この素晴らしい世界に戦闘員、祝福を派遣します!! 作:暁ふゆめ
バングラデシュからの相対時刻ではいつも通りの時間に投稿しました
(訳:遅刻してすいません)
高校の時にやった古典の一つにこんなものがある。
とあるお坊さんが山を登ろうとした。お坊さんは山の麓まで行くと『何と素晴らしき山だろうか』とか思って帰りましたとさ。おしまい。
何事にも先達はあらまほしきことなり。昔の人は良い言葉を残すものだ。やはり何事も事前情報無しなんて状態で取り組むべきじゃない。
そして俺は今、およそ高度三万メートルからスカイダイビングをしている。
アリスを突き飛ばそうとしていた手で、思わずアリスの手を掴む。しかし、当然のことながらアリスも一緒に落下していた。
「うわぁああああ! 異世界転移早々スカイダイビングとかどこぞの『 』だよぉおおお!!」
「落ち着け。自分のリュックに珈琲あるぞ、飲むか? 砂糖もあるぞ。糖分が足りてないから落ち着かないんだ」
「飲んどる場合かぁーッ!? アリス、お前本当は高性能なんだろ! 多機能なんだろ!?」
「生憎だが、自分には自爆機能ぐらいしかこの状況を打破できる機能はない」
「それ打破じゃなくて爆破だからな?」
耳元で吹き荒ぶ風の音にも慣れてきた。が、そろそろヤバい。目を開けるのも辛くなってきている。
俺と共に自由落下中のアリスは背負っていたデカいリュックサックをこちらへ渡す。
「パラシュートだ。それと手を離すなよ。自爆するからな」
この場面で出てくるパラシュートには見覚えがある。キサラギが空中作戦を展開する際に使う、高性能の割りに量産可能の優秀装備。クソ重い戦闘服を身に付けていても大丈夫なキサラギ製のパラシュート……『受験は自分で頑張れよ君 Ver.2』を受け取る。それと同時にアリスが俺の下半身に抱き付く。
「お前の分は?」
「予算削減だ」
「もっと削る所あっただろーが!」
パラシュートをゲットしたことで心に余裕が生まれた。俺は眼下に広がる世界を見回す。鳥瞰視点で世界を見ると、何だか自分がとってもちっぽけな存在に思えてくるのは何でだろうな。
「おい、街があったぞ。結構広いし、文明はそこそこ栄えていそうだな」
俺達の落下予測地点から少し離れた離れた所に、都市だか街だか国だかが見えた。緑の平原に囲まれて、更に外周を壁で囲んだ丸い都市だか街だか国だか。
周囲の地形を確認しながら、パラシュートを開いて着陸。俺はさっそくアリスに向き直った。
「よーし、アリス。早速キサラギウォッチの出番だ。使い方を教えてさい」
効果音が付いてもおかしくない速度と角度で頭を下げた。
「良いぞ。それとそれが人に頼む態度か」
「割りと丁寧だったと思うけど? それに人に頼むたってお前、アンドロイドじゃん」
「機械差別で訴えるぞ」
「へぇ~? どこにぃ?」
「股間には注意しておけよ」
「それ訴えるじゃねぇ! 蹴り飛ばすだろ! 超絶、恐怖だからな。その宣言は」
「冗談に決まってるだろう。アホには小粋なジョークも通じないと来た」
アリスはざっとキサラギウォッチの機能について説明した。
キサラギ本部にメッセージを送れたり、コンパスとタイマーがあったりした。それに内部に小型の一方通行転送機が入ってるらしい。それを使って多少の物資なら送ってもらえるようだ。
キサラギウォッチの使い方をレクチャーしてもらいながら、俺はアリスの足に注意する。こいつの場合、本気で蹴り飛ばしかねん。
「なるほど、大体分かった。もう、安全な拠点もクソもあるか。バカ上司どもにこっちの座標送って、早々に転送機を組み立てて帰還してやる。殺されかけた分、あの僕っ娘が泣いて許しを請うまで手をワキワキさせてやる……!」
「おい、良く聞けアホ。転送機は精密機械だ。こんな所では組み立てられない。綺麗な室内じゃないと無理だ。それに移送空間安定までには一ヶ月かかるから、帰りたかったら安定な拠点を早く手に入れることだな」
「クソがっ! そんな情報、私聞いてないってやつだぞ……初耳だ!」
「多分、こっちも初口だな。まぁ、そういうわけだ。幸運にも知的生命体が活動している所らしき場所の近くに転移できたんだ。とっととあそこに行くぞ」
アリスはそう言うと、都市だか街だか国だかに向かって歩いて行った。
俺は小走りで追いかける。確かに、ここでジーッとしててもドーにもならねぇもんな……って、これは俺には合わない台詞だったか。
アリスに追い付くと、ポンポンとアンドロイドカツラ髪の上に手を置いた。
「さっきはバタバタしてたから、ちゃんとした自己紹介はまだだったな。俺はキサラギ最古参の戦闘員、どんな現場でも生き残ってきた執念の男。戦闘員六号さんだ。敬意を込めて六号様、と呼んでくれ」
