コルネアス陛下が崩御し、ルディアスが新皇帝となった。
国中が喪に服す中、クーズ王国の帝政復古派はむしろ祝っていやがる。
それは良いとして復古派の戦力が今まで以上に増している。もはや復古派の勝利は時間の問題であるとミリシアルの新聞でも日々報道されている。
現在陸軍は蒸気戦車の開発に注力させており、試作のリントヴルムの配備は僅か。
北方に睨みを効かすには些か心許ない。
蒸気戦車もまだ時間がかかる……ふと外三からの報告書が目にはいった。
「……大東洋会議か、そうだ忘れてた!」
大東洋会議は第三文明圏において大きな出来事があった際に文明圏外国で行われる国際会議だ。そしてつい最近準列強の皇帝の代替わりという一大イベントが起こったばかり、会議が開かれるに決まっている。
(……もうあの構想を実行に移すかぁ? いや、しかし、でもやっちまったもん勝ちかな?)
私は通信機でカイオスを呼び出した。
◆◇◆◇◆◇
アルタラス王国 大東洋会議会場
第三文明圏外圏の外交官たちはざわついていた。それも当然だろう、なにせパーパルディアから外交官が派遣されたのだから。
「パーパルディアが外交官を派遣して来ただと……?」
「新皇帝の考えている事はよくわからん」
「しかし上手くやれば皇国と関係が持てるかもしれん」
「そうだ、我がトーパ王国の戦力強化も夢ではない」
パーパルディアの外交官、エルトはお世辞を言ってくる外交官をいなしながら資料を纏めていた。
「これより大東洋諸国会議を開催します」
進行役が口火を切り会議が始まる。
今回の議題はクーズ内戦とパーパルディアの新皇帝の即位による外交の変化の警戒であった。
本来、内陸部のクーズよりもパーパルディアについての話し合いが本筋だったが、皇国の外交官が居る以上変なことはしゃべれず、各国歯がゆい思いをしながらもクーズについて会議を進める。
「クーズ内戦についてはクワ・トイネは関わらない方針である」
「トーパ王国としては事態の推移を慎重に見ており、今はまだ動く予定はない」
各国ともにどちらかに援軍だとか支援だとかの声明はなく、そのまま会議が終わるかと思われた。
「議長、発言許可いただけるだろうか」
「パーパルディア代表、発言を許可します」
エルトは立ち上がり、会議場を見渡すと口を開いた。
「パーパルディアはクーズ内戦による周辺国の治安悪化と、帝政復古派を牽制すべく我々大東洋諸国による軍事同盟の締結を提案します」
パーパルディアの提案に会場がざわめきたつ。
「軍事同盟ですか……!」
「今回はあくまで提案ですが、クーズ帝国が復活するとすれば組んでいても悪くないでしょう」
そう言い、エルトは外交官達に資料を配る。
大東洋条約機構
◇集団防衛体制の構築
◇加盟国間の集団的自衛権の発動
◇加盟国に対する軍事攻撃の抑止
◇他文明圏の安全保障への協力
と、まぁそのまんまNATOである。
「パーパルディアを中心とした軍事同盟です。勿論武器弾薬等は作戦円滑の為、パーパルディアと共通として貰います」
その言葉に各国どよめくが、中でも一層驚いたのはトーパ王国とクワ・トイネ、クイラ王国であった。(ロウリアは出席拒否)
「今回はあくまで提案ですが……、前向きに検討していただけると有り難いですね」
「アルタラス王国はこの軍事同盟に乗ることにする」
アルタラス大使は挙手し宣言した。
(あのアルタラスが……)
(軍事力なら文明圏外では随一……ならば乗らぬ手はない、か……)
◆◇◆◇◆◇
エストシラント パラディス城
「ルディアス陛下、最終的に会議の場では
アルタラス王国、クワ・トイネ王国、シウス王国、クイラ王国、シハン王国が大東洋条約機構に参加するとの事です」
「うん、なかなかじゃない。エルトご苦労だった。下がってよいぞ」
まぁアルタラスは完全に裏で入るように言ってたし、どう転んでもクワ、クイラは入っていただろう。そのためにロウリア支援してるんだし。
で、大東洋条約機構って言ったけど条約調印はここエストシラントでやるからETO(Estosilant Treaty Organization)になるんだよね。残念だったね圏外圏諸君。
◆◇◆◇◆◇
数ヶ月後……
はい、どうやらクーズ王国の王様が吊されたようです。物騒だねこわいね~
んで自称皇帝のクーズ3世が即位したそうで……
「皇帝陛下、現在クーズ帝国軍は北進しており、リーム王国国境にてにらみ合いが続いているようです」
現在皇国より上の、史実では皇国に侵略されてるマルタだのカースだのの有象無象の小国家群はETOに加盟しており、ETO軍が駐屯していた為少しの小競り合いでクーズ帝国軍は引き返した。その代わりにリームに攻め込んだらしい。
ぶっちゃけ滅ぼしてくれというのが本意なのだが。まぁ当のリームも救援とか出してないから良いかなって……
とにかく本国軍とETO軍は警戒を続けるように指示を出した。
「陛下、そろそろお時間です」
「うむ、今行く」
◆◇◆◇◆◇
クイラ王国における石油採掘は笑っちゃうほど順調だった。
「皇帝陛下、お会いできて光栄です。私、ムーで石油会社を営んでいるトルタともうします」
「まぁ席に座るといい」
彼はムーにおける石油王というか石油閣下ぐらいの人物らしいが、どうやらこのクイラ油田の油を買い付けに来たらしい。
「列強二位のムーが買いに来てくださるとは、パーパルディア石油公団にも箔が付くってもんです」
「いやぁご謙遜を……。しかしこんな良質な原油が自然にわき出ているとは……天の恵みとしか言いようがありません!」
まぁ本当に神様に祝福されてるしね。
アホみたいにとれる上、質も良い。皇国が石油施設を作る前からムーは目を付けていたのだが、一から施設を作って運ぶには遠すぎたらしい。
「それで……トルタさん、おもちゃは持ってきてくれましたか……?」
「……ええ! 勿論ですとも、とびきり最高級な物を用意いたしました!」
トルタは合図を出すと奥から数個のコンテナが運ばれてきた。
「これがおもちゃですか」
「ええ、どうせならおもちゃを作るトンカチも欲しいだろうと思いまして用意いたしました」
私がコンテナを開けると分解された6,5ミリ重機関銃や、量産型の乗用車、新型の加工機械が入っていた。
「なるほど、少々過激ないいおもちゃだ。
ありがとう、トルタさん御社とは特別に他社よりサービスして取引を行いましょう」
「ありがとうございます、持ってきたかいがありました!」
二人は笑いながら握手を交わした。
◆◇◆◇◆◇
商人とは自社の利益のためには多少の国益など気にしなくなるのだ。
とは言え、ムーにばれたらガチでやばいのでこの件は墓まで持っていく事にする。
◆◇◆◇◆◇
「ルディアス陛下、お味の程はいかがですか?」
「うん、美味い美味い。このパイ美味いよ」
「良かった! お口に合わなかったらどうしようか、わたくし心配で……」
ここんところETOだの御禁制の品だので働きっぱなしだったので、この様に休めるのは有り難かった。
「たまには仕事を忘れてお茶会……なぁレミール、私こう言うの好きだなぁ」
ぼんやりと呟いた言葉にレミールは顔を赤くし、思わず下を向いてしまったとさ。