「君はドンブラザーズに選ばれた」
「なにこれ!視点高っ!周りの奴ら誰っ?!」
「彼らを倒すのが目標……理解しました」
「お父さん!私も頑張るよ!ドンブラザーズ!」
「「「侵入者、排除」」」
「うるさーい!ターボが法律だもんね!」
「廊下に立ってますぅ!」
「ターボは……ドンツイタボウ……」
「なんだコレ……ブレスレット?」
定食屋「ふりてい」。入り口から手前に小テーブルが4つ、左側に大テーブルが1つ、カウンター席が奥に3つあり、お品書きはテーブルに備え付けられているものと、カウンター側の壁に掛かっているメニューの札から確認できる。看板メニューは前主人の考案した「八手定食」で、色とりどりでありながらも意外と組み合わせが合うことで有名だ。その他にもウマ娘達に評判の「人参定食」をおいている。
ある日の昼前、その店の1つの小テーブルに、1人のトレーナーと3人のウマ娘が向かい合っていた。
「まさかカノープスメンバー全員がドンブラザーズだったなんてね〜」
オニシスター担当のマチカネタンホイザは、ゆったりした姿勢でそう呟く。
「世間は狭い、とはよく言ったものです」
イヌシスター担当のイクノディクタスは背筋を伸ばし注文した料理を待っている。
「まぁこれも縁、ということで」
キジシスター担当のナイスネイチャは落ち着いた様子で、それでいて久々に会えた面子に喜びを覚えていた。
「そうですね。皆さんが元気そうで何よりです」
サルブラザー担当の南坂は一ヶ月ほどとはいえ顔を見ていなかった教え子たちの様子を見て安堵していた。
乙女鬼の騒動から1日が経ち、イクノディクタスからのメールによりドンブラザーズがカノープスメンバーによって構成されていたことを知った3人は一度皆で集まることにした。
待ち合わせ場所が南坂の要求により定食屋であったため、早めの昼食をとっている。
「でもやっぱターボは来ないんだね。ほんとどうしたんだろ」
「やはりこの前見たあれが関係あるのかもしれませんね」
「え、何があったの?」
不在のツインターボに疑問を持つマチカネタンホイザに答えるイクノディクタス、そして気になる発言に身を乗り出すナイスネイチャ。
「ターボの様子がおかしかったんだよ……体にモザイク?なんかモヤモヤが掛かってて」
「それと、苦しんでいるようでした」
───……ターボは……ターぼジャナい……
「自分はツインターボではない、と」
一度空気が静まる。各々が最近見たツインターボの様子を思い出していたからだ。
───ターボを知ってる?それならあなたと縁ができた!
───さあ楽しむぞぉ、勝負勝負!
「あれはどう見たってターボでしょ」
「しかし、もし本当にターボさんでなかったら、彼女は一体誰なのでしょうか……」
うーん、と唸り声が定食屋に響く。
「こうなったら、直接ターボに聞いちゃおう!」
「でも今どこにいるの?本人じゃないとしたら実家にいるわけないだろうし」
「……少し、私の思いつきを試してみませんか?」
控えめに手を挙げ、イクノディクタスが提案をする。
「ドンブラザーズとして現場に出動するのは、ドンブラスターによって強制的に行われますが、やることが終わると再び強制的に元いた場所に戻されてしまいますよね?」
「そのせいで今まで交流もできなかったしね」
ナイスネイチャが相槌を打つ。
「もし私達が自主的に変身したら、そのワープは起きないのではないでしょうか?」
「はい!起きない!私何回か人助けのために変身したけど、勝手に近くにいる、とか勝手に戻ってる、なんてことなかったし」
確証のなかったイクノディクタスの仮説が、マチカネタンホイザの発言により裏付けられる。メガネを輝かせるイクノディクタス。
「したがって次回は、1人だけがワープをし、ほか3人はその1人からの連絡をもらい現場に向かい活動する、というのはどうでしょうか」
おおっ、と声が挙がる。
「それで残った3人がターボに話を聞くってことね。流石イクノ!」
