この素晴らしい世界に戦闘員、祝福を派遣します!! 作:暁ふゆめ
転送機を外に運んで延長ケーブルを使って電源を入れる。
リリスは転送機の無事を確認すると、嬉しそうに頷いた。
「良いか、六号――――」
スイッチをオンにして、転送機の起動と俺の個人データ入力の待ち時間。リリスは俺に任務について説明してくれた。やけに長ったらしく、回りくどい説明をしようとするリリスを俺が煽って脱線するというアンチ螺旋力が詰まったやり取りを幾度となく繰り返し、ようやく説明は終了した。
「なるほど。つまり、この宇宙に人が住めそうな星がないなら、異世界に行けば良いじゃない……そういうことですか?」
「そういうことだ、六号。やはり君は――――」
「やっぱり、リリス様は天才ですがアホですね」
「何おう!」
研究室の外でわーぎゃー言い争っている内に転送機の最適化が完了した。俺の個人データ入力が完了したみたいだ。
「よしじゃあ早速、俺が無条件で好かれる世界に行きましょうか。あ、美的感覚が違い俺が超絶イケメンに見える世界でも良いですよ。早く転送して下さい!」
「お……? そ、そうか。承諾してくれて何よりだよ。それと、派遣するのは君一人じゃない。おーい。アリスこっちへおいでー」
リリスの呼び声と同時にどこからともなく人影が。やって来たのは、金髪碧眼の女の子。肩と腰の中間ぐらいまでの金髪の上に、ネジのようなアクセサリーを着けている。身長はそんなにない。小学生か中学生ぐらいだろうか。
アリスと呼ばれた子供は身体のサイズに不釣り合いなデカいリュックサックを背負って、こちらへとテクテク歩いて来る。
「なんすか、このガキ」
俺が指を指してリリスに説明を求めると、アリスがズイっと俺の目を睨んだ。
「おい、ガキだと? 下っ端戦闘員の平が調子に乗るなよ」
綺麗なソプラノボイスで喧嘩を売られた。はて。俺は一体、誰に喧嘩を売られたのでしょうか。
「……おぉん? 今のはお前が言ったのか、クソガキ。残念だが、俺はこれでも悪の組織の戦闘員だからな。子供だろうと容赦のたの字もないからな」
「容赦にたの字はない、阿呆が」
なるほど。どうやら俺に喧嘩を売ってきたのはこいつらしい。
外見に似合わず口の悪いアリス相手に俺はレスバを始めた。
「小粋なジョークなんですけどぉ? マジに取ってやんのー! やーいやーい!」
「……ちなみに、だが。自分に下手に暴力を振るうと内蔵している動力炉が暴発して、ここら一帯は更地になるからな。気を付けろよ」
「なん……だと……!? クソガキぃ、何だその欠陥は……って嘘つけ! 人間が自爆して堪るか! ビリリダマじゃねぇんだぞ」
「欠陥じゃない。歴とした自爆機能だ。それと自分はクソガキでも人間でもない。キサラギ=アリスちゃんだ。キサラギ社製美少女型高性能多機能アンドロイドだ。名目はお前と同じ平社員だから、タメで良いぞ。アリスちゃん、と敬意を込めて呼んでくれ」
こいつがアンドロイド!?
俺はアリスを眺める。
その外見は一言で表すなら、金髪碧眼の女の子。肩と腰の中間ぐらいまでの金髪の上に、ネジのようなアクセサリーを着けている。身長はそんなにない。小学生か中学生ぐらいだろうか。身体のサイズに不釣り合いなデカいリュックサックを背負っている。
先程と全く同じ感想が出た。アンドロイドには見えない。だからと言ってiPhoneにも見えないが。
しかし、確かに言われてみれば、声も無機質な気がする。なんなら今だって無表情だ。
俺は試しにアリスの頭を撫でてみた。
この滑らかな触り心地は――――
「地毛?」
「アンドロイドに地毛もウィッグもカツラもない」
それもそうか。俺は視線を下に落とした。落として落として、引っ掛かることなく地面へ激突。
なるほど。こいつには何かが足りないと思っていた。
「胸は?」
「シリコン製のAAだ」
ないのか。まぁ、見た目は小学生だし、逆に巨乳だったら引いてたかもしれない。勿論、リリスに、だ。
「何を当たり前のことを訊いている。ロリ巨乳美少女だと秒速でお前に犯されるからな。自分はアンドロイドであって、ダッチワイフじゃない」
「誰が犯すか! 俺はロリコンじゃねぇ!」
「じゃあ、熟女好きだったか。記録しておいたぞ」
「いらんこと記録すな! 消せ、容量の無駄だろ! それと俺は熟女好きでもねぇ!!」
「そうか。なら、消しておくぞ。だが、安心しろ。記録媒体はHDDだから復元可能だ」
「くそがぁっ! 物理的に壊さねば……!」
「自爆すっぞ」
「くそがぁっ! それを盾にするな。卑怯だぞ!」
