綾小路に憧れた男の実力至上主義生活   作:ラトソル

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遅くなりました。みじっかいです。
今日明日にでも次を投稿したい……出来るかな。


やはり俺は現代っ子なのか

 

 

 どうしてこうなった。

 

 パイセンと話していた後、目を開ければそこはBクラスが集合しているところだった。そして隆二から告げられた一言。「おめぇリーダーだから」という言葉を受けて俺は混乱状態に陥っていた。

 いやいや、白波ちゃんじゃないの?俺割と他クラスに警戒されてるっぽいしなんか立ち位置上の方らしいしリーダーにしない方がいいんじゃない?え?あえての俺?納得しちゃいましたよ。でも絶対白波ちゃんとかの方がいいと思うけど、もう既に満場一致のようだった。

 

 反対意見を出せない訳では無いものの、クラスの方針が固まりつつある状況で反対するのは空気を乱す可能性がある。くそっ、これがクラスの雰囲気ってやつか!

 

 しかし、リーダーになったと言っても、指示自体は帆波を中心として行っていた。つまり俺はリーダー(笑)になったというわけだ。なんで俺リーダーにされたんだ?まあいいけど。

 

 まずはポイントを使用して必要な器具などを購入した。ハンモックに調理器具、小型テントにランタンに仮設トイレ、そして釣竿にウォーターシャワーと合計70ポイントの出費だ。

 個人的にはかなりいい選択だと思う。トイレは流石に男女別