ナイスネイチャが流れをつかむ。イクノディクタスは落ち着いた顔のまま頷く。
「ではワープする人を決めましょうか」
「それでしたら私にやらせてくれませんか?皆さんと違って徒歩で現場に向かうのに体力が追いつかないので……」
南坂の回答に3人のウマ娘がああ……と声を漏らす。そうして今後のドンブラザーズとしての方針を定め終わり、話の話題は学生時代と違う今の日常の話へと移った。
何十分かして、各々が自分の昼食を食べ終わり、お代は南坂が持つということになったとき、店主が席に近づいてきて話しかける。
「もしかして、カノープストリオさん達?」
「トリオ……?」「一応元カノープスですが」
多少の疑問をいだきながらもマチカネタンホイザとイクノディクタスが答える。
「やっぱり〜。中等部の頃からかな?全力全開でファンでした。サインくれませんか?」
「いいですけど……いいよね?トレーナー」
「構いませんよ」
色紙とペンを渡されたナイスネイチャから時計回りにサインを書いていく。3人分のサインが書かれた色紙を見て店主は満足する。
「ありがとうございます!いや〜まさかあの頃のカノープスメンバー全員のサインが貰えるなんてな〜」
「いや、今1人いないじゃないですか、ターボが」
蔑ろにされた友達のことに内心ムッとしながらも、訂正しようとするナイスネイチャ。しかし、
「……?ターボって、誰?新人さん?」
「「「「?!」」」」
その店主の発言が、カノープスの面子の空気を凍らせる。全員が立ち上がり必死に訴える。
「いや私達と同級生ですよ!ツインターボ!青色の鹿毛の子!」
「誕生日は4月13日、脚質は逃げ、勝ち鞍はオールカマーや七夕賞!」
「いや、全然知らない。そんな目立つ子いたら覚えてるはずなんだけど……」
たじろぐ店主。嘘をついていなさそうな彼の姿を見て彼女たちはますます混乱する。
「え、ターボ抜きでカノープスを好きになるなんてことある?」
「一旦落ち着きましょう、なにか──」
「あーっ!なにこれ?!」
南坂がヒートアップする空気を周りに気遣い止めようとするも、マチカネタンホイザの叫びが周りの注目を集めてしまう。彼女の視界の先を覗くカノープス一同。それはスマホに保存された1枚の写真だったが、
「ターボが……いない……」
卒業前、記念に撮ったカノープスメンバーの集合写真。今この写真を覗き込むメンバーが笑顔で並んでいるその列に、ツインターボの姿はなく、1人分の不自然な空きがあった。
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薄汚れたある高校にて。
今日もいつもと変わらず授業が行われていた。そうは言っても真面目に取り組む生徒は少なく、6割ほどは周りと喋っていたり寝ていたりしていた。
ノートを開き、黒板を覗いては初めて聞く内容を書き取る。そんな当たり前の光景に奇妙な点があった。
教室のドアが片方ない。
机が不自然に、そして不規則に存在しない。
そして、黒板の前には誰もいない。
こんな状況でも、真面目な生徒たちは授業に励んでいるのだった。
──────────────────────
「どうしてターボさんの情報がどこにもないんだ……?」
昼が過ぎ、一度解散したカノープス。南坂はツインターボの情報を確認するためトレセン学園に戻った。
結果として、過去数年の出場記録やカノープスメンバーの活動の切り抜きの中にツインターボの名前、姿を見ることはできなかった。
疑問を抱きながらも、時間が来たため現カノープスの部屋へ向かおうとすると、メンバーの1人である黒毛のウマ娘が前から迫り、勢いが止まらずぶつかる。まあまあの距離南坂が吹っ飛んだのを見て、もともと慌てていた顔がさらに崩れる。
「あぁっ!ト、トレーナーさん!すみませんそして大変です!うちのチームの部屋の前に、道場破りみたいなのが!」
「ど、道場破り?!」
───ドンブラザーズの戦士になれば不幸が訪れる。
