この素晴らしい世界に戦闘員、祝福を派遣します!! 作:暁ふゆめ
……まぁ、本作はブラウザバック率80%なんですけどね(白目)
「ふっふっふ……千里の道も俺にかかれば五十歩百歩……とうとう来たぜ……冒険者ギルドッ!」
「阿呆が。ちゃんと入る前に――――」
「うるせぇっ!! 行こう!!!」
「うるさいのはお前だ、六号」
日雇いのバイトを二日間。俺達はこの世界の通貨を手にすることに成功した。
結局、八百屋のバイトを選択。結果論で言えば、八百屋のバイトは正解だった。腰をやって動けない店主のおっちゃんの代わりに店番をする、という何とも簡単な内容だった。見てくれだけは良いアリスは、今までに聞いたこともないような可愛らしい声と仕草で見事に大きいお友達をハートキャッチプリキュア。戦闘服を頑として脱がなかった俺は集客に向いてない、とのことで無用の長物と化していた。給料こそ出なかったが、店奥にある住居スペースの掃除をすることで昼飯は恵んでくれた。めっちゃ人の善いおっちゃんだった。トイレ掃除をする俺を鼻で笑うどこぞのアンドロイドと違って、実に人ができていると思う。
そして、今。俺達はなけなしのお金……エリスを握り締めて冒険者ギルドの前に来ていた。
ここから俺のワクワクドキドキの異世界英雄譚が始まるぜ……!
木製のドアを期待をいっぱいこめて開けた。
「失礼しまーす」
喧騒に包まれている……という程ではないが、外に比べると少し騒がしい話し声がミキシマックスして耳を覆う。
中は"いかにも冒険者ギルドです"と言った容貌だった。木製の椅子とテーブルが幾つも置かれていて、掲示板には貼り紙がたくさん。恐らく、あれが
俺は感動した。
「法悦に浸ってないで、とっとと行くぞ」
「冒険に?」
「受付に決まってるだろ」
アリスは入り口前で固まっている俺を蹴り飛ばして受付の方へ歩いて行く。俺も後を追おうとすると、物陰から大男がぬっと出て来た。モヒカンを乗せた頭に厳つい顔にはヒゲ、やたらと強そうな半裸の肉体に肩当てをした男だった。
男は俺とアリスの間に入った。アリスは受付の方を向いており俺には気付いていない様子だ。
まさか余所者への洗礼とかだろうか。いかにも物理が強そうな体躯だし、この距離だと武器の転送も間に合わない。
俺が身構えた瞬間、男は叫んだ。
「ようこそ、地獄の入口へ! ここは冒険者ギルドだ」
「……俺をどうするつもりだ」
「逆に聞くが、お前はどうするつもりだったか?」
「俺は……冒険者になりに来ただけだ」
俺の返答を聞くと男は「そうかそうか……」と笑った。
クソ。何を笑ってやがる。エーミールかよ。
「この命知らずめ――――」
「………………ッ!」
「冒険者登録はあの受付だ。それと、登録には1000エリスが必要だ。用意はしているか?」
男は指で受付を指した。そして、俺の肩を叩くと「頑張れよ」と一言。
何だよ。ただの良い奴かよ……見た目でビビって損したぜ。
俺は安心した。
「あぁ、準備は大丈夫だぜ。おっさん、ありがとうな。悪い奴かと身構えちまった。人は見かけに寄らないな」
「それが普通だろう……俺だって自覚はあるさ。ま、人は見かけに寄らないと言っても、人を見かけで選るがな」
中々に深いことを言った男にお礼を言って、俺はアリスの所へ行った。アリスは俺の様子を見ていたらしく、「あの人はそこそこ有名だぞ。現に情報収集の際、余所者の自分に色々教えてくれたしな。もっと情報を集めろ。だからお前は馬鹿止まりなんだぞ」と言った。俺の無知を馬鹿する一言を加えるあたり、製作者の性格の悪さが透けて見える。
受付の人が俺を訝しげに見ている。確かに俺は怪しい格好をしているが……そんなに怪しむことはないだろう。
受付の人おっぱいがやたらと大きいお姉さんだった。おっぱいが大きいお姉さんだった。
「あぁ、こいつがさっき言った連れです。顔と見た目は悪者っぽいですが、実際は保身のことしか考えないクズですので法に触れるようなことはほとんどしません。安心して下さい」
「常識的な判断ができるだけだ」
アリスは俺の第一印象を下げに下げようと画策していた。アリスの恣意的の極み過ぎる説明を聞いた受付のお姉さんはどういう風に俺を見ているだろうか。
だが、流石は接客業のプロ。いくら見つめても、表情がまるで読み取れない。
「それはお前がさっきから胸しか見ていないからだ。初対面の相手なんだぞ。少しは自重しろ」
俺は舌打ちをしながらアリスの方に目線をやった。圧倒的超えられない壁……!
