暴ターボ戦隊"ドンカノープス"   作:流落御茶様

4 / 4
ドン"結"話 「どんかのーぷす」

 

 広場一帯に雄叫びが轟く。木々を揺らし地面が揺れる。目の前に新たな標的を見て、笑うような唸りを上げる。

 ソノウクスによる、人類の消去が始まった。

 

──────────────────────

 

 気付けば南坂は、半透明の床に寝そべっていた。体を起こすと、壁も天井も、床と同じ面積、材料でできているようであった。

 

「一体ここは……」

 

 周りを見渡す。自分が入っている箱と同じものが明るい黒の空間に何十個も浮いている。半透明であるために内部の様子ははっきりとは見えないが、人が倒れているようであり、その中に見慣れたカノープスのメンバーはいないようであった。

 

(皆さん無事だといいのですが……)

 

 今は自分にできることをしよう、そう心に決め、ドンブラスターを出す。

 

『サ ル ブラザー!!いよっムッキムキ!!』

 

 サルブラザーへと変身し、天井を突き破る。アバタロウスキンにより強化された脚力を使い、箱から箱へ飛び移る。飛び移った箱の天井を破壊し、中にいる人の意識を覚まさせる。そうした動作を繰り返していると、羽ばたく音が遠くから聞こえた。

 追手が来たのか、そう予測し警戒を強めると、現れたのはキジシスター───ナイスネイチャであった。

 

「トレーナー!ここにいたんだ!」

「ネイチャさん!無事だったんですね」

「他のみんなも無事だった。今はそれぞれの近くの人を起こしてたよ、トレーナーみたいに」

 

 無事だとわかり、そして自分と同じように人助けをしている教え子を想像しホッとする南坂。その安堵が、一つの可能性をよぎらせた。

 

「ここのどこかに、ターボさんがいるかもしれません」

「え、あのグラサンのターボ?」

「いえ……詳しい説明は後でします。ともかく今はターボさんを探しましょう。タンホイザさんとイクノさんにもそう伝えて下さい」

「了解!」

 

 来た方向へ戻っていくナイスネイチャを見届け、新たな目標のため動き出す南坂。しかし目の前に新たな箱が現れる。気付くと、目を覚ました時より箱の数が増えているようであった。

 それはつまり、トウカイテイオーが今もなお人を襲っていることを意味している。

 

「早く戻って止めなければ……」

 

 気を引き締め、再び箱から箱への移動を始めた。

 

──────────────────────

 

 各地に現れた怪物の中で、都内某所の広場にいるそれは瞬く間に日本の注目を浴びた。それの繰り出す攻撃によって人が消えてしまうことも。その場にいた人達は逃げようとするも、怪物が、手にしている武器を腰に構え3歩歩くだけで、ウマ娘さえも逃れられず消されてしまい、中継放送のため近付いたヘリコプターは投擲によりパイロットもリポーターも消去される。

 そんな中でも広場へ向かう目立ちたがり屋が後をたたない。マタドールよろしく赤マントを使い攻撃を避けようとする者、柔道に覚えがあると絞め技をかけようとする者、自作の発明品を試そうとする者。誰もが平等に姿をくらませる。

 向かう敵なし、最恐の怪物は未だに足を止めることを知らない。

 怪物から逃げる途中で、女性が足を滑らせる。誰もが彼女を見限る中、1人の男性が彼女の前に出る。抵抗も虚しく二人に向かい刀が振り下ろされる。そこで初めて、ソノウクスは足を止めた。

 何かが来る予感を感じていた。

 

──────────────────────

 

「……トレーナー?」

「ターボさん!」

 

 数分経ち、南坂はついにツインターボを見つける。自分が元居た位置より遠く離れているためか、空間が青がかっていた。

 天井を破り変身を解除する。

 

「どこか痛いところはありませんか?」

「ダイジョーブ!ここだとお腹も空かないし!」

 

 スマホを取り出し、電波があることを確認し、カノープスメンバーに報告を済ませ、こちら側に来るよう指示を出す。

 

