この素晴らしい世界に戦闘員、祝福を派遣します!! 作:暁ふゆめ
揺れが収まると俺はアリスの頭を強めに叩いた。
「あでっ。この頭脳に傷でも付いたらどうするつもりだ」
「そんな大した頭脳じゃないと思ったから叩いたんだ」
「10桁の暗算だって朝飯前のスーパー頭脳だぞ」
「コンピュータなんだからできなきゃマズいだろ」
にしても、今のは何だったんだ? 地震……ではないよな。百戦錬磨(自称)の俺の勘は何て言っている? この感覚は経験がある。カラフルタイツのヒーロー連中とドンパチやっていた頃に経験した感覚。つまり、爆発。
結構近かったと思うが爆発の方向を見ても、このだだっ広い平原にそれらしきものは見当たらない。
「当たり前だ。そっちは丘になってるだろ」
アリスに指摘されてようやく気付いた。どこまでも続く緑色が平らな平原に錯覚させるが、傾斜があったのだ。そう言えばアリスは先程もメンテナンス器具が転がらないように押さえていた。
俺達は丘の一番高い所に行って横ばいになる。爆発と思わしきものが起きた方角には、遠目からでもデカエルと分かる影が幾つか。そして、遠目からでも分かる、地面に出来ているクレーター。
「凄いデカいクレーターだな。ダイナマイトでもここまでの火力は出せないんじゃないか? というか遠くて良く見えない。おい、アリス。お前は視機能とか……すまん。忘れてくれ」
「なぜ謝る。まるで自分に遠視機能がないと端から決め付けてる様な言い草だな」
「あるのか?」
「いや、ない」
「ないのかよ! まるで自分に遠視機能がある、みたいな言い方しやがって」
「代わりに視力は裸眼でAもある」
「裸眼じゃねぇだろ、アンドロイド」
このポンコツには最初から期待はしていなかったが……やはり、近付かないと様子は探れないか。できれば近寄りたくない。だが、あの規模の爆発は見逃せない。
俺が多少のジレンマに悩まされていると、アリスが「阿呆が」と俺を罵った。
「本部から双眼鏡なりを送ってもらえば良いだけだろう」
「なるほど」
「しかし、この程度のことにも気付かないとは想像を絶する阿呆だな。なろう小説でさして頭の良くない主人公を持ち上げるモブレベルだ」
「その理論だとお前はさして頭の良くない主人公になると思うけどな、ポンコツ」
キサラギウォッチを操作して双眼鏡を転送してくれ、という旨のメッセージを送った。
| 少々お待ち下さい |
という文字がキサラギウォッチのディスプレイに光る。30秒ぐらいして、キサラギウォッチ上の空中に青い板のようなものが
| 遠くを見通す宗教、なぁんだ? |
俺とアリスは一瞬、顔を見合わせた。
「えーっと……双眼鏡?」
俺が呟くと、キサラギウォッチから軽快な音楽が流れ、投影された空中ディスプレイ上に【せいかい!】の文字が浮かぶ。
俺達が呆気にとられていると、頭上に青白い光が輝いた。
コツン。
「いてっ」
双眼鏡が俺ではなく、アリスの頭の上に転送されて来た。
俺は無言で双眼鏡を受け取って、両眼に添えた。
丸い視界の中には、デカエルが何匹か。左側に仰向けで転がってるのが少し、そこから少し距離が空いたところに右側を向いて直立しているのが三匹。その先にはクレーター。中心部ではまだ少し煙が上がっている。
アリスにも双眼鏡を渡す。
「爆発源が見えないな」
「カエルじゃないのか?」
「デカエルが爆発したのなら、奴らが左側に固まって右側を見つめている理由が分からない。多分、爆発源はデカエルじゃないだろう。知的生命体であって欲しいが、知的生命体であって欲しくないな」
アリスの言葉に同意する。
あんな爆発を野生動物が起こしてたまるかって話だが、この世界の住人があれだけの爆発を起こせるってのも嫌な話だ。
俺はアリスから双眼鏡を受け取り眺めていると、人影らしきものを発見した。双眼鏡の倍率を上げた。
「あれは……人か……?」
「貸せ。どれどれ……どう見ても人だろう。もっと自信を持て」
「そうか。あれは人じゃないな」
「そっちじゃないだろ、阿呆が」
いやだって、あの人間の格好がな。
俺の考えを汲み取ったかのようにアリスが言う。
「ジャージだな」
「そうだよ。ジャージて。いくら似た世界選んだとは言え、ジャージってもろ現代日本じゃねぇか」
「でも、あのジャージ野郎が背負ってるロリっ娘はいかにもファンタジー世界の魔道士っぽい格好だぞ」
