色とりどりの花が出迎える。
きらびやかな会場が主役を引き立てる。
シャッター音が前方にいる一人のウマ娘を包み込む。
「この度は、G1の皐月賞1位獲得、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
司会者の賛辞に答えたのは、栗毛でポニーテールのウマ娘、センリイッポ。落ち着いた様子で言葉を続ける。
「この度皐月賞を取れたのは、私だけの力だけでなく、同じチームの子、ライバル、応援してくれたファンの皆様、そして今私の横にいるトレーナーのおかげです」
彼女がトレーナーを見ると、自分は気にしないで、とでも言うように照れながら顔をそらす。
多くの記者から質問をもらい、澄ました顔で受け答える。一時間ほどで記者会見はお開きとなり、イッポとトレーナーは部屋をあとにする。
「イッポさん、お疲れさまでした」
「トレーナーさんも。……初めてのG1で一位を取れたなんて、今でも信じられない」
「しかしこの優勝は確かにイッポさんの糧になります。この調子で次のレースも頑張りましょう」
「そうですね。目標は変わらない……頑張ります」
廊下でそんな会話を交わし、会場を出る。タクシーを捕まえようとトレーナーが道路を確認する。乗用車がまばらに通っているものの、タクシーは見当たらない。パッタリと車を見かけなくなったとき、道路を歩く人の影を見つけた。イヤに笑顔であった。
「トレーナーさん、あの人道路歩いてて危ないですよ」
「そうですね。……すみませーん」
男に聞こえるほどの声で呼びかける。
笑顔の男は首だけをこちらに向けて───
『
「なっ?!」「キャー!!」
文字を浮かべた電子の帯に包まれ怪物へと変貌した。
笑顔が消えた代わりに、怪物は汚らしい笑い声を上げながら、ゆっくりと二人の方に近づいてくる。
いきなりのことで互いに動けず、迫ってくる怪物を見つめるしかなかった。
(逃げるべきなのか……できる限りの抵抗をすべきか?)
考えているうちに、ついに怪物が目前に迫る。せめて他人を守ろうと脳が指示し、トレーナーは尻餅をついているセンリイッポをかばう。
怪物がトレーナーの頭に手を伸ばして───
突如数発の破裂音があたりに響いた。
「ガアッ!!」
横に倒れる怪物。そうした場面を見てついにトレーナーとセンリイッポの脳が活性化する。
「イッポさん!あちらへ!」
「……はい!」
銃声の聞こえた方へ二人は走る。
走っていくうちに銃声の主が─暗いせいでぼんやりではあるが─見えてくる。
顔の部分には青色があり、それ以外の部分は白っぽい。銃のように見えるそれは赤色だ。
助けをくれたそれは、通り過ぎるときにこちらを振り返った気がするが、それよりも逃げることが先だ。
夜でも明るい方角に向かい、一人のトレーナーと一人のウマ娘は走っていった。
──────────────────────
「昨日のあれは何だったのか……」
センリイッポをなんとか寮に送り届けて迎えた翌日。トレーナーは昼食をとるため、行きつけの定食屋『ふりてい』に来ていた。人気メニューである『八手定食』を前に昨日の夜のことを思い出す。
突然怪物に変わった男の事。そもそも怪物の目的が分からない。ああいった怪物はあの笑顔の男の他にもまだいるのか、それに応戦していた白い人物。自分たちを助けてくれたことから恐らく敵意はないだろうが……
しかし、疑問は疑問。ご飯はご飯。一旦考えるのをやめて、目の前の素朴でいて箸が止められない料理に集中を向ける。
茶碗に残る白米を食べようとしたとき、突然ズボンのポケットに入れていたスマホのバイブレーションが鳴る。スマホを取り出し届いたメールの内容を確認しようとして───目を疑った。
画面には見慣れた待ち受けでなく不気味なスロットが回っていたのだ。
それはこちらの操作を受け付けることなく、左から順に勝手に止まる。そうして横一列に揃った絵柄は血走った目のようであった。
いつの間にかウイルスにかかったのかと思い、慌ててスマホの電源を消そうとしたとき、目の前の景色が青がかったものになった。
「何で青く……これは……サングラス?」
いつの間にか青いサングラスをつけていたことに驚く。スマホも元通りになっていた。
「あれ?お客さん、カッコいいサングラスだね」
「え、あ……ありがとうございます」
若い店主に言われ、自分のかけているサングラスを確認しようとする。簡単に取り外せたそれの見た目にこれと言って異常はない。
「あの……これ、ここの落とし物だったりしませんか?」