「それよりテイオーは?!」

「今は正気を失って、人を襲っています」

「早く止めなきゃ!」

「はい。ですが……」

 

 止めなければいけない、それは分かっているが、未だにここから元の世界へ戻る方法が見当もつかないままであった。

 そうした中、南坂は薄暗い青の空間の中に建物を見つける。

 

(あれは……さっきまでいた扉の向こう側に似ている……)

「まさか……」

 

 その予想はあっていた。再び変身しツインターボを連れて青くなっている空間の方へ進むと、近未来なデザインの床と建物が並ぶ風景へと変わったのだ。

 シンボリルドルフが身を隠していたイデオンという世界と、トウカイテイオーに斬られた人間が送られる空間は繋がっていた。脱出策が頭をよぎる。短い間周囲を散策すると、目当てのものを見つける。

 他のメンバーが来るのを待つ間、南坂とツインターボは言葉を交わす。

 

「あのヒーローの姿は一体?」

「ぜんかいざー?ってやつ。あの銃がそう言ってた。ここにいる間、たまに出てきて変身させてくれた」

「いつ頃から怪物と戦っていたのですか」

「ここに来たときから!どんなやつも一人でやっつけたよ!」

「……寂しく、ありませんでしたか」

「……全然!ヘッチャラだったもん!」

 

 その発言にから元気を覚えた南坂だが、悟られないよう返事を返した。

 少し経ち、ナイスネイチャの背に乗ってイクノディクタスとマチカネタンホイザがやって来た。

 

「今度こそ本当のターボだ〜おひさ~」

 

 ツインターボの頭を撫でながらオニシスターのマチカネタンホイザが話しかける。

 

「この空間と繋がっていたのですね」

 

 あたりを見渡しイヌシスターのイクノディクタスは言う。

 

「それで、ここから出る方法、わかったの?トレーナー」

 

 長距離の飛行に少し息を切らしながらも脱出法を問うキジシスターのナイスネイチャ。

 

「はい。すでに先の目的地も確認済みです」

 

 4人を先導しサルブラザーの南坂が言う。着いた先には、誰もいない大きな箱と1つの扉があった。

 

「この箱……フードの人が居た所じゃん」

「ということはあの扉は私達が通ったものということですね」

「この先は私が出た広場につながっています。恐らく周りはパニック状態になっているはず。渦中へ乗り込み、怪物になったテイオーさんを止めましょう」

「おー!」

「え、あれテイオーなの?!」

 

 手短に現状を話す南坂と、意外だ、と衝撃を受けるドンブラザーズの3人。一呼吸置き、扉をくぐった。

 人間界に戻ってきた先の1000mの短距離走を終え、カノープスは変わり果てたトウカイテイオーと対面する。また新しい怪物が出た、と人々は叫び辺りへ逃げ回る。そんな中、ツインターボが呟く。

 

「待ってろテイオー。絶対にもとに戻してやる!」

 

 そうして自らの武器を構える。スクラッチボードの付いた黄色の銃───ドンブラスターを。既に変身している面子がリアクションを取る。

 

「ターボさん?!いつの間にそれを?!」

 

 唯一言葉を返した南坂。指摘され自分の持っているそれを見るツインターボ。

 

「あれ?!いつものじゃない!どうやんのこれ!」

「その赤いところを回して!」

 

 マチカネタンホイザに言われ回してみる。

 

『ドン!ドン!ドン!ドンブラコ!!ア バ タ ロ ウ!!』

 

「この後は?!」

「トリガーを引っ張ってください!」

 

 イクノディクタスに指示されツインターボはトリガーを引く。

 いつの間にツインターボの周辺は波が下に漂う明るい電子空間へ変わり、発射したデータが上から下へツインターボを覆う。

 

『ド ン モモタロウ!!いよっ日 本 一!!』

 

 アバタロウスキンを纏ったツインターボは、気付けば担ぎ上げられた神輿の上にいた。

 

「うわっ揺れる!しかも高い!あ、なんか踊ってる!イエイイエーイ!」

 

 数人の天女が舞い、紙吹雪が降り注ぐ中はしゃぐツインターボ。

 

 かくしてドンブラザーズは正式に揃ったのだった。

 

 神輿からジャンプして4人と並ぶツインターボは腕を組む。

 

「暴ターボ戦隊!」

 

 突然の掛け声にも、長年の仲である4人は次に言うべき答えを導き出す。

 

(今アバタロウって聞こえた、いやアバターボ?)

