この素晴らしい世界に戦闘員、祝福を派遣します!! 作:暁ふゆめ
続きはない
工作員、派遣します!
「なぁ、もっかい聞いて良いか? 出身国はどこだ?」
「日本だ。ニッポンでもニホンでもジャパンでもジパングでも、お好きな呼び方でどうぞ」
「……本当に日本なのか?」
「本当に本当だ」
「ええと……それで、あなたの以前働いていたその『秘密結社キサラギ』って会社では何をしていたの?」
「秘密結社なので秘密です」
「そう……だったら、特技は? スキルは何か覚えてるの?」
「『回転バッソー』」
「か、回転……? そんなスキルあるのか?」
「いや、ないと思う。俺の必殺技だからな。これで数多のヒーロー共を蹴散らしてきた」
「ヒーロー?」
「商売敵と言うか。まぁ、敵だな」
「そ、そうなのね。ええと……とりあえずは戦えるってことで良いのね? あっ、まだ聞いてなかったわね。職業は?」
「───戦闘員です」
『秘密結社キサラギ』。
それは日本中誰もが知る大企業『キサラギ』……の本社で主に会議等を行う日本中の誰もが知ってるわけでもないし、聞いても存在を疑うような組織。世界征服を目標とする組織。
俺は今、キサラギ本社で直属の上司から次の仕事内容を伝えられている。
「というわけだ、六号。分かったか?」
「ちっとも分かりません」
「そうか。なら、説明を変えよう。オーケーか?」
「オーケーじゃないです」
「そうか。なら、Do you understand?」
「のー、あいむどんと。というか変わってるのは説明じゃなくて言い方ですよ」
俺の返事を受けた上司──幹部のアスタロトは「何て物分かりの悪い奴だ」と言わんばかりに溜め息を一つ。
やれやれと言わんばかりに首を振っているが、それをしたいのはこっちだ。
「では、もう一度だけ説明してやる。戦闘員六号。お前には我が秘密結社キサラギの更なる拡大戦略の為に現地の様子を探り、スパイ活動を行い、慎重に情報を抜き取り、侵略に値するか侵略できそうかどうか等々……まぁ、色々なことを沢山と調査してもらう」
「はぁ」
「そして、その派遣先は宇宙外世界となる。分かったな?」
分からなかった。主に最後の部分が。
「分かりません」
「こんなに説明してやってるのにまだ分からないのか……」
「正確に言うと、分かりたくないと言いますか」
再び俺の返答を受けた幹部は困惑の表情を浮かべている。浮かべたいのはこっちの方だ。
幹部───腰まで届く艶やかな黒髪は玲瓏な雰囲気を漂わせ、思わず至尊とでも形容詞したくなる程に常人離れした美貌と磨励自彊の精神を合わせ持つ、閉月羞花の女性を自称する痛い人───の『氷結のアスタロト』はもう一度溜め息を吐いた。
椅子に座っているアスタロトは肘掛けに頬杖を付いて、足を組んだ。露出の多い服装から太股が覗く。
「六号。何が分からないの?
私は別に晦渋な説明をしてるわけでもないし、六号を艱難辛苦の目にあわせてやろうとか、そんなことは一切考えてないの。
ただ、データがない土地について調べて来なさい、と言ってるだけなの」
「急に艱難辛苦とか出てくるって、実はちょっと思ってたりするからですよね?
というか分からないのは任務の部分じゃないです。宇宙外の件です。
まぁ、何ですか。変なコスプレで生活する恥女紛いの人で、自分で閉月羞花とか言っちゃう痛々しいを通り越して可愛そうな人で、最終的には『氷結のアスタロト』とか今時の中学生でも名乗らないような名前を自称しちゃう人って所までは、俺も付き合って来ましたが……良い大人がとうとう宇宙外世界ですか。流石の俺でも引きますよ?」
「コスプレ!? 痛々しい!? 可愛そう!? 六号、お前そんな風に……!」
「いやー、奇行は常時でしたけど今日は特にぶっ飛んでますね。SFアニメでも見ましたか?」
「い、言わせておけば……良いか、六号!
我が秘密結社キサラギは世界征服を目前としているの!」
顔に氷結のイメージに相応しい青筋を立てて、アスタロトが叫んだ。
世界征服。グローバルなユニフォームではない。そう、あの世界征服だ。
俺が所属する『秘密結社キサラギ』は悪の組織を名乗り、地球を支配するために様々な悪行を働いてきた。小学生の自転車を盗んだり、老人の健康をなるべく保って年金の負担を増やそうとしたり、中学生が学校単位でゴミを拾いに来るイベント前までに範囲を完璧に清掃したり……大小も代償も問わず、色々なことをしてきた。
かく言う俺も入社と同時に戦闘員としてこき使われている。
キサラギはどんどん侵略の手を伸ばし、今ではこの巨大組織に軍事力で圧倒できるものはいなくなった程だ。経済的なささやかな反抗も行われているが、世界征服も時間の問題……というのが現状だ。
一呼吸置いてキャラを再構築したアスタロトが訊いてくる。
「世界征服が完了したら、戦闘員はどうなると思う?」
アスタロトの質問の意図が汲み取れず首を捻ってしまう。世界征服が完了したら……? どうせこき使われるのは確定だろうけど……何だ。ハーレムでも待ち受けてるのか?