「いや?お客さんのじゃないの?」
「……多分そうです」
とりあえずそういうことにしておこう、と再びサングラスをかける。さっきは気付かなかった、景色の異変に気付いた。目に映るものの輪郭が虹色に滲んでいる。不思議なものだ、と店の入口側を見ると───何かがいた。
顔はカラフルであってもどこか汚らしく、服は何も着ていない。そして大きなハンマーのようなものを構えていて───
「アノーニ!」
「うわっ?!」
急にこちらにそれを振り下ろした。
間一髪でそれを避けたものの、座っていた木製の椅子がいとも容易く真っ二つになる。
自分が何故か狙われている、そう気付くのと同時に店主が叫ぶ。
「えっお客さん?!」
「すみませんお代は後で!」
他の客に迷惑をかけないために店を飛び出す。しかし公道までの一本道はすでにハンマーを持った怪物達が塞いでいた。
(逃げ道が……これは……)
後ろの突き当たりには複雑な模様の扉が見えた。迫ってくる怪物から逃げるために、意を決してその扉に入る。
そこは突き当たりの後ろ側ではなく、どこかのビルの屋上であった。
「もう何が何やら……っ!」
そこにも、まるで地面から生えて来たように怪物がこちらに向かってくる。
周りを囲まれ、どこか下の階につながっているだろう扉に向かい突っ込もうとした時だった。
『ドン!ブラスター!』
「えっ」
突如目の前に、黄色く不思議な形の拳銃が現れた。それは銃口を上に向けてひとりでに何かを発射する。
トレーナーは歯車の形をしたそれに上から体を包み込まれ───
『サ ル ブラザー!!いよっムッキムキ!!』
全身が青く、腕に盛り上がりが見えるサルの戦士に変身した。
たまたまあった水たまりに映る、変身した自分の姿に一言。
「猿というより……ゴリラ?」
変身に警戒し近づかなかった怪物──アノーニがハンマーを構えにじり寄ってくる。
逃げ場はないと悟ったトレーナーは振り下ろされたハンマーを腕で受ける。
「痛みがない?!これなら……」
両腕で二本のハンマーを掴み思いっきり弾き飛ばす。
いつの間にか手に持っていたドンブラスターで近くのアノーニ達の胴体を撃つ。撃たれたアノーニは小さな爆破を起こし跡形もなく消える。
なお襲いかかってくるアノーニ。自分に向けられたハンマーを抑え、持っているアノーニごと振り回す。結果、すべてのアノーニを撃破することができた。
自動的に変身が解除される。元の姿に戻ったトレーナーは目の前に、さっきまでなかった扉がひとりでに開いたことに気付く。
その先には、見慣れない、静かな空間が広がっていて、一本道が一つの大きな箱へと伸びていた。
恐る恐るその道を進む。周りの景色を見てみると、どこか閉塞的で、昔夢見ていた未来都市のようなものが目に入る。そうした先の大きな箱に、一人のフードを被った人間が足を崩し座っていた。
「あの……ここは一体なんなのでしょうか」
「ここはイデオン。人間界と調和を取るもう一つの世界」
「私が変身したあれは?」
「ドンブラザーズ。ヒトツ鬼を退治する戦士だ」
聞き慣れない単語が飛んでくる。
「何もかもわからないのですが」
「理解しておくことは2つだけ」
ノイズの混じった声の主は眼前に人差し指を立てる。
「1つ。ツインターボの手助けをする」
次いで中指を立てる。
「2つ。トウカイテイオーに気をつける」
そうして立てた指を折りたたみ、トレーナーの目の前に立つ。見知った二人の名前を出され思わず反応する。
「その二人とこの世界にどんな関係が──」
「ドンブラザーズの戦士になれば不幸が訪れる。だが今言った2つのことに気をつければやがて終わる」
「あなたは一体──」
「面会時間終了だ」
質問をしようとしても途中で遮られる。近づこうにもその箱には電気の牢が貼られていた。
面会終了を告げられてすぐなにかに後ろに引っ張られる。遠ざかる箱の中に、見知った顔を見た気がしたが───
いつの間にか、自分の請け負うチームの部屋に戻っていた。
今までのことは全て夢だったのかと疑うも、自分の胸ポケットにかけてある青いサングラスが現実であると伝えている。
突然扉が開かれる。自分の担当している青毛のウマ娘が、息を切らしながら大声で呼びかける。
「
「?!わかりました、すぐ行きます」
あの空間の中で男に言われたことが脳裏に浮かぶ。
───ドンブラザーズの戦士になれば不幸が訪れる。
「まさか……」
とにかく、怪我をしたセンリイッポがいるという保健室に向かうことにした。