(戦隊と名乗るからにはチーム名を言えばいい)

(どっちのチームだ?言うべきなの)

(ここは賭けですね……!)

 

「「「「ドン「カノープス!」!」」」」

 

 奇跡的に揃った4人の回答が正解にかき消される。

 間違えた、という空気を無視しソノウクスが刀を構えドンブラザーズに突っ込もうとするもツインターボのザングラソードによって止められる。ツインターボが口を開く。

 

「みんな!行くぞ!」

 

 その発言を聞き、一同は気を取り直しソノウクスへ走り出す。

 1人で5人を相手にするのは悪手だと判断したソノウクスは後ろに人影を見る。スマホで撮影していたチャラついたカップルは近付いてくる怪物に悲鳴を上げる。それを止めようとツインターボが肩を掴むも、ソノウクスが息を吹きかけることで、

 

繧ォ繝ャ繧「繝、(カレアヤ)

 

繝代?繝倥Μ(パマヘリ)

 

 二人の額に開いた扉が現れ、内側から欲望が溢れる。欲望は寄生主を乗っ取り、可憧鬼と羽太鬼へと変貌を遂げた。

 なりふり構わず暴れる2体の怪物が結果的にドンブラザーズのソノウクスへの接近を妨げる。

 

「こっちは私達に任せて!」

「ターボさんはテイオーさんを!」

 

 離れた位置にいるそれらに4人が走って向かう。

 イクノディクタスとナイスネイチャは可憧鬼を。

 マチカネタンホイザと南坂が羽太鬼を。

 そしてツインターボがソノウクスを狙いに定めた。

 互いに譲らぬ華麗な剣捌きが火花を散らす。しかしアクロバティックさではツインターボが勝っていた。横へ振るわれた刀を体を反らせ回避。ノールックでドンブラスターを発砲し牽制、体制を戻し蹴りを入れる。よろけたソノウクスを掴み、足を入れ転ばせるも、その反動を利用され後ろに回り込まれ刀が振り下ろされる。真剣白刃取りをするツインターボ。

 

「目ぇ覚ませ……テイオー!」

「ヴゥゥ……」

 

 両者譲らぬ戦いがそこにあった。

 

 

 

 離れた場所では、4人と2体の戦闘が始まっていた。

 可憧鬼が天を仰ぐと、ハート型の流星群がイクノディクタスとナイスネイチャへ向かってくる。

 

「避けられない!どうしよう!」

「バックルからギアを取り出してください!」

 

 慌てるナイスネイチャに、遠くから南坂が自分の経験からのアドバイスを送る。それを聞き、ナイスネイチャとイクノディクタスの2人は手にしたギアをドンブラスターに入れ、スクラッチテーブルを回す。

 

『ハ ル ウララ!!いよっうららん一等賞!!』

『マ ン ハッタンカフェ!!いよっcreeping brack!!』

 

「ワクワククライマーックス!」

 

 ハルウララスキンへと変わったナイスネイチャが両拳を挙げると、空から桜の花が大量に舞い、流星群をそれで打ち消す。

 

「アナタヲ•オイカケテ……」

 

 マンハッタンカフェスキンを纏ったイクノディクタスが手を可憧鬼に向けると、可憧鬼の影からもうひとりのマンハッタンカフェが現れ死角から足を払い、ダウンしたそれを持ち上げる。それを見た2人はドンブラスターを構える。

 

『パーリィタイム!ヘイ!カモーン!』

 

 ピンク、黒のエネルギーがそれぞれ銃口に集まる。

 

『いよおぉ!ドンブラコ!』

 

 放たれたエネルギーが可憧鬼の体を貫き、変身者はもとの姿に戻った。

 

 

 