これは不幸の範疇と言えるのか、そんなことを体の節々からの痛みに耐えつつ思いながら南坂は足を進めた。
──────────────────────
「あれは……インヴィレッジさん……?」
屋外にあるその部屋の近くにたどり着き、扉の前で腕を組み仁王立ちするウマ娘の顔を見て南坂がそう呟く。現カノープスの新鋭、センリイッポの幼馴染でライバルであるインヴィレッジがそこにいた。近づいてもこちらに顔を向けることなく、ただ下を見ている。
緊張が漂う雰囲気、それを壊したのはインヴィレッジから発せられた、
「……ぐぅ」
「寝ている……」
寝息であった。現カノープス一同は思わずずっこける。その空気を察しインヴィレッジは目を覚まし、目の前を覆う見慣れないスーツに驚き反射的に手で突き飛ばす。
「本日2度目……」
「あっ、寝ぼけてた……」
意識を取り戻し、突き飛ばしたことを謝り、話を本題に移す。
「ここの……カノープスのメンバーの……誰かに会いたいんです」
「ちょうど今全員揃っていますよ」
「いや、この中にはいなくて……」
どことなく歯切れの悪いインヴィレッジ。今この場にいないカノープスメンバーといえば、と南坂は思考を巡らせる。
「今休んでいるのは、イッポさんと───」
「!イッポなにって名前だったっけ!」
「いえ、センリイッポ、さんです」
「それだ……いや、それなのか?それのはず……」
様子がおかしいインヴィレッジに南坂は疑問を抱く。
「覚えてないんです……その、センリイッポって子のこと」
「?!……幼馴染だったと聞いていますが」
「幼馴染で、仲良くしていた年下がいたのはわかるんです。でも……顔も名前も声も思い出せなくて……」
その発言にデジャヴを覚える南坂。
───ターボって、誰?
慌てていま片手に持っているチームの出席表を覗く。そこには不自然に、センリイッポの名前があった場所が空欄になっていた。
「トレセンに入って、私を追い抜く、って言ってたのも覚えてます。でも何日か前に……」
───やはり人の欲望は醜い。排除する
「青い怪物にに斬られて……それで……」
「青い怪物……」
何日か前と言ったら、初めてサルブラザーになった日を思いつく。あのとき見た四本脚の怪物と応戦していたのは、確かに青い怪物であった。
「あれが人を消す存在の正体……ターボさんはアレにやられたということか……」
今現在起きていることの実態が掴めそうだと南坂は思う。一度頭の中を整理するためその場を離れようとすると、突然目の前の景色が変わる。
そこは何日か前の、扉をくぐった先に見たイデオンと呼ばれるところであった。すぐ前には、一度見たことのある大きな箱と、1人の人間がいた。
「どうして私はここへ……?」
「……?南坂トレーナー?」
イクノディクタスの声が聞こえ後ろを振り返る。気付けば後ろに、昼に見た元カノープスのメンバーがいた。全員が自分と同じようにいつの間にここへ来ていたらしい。
「全員揃ったな。一度しか言わないからよく聞いていて欲しい」
フードを被ったそれは話を切り出す。ノイズがかかっているとはいえやはりどこかで聞いたことのある声だ、と南坂は感じていた。
「今まさに人間界とイデオンのバランスが崩れ始めている。いつ壊れてもおかしくない状況だ。現にヒトツ鬼が各地で暴れまわっている」
空気が張り詰める。ここ何日か戦ってきた怪物たちが多く存在している状況を想像し、誰もがゾッとする。
「ここが正念場だ。ここを抑えることができれば、君達はドンブラザーズをやめることができる。不幸も訪れず、痛い目を見ることもない」
後ろに4つの扉が新たに現れる。
「各自変身し扉をくぐれ。そして、ドンブラザーズの使命を果たせ」
「ラジャー!」「よし!」「了解です」
『オ ニ シスター!!』『キ ジ シスター!!』『イ ヌ シスター!!』
手元のドンブラスターのギアを回転させアバタロウギアからデータを合いの手と共にロード。トリガーを引くことでデータが実体化、アバタロウスキンを身につける。