「大規模なリストラだ」
「えっ」
想定外の答えに一瞬、思考が停止した。
「大規模なリストラだ」
アスタロトは大事なことだから……とでも言わんばかりに繰り返した。俺は渇いた笑いを上げた。
「えーと……大きい猫ちゃんとドングリをはむはむする可愛いリスちゃんで世界中を癒すとかそういう───」
「たわけぇい! クビのリストラに決まってるでしょ。解雇よ、解雇」
解雇。クビ。それすなわち、無職。
嫌だ。それは嫌だ。社畜も嫌だが無職童貞はもっと嫌だ。
「おおおおい!! おまっ、お、おま……お前ふざけんなよ今更! 人に勝手にクーリングオフの聞かない改造手術まで施しやがって! さんざん安い給料で労基と法律と道徳を明らかに無視した仕事一杯させやがったくせに! それで、用が済んだからポイ捨てって! お前、地球大事にしろよせっかく征服したんだからポイ捨てはやめろよ! 俺のことは身体だけの関係だったのかよ俺の身体が目当てだったのかよ俺の意思と価値と人権と意向はどこ行ったんだよ家出中かよいつまで俺は捜索届け出して待ってると思ってんだよ! 責任取れよ責任! スクショじゃねぇぞ責任だぞ! 具体的には同棲させろ下さい!!」
「やめろぉおお!! 六号っ、ろくっ、ちょ止めて! 服を引っ張らないで!?」
「じゃあ、リストラって何だよぉお! 説明しろよ! それか一生遊んで暮らせるだけのボーナスとか一生暮らせる場所とかくれよお! 具体的には同棲させろ下さい!!」
「見えちゃうから! この衣装オーダーメイドだから! ズレちゃったらコス的に危ないからぁ! お、落ち着けぇえっ!!」
荒い息を吐きながらアスタロトは、自分の服を抱きしめて距離を取った。「ちょっと待って」と連呼しながら手で制止のポーズ。
「その構えは何だ! 盟約に誓って俺と結婚するのか! あぁ?」
「ちょっと待て、六号。
まずは話を聞け……良いな? 落ち着け……良いな?」
良くない。俺は下っ端なのだ。リストラは困るし、何より俺にはこの職業を経験したという過去が付いてしまっている。『高校生の時からずっと悪の組織で戦闘員やってました』とか、どう考えても再就職は厳しいだろう。俺が面接官なら即座に落とす。ちなみに、女は落とせない。
「まだ若いから」と言う人がいる。「人は変われるから大丈夫だ」と。そんなバカなことがあると思うか? 両親に囲まれて21年、2年年上のセガ・サターンと戯れて21年……今更、虚空に屹立してしまった人格と容姿と能力をねじ曲げようと無駄な努力を重ねて何になると言うんだ。大体、人体改造って完全に違法だろ。もう俺、日向の道歩けねぇじゃん。
「六号、お前はただの戦闘員だ。とはいえ、キサラギ発足当時からの古参メンバーでもある。
我々幹部とも親しいし、その親しさっぷりは最早幹部と言っても過言ではないレベルだ」
「そうですか……じゃあ、もう少し給料を上げてくれませんかね?
未だに高校のバイトの時と同じ給料なんですけど……」
「しかし! 歯科衛生士! しかしだ、六号!!」
給料の話誤魔化しやがったな、こいつ。
「先程の話にここで繋がる。新しい侵略先があればリストラについて悩むこともないのだ。分かるな?」
「マリーアントワネット風に言うと?」
「パンが足りないなら……パン屋を探して奪えば良いじゃない! って感じだ」
「おでんで例えると?」
「こんにゃく」
「色で例えると?」
「どめど色」
「おにぎりで例えると?」
「……おかか」
どういう意味だそれ。自分で振っといて何だが意味不明だった。
アスタロトは黙っている俺を肯定の意を示していると思ったのか「付いて来い」と立ち上がった。
「よし。じゃあ、今からリリスの部屋に行って詳しい話をするから」
俺は渋々、アスタロトに続く最高(に可愛そうな)幹部の一人である『黒のリリス』の部屋へと向かった。『黒のリリス』は勿論、自称である。
【悲報】このすば要素0
タイトル変えた方が良いですか?
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良い(正規ルート)
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このままで良い(悪の秘密結社ルート)
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良くないわよ、バカ!(恋愛ルート)
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井伊直弼(桜田門外ルート)