「私達もアバターチェンジを!」

「よしきたばんばん!」

 

 空に浮かび羽を飛ばす羽太鬼を見上げ、南坂とマチカネタンホイザは言う。南坂は隣の爆風で飛んできたギアを、マチカネタンホイザはバックルから1枚のギアをドンブラスターに移す。

 

『ア ド マイヤベガ!!いよっStarry Nocturne!!』

『ア グ ネスタキオン!!いよっtach-nology!!』

 

「ディオスクロイの流星っ!」

 

 地面を蹴り上げたアドマイヤベガスキンの南坂は青い炎を纏い空中の羽太鬼を捉え、踵落としで翼を折る。

 

「U=ma²。勝利の法則は決まりだ!」

 

 アグネスタキオンスキンのマチカネタンホイザの周囲から多くの数式が生まれ落ちてくる羽太鬼を覆い、その場に拘束する。

 

『パーリィタイム!ヘイ!カモーン!』

 

 青と黄色のエネルギーが2人のドンブラスターに集まる。

 

『いよおぉ!ドンブラコ!』

 

 数式がはけた瞬間を見計らいトリガーを引く。発射されたエネルギーは羽太鬼の機能を止め変身が解けた。

 ヒトツ鬼から戻った2人が意識を取り戻したのを確認して、ツインターボの方を向くと、タイミングよく掛け声が聞こえた。

 

「皆!力を貸して!」

 

 それぞれが賛同の意を示しソノウクスへ発砲する。全てが刀で受け流されるも隙が生まれ、背中をザングラソードで斬りかかる。

 よろけたソノウクスが睨んだ先には、5人の戦士が横一列に並んでいた。

 

「必殺技だ、準備準備!」

 

 他のメンバーに少し離れるよう指示するツインターボ。周りはすでにきらびやかなものに変わり、ツインターボを中心にしてやぐらが立っていた。四隅にドンブラザーズが移動し、備え付けられた大きな歯車を回す。それと連動しツインターボの立つ舞台が上に昇る。

 

『ドン!ドン!ドン!ドンブラコ!!モ モ タ ロ 斬!!』

「桃代無敵!アバター乱舞!」

『モーモタロ斬♪モモタロ斬♪』

 

 やぐらへ走るソノウクスを、ドンブラザーズの牽制が止めさせる。

 カラフルに光るザングラソードが投げられ、不規則な方向転換でソノウクスへダメージを与える。

 一直線に切り込みが入ったかと思えば、すでにソノウクスの背後にツインターボがザングラソードを構えていた。虹色の傷跡が爆発を上げる。

 

『モモタロ斬!!』

「「「「「ドン!ドン!ドンブラザーズ!!」」」」」

 

 爆発が起き、スキンが剥がれ、トウカイテイオーが膝から崩れ落ちる。

 

 決着が着いた。そのタイミングで青の怪物がトウカイテイオーの元に現れた。

 

「遅かったか……」

「あのときの……イッポさんを消した……!」

「テイオーから離れろ!」

 

 呟く怪物と、記憶をたぐる南坂。初対面のツインターボが威嚇するもそれが動じることはなかった。

 瞬間、トウカイテイオーが足元から蒸発していく。

 

「ター……ボ───」

「テイオーさんの体が……!」

「ソノウクスはどこだ!」

 

 イクノディクタスの狼狽を無視し怪物がドンブラザーズに近付くも、

 

「ここだよ、ソノイ」

 

 突如出現したフードの人間がダングアソードでソノイと呼んだ怪物を斬る。瞬く間に二人が消えた空間に緊張が走る。

 

「フードの人、戦えたんだ……」

「なぜテイオーさんが消えたのですか、ルドルフさん!」

「え、今度は会長さん?!」

 

 驚くナイスネイチャと、疑問をぶつける南坂。また流れ弾のように新情報を食らうマチカネタンホイザ他3名。落ち着き払ったフードが自分の顔に手を突っ込む。

 

「これがシンボリルドルフだろう?」

「?!」

 

 取り出したのは、シンボリルドルフの顔がアップで写った一枚のポスター。手を開き、それは風に飛ばされる。

 