変身したウマ娘3人は各々の扉をくぐっていった。
1人残る南坂は箱の方を向く。
「つかぬことをお聞きしますが、あなたは……シンボリルドルフさんなのでは?」
初めてこの空間を後にしたとき、フードの中に白い流星を見た。そしてさっきまでの話し方から南坂はそう推測した。
「……よくわかったね」
ノイズが消え、改めて目の前に立つそれが元トレセン学園生徒会長だと理解する。
「何故今まで正体を隠していたのですか。そして、何故今ここにいるのですか」
「ここにいる理由だけ教えよう。私は今イデオン側に狙われている。そのための隠れ家としてここを選んだ、それだけだ」
一つ残った扉がひとりでに開き南坂を引きずる。
「これで面会時間終了だ。……ツインターボを頼むよ」
誰もいなくなった空間に独り言が響く。
「これで準備は整った……」
──────────────────────
『サ ル ブラザー!!いよっムッキムキ!!』
景色が変わる。そこはどこかで見たことのある、広い、木々に囲まれた広場であった。すぐそばで高笑いをする女の声と多くの男女の悲鳴が聞こえる。振り向くと、1体のヒトツ鬼───粒喫鬼がこちらに向かっていた。
三角フラスコを模した頭部から黒いモヤが目を光らせ出ている。足のようなデザインのしたストラを首にかけていて、片方の脚がもう片方の脚を踏んでいるようである。
「あーなたは神を信じますかァ!」
妖しく体を紫色に光らせ、能力を発揮する。粒喫鬼から南坂に向かって巨大な足跡が地面に跡を残しながら襲いかかる。自分の位置にそれが被る瞬間に横へ転がりドンブラスターで粒喫鬼を牽制しつつ走って進み、近接戦へ持ち込む。
「これだけ近づけば足の攻撃はできないはず!」
「あぁ助けてください我が主!」
その懇願に答えたのか、南坂は背後から攻撃をうける。振り向くとそこに新たなヒトツ鬼───小玉鬼がいた。
威張っているように見える狐の頭を腐り果てた怪物が5本の歯で噛み付いている。胸部には稲妻のような亀裂の入った星型のエンブレムをつけていた。
「俺こそ
小玉鬼は胸を開き、そこから大量の包丁と菜箸を飛ばす。サルブラザーのスキンを纏っているためそこまでのダメージはないものの、その量に耐えきれず粒喫鬼から引き剥がされる。そのタイミングを逃すわけはなく、粒喫鬼は再び全身を光らせ巨大な足跡を南坂へと向かわせる。避けられず立ち上がれないほどの重力を受けてしまう南坂。
抜け出そうと腕を使いその空間から逃げようとするも、その手をまた別のヒトツ鬼───王麗鬼が踏み潰す。
「ザッザザザ残念ンンンンン」
「がっ、あああっ!」
顔は5本の根に掴まれ、苦悶の表情を見せている。その苦しみとは反対に後頭部には華麗な桜が王冠のように咲いている。
もはや逃げる術はなく、身体にかかる圧を耐えるしかない南坂。
(ここまでか……)
薄れる意識の中そう思った時───
白い影が舞い降りた。
それは着地からノータイムでヒトツ鬼達を撃ち抜き、南坂への攻撃の手を止めさせる。3体の意識が白のヒーローに向いたときには、すでに右手に1つのギアが握られていた。左手に持っている赤い鳥を模した銃───ギアトリンガーの上部を開き、ギアを取り替えサイドハンドルを回し、トリガーを引く。
『ババン!ババン!ババンババン!ババババーン!チームリギル!』
チームリギルのゼンカイギアからデータをロードし、トリガーを引くことで己に情報をインプットするこの技。銃口から巨大でケンタウロス座が表示されたギア状のエネルギー体が出現、瞬間、それは勝負服を着たシンボリルドルフが腕を組んだ姿へ変わり白のヒーローに被さった。
体勢を低くしたそれからはシンボリルドルフの声と、もう一つの声が重なり、
「汝、皇帝の神威を見よ」
と告げ、目にも留まらぬ速さで小玉鬼の懐へ入り、拳を入れる。雷が走るそれは断末魔を上げる小玉鬼を爆発させると共に吹き飛ばし、元の人の姿へと戻した。
爆発した際、一つのギアが南坂の手元に落ちる。それには特徴的な2つの異なる靴が片面に彫られていた。
