クーズ帝国 帝都チーリのアクター城
現在、城の作戦指令室では自称クーズ三世ことプラークス=トラシュー・ラクゴが将軍から現在の状況の説明を受けていた。
「敵軍は広範囲で陣を突破し前進しております。
南部ではETO軍がキレッパを占拠し、ラン・ルーに進軍しております。
北部ではハーヘンとオチュードの郊外でリーム残党が行動しており、
東部ではパーパルディア皇国軍がぺテンベルグ・アーブ=レーモンの線にまで到達しました」
絶望的ともいえる戦況だが、ラクゴは縋るような声をひりだす。
「ヘッツァー・ニーの攻撃で平穏を取り戻すだろう」
「皇帝陛下……ヘッツァー・ニーは……」
「ヘッツァー・ニーは攻撃の為の兵力を集める事ができませんでした。ヘッツァー・ニーは攻撃を実行していません」
「命令しただろうが!
ヘッツァー・ニーに攻撃しろと命令しただろうが!
一体、どこの誰が、私の命令に背いたのだ!
その結果がこれだ。
チクショ―メェ! 」
◇◆◇◆◇◆◇◆
結局の所、急速に暴力的に膨らんだ独裁政権は崩壊の一途を辿っていた。
前回の国境会戦の報は前線部隊に伝わると、忠誠心の欠片もない植民地部隊……どころか正規軍でさえ武器を捨て敗走を始めた。
ETO軍・皇国軍は至る街から解放軍と歓迎される始末で、そのすべてが無血開城。これにはルディアスも笑ってしまった。
「多数のクーズ将兵が国を捨てて逃亡しているとの事ですが、余りに数が多すぎて把握しきれません」
「……」
◇◆◇◆◇◆◇◆
クーズ領ハラド城
山に建てられた絢爛豪華な白塗りの城は、誰がどう見ても戦に不向きな貴族趣味全開の城であった。
しかし極少ない皇帝に忠誠を誓う貴族が残党を引き連れ立てこもっていた。
「しっかし……酷いもんだな……」
攻城部隊指揮官のベルトランは望遠鏡をのぞきながら呟く。
「白壁が煮炊きの煤で汚れてやがる」
「ベルトラン中佐……全砲撃部隊準備完了致しました……」
「うむ、砲撃開始!」
ハラド城に向け砲撃が開始される。この砲撃は通常の魔導砲であり城を吹っ飛ばすほどの威力は無かったが、城内の家臣を寝返らせるには十分すぎた。
貴族は滅多刺しにされあっけなく降伏した。
◇◆◇◆◇◆◇◆
5日後
「ルディアス陛下、帝都チーリを占領した武装勢力が『ジーン=カイ騎士団国』と名乗り……」
「……宣戦布告……?」
「いえ、講和を申し込んできました」
「…………」
この間僅か3か月足らず、クーズ帝国は崩壊しヘッツァー・ニーを国家騎士団長とする新国家が樹立された。
もっともヘッツァー・ニーには支援を送る代わりに私、ルディアスに忠誠を誓ってもらい皇国麾下の騎士団となってもらう。
「なんだ……しかし、ロケット砲と装甲車の演習にはうってつけだったから良しとするか……」
数日間、私は報告書を見る為に執務室に缶詰めされる事を余儀なくされた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「……ロウリアが?」
ようやく報告書がはけた直後、情報局からロデニウス大陸の動向が知らされた。
「クワ・トイネ海軍がロウリア海軍と武力衝突!?」
どうやらマイハーク港沖でロウリアのフリゲートとクワ・トイネの警備艦艇が撃ち合いになったらしい……撃ち合い!?
「国家戦略局はロウリアに砲艦を送っていたか?」
「いえ、そのような情報は確認されていません……恐らくですが、こちらをご覧ください」
渡された紙には……ロウリアのフリゲートとリーム王国のフリゲートを比較した図があった。
「すべてにおいてリーム王国の物と一致します……そしてリーム王国海軍の艦艇はクーズ帝国に接収されていました」
(多数のクーズ将兵が国を捨てて逃亡しているとの事ですが、余りに数が多すぎて把握しきれません)
「……そう来るか…」
どうやら、まだ波乱の展開が待ち受けているようだ……
私は頭を抱えた。