「なぜそんなことを……」

「勘付く奴がいるというのを想定して、ブラフを貼っただけだ。計画を潰されたくないからな」

 

 ノイズがかかった声が音を抑え笑う。

 

「ついにここまで来たんだ……我が計画……孤独の頂点!」

 

 腕をめくり、トウカイテイオーがいたところに落ちていたブレスレットを付け、胸元でそれに手をかざす。脳人シールドが身を覆いソノウクスへと変わる。全身が光ったかと思えば、周囲に光の帯が発生する。

 

蟾ィ螟ァ蛹(巨大化)

 

 帯が膨張し、瞬間煙が立ち上る。

 人間界と重なり合ったイデオンが分離を始め、その地に機械と化した、巨大なソノウクスが顕現した。

 

「群れなんぞ邪魔にしかならぬ。この世界に君臨するのは、私1人で十分だ!」

 

 手を横一線にかざすソノウクス。その範囲内で雷が発生し、建物が次々に倒れていく。人間界とイデオンは連動している。そのために、人間界でも建物がひとりでに崩壊を起こしていた。

 怪物騒ぎに続いて起きる倒壊事故に人々はパニックに陥る。叫び声が響く中ツインターボが地団駄を踏む。

 

「あんなデカイの、どーすりゃいいの!」

「俺に任せて!」

「……え、誰?!」

 

 突然後ろから声をかけられる。そこには白をベースにした青い瞳のヒーロー、

 

「ターボさんが変身していた───」

「ゼンカイザーだ!」

 

 ゼンカイザーブラックが、ハンドルを回しながら近づいてきた。

 

「まずは皆に、プレゼント!」

『45バーン!ババン!ババン!ババンババン!ババババーン!ゼーンカイジャー!』

 

 45の数字が彫られたギアが発射され、それが5人のヒーローへ変わる。それの真ん中にいたヒーローは大げさに足を上げながら、5人はドンブラザーズに突っ込み、己のデータをダウンロードする。

 機界戦隊ゼンカイジャー。機械と人間が協力した戦隊ヒーローのパワーはアバタロウスキンを機械へと変える。

 

『ド ン ロボタロウ!!いよっ世 界 一!!』

『イ ヌ ロボタロウ!!』『サ ル ロボタロウ!!』『キ ジ ロボタロウ!!』『オ ニ ロボタロウ!!』

 

「え〜!?ロボットになっちゃった!?」

「言い逃れできないぐらい犬になってしまいまいました……」

「腕が……体ほどの大きさに……」

「これ雉なの?普通の鳥じゃない?」

「ゴツゴツで可愛くなーい!」

 

 各々が自分の身に起きた変化にとやかく言っている間に、ゼンカイザーブラックは新たなギアをギアトリンガーに入れハンドルを回す。

 

「次はこれ!」

『16バーン!ババババーン!ゼーンカイジュラン!』

 

 空に向けギアトリンガーのトリガーを引くと、ギアの形をした巨大な穴が街に浮かび、中から赤い恐竜───ジュランティラノが飛び出す。ソノウクスのいる方向へ進むジュランティラノと併走するように、赤いバイク───エンヤライドンを走らせるゼンカイザーブラック。エンヤライドンが自動操縦に変わりゼンカイザーブラックが空中に飛ぶと、それは隣の恐竜と変わらないほど大きくなる。

 野球の応援歌に似たラッパの音があたりに響く。

 赤の巨体が両方変形を始める。

 

「ドン!全開合体!」

 

 後方に巨大なゼンカイザーブラックのイメージが大きく開いた腕を合わせ、それに伴い2体が合体する。

 

『ド ン ゼンカイオー!!いよっ全力全開!!』

 

 ドンゼンカイオーがイデオンに降り立った。

 

 空に浮かぶイデオンに鎮座する巨大ロボットに、カノープスメンバーがおおっ、と感嘆をもらす。

 

「スッゴーイ!ロボットになったー!」

「これぞ漢のロマン、ってやつ?」

「マチタンウマ娘でしょ……」

 