(先ほど彼がやったような、ギアの取り替えによる攻撃が自分にもできるのでは……)
そう考えた南坂は、残った力を振り絞りドンブラスターのギアを手元のそれと取り替え、スクラッチテーブルを合いの手と共に回す。その横では白のヒーローがまた新たなギアを使いサイドハンドルを回していた。
『タ マ モ クロス!!いよっ疾風迅雷!!』
『ババン!ババン!ババンババン!ババババーン!チームスピカ!』
トリガーが引かれたことでドンブラスターから出たエネルギー体は新たなアバタースキンのデータ。南坂はサルブラザースキンからタマモクロススキンへと変わった。
ギアトリンガーから出現したギアは、片膝を曲げそこに肘をつけメンチを切る勝負服のゴールドシップへ変わり、白のヒーローへ重なる。
「白い稲妻、見せたるで!」
「不沈艦、抜錨ォッ!」
大きなサングラスをつけた、勝負服姿のタマモクロスは稲妻を発しながら素早いジグザグ走法で2体に近づき、一直線に同時に蹴りを入れる。時間を置くことなく、白のヒーローが手に持った黄金の錨で2体を切る。
結果、粒喫鬼と王麗鬼は爆発を起こし、変身者は正気を取り戻した。
一段落つき、改めて隣のヒーローに注目する。白をベースとし、中央に薄い黒の線がかかっていて───
「……あっ!あん時の!あれ……」
「?」
話しかけ、自分の口調がタマモクロスに引っ張られているのに気付く。頭の中ではいつも通りの言葉が浮かぶも、
「ほら!覚えてへん?栗毛の子とウチを助けてくれたやないか!」
「……?」
「ウチ、タマモクロスゆうもんや!いやちゃうタマモクロス……もう!」
出てくる言葉が全て大阪弁になってしまうし、自分の名前がタマモクロスに変換される。スキンが変わったことが原因だと理解するのに数秒かかった。
もう用はないとばかりにその場を去ろうとするヒーローを見て、慌ててギアを元に戻し、サルブラザーとして話しかける。
「この前の夜、赤色の怪物から助けていただいたものです!名前を教えいていただけないでしょうか!」
「夜に赤い……」
そうつぶやき後ろを見て、去ろうとして再び強めに後ろを向く。そのままの勢いで南坂に近付き、両肩を掴み慌ただしく言葉を発する。
「トレーナー!ターボはツインターボ!お願い、ターボとテイオーを助けて!」
「?!」
そう言い残すとヒーローは光を発し消えてしまった。新事実に言葉が出ない南坂。今まで見てきたサングラスをつけたツインターボの他に現れた自称ツインターボ。そしてトウカイテイオーも助けてほしいという懇願。今まで気にしていなかったその単語に新たな疑問が浮かぶ。
「今テイオーさんはどこに……?」
「ワーハッハッハッハ!」
その言葉に応えるかのように、アクロバティックにドンツイタボウが姿を見せる。辺りを見て、すでに戦闘が終わったのを察し、ガッカリした素振りを見せる。
「あなたもターボさん、ですよね」
「違う!ターボはドンツイタボウ!全部倒したのはオマエか?」
「いえ、もう1人のターボさんに手伝ってもらいまして───」
「嘘だ。ターボがいるわけない」
空気が張り詰める。明らかに雰囲気が変わったドンツイタボウを前に、南坂は背筋が凍るのを感じた。
「あの時ターボはターボを消したんだ。この手で。目の前で!」
「……どういうことですか」
お互いの変身時間が限界を迎える。サルブラザースキンが消滅し南坂が表れ───
ツインターボスキンが剥がれトウカイテイオーへと変わる。
「?!」
「あなたに教えてあげる。あの日、何があったか……」
──────────────────────
side:トウカイテイオー
「なんだコレ……ブレスレット?」
見たことのない意匠が凝らされたブレスレットに興味が湧くトウカイテイオー。それは端的に言えば、RPGものによく出る盾を、斜めに付けている様であり、使われている色は銀と紫であった。
そうはいっても道端で見つけた物のため着ける気にはならなかった。交番に届ける前に後ろの友人に見せつけてやろ、そう思い振り返ると───