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「それほど大事に至らずに良かったです」
「……ご迷惑をおかけしました」
保健室で検査を受け、左足の捻挫と判断されたセンリイッポは、近くの病院で経過観察をすることとなった。
「全治一週間、と担当医から聞きました。それまでは安静にしていてください」
「じゃあ、一週間後のレースには……」
「残念ながら……」
一週間後に控えたヒドラ杯、それはセンリイッポが最も待ち望んだレースである。
なぜならそのレースには、彼女がトレセンで走る理由を作った人物の出場が決まっているからだ。
名前はインヴィレッジ。毛色は鹿毛でショートヘアー。センリイッポより四つ上の先輩で幼馴染である、と聞いている。
彼女の脚質はセンリイッポと同じ──というよりセンリイッポが彼女の脚質を真似ていると南坂は考えていた。それほどまでにセンリイッポはインヴィレッジに固執している。
「とにかく、ここ一週間は何かをして悪化させるのが一番好ましくないので……今は気を落ち着かせてください」
「……はい」
制服の裾を静かに握りしめるのを見て、改めて彼女の悔しさを感じる。先にトレセン学園に向かうと伝え、南坂は病院から出た。
一人残されたセンリイッポの頭の中には感情が渦巻いていた。
「何で出れないの……何で戦えないの……何で走れないの……」
ぐちゃぐちゃの頭の中に何度も思い出す過去がにじむ。
『無理だよ。センちゃんそんな走れないでしょ』
『いつまで私の背中見てる気なの?一着になるんじゃないの?』
「うるさいうるさいうるさいウルサイウルサイ」
欲望が姿を見せる。彫りが深い男のような、無機質な彫像のような顔をもつ巨躯が、今にも溢れてきそうな怒りに身を震わせる。
「今日で決着つけてやる!インヴィレッジィ!」
『
センリイッポの周りを電子の帯が包む。そうして生まれた怪物は、廊下を突き抜け病院を出ていった。
──────────────────────
トレセン学園にて、一日の授業の終わりを告げるチャイムがなる。
一旦自分のチームの部屋に荷物をおいていこうとしたインヴィレッジは、背後から聞き慣れない声を聞く。
「見つけたぞ……インヴィレッジ……!」
「……?!ば、化け物?!」
見慣れるわけもない、全身が紫色で筋肉をさらけ出している怪物──シソツ鬼──が背後から近づいてきていた。
とっさにシソツ鬼から逃げ出すインヴィレッジ。それを見てシソツ鬼はつぶやく。
「ここで勝負だ……お前を抜いて……後悔させてやる!」
走り出すシソツ鬼。周りで叫ぶウマ娘達を気にせず二人のレースが始まる。バ場はコンクリート。リードしていたのはインヴィレッジ。しかし無限とも言える競争距離を前にインヴィレッジは失速する一方で、執念をスタミナに変えるシソツ鬼は足を止めることを知らない。2500m地点でインヴィレッジはシソツ鬼に追い抜かれ、レースが終了した。
息を切らし足を止めたインヴィレッジを後目にシソツ鬼が叫ぶ。
「どうだインヴィレッジ!私のが速いんだ!」
「……そりゃ、センちゃんなりに走れたんだもん。センちゃんのほうが速いよ」
「……は?」
予想外の答えに動揺するシソツ鬼。
「今までが私の走りじゃないってこと?」
「うん。トレセンに入ってもセンちゃん、私の真似ばっかり。自分の走りを持ってなかった。昔はそんなんだから、私に勝てなかった」
たまたまセンリイッポの出る選抜レースを見ていたインヴィレッジ。その走りの中に昔の自分の姿が見えた。外を見ず満足していた自分の姿を。
「でも今、自分なりの走りで私を抜いた。それで……なんか感動しちゃった」
「……ヴィーちゃん」
本当はわかっていた。自分のこの不満は、バカにされたからではなく、自分で見つけた答えを見なかったことにし、インヴィレッジの走りでインヴィレッジを超えるという子供じみたことをする自分に向けられたものだと。
1からやり直そう、そう思った瞬間───
「やはり人の欲望は醜い。排除する」
冷たい声とともに、センリイッポは背中を斬られた。
「ギャアッ!」
「センちゃん?!」
倒れたシソツ鬼の体は蒸発を始めていて、下半身がすでに消えていた。
「消え……イヤ……イヤだ……イヤ───」
そうしてシソツ鬼は、センリイッポは人間界から消滅した。
「……全く、やつの尻拭いも骨が折れる」
そうつぶやき剣を納めた怪物の姿は、人に近く、濃い青色の全身で胸や顔に銀の装甲をつけているようであった。