 ふと、ツインターボが自分の手元の、金色の枠のギアを見る。

 

「ターボ達も、ああなれるんじゃない?」

「……一理ありますが───」

 

 イクノディクタスの言葉を待つことなく、スクラッチテーブルが回る。

 

『ドン!ドン!ドン!ドンブラコ!!ロ ボ タロウ!!』

 

 トリガーを引きエネルギー弾が発射される。前方に現れたギア型の穴に引きずり込まれた5人は、きらびやかな空の下で1隻の舟に乗っていた。

 前方のおどろおどろしい島に、愉快なBGMとともに流れていく。

 

『大合体!大合体!』

 

 5人は同時に跳躍し、変形を始める。

 

「イクノとマチタンは足!」

 

 足型になったイクノディクタスとマチカネタンホイザがツインターボの足のジョイントに繋がる。

 

「不肖イクノディクタス、左足を努めさせていただきます。アオーン!」

「え、鳴き声言う感じ!鬼の?!えー、ガオー!」

 

「トレーナーとネイチャは腕!」

 

 顔を除き体が左右に分解した南坂とナイスネイチャがツインターボの腕のジョイントに繫がる。

 

「デカい腕はこのためか……ウキー!」

「え、ちょっトレーナーそれ反則……ご、ごめんツボ入った……」

 

 腹筋パーツがツインターボの腹部に付くと、胸部に桃のエンブレムが浮かび上がり、ロボタロウスキンのサングラスが上にズレる。

 

「完成!」

 

『ド ン オニタイジン!!いよっ銀 河 一!!』

 

 5色の巨大ロボット、ドンオニタイジンがイデオンに顕現した。

 腰掛けていた椅子から立ち上がり、ドンゼンカイオーと並ぶ。見据えるは暴れるソノウクス。

 両者同時に足を踏み込み、前に向かい走り始めた。

 地を鳴らし進む2体の機械に向け、ソノウクスは雷を放つ。それを見て勢いを落とすドンオニタイジンだったが、前に出たドンゼンカイオーの左腕に装着されたアバターシールドが避雷針代わりとなり攻撃を防ぐ。2体と1体の距離が近付き始めた時、ドンゼンカイオーの操縦席にいるゼンカイザーブラックはドンモモタロウが彫られたゼンカイギアをギアトリンガーにセットする。

 

『シーンバーン!ババババーン!!ニューヒーロー!!』

 

 発射されたエネルギー体のギアが桃型のガジェットへ変わり、変形してドンモモタロウアルターとなる。

 

『「ドン!レッグバスター!」』

 

 その掛け声とともに、右肩についたギアが右足へ移り、それが起点となりマシンガンが放たれる。ソノウクスに直撃し、一瞬怯む。それを見逃すことなく、浮遊によって一気に距離を詰めるドンオニタイジン。

 

「まずは、キジンソード!」

「いっけーターボ!」

 

 背中からナイスネイチャのパーツであるキジンソードを外しソノウクスへ斬りかかる。わずかに後ろにのけぞるソノウクスへ追撃をかけるドンオニタイジン。

 

「次は私!オニキック!あたたー!」

 

 目にも留まらぬキックの連撃に、ソノウクスの体勢が崩れる。

 

「今度は私!キジミサーイル!」

 

 キジシスターロボタロウの顔からミサイルが発射。ソノウクスの体から煙が出始める。

 

「───くっ!何が仲間だ、何が友情だ!死ぬときは1人だというのに何故群れる!」

「死ぬときなんて考えてない!今を生きるその時に、皆がいるからいいんだ!変なことにターボ達を巻き込むな!」

「〜〜〜〜ッ!」

 

 ソノウクスが全身に雷を発生させたため後ろに下がるドンオニタイジン。5人が覚悟を決める。

 

「皆、最後の仕上げだ!」

 

 全員が頷く。

 二振りのキジンソードを合体させて大太刀を形成。

 

「一騎桃千!」

「「「「「ドンブラパラダイス!!」」」」」

『ロボタロ斬!』

 