「っ……グッ!」
「……!大丈夫ターボ?!」
胸をおさえ苦しむツインターボの姿があった。介抱するために近付く足を、フードを被った何かに止められる。
「どいてよ!今友達が───」
「君の使命は2つ」
「……は?」
ノイズの混じった声の主は眼前に人差し指を立てる。
「1つ。そのブレスで変身しヒトツ鬼を消す」
続いてそれは中指を立てる。
「2つ。周りにこの事を話さない」
「どうしてそんなことしなきゃ───」
「友達を助けたいんだろう?」
「っ!」
「これで話は終わりだ」
ツインターボとトウカイテイオーを結ぶ直線からフード姿の何かが外れる。しかし目の前には正気のツインターボの姿はなく、
「テイオーにぃ、ターボはなる!」
『
ヒトツ鬼───龍骨鬼へと姿を変えていた。
龍の骨の上顎と琴を繋ぎ合わせた顔に、スーツのような上半身。腰ほどまでに伸びている頭部の尻尾などを見ると、それはさながら自分のようであった。
龍骨鬼は背中から八本の細長い足を伸ばし、無差別に振り回す。それは建物さえ容易く破壊してしまった。
全く心の準備ができていない。
(ターボを助けるにはあの怪物を消さなきゃいけない……)
(でもあの怪物はターボじゃん……)
2つの考えが頭の中で回り続ける。そんなことはつゆ知らず、トウカイテイオーに、一歩、また一歩近付く龍骨鬼。
伸ばされた足が頬をかすめる。命の危機を感じ、もう退けないと悟ると、自然とブレスレットを腕にはめていた。
腕にかかる重さが、自分のすべきことを決断させる。
胸の前にブレスレットを構え、もう片方の手をかざす。彫られた模様が宙を舞い、脳人シールドとして身を覆う。
トウカイテイオーは、ソノウクスへと変身した。
握られた刀───十字物ダングアソードを目の前の怪物に向け、走り出す。
目標を捉え、刀を持ち上げる。
「ああああぁぁぁっ!」
刀が、振り下ろされる。
「テイ……オー……」
「ターボ……」
腕をつかもうとするも、その手は空を切る。
「また……な───」
「ターボ!」
そうして龍骨鬼は、ツインターボは人間界から消滅した。
もういないツインターボのもとへ歩き、膝をつくトウカイテイオー。周りに誰もいない状況で変身が解除される。ポケットの中に入れていた、ゲームセンターを出る前に撮ったプリクラの写真から、シャボン玉が弾けるようにしてツインターボの姿はなくなった。
涙は出ず、ただ叫ぶしかなかった。
──────────────────────
「あなたが、ターボさんを……」
「どう言われたって構わない。今はもう……」
「?!テイオーさん!」
自らに課せられた使命、「周りに話さない」事を破ったトウカイテイオーに罰が執行される。
「疲れたんだ」
『
警告音とともに現れた光の帯がトウカイテイオーを包む。収束したそれは彼女をソノウクスへと変えた。
紫と白をベースとし、肩に棘が一本ずつ生えた人型。
3つの扉が開かれる。中からドンブラザーズが飛び出してきた。
「トレーナー!探しましたよ」
「連絡してって……まだ怪物が!」
「早く変身して!」
各々がドンブラスターを発砲するも、トウカイテイオーは動じない。
「皆さん!彼女は───」
「トレーナー!前!」
膝を落とし、刀を腰の左に構える。
狙いは、ドンブラスターを構えた3人。狙いが自分達と察し、各自が必殺技の準備を行う。
(それでは間に合わない!)
気付けば南坂は、トウカイテイオーの体勢を崩そうと足を踏み出す。
その願望も叶わず、トウカイテイオーは踏み込む。
一歩、二歩、三歩。一瞬のうちにその体はカノープスを追い抜く。
静まる広場。次の瞬間、4人の体がスパークを起こし、人間界から消滅した。
残された怪物に正気はなく、雄叫びが広場に響いた。
「ターボ!」
「ターボさん!」
「ターボ!」
「ターボさん!」
「ター……ボ……」
「暴ターボ戦隊!」
次回ドン"結"話「どんかのーぷす」という、お話