目の前で、見た目は違えどたしかに幼馴染であった存在が消された、信じたくない現実がインヴィレッジの中に染み込んでいく。
「まだ……勝負は何回やってもいいでしょ……」
それでもその事実を否定したいという気持ちが、欲望を形作る。
「やり直させろ……あの子とのレースを!!」
『
電子の帯がインヴィレッジを包み、怪物が生まれ咆哮をあげる。
「欲望に飲まれたのならば、貴様に容赦はしない」
そうして、剣と、射出された金メダルが弾きあう音がトレセン学園に響いた。
──────────────────────
南坂がトレセン学園に戻ったころにはウマ娘達がトレーニングを始めている時間帯になっていた。自分の胸ポケットにサングラスがあることを確認し、言われたことを思い出す。
───1つ。ツインターボの手助けをする。
事情を知っているかもしれない、と考え電話を掛ける。しかし機械音声が不在を告げるだけで、ツインターボは電話に出なかった。
「まさかもう何かしらの事件に関わってしまっているのか……なおさら早く安否を確認しないと」
そうつぶやきツインターボと同期のメンバーに電話を掛けようとしたとき、
『ドン!ブラスター!』
「?!」
周りにアノーニがいないにも関わらず目の前にドンブラスターが出現した。昼と同じく、銃口を上に向けてエネルギー状のギアを発射し体がそれに包み込まれ───
トレセン学園の校舎外に、再びサルブラザーとして立っていた。
「まさか強制的に怪物と戦わされるのか……」
しかしアノーニ程度であればどうとでもなる、と高をくくって前を見たとき、その考えが甘かったことに気付く。
そこにはアノーニとも、昨日見た怪物とも違う、青い人型の怪物と四本脚の怪物───人バ鬼がいた。
人バ鬼が腕につけた弓から金メダル状の矢を青色の怪物に放つも、その多くは剣を使って落とされる。
どっちが倒すべき敵なのか決めあぐねていたとき、後ろで楽しげな話し声が聞こえた。
トレーニングをしようとしたウマ娘達は見知らぬ化け物を見る。
彫りの深い顔に、優勝レイのようなものをたすき掛けし、胸には賞状が貼られている。
「え、何あれ」「こっち見てる?」「撮影?」
各々が疑問を口に出している間に人バ鬼は腕にある弓状のものをウマ娘達に向ける。
「邪魔だ」
「───危ない!」
急いで射線上に走り出した南坂。ウマ娘達に警告したその瞬間、人バ鬼が矢を数発打った。それらは南坂の背に全て当たり、焼けるような痛みを与える。
「ぐっ!」
「キャー!!」
「……皆さん、校舎に……」
「早く逃げて早く!!」
校舎に帰っていくウマ娘達を見て安心したのもつかの間、鋭い痛みが体を刺激し、倒れ込む。
「つ……強い……」
あまりの力の差を見せつけられ、逃げの一手を打とうとする。人バ鬼の方を見ると、人バ鬼の能力により足を地面と接着させられた青い怪物に執着していた。
突如人バ鬼の周りにトロフィー状のエネルギー体が複数浮かぶ。それらの土台部分には減っていく数字が表示されていた。
「もしや……爆弾!?」
「やり直しやり直し……やり直しぃ!」
それらの危険性を察しなんとか立ち上がろうとする南坂の努力も虚しくカウントが残り1秒を指し───
「ケンケーン!」
突如空に現れたピンク色のなにかによりすべてのトロフィーは消え去った。
「それっ膝カックン!」「?!」
「失礼!」「ぎゃあ!」
続いて黄色の戦士の持つ棍棒に人バ鬼は後ろから体勢を崩され、上から小さい黒の固まりに連射される。
どこからともなく現れ、やること終えた三人は南坂のもとに集まる。
「申し訳ありません。遅れました」
「あんま無茶なさんな。一人でヒトツ鬼と戦えるのあの子ぐらいだし……」
「ゴリラ?!ワンちゃん、キジさんときてゴリラ?!」
犬の謝罪、雉の弁解、鬼の楽しげな声を聞き、痛みの代わりに混乱が頭を占める。
「皆さんは一体……」
「イヌシスターです」「キジシスターでーす」「オニシスター!むん!」
「なるほど……」
鬼はよくわからないが、犬と雉、そして自分が変身している猿との共通点を考えるに、つまり自分たちは桃太郎の真似事をしているのか、と心のなかでつぶやく。
「とすると桃太郎が……」
「ああそれはですね───」
南坂の疑問にキジシスターが答えようとしたとき、
「ワーハッハッハッハ!」
「あ、ちょうど来た」
突如人バ鬼側から聞き慣れた少女の笑い声が聞こえた。なんとか立ち上がる南坂。そこで目にしたのは───
勝負服姿で顔の半分を隠すほどのサングラスをつけたツインターボが、紙吹雪を散らしやってきていたのだ。
「やあやあやあ祭りだ祭りだ!