双眼鏡で覗いた先には、いかにもファンタジー世界の魔道士っぽい格好をしている黒髪の女の子がいた。黒のとんがり帽子に紅を基調とした服、いかにもな杖を一つ。小学生か中学生ぐらいだろうか。そのロリ魔道士は緑色のジャージ姿の男に背負われていた。ジャージは現代日本で『ジャージ』とググったら最初のページに出てきても何ら違和感のなさそうなありふれたもの。ジャージ姿も然る事ながら、見た目も完全に現代日本に溢れかえってるタイプだ。年は高校生から中学生ぐらいだろうか。服装に無頓着な年頃かな、と適当な推測をつける。
「あいつらがこの世界の知的生命体か。想像よりも地球の人間に寄っている。良かったな」
「良くねぇだろ。あのクソデカい爆発を起こしたのが俺達と変わらないような人間ってことだぜ? 高度な文明とかを持っている可能性が高いんじゃねぇの。見たところ、装備もマトモに持ってないし」
「その点に付いては自分に考えが一つある」
アリスは双眼鏡を覗きながら言った。
「この世界、魔法があるかもしれないぞ。何たって中世っぽい都市だか街だか国だかにあのロリ魔道士の格好だ。いかにもファンタジー世界。可能性はあるぞ」
それを聞いた瞬間、俺の右腕が疼いた気がした。
おもむろに立ち上がり、左手を前方へかざす。
「――――黄昏よりも昏きもの……血の流れより紅きもの……」
アリスは俺を半眼で見る。どうせ痛い奴だと思っているのだろう。
「時の流れに埋もれし偉大な汝の名において我ここに闇に誓わん……」
アリスが双眼鏡をリュックサックにしまった。あ、それは俺の悪行ポイントで転送してもらったものだから俺のものだからな。
「我等が前に立ち塞がりしすべての愚かなるものに、我と汝が力もて等しく滅びを与えんことを!」
詠唱が完了し、クライマックスに達した瞬間、俺は足を踏み出して右手を振るう。
「ドラグすりゃああああっ!?」
衝撃を受けて、うつ伏せに倒れる。
見上げた空には広がる夢もなく、シリコン製の絶壁が。
俺の股間を蹴り上げたアリスがアゴをクイッと動かす。
「阿呆が。さっさと行くぞ」
クソがぁ……出ないなんてこと分かってんだよ……ただ、ロマンだろ。詠唱はロマンだろ? 義務だろ? その辺が分かっちゃいないあたり、どんなに人間らしい仕草をしていても本質はアンドロイドってことか。
痛みに震える俺をガシガシと足で突っつくアリスに向かって、絞り出した声で言う。
「うぅ……今に見てろよ……本当に竜破斬うってやるからなぁ……!!」
痛みから回復した俺だったが、どこぞのアンドロイドのせいで想定外の喉の酷使があったため、喉が渇いた。貴重な悪行ポイントを消費して、600ml入りの麦茶を転送してもらうようにメッセージを送った。
キサラギウォッチから空中にディスプレイが投影される。
| 「先生、トイレ!」のノリで「先生、お茶!」って言ったら、先生は何と返すでしょうか? |
「知るかぁっ!!」
アリスは空中ディスプレイ上のなぞなぞの答えが分かったらしく、俺をバカにするように笑った。
俺はやけくそになって叫んだ。
「……『先生はお茶ではありません!』」
| ふせいかい!! |
ブブーっとSEが鳴り、俺の頭上に麦茶(300ml)が転送されて来た。いてっ。
俺はキサラギウォッチを操作して、本部にメッセージを送った。
| 世界で一番広まっていて、俺が帰ったら真っ先にする宗教、なぁんだ? |
俺が送ったメッセージを見て、アリスが答えを訊いてくる。
「おい、それの答えは何だ。教えろ。チタンダエル案件だ」
「アリス。それより、さっきのお茶のやつの答えを教えろ」
「そんなの、ティーチャーだから『先生はお茶です』に決まってるだろう。それよりも何だ。さっきのメッセージの答えは」
こんなのも分からないのか? と煽ってから俺は言った。
「説教だよ」
アリスは溜め息を吐いた。
この素晴らしい世界のキャラクター紹介
ロリ魔道士(正式名称:めぐみん)
頭のおかしい爆裂娘。このすばの例の四人衆の中では知力が高い方。爆裂魔法が絡まなければ比較的マトモな方。シリアスもできる。
しかし、そんなこと六号達は知らない。初見の印象では「原住民だー」ぐらいの感覚。
自爆はロマンと考えるアリスさんとは相性良さげかもしれない。
タイトル変えた方が良いですか?
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良い(正規ルート)
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このままで良い(悪の秘密結社ルート)
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良くないわよ、バカ!(恋愛ルート)
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井伊直弼(桜田門外ルート)