 大太刀から桃型のエネルギー弾を連射してぶつけてひるませ、続けざまに大太刀を大きく振るう。

 それに合わせるようにして、ゼンカイザーブラックとドンモモタロウアルターが必殺技の準備をする。

 

『「ドン!ゼンカイクラッシュ!」』

 

 縦に一回転し、エネルギーを纏ったアバターソードを振り下ろす。そして出来たエネルギー体のギアがソノウクスに衝突する。

 2つの高エネルギーをまともに受け、負荷が限界を越え、スパークを起こし始める。

 

「私の……計画が……私の計画がぁ!」

 

 無数の箱を体から発し、爆発を起こすソノウクス。それを背にドンオニタイジンは2本の大太刀を十字に構える。

 

「鬼退治……完了!」

「「「「「えい!えい!おー!」」」」」

 

──────────────────────

 

「……まだだ、まだ……私の計画はぁ……」

 

 薄暗い路地裏を、所々が焼けたフードを羽織る男が体を引きずり隠れようとする。しばらく姿を隠せばまた計画をやり直せる───その淡い希望をかき消すように、一人の足音が路地裏に響く。

 

「お前の野望はここで終わりだ、ソノウクス」

「……何故、何故こうも邪魔が入る……!」

「恨むならお前の天命を恨め」

 

 刃が振り下ろされる。ソノウクスは、暗い、いくつかの箱が浮かぶ空間へ送られた。

 

「あぁ……やはり、1人は……心地いい───」

 

 ソノウクスのデータが、完全に消去された。

 

──────────────────────

 

 変身が解除されたカノープスメンバー。すると各々の目の前にドンブラスターが淡い光を発し浮かび、蒸発を始める。完全に消えたその瞬間、ドンブラザーズとしての使命が確かに終了した。

 

「終わった……ってことか……」

 

 ナイスネイチャがポツリと呟く。ひと月ほど前の、誰が味方か分からずひたすら頑張っていた時期が思い起こされる。

 

「なんか当たり前に思ってたけど、あの怪物ってなんだったんだろう……」

 

 すべてが終わった事で今まで張っていた緊張が解け、今更ながらわからないことが頭に浮かぶマチカネタンホイザに、1人の男が答える。

 

「あれはヒトツ鬼。人の欲望が溢れ発生する怪物です」

 

 突然現れた、青のスーツを着た男に一斉に注目が注がれる。自分としたことが、と咳払いをする男。

 

「申し遅れました。私はソノイ。元老院の指示でソノウクス、あのフードの男を追いかけていた者です」

「彼は一体何者なんですか?」

 

 南坂の質問にソノイはサラリと答える。

 

「彼は仲間を知らぬ脳人。そうしてできた価値観のもと、この世界と我々の世界を滅ぼそうとしていたのです。すでに元老院からの判決が決まっていることでしょう」

 

 一呼吸を開け、ソノイは5人に頭を下げる。

 

「この度は彼を捕まえる協力をしていただきありがとうございました。彼が現れた影響でヒトツ鬼になった人達はそろそろ解放されることでしょう。明日から世界は何事もなかったかのように続きます」

 

 後ろに扉を出現させ、それを開くソノイ。改めて5人に会釈をし、人間界から退出した。

 本当に全てが終わった、その安堵感がツインターボに膝をつかせる。

 薄くなった意識の中聞いたトウカイテイオーの叫び。

 暗い空間の中、1人を噛みしめていた時間。

 どれもが、本来は耐えきれるものではなかった。

 涙がにじむツインターボ。そんな姿を見て、今までよくやってこれた、と、3人のウマ娘が彼女を囲む。

 みんなが泣いていた。

 優しさのこもった涙であった。

 

──────────────────────

 

side:南坂

 

「負けないよー?センちゃん」

「言っとくけど、本気でやってよ?あの頃とは違うから!」

 

 叩かれた手に合わせて全速力で走り出すインヴィレッジとセンリイッポ。練習場を貸し切った本気の2000mが始まった。

 ドンブラザーズ最後の仕事から一週間が経ち、南坂は、わだかまりが消えた2人のすぐ決着をつけたいという願いを聞いて今この場にいる。コースを一周し、片腕を上げ勢いよくジャンプするウマ娘と、地面に突っ伏すウマ娘がいた。

