「無理です」
「やっぱり?」
前回貰ったおもちゃを兵研に運び、口の堅い職人に見せたのだがどれもこれも一朝一夕ではコピーできないらしい。
「しかし自動車の技術を参考にすれば、五年もしないうちに基礎部分は再現できるでしょう」
「……まじでか」
取り合えず最優先で加工機械をコピーするように頼んだ。それと前回個人的に”プレゼント”して貰った”猟銃”も贈呈した。
◇◆◇◆◇◆◇◆
今日も外3の報告書に目を通す。
如何やらロウリア王国軍にアデムという魔獣の使役に長けた男が彗星の如く現れ、ロウリア国内の迫害されている獣人の村を襲い手柄を立てるなどして頭角を現しているという。
こんな奴が近くにいるなんて怖いですねぇ! ねぇアニュンリール皇国さん! どうして目を逸らすんです? ねぇってば!
現在順調にロウリア王国は皇国式の軍事教練を行い力を蓄えている。このままであれば原作年までにはクワ・トイネとクイラを征服できるほどの軍になるだろう。
「それで……蒸気機関の方はどうなっている?」
「此方の方もムーから得た蒸気模型を解析しております。今年中には複製品を作れるかと」
「なかなかに結構、いやぁ楽しみだ」
自分は壁にかけている第三文明圏の地図に目を向ける。それに現在主要な街道に沿って新たに線が描かれていた。
「やはり蒸気機関とはこうでなくては」
皇都エストシラントから放射状に延びる路線は西はマール王国、北はトーパ王国にまで伸びていた。
(やはり輸送力、輸送力がすべてを解決する!)
単純に軍事力の移動という事に留まらない、経済の流動性を上げる事こそが富国強兵の肝なのだ。
すると魔信機から着信が来る。
『陛下、お喜びください! たった今試作戦車が出来上がったとのことです!』
◇◆◇◆◇◆◇◆
「これが、戦車かぁ」
目の前にあったのは、大型化したキュニョーの砲車を基礎にその上に装甲版で作った戦闘室が載せてあった。
「さながら安神車……といった所か」
ふぅむふぅむと唸りながら戦車を眺める。どうやらサスは板バネらしい。
戦車は鉄板が張っているらしく、軽く叩くとゴンゴンと鈍い音が響く。
「装甲板は戦列艦に使われている対魔弾鉄鋼式装甲を使用しています。最も使用するにあたって戦列艦の物よりかはだいぶ薄くなっていますが、それでも砲撃試験では十分な防御性を発揮しました」
「ほう、走行性能の方はどうなっているんだい?」
「ええ、問題はそこなのですが、やはり現状出力が足りず装甲の重さも相まって、時速三キロが何とか巡行して出せる速度です」
「成程……それに見た所、魔導窯*1が高くつきそうなのが難だな」
「課題はそこですね、現在も改良型の研究をしていますが余りかんばしくはありません。しかし革新的な兵器の開発にも成功したんですよ」
そう言うと戦車前方についている大砲の様なものに目を向ける。よく見ると大砲ではなく小さい穴が無数に開けられていた。
「……これは? なんだ?」
「陛下が贈呈してくれた"おもちゃ”を参考にして制作したものです」
技術者が指示を出すと待機していた兵士が乗り込み……その大砲から機関銃の如く銃弾が発射された。
(思い出した! ミトラィユーズだ!)
(頃合いを見てガトリングでも作ろうと思っていたが……まさか自力で作るとは……天晴 )
思わず自分は大きく拍手を送った。
「まさかリントヴルムに代わる物を想定よりも短期間で作り上げるとは……後は実戦に投入できるぐらい洗練させねばな」
◇◆◇◆◇◆◇◆
リーム王国に攻め込んでいたクーズ帝国は遂に王都ヒルキガを攻め落とし王国の崩壊は間近となっていた。
そして帝国軍は皇国へと再度侵攻するとの情報が入る。
私がルディアスに憑依してから早4年、フィルアデス大陸は暗雲立ち込めていた。