「どうした?」
「いや……お前見てると安心するなって」
アリスは俺の煽りを完全スルー。再度、冒険者登録についての説明をしようとする受付のお姉さんを「自分がやります」と制した。
「まず、名前とかを登録用紙に書くんだ」
「でも、話し言葉は一応分かるようにパッチ当てされてるけど文字は書けないぞ。あんな記号急に書け、と言われても無理だからな」
「その点については安心しろ。自分が既に書いておいたぞ。文字解読パッチも既に作成した。後で当ててやるから安心しろ」
「なるほど、それなら安心だな。ありがとう」
「どういたしまして」
お礼を言いながら俺はアリスが書いた紙を目で探す。受付のお姉さんが紙を二枚持っているのを発見。これだろう。さりげなく受付のお姉さんから紙を返してもらおうとした。瞬間、足を踏まれる。
勝ち誇った笑みを浮かべながらアリスは俺の手も抑えた。
クソがぁっ……こいつが書いた俺の履歴書とか嫌な予感しかしない。前科持ちにでもされてそうだった。
「続けるぞ。そこの光ってる水晶みたいなのの手をかざすとステータスが出るんだ」
「ステータス……能力が数値化されている世界なのか……」
「で、ステータスに見合った職業を選択してお終いだ」
「なるほど、王道だ。あ、お姉さん。ちょっと紙に書き間違いぃい"た"ぁ"っ!!」
「書き間違いはありません」
その後、アリスと攻防を続けるも「一生童貞でいるしかなくなるぞ」の一言で投降した。こいつには前科はあるが、躊躇いはない。俺達の戦いを黙って見守っていたお姉さんのひきつった笑みを見て即座に謝罪した。
そして、ようやくステータスオープンの段階へ。
よし。ここで一丁、俺がとんでもないステータスってやつを見せてやりますかね……それで受付のお姉さんを驚愕させるとしますかね。なにせこれでも数々の戦いを生き残ってきた最古参戦闘員なのだ。戦闘に関しては自身がある。
「では、ここに手をかざして下さい」
「……はい」
緊張しながら手をかざす。水晶の淡い光に非日常への鍵を感じた。
水晶から発せられたレーザーが『冒険者カード』なる身分証明書的なサムシングにステータスを書き込んでいく。レーザーの放出が終わると受付のお姉さんが冒険者カードを持ち上げて、ステータスを確認した。
「こっ、この数値はぁあああっ!?」
「……ごくり」
俺達は受付のお姉さんの言葉を待った。気付けばギルド内も静寂に包まれていた。周りの冒険者が受付のお姉さんの声に驚き、俺のステータスがどれほど凄いのかを確認したがっている様子がヒシヒシと感じられる。
「――――平均より少し上です……!」
一気にギルド内が元の喧噪を取り戻した。
「知力が低いこと以外は全体的に平均より高いステータスです。特にSTRは高めですけど……何かスポーツでもやってましたか?」
「は、はははははは……」
スポーツて。スポーツて何やねん……俺の戦闘員生活、何やったねん。
アリスは大爆笑していた。俺は無言で頭を叩いた。
「えぇと、このステータスだと……」
「上級職業は!?」
上級職業。街中での情報収集の際に小耳に挟んだことだが、最初から上級職業なるものになれる才能アリがたまにいるらしい。テンプレ的に考えて俺が上級職業を最初から選べる可能性はある。文字通り上級の職業、アークウィザードとかルーンナイトとか文字列だけで強そうな職業達。全体的にステータスが高めなら可能性はまだある。最初から上級職業をぶっ飛ばしてやるぜ……!