「ちょっと考えてみろ。裏を返せば自爆機能しか、自分には六号に反駁するための機能がないということだ」
「マジ?」
「マジだ。当然、お前より良いCPUは積んでるがな」
「お前、もっかい自己紹介してみろよ」
「良いぞ。キサラギ=アリスちゃんだ。キサラギ社製美少女型高性能多機能アンドロイドだ。名目はお前と同じ平社員だから――――」
「多機能じゃねぇだろ、お前! 景品表示法に接してるからなそれ!」
「私的な自己紹介だからセーフだ」
「お弁当で例えると?」
「……白米におかかが乗っていた」
「び、微妙なライン……!」
クソっ……何なんだこのガキは。
リリスの様子からして、俺はどうやらこのガキと一緒に異世界に行かないといけないらしい。そんなことになったら大変だ。幹部連中に俺の弱味を握らせるチャンスが生まれてしまう。何せこいつはアンドロイド。四六時中、俺と一緒にいることなんて苦でもないだろうし、カメラ系統の記憶媒体だってバッチリだろう。
どうにかして、別の気心しれた戦闘員とかに交代できないだろうか。それか一人で行くか。
「自分には阿呆のお前の安い命と違って莫大な金がかけられている。娘のように大事にしろよ。お前は阿呆だと聞いてるから、頭脳労働は任せておけ。娘のように、と言ったが、本当に娘のように軽々しく接したら遠慮なしに自爆するからな。大事にしろよ。二回言ったからな」
「……すいません。俺、この口悪い上に危ない爆弾いらないんですけど」
俺は自分の武装を確認した。右の腰には使いなれたハンドガン。威力は出ないが反動が軽めのお手軽小銃だ。予備の銃弾はベルトに沢山下げてある。逆側の腰にはお気に入りのバトルナイフ。最近は活躍の機会が少なく、木を伐ったりしている。
この装備だと異世界はかなり不安なところではある。正直に言って猫の手も借りたい状況だが、だからと言って本当に猫の手をもらっても困る。そんな状況だ。違うな。
「その様子だとぉ! 覚悟はできたのよねぇ!!」
バーン! と派手に音を出しながら、リリスの研究室からアスタロトが這いずり出てきた。ハァハァと荒い息でこちらへ少しずつ近付く。
なぜかリリスの白衣を二枚も羽織っていた。ボタンをしっかり閉めて、身体を抱くようなポーズを取っている。
俺は何だか変な様子のアスタロトを観察する。割合、直ぐに気付いた。
リリスも気付いたようで、声がまたしてもシンクロする。
「「服が溶けてる!」」
そう。アスタロトはさっきまで着ていた安いアダルトビデオのコスプレ嬢チックな衣装を身に付けていなかった。正確には、ボロボロになって服とは言えない有り様になっていた、と言うべきか。まぁ、元から露出激しくて裸みたいなモンだったけど。 俺はアスタロトを凝視しながらリリスに訊く。
「おい。あのスプレーには服を溶かす……いや。服だけを溶かす効果があったのか?」
「えーっとねぇ……そんな効果はないハズだから、何かと混ざったかなぁ……あ! もしかして……」
「おい、何と混ざったんだよ。教えろよ! 早く、はい、今っ、ナウ!」
「ダメだぞ……リリス……六号には教えるなよ……!」
「『たたり銃』のエネルギーか。あれとスプレーの液体が混ざれば、服だけが溶けるか……」
「おいいいいいい!! ナイッスぅううう!! リリス様一生付いて行きますぜぇええ!!」
「おいいいいいい!! リリスぅうううう!! 六号に何てウラワザを教えているんだぁ!」
アスタロトが叫ぶ瞬間には、俺は既に研究室へ向かっていた。この速さはまさしくクロックアップ。いや、クロックアップではない。俺はまだキャストオフを見ていない。
しかし、この高速のヴィジョンに付いて来ようとする奴が一人。俺は研究室のドアの前に立ち塞がったアスタロトを前に一旦、止まる。アスタロトが何かを言う前に、右手を前に突き出す。
前方へと真っ直ぐに伸びた右手をワキワキさせる。そのままドア前のアスタロトへとゆっくりと近付く。今度は遅く。動きに緩急を取り入れる技……流水の動きだ。
アスタロトは顔をひきつらせてドアへの道を開けた。
「おい、待て。どこへ行く」
と、ここで俺の腕を引っ張る輩が一人。意外にもアスタロトではなくアリスが俺を止めに入った。俺はアリスの手を払い除けながら言った。
「待てと言われて待つ悪役はいねぇよ」
「さっきの服を溶かすの件か。確認しに行くのか? 自分も服だけを溶かすなんてハイテクノロジーには興味があるぞ」
アリスは止めに入ってなかった。どうやらチタンダエルを信仰しているらしい。アスタロトが無理矢理こじ開けたドアを跨いで、研究室の中へ入る。俺は酷い有り様になったリリスの研究室からお目当てのブツを見付けた。