袖振り合うも多生の縁。
躓く石も縁の端くれ。
共に踊ればつながる縁。
この世は楽園!
悩みなんて吹っ飛ばせ!」
「ターボ……さん……?」
「ターボを知ってる?それならあなたと縁ができた!」
突然のことで頭がパンク寸前になる。そうした状況でなんとか起き上がる人バ鬼。
「だから……邪魔をするなぁ!」
「ターボさん危ない!」
ターボに向けられ発射された金メダル。しかしツインターボは難なく手に持ったザングラソードで跳ね返す。
「さあ楽しむぞぉ、勝負勝負!」
人バ鬼に飛びかかるツインターボ。振り下ろされたザングラソードが人バ鬼の体に火花を散らす。
そのままノータイムで横に切り払い、ケリを入れ吹き飛ばす。人バ鬼は応戦しようと金メダルを打つも、ツインターボは最小限の動きだけですべてを避けきった。圧倒される怪物がつい言葉を漏らす。
「何なんだお前ぇ……?!」
「ドンツイタボウ。それがターボの名前だー!」
倒れた状態の人バ鬼にザングラソードを振り上げる。
「グギャアッ!」
「ここまでだ」
「それはこちらのセリフだ」
ツインターボがザングラソードの持ち手付近にあるギアを回そうとすると、いつの間に拘束を解いていた青い怪物がツインターボに斬りかかる。
「ソノウクス、お前のせいで世界がめちゃくちゃだ」
「ソノウクスじゃないし!ドンツイタボウだし!」
青い怪物とツインターボが斬り合っている間に、3人のシスターがドンブラスターを人バ鬼に向ける。
ドンブラスター上部にあるボタンを押し、手元のギアを回す。
『パーリィタイム!ヘイ!カモーン!』
黄、ピンク、黒のエネルギーがそれぞれ銃口に集まる。そして3人同時にトリガーを引いた。
『いよおぉ!ドンブラコ!』
放たれたエネルギーはビームとなり人バ鬼の体を上に持ち上げる。空へ上ったエネルギーは収束し、
「あああああぁぁぁぁぁぁ!」
花火となって人バ鬼の体を破壊した。
「「「どん!どん!ドンブラザーズ!」」」
掛け声を上げる3人。どうやら終わったらしい、と考える南坂。あとはターボさんに事情を聞こう、と振り返ると───
「あれ、ターボさんは……?」
「戦っている流れで帰ってしまわれました」
「じゃあ私達も解散だ〜」「さよならー」
イヌシスターがさらっと答え、ほか二人は光を発し消える。
「では私も失礼します。またどこかで」
そうしてイヌシスターが消えた瞬間、南坂の近くに膝をついたインヴィレッジが現れた。
「い、インヴィレッジさん?」
「センちゃん……センちゃぁん……」
「……?」
それが一体誰なのか、そう聞こうとした瞬間南坂も消える。
そこには、一人泣きじゃくるウマ娘と木陰から見つめる白い影だけが残った。
白い影はケンタウロス座が掘られたギアを握った後、それをバックルにしまいトレセン学園の出口に向かった。
騒動がおさまったと知ったウマ娘達が校舎から出てくる。その中のひとりと白い影がすれ違う瞬間───
「?気のせい……かしら」
そこには通り過ぎたはずの白い影の姿はなかった。
──────────────────────
チームの部屋に戻ってきた南坂は、改めてツインターボの同期、つまり去年卒業したカノープスのメンバーに電話を掛ける。回答は一様に、
「直接はあってないが、きっと元気だ」
というものであった。
───さあ楽しむぞぉ、勝負勝負!
「確かに元気、かもしれませんね」
そうして一旦この悩みはおいておき、今自主トレーニングをしているであろうチームメンバーのウマ娘達の様子を見よう、と必要な道具を揃え外に出る。
登録メンバー一覧に一つの空白があることを、まだ南坂は気づかなかった。
じかーい、じかい。
ついに戦士としての活動を始める私。
無限に増える乙女鬼に仲間のイヌ、キジ、オニさんと力を合わせて……って皆さんどこかで会ったことがありませんか?
次回ドン"承"話 「かのーぷす」という、お話。