異世界へログイン   作:ヒイラギ1028

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とっても遅くなってしまいました。


使い魔

 

「――――ん。終わった、みたいだな」

 

光が収まるのと同時に、ゆっくりと目を開ける。

手を握っては開きを繰り返し、体に不具合がないかを確かめる。

『空の羽衣』もきちんと装備している。防具については問題はない。

 

「特に問題はなしみたいだな……っと、武器は……あったあった」

 

ヒュンッという音と共に、俺の左手を光が包む。

光が収まると、その手にひと振りの剣が握られていた。

 

「うん。俺の武器……って、ん?」

 

四方八方から視線を感じる。剣を消滅させながら、あたりを見る。

草原、遠くに石造りの城が見える。

 

周りには、様々な髪の色の人がいた。

揃ってマントと杖を持ち、様々な魔物を引き連れている。

 

「……召喚士?それともモンスターテイマーか?」

 

――いや、待て。神は俺を使い魔としてこの世界にいかせた。

つまり、俺を呼んだ召喚主がいるはずだ。

 

「俺を呼んだ……召喚したのは、誰だ?」

 

周りの魔法使いのような格好をした人達の視線がひとつに集中する。

視線をおっていくと、視線の先には二人の人物がたっていた。

 

一人は、明らかにこの大勢の中では年上であろう男性だった。

眼鏡をかけ、こちらをじっと見ている。

 

もう一人は、薄い青色……いや、空色だろうか? の髪の色をし、同じく眼鏡をかけた

小柄な女の子がこちらを見ている。

 

――どっちだろうか。どちらも魔物を引き連れていないため、わからない。

少し顔を顰めてしまう。

 

「……わたし」

 

か細いが、ぎりぎり聞き取れる声だった。

どうやら女の子が、俺を召喚したみたいだ。

 

ゆっくりと歩き出し女の子の数メートル前で立ち止まる。

 

「君が俺を召喚したんだな?」

 

女の子は小さく頷いた。

 

「君の名前は?」

 

女の子が口を開こうとした瞬間、爆発音が響き渡る。

 

「っ……何だ?」

 

爆風で視界が遮られる。

剣を取り出し、ひと振りし煙を吹き飛ばす。

 

「大丈夫か?」

 

剣を消滅させながら、女の子を見る。

頷いたのを確認し、爆発音の中心を見やる。

そこには、ピンクの髪の色をした女の子がたっていた。

 

「あの子は何を……?」

 

首をかしげると、女の子に手を握られ引っ張られる。

 

「後で説明する。こっち」

 

彼女に言われるままについていく。

後ろからずっと爆音が聞こえていた。

 

「あの爆音が気になってしょうがないけど……まぁ、置いとこう」

 

爆風が届かない場所に来ると、女の子は立ち止まった。

 

「――タバサ」

 

彼女が振り返りながらそう言った。

 

「えっと、君の名前?」

 

コクンと小さく頷いた。

 

「俺は……えーっと」

 

少し言いよどんでしまう。現実での名前を言えばいいのか、

ゲームの世界での名前を言えばいいのか……まぁ、姿がゲームだから、ゲームでいいか。

 

「ヴェル。それが俺の名前だ」

 

「そう」

 

そう言ったあと、タバサは壁に寄りかかり本を読み始める。

 

「…………」

 

会話が途切れてしまった。

それにしても、さっきからする爆発は何なんだろう。

あの女の子は何を召喚しようとしてるんだ?

 

「――あら、タバサ?本当に人間を召喚したのね」

 

声のする方向に顔を向けると、長い赤い髪をした褐色肌の女の子がたっていた。

タバサと比べると幾分か背が大きい。

 

――あれ?俺の身長超えてね?

年下に身長抜かされるとは思わなかったな。

いや、今はそんなこと関係ないな。

 

「人間を召喚するって、珍しいのか?」

 

赤髪の女の子に話しかけると、女の子は頷いた。

 

「珍しいなんていうレベルじゃないわね。少なくとも私は今まで聞いたことも見たこともないわ」

 

――うわ、目をつけられなければいいけれど……

 

「そうだ。俺はヴェルって言う。君の名前は?」

 

「私はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーよ。

キュルケで構わないわ。」

 

「あぁ、よろしく。キュルケ」

 

その言葉を発した直後、再び爆音が響き渡る。

 

「……ヴァリエール、まだやってるの?」

 

「ヴァリエール?あのピンクの髪の子か?」

 

「えぇ、そうよ」

 

こうも話しているうちに、爆音が二回もした。

 

「……こうも高魔法を放って、あの子は魔力が尽きないんだな」

 

小さくつ呟くとキュルケとタバサが同時に振り返った。

 

「な、なんだよ……どうした?」

 

「あれは高魔法でもなんでもないわよ?」

 

「は?」

 

じゃあ何か?あれが低級魔法なのか?