容器が破損していない『なぜかメガドラとドリキャスとセガ・サターンを別の棚を購入して収納してしまいたくなるスプレー』と目立った外傷がない『他人のアイスの当たり棒の表記をたたり棒にするレーザー銃』を手に取る。確か『たたり銃』のエネルギーとスプレーの液体が混ざったら服を溶かすサムシングが出来るんだよな。でもどうするか。下手に扱うと俺のサービスシーンが入ってしまう。キャプチャー職人涙目だ。
中身の入ったスプレーと銃を持って突っ立ってる俺の後ろからアリスがそれらを覗き込む。
「ほう、これが……取り敢えず自分は本当に服だけ溶けるのか見てみたい」
「でも、どうやって……」
「銃のエネルギータンク部分にスプレーの液体を流し込めば混ざるだろ。やはりお前はアホだな」
「なるほど」
俺は言われた通りにする。エネルギータンク部分を開け、スプレーの中身を移す。確かにこれなら銃として発射もできるから便利だ。水鉄砲みたいになるのか、それともレーザーみたいになるのか。試しに引き金を引いてみると、銃口から液体が結構な勢いで飛び出していった。これは水鉄砲だった。
俺はアリスにお礼を言う。
「これは良いな。ありがとうな、アリス」
「この程度でお礼なんて――――」
そう言えばアリスは効果を実験したかったんだよな。
俺は先程のナイスアイデアのお礼に、アリスに向かって銃の引き金を引いた。
「わぷっ」
思ったより出力は強いらしく、アリスは尻餅を付いて倒れる。
「お前、何して……」
「おい、実験は成功だぞ! やっぱり服だけ溶かせるってこれ!」
「わわっ!?」
アリスの白いブラウスは見事にレーザーが当たった所だけ溶けてなくなっていた。外傷もないし、マジで凄い発明品じゃないのか、これ。
効果を実感した俺は銃のエネルギーを満タンにし、予備のエネルギーをスプレーで一本分、腰に下げた。
「……おい、待て」
「ん? どうした、アリス。これの効果はちゃんと実証されたぞ」
「この組織は腐っているな」
「そりゃあ悪の秘密結社だからな。突然どうした」
「トップも末端もこの有り様……挙げ句の果てには無駄な先端技術で作ったのは『服メルトレーザー』……」
俺はブツブツと呟くアリスから嫌な予感を感じる。汗が頬を伝う。
「ここで一回自爆して、組織の腐敗を全部消し飛ばしてやる!」
「うぉおおい! 何でやねーん!!」
「その後は優秀な自分がトップとして、この計画と組織を引き継いでやるから安心して消し飛べ!」
アリスの叫び声を聞き付けてリリスとアスタロトもやって来る。 二人は突如として革命を口走ったアリスを見てギョッとした。
「六号!? お前、何てことを!」
「君はさいっあくにアホだね!」
俺の方にギョッとしてたのかよ。 何でだよ! これは俺は悪くねぇだろ! むしろアリスに自爆機能を付けたり、いらん発明をしてセレンディピティ巻き起こした――――
「リリスっ! 全部お前のせいだろー!」
「そうだぞ、リリス! そして、六号も悪い! 私? 今回は被害者だから悪くないし!!」
「アリスの服を溶かした変態で性欲旺盛ロリコンの六号、君が一番悪くて、全部悪い!」
「俺は悪くねぇ! 俺は悪くねぇ! だって、アリスがやれって……それにお前らだって止めなかったじゃねぇかよ!」
「はい、止めましたー! 私止めましたー! 悪くなーい!!」
「僕も混ぜたらできるって言っただけだから! やれ、なんて一言も言ってないから!」
わーわー言い争っていると、アリスが俺達の間に割って入る。
何だよ。今更、容喙なんてしても……
「やっぱり、人間は権力を持つとダメになるな。慣れるとダメだ」
アリスの思いっきり見えてる胸辺りから無機質な電子音声が流れる。
《All right.Explosion Standby》
俺達は全力でアリスに土下座した。
爆破オチなんてサイテー!
タイトル変えた方が良いですか?
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良い(正規ルート)
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このままで良い(悪の秘密結社ルート)
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良くないわよ、バカ!(恋愛ルート)
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井伊直弼(桜田門外ルート)