「これまでの経緯を省みろ。敬意なんて欠片も払えない」
「何だとぅ!?」
アリスは俺の手をはね除けた。
何とも取れない無表情で俺を見上げる。
「まぁ、何だ。自分の自己紹介は流石に良いな? タメ口で言いぞ。タメ口系美少女だ。あと、自分のことは敬意を持ってアリスちゃん、と呼んでくれ」
「……なぁ、これまでの経緯からお前に一片たりとも敬意払えねぇんだけど。それにお前、何ができんの? 自爆機能しかないじゃん。荷物持ちもできないじゃん。つか、今も何で歩いてんだよ。移動用のバギーとか送って貰おうぜ。転送機本体が無理なら、装備をまずは整えないとな」
「良い機会だ。そのことについて説明してやる。お前、今現在の悪行ポイントはどれぐらいだ?」
――――悪行ポイント
悪の秘密結社キサラギの最大の特徴だ。職員の一人一人に埋め込まれたチップにより、その者が行った悪行が明確なポイントとして加算されていくシステム。このポイントを貯めさせるためにキサラギは、悪行ポイントをキサラギ製の装備や報奨金と交換可能にしている。悪事を重ねて模範的な社員になり、貯めたポイントで色々良いものをゲットして、更に悪事を重ねる……悪のスパイラルだ。しょっぱい悪事ばかりをする俺は悪行ポイントが全然貯まらずに、幹部連中から「悪のカリスマが足りない。お前はかまきりりゅうじを見習え」と叱責されている。いや、かまきりりゅうじって別に見習う要素、特にないだろ。
「今のポイントは……えーっと……あ、キサラギウォッチで確認すれば良いのか。どれどれ……きっかり300だな」
「300か。あの都市だか街だか国だかを攻略するには心許ないな。できるだけポイントは節約して行くぞ」
「オーケー……って、いやいや。ちょっと待て。物資送ってもらうのにポイントが必要なのか?」
「当然だろう。それがキサラギのルールだ」
「いやだって、こんなデカいプロジェクトだぜ。少しぐらいの投資を惜しむなよ」
「お前は探索隊一号だが、何もここ以外の場所を調査しないってわけじゃない。できるだけ低コストでやっていきたいんだ。第一、まだ地球の征服すらも完全に終わってないんだからな」
ドラクエの勇者になった気分だ。その辺にはギリギリ落ちてなさそうな少し良い感じの木の棒だけ渡されて、魔王退治に行かされる勇者。今ならお前の気持ちも少しは分かるぜ。まぁ、俺は悪の側なんだけど。
「くっそぉ……リストラを盾にするなんて酷いよな……流石、悪の組織。汚い」
「リストラが嫌なら頑張るこった。この世界に人間が住めるとなったら、仕事には困らないだろうからな。少なくとも、ここの環境はお前が今も平気でいられることから、地球と似ていると思われる。こっちでもざっと調べたが、空気だけなら地球人類でも生命活動に支障はなさそうな感じだ。幸運だな」
「だったらなおさらケチらずに……っておい! アリス、今何した。俺の首筋を急にペタペタしただろ! 何かチクッとしたんだが?」
「お前が病気になりにくくなるように、ナノマシンをぶちこんでおいたぞ。感謝しろ」
また、俺の再就職が絶望的になった。何だ、ナノマシンって。SFかよ。
「……できるだけ地球と似通った星を選んだんだから、当たり前と言えば当たり前か。これから向かう先にいる生命体がチョロいと良いな。ライターとかで歓喜するような。高層ビル群もなかったし、見た感じ地球で言う所の中世ぐらいの文明レベルだろう。未開なホモサピエンスなら、こんな任務楽勝だな」
アンドロイドなだけあり、アリスはおっかないことをしれっと言った。
そして、アリスは
「フッ……勝ったな」
俺は知っている。俺達の生きる世界には、
俺達は……いや、先駆者達はその現象を畏怖を持って、こう呼称する――――
――――フラグ
目の前に急遽差した黒い影に、俺は両手を挙げて降参したくなった。
【悲報】この素晴らしい世界について一切触れないスタイル、継続中
タイトル変えた方が良いですか?
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良い(正規ルート)
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このままで良い(悪の秘密結社ルート)
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良くないわよ、バカ!(恋愛ルート)
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井伊直弼(桜田門外ルート)