 

「どんな魔法を使っても爆発ばかり。『ゼロのルイズ』はすごいわね」

 

「……そろそろ時間」

 

タバサが本をパタンを閉じながら立ち上がった。

 

「ん、なんの時間だ?」

 

立ち上がったあと、タバサがじっとこちらを見つめる。

 

「あら、まだ契約してなかったの?」

 

「突然召喚したから、落ち着くまで待とうかと思った」

 

「……なんだろう、嫌な予感しかしないんだけど」

 

「ほら、早く契約しちゃいなさい」

 

「契約ってどんな感じなんだ?」

 

「あら、知らないの? まぁ、平民だからしょうがないのかしら?

契約って言うのは――」

 

キュルケが説明しようとした瞬間、何かがキュルケの頭にぶち当たった。

 

「うわっ……」

 

どうやらタバサがその手にもつ杖で殴ったらしい。

頭抑えて地面転げまわってるよ?大丈夫?

 

「……貴方は目を瞑っているだけでいい」

 

「わ、わかった」

 

頭を殴られたらたまらないとばかりに目をつぶって待つ。

 

「――我が名はタバサ、五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、

我の使い魔となせ」

 

契約の必要な呪文らしき言葉を紡ぎ出すタバサ。契約が終わるまでジッと目を瞑って待つ。

 

「……届かない」

 

――何が?

 

「あら、身長届いてないわね……」

 

なんの身長が届いてないんだ?

 

「ヴェル、ちょっと屈んでちょうだい」

 

「ん……こうか?」

 

少し膝を折り、少し屈む。

 

「えぇ、そのぐらいでいいわ。さ、タバサ?早く済ませちゃいなさい」

 

「…………わかってる」

 

――遅くないか?契約にそんなに集中が必要なのだろうか。

そう考えていると、唇に何かの感触がした。

その感触は一瞬で終わり、タバサの「終わり……」という言葉とともに目を開ける。

 

「んー、何かあっさりだな――っていってえええ!?」

 

バチンという音とともに、激痛が左肩を襲った。

 

「体にルーンが刻まれる。痛いだろうけど、すぐに収まる」

 

「そういうのはやる前に言ってくれよ……」

 

確かにあっさりと痛みが収まった。少しローブを脱ぎ、左肩を見る。

 

「……なんて読むんだ、これ」

 

「……ちょっと待って」

 

タバサが年上の男性を呼びに行った。

 

「――ふむ、見たことのないルーンだな。スケッチさせてもらいますよ?」

 

コルベールという名前の先生が、サラサラと俺に刻まれたルーンを書いた。

 

「よし、これで全員終わりだ。ミス・ヴァリエールも無事契約も終わったようですし、

皆教室にもどるぞ」

 

そう言ったコルベール先生が踵を返しながら宙に浮いた。

 

周りの生徒? も一斉に飛び立っていく。

 

「……あぁ、魔法か」

 

俺は浮くことできないなぁ、どうしようか。

 

そう思ってると、キュルケとタバサも飛び上がる。

 

「ヴェル、あなた飛べ……ないわよね」

 

「あぁ、飛べないけれど跳べるよ」

 

「……どういう意味?」

 

「言葉通りの意味だよ。二人共さきに行っててくれ」

 

二人は、訝しげな顔でこちらを見ながら飛び立っていく。

 

「さて、と。行くか」

 

魔力を足に集中させて――

 

「――っおらぁ!」

 

――――一気に開放する!

 

地面を勢いよく蹴りつけながら前に飛ぶ二人を――

 

「……あれ?」

 

――追い抜いてしまった。

 

「えっ!?」

 

「…………」

 

後ろから驚愕の声が聞こえる。

うん、俺も驚いてるよ。

魔力を落とし、二人とスピードが同じになるように調節する。

 

「ほら、俺も跳べるさ。飛べないけどな」

 

そう無駄口を叩いた時、他の生徒たちがおりていく。

どうやら石造りの城が目的地らしい。

 

生徒とか、先生とか言っていたから授業が始まるんだろう。

ちょっとだけ楽しみになってきた。

 

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