ私の年下とは思えない考え、あれでは30歳はとうに越えてそうなもんですよ」
「たしかにな、しかしなぁもしパーパルディアが科学文明に舵を切って見ろ、ミリシアルが気が気じゃないぞ」
科学文明国に挟まれたくらいでミリシアルは危機を覚えるものか?
マイラスが疑問に思いながら職場のテレビに手を伸ばした。ミリシアルの世界のニュースの時間まで働いているんだから残業確定だ……
ぼんやりした様子でテレビが映るのを待っていると、テロップが人が亡くなった際の物になっていた。
「……なんだ? キャンディのバアさんが遂にくたばったのか?」
{……パーパルディアの皇帝コルネアス陛下が三日前に崩御なされました。現在第三文明圏全域で喪に服しており……}
その報にマイラスらはあの若き科学文明に傾倒した皇太子の顔を思い出していた。