 もともと休日であるため昼頃に解散する3人。南坂はいつものように定食屋「ふりてい」にやってきた。そこに見覚えのある青い鹿毛を見た。

 

「ターボさん?!」

「……!トレーナー!」

 

 南坂は向かいの席に座り、注文をする。すでにツインターボは目の前の料理を食べきっていた。そんな中少し言葉を交わす。

 

「今日は一体何の用でここへ?」

「バイトでたまたまここを通りかかったの。にんじん定食!美味しそうだったから!」

「なんのバイトを?」

「食事配達!UMER!」

 

 走るのが好きなターボさんらしいバイトのチョイスだと心の中で思う南坂。そんな中南坂が頼んだ定食が置かれ、一区切りついたのを見てツインターボはお会計を済ませる。

 

「じゃあトレーナー!バイバイ!」

「はい。また、ターボさん」

 

 料理用のリュックを背負い、ツインターボは店をあとにした。

 

──────────────────────

 

side:ナイスネイチャ

 

 今日も今日とて店のカウンターで肘をつきため息を吐くナイスネイチャ。まるで魂が抜けたようだ、とそんな姿を見て思う両親。

 ドンブラザーズ脱退から一週間が過ぎ、日々に刺激になるようなことがなくなったから、というのもあるが、改めて他のカノープスメンバーに何度も会うことはないんだな、という気持ちが心を占めているというのもあった。

 しかしそんな中、ちょっとした日課ができた。

「ネーイチャー!」

「お、今日は来た」

 

 食事配達のアルバイトをしているツインターボに、時たま会うことができるのだ。今日は会えた、今日は会えない、そうやって日々を綴る事に最近ハマったナイスネイチャ。

 

「はい、飴ちゃん。今日も頑張れ〜」

「よしきた!」

 

 背が遠くなるツインターボを見て、よし、と気合を入れるナイスネイチャ。どこかできっと元気にやってる者同士頑張ろう、そう思いナイスネイチャはバーに戻っていった。

 

──────────────────────

 

side:イクノディクタス

 

 激動の日々の中でも生活リズムを崩すことのなかったイクノディクタスは、ドンブラザーズの使命が終わったあとも変わらぬ日々を繰り返す。全ては憧れのトレーナー職につくために。

 そんな中、最近出来た趣味がある。

 

「……!今日はラッキーですね」

 

 午後3時頃。イクノディクタスが通う専門学校から見える公園に、時々ツインターボがベンチで休憩しているのが見える。

 離れていてもみんな今日を生きている、そう思うと午後も頑張れる、そんな気がするのだ。

 

──────────────────────

 

side:マチカネタンホイザ

 

「ターボ!待ってたよ~」

「おー!マチタン!」

 

 ここはマチカネタンホイザの両親が営む食堂。マンションの建設がなかったことになり、心の余裕から料理配達を外部に頼むことになった。まあまあの人気でまあまあの頻度で料理を配達員に渡すことになるが、よくその配達員がツインターボになることがある。

 

「これ、よろしくね!あとこれ、水!疲れたら飲んで!」

「ありがと!」

 

 ツインターボを見送るマチカネタンホイザ。今日もよく頑張るな、そう思える背中に勇気が自分の中に湧いてくるようであった。

 

「これからも頑張るぞ〜、えいえいむーん!」

 

──────────────────────

 

side:ツインターボ

 

 勤務時間を終え、給料が振り込まれたのを確認し、暗くなる道を行くツインターボ。今日も頑張れた、そう思い背を伸ばす。

 今までできた縁は、今もなお繋がっている。現に今日もカノープスの皆に会えたし、そう思い、あのとき啖呵を切ったのを思い出す。

 

───いまを生きるその時に、みんながいるからいいんだ!

 

 自然と笑顔になる。明日も頑張ろう、速まる歩調の中で、ツインターボはそう思った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。