「このステータスだと……最高の魔力で敵を一掃する魔法職最強のアタッカー《アークウィザード》――――」
「……に?」
「知力と魔力が足りないのでなれません」
「あ、はい……」
俺が落胆しているとアリスはまたも大爆笑していた。
「ちりょくが……たりない……ふふっ……!」
俺はアリスの後頭部を強めに殴った。元々、涙目だったから泣いても俺は分からん。
「他にはなれそうなのはないんですか?」
「このステータスだと……高い物理防御と高い攻撃力、神の加護から生じる高い耐性でパーティを守る攻守の要《クルセイダー》――――」
「に?」
「なれません」
「あ、はい……」
「STRは十分なんですけど、何故かなれないんですよね……」
悪の組織の戦闘員だからだろうか。腹いせにアリスを叩こうとしたが、真剣白刃取りで防がれる。そのまま俺は腕に体重を乗せた。
「他にはないんですか? 何か魔法とか使えるやつが良いんですけど」
「魔法ですか。このステータスだと……支援魔法の頂点であるフォースを使いこなし、魔法職ながら高い物理性能を誇る物魔一体のジェネラリスト《エレメンタルマスター》――――」
「に?」
「知力が足りないのでなれません」
「あ、はい……」
アリスがひぃひぃ言いながら肩を震わせている。そろそろ本気でイラついて来たのでガラ空きになっている腋をくすぐってやると、真剣白刃取りの力が抜けて俺の体重を乗せた腕が頭にヒットする。泣いているようだが、自業自得。というかほとんどは笑い泣きだろうし。
「あの……もう、上級職業じゃなくて良いんで、何か魔法使えそうな職業ないんですか……?」
「えぇっと、万年下っ端モブ戦闘員さんのステータスですと――――」
「…………え?」
おい。ちょっと待て。何だ、今のは。
「あの、ちょっと待って下さい。今、俺のことを何て呼びました?」
「万年下っ端モブ戦闘員さんですが……」
「何じゃその名前はぁああっ!!」
叫ぶと同時に横にいるアリスに裏拳を振るうが空振り。アリスはいつの間にか俺と距離を取っていた。
アリスは涙目で肩を震わせた。
「事実だろ、万年下っ端モブ戦闘員さん」
「うぉぉおい! そんな名前の奴いるわけねぇだろ! 言って良くないことと悪くないことがあるぞおい!!」
「事実陳列罪は存在しないが?」
「クソがぁっ! リリスの野郎と同じ台詞吐きやがって……カエルの子はおたまじゃくしだな!!」
俺は受付のお姉さんに飛びかからんばかりの勢いで言った。
「名前を! 間違えました! 変更! したいです!」
「一度決まってしまったので……」
「お役所仕事がぁっ!!」
俺は受付のカウンターに倒れ込む。
あぁ……終わった……もう賃貸の契約とかできないじゃん……俺の異世界人生終了RTAです。
俺は軽く絶望した。
「あ、そーいやまだ職業決まってなかった。もう、何でも良いや。何か一番良いのを頼む」
「えぇ……一番良いのって……自由意志で決めないといけない決まりなんですけど……」
「もう良いです。はい。もう何でも良いです」
「そうですか。では万年下っ端モブ戦闘員さんがなれる職業は……基本職業の《冒険者》。前衛アタッカーの《戦士》。戦士よりも攻撃力に特化した《ソードマン》。強き竜の者《ドラゴソナイト》。なぜか殉職率が全職業トップクラスの《ランサー》。専門的なスキルを数多く使える《盗賊》……この辺りでしょうか」
「……ん?」
どうせ大したものはないだろう、と高をくくって軽く聞き流していたが、何やら俺の琴線に触れる単語を聞いた気がする。
「おい、アリス。さっき言われた職業、全部覚えてるか?」
「当然だ。自分を何だと思ってる」
「ポンコ……いや、何でもない。職業名だけでも良いから言ってみてくれ」
「良いぞ……《冒険者》《戦士》《ソードマン》《ドラゴソナイト》《ラン――――」
「それだぁぁあああああっ!!」
俺は今、最高に熱くなっていた。
「おい! 止めとけ。それは――――」
俺は今、人生で一番輝いていたかもしれない。周りの冒険者も《ドラゴンナイト》という単語を聞き、再び俺に注目していた。ギルド内はざわめいていた。絶対これ強い職業だ。
「なります! それになります!!」
俺が言った瞬間、受付のお姉さんは苦笑いをした。
「では、職業の証である、この《ドラゴソナイトプレート》を」
受付のお姉さんがプレートを渡して来る。金属製のプレートには大きく『そ』と刻まれていた。
『そ』は日本語だった。意味が分からないので、恐らく似ているだけなのだろう。
いつの間にか後ろに来ていた、入り口で出会った謎に人の良いおっさんが俺の肩を叩いた。
おっさん、まだいたのか。やっぱり《ドラゴンナイト》は凄い職業なのだろう。
「そいつぁ、ドラゴンナイトに憧れるパチモン職業《ドラゴソナイト》の証だ。大事にしろよ。それをちゃんと持っていないと経歴詐称で捕まるからな」
俺はこの一つの台詞で大体を理解してしまった。
一瞬の無言の後、叫んだ。
「ふざけんなボケぇええええっ!!」
「万年下っ端モブ戦闘員、職業パチモンナイト……ふふっ……」
アリスは笑った。俺は泣いた。クラムボンは笑ったよ。
この素晴らしい世界のキャラクター紹介
男(正式名称:荒くれ者=ポチョムキン4世(自称) CV.稲田徹)
何故かギルドでシュワシュワを飲み、アドバイスをしてくれる優しいおっちゃん。某カズマさん達が1000エリスを用意していなかった逸話は耳に入れていたので、今度はちゃんと教えてくれた。
強そうな見た目とギルドでシュワシュワを飲んでいる様子とは裏腹に冒険者ではなく、機織り職人(自称)。
六号達のことも見守るつもりなので、ちょくちょく登場するかもしれない。
タイトル変えた方が良いですか?
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良い(正規ルート)
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このままで良い(悪の秘密結社ルート)
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良くないわよ、バカ!(恋愛ルート)
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井伊直弼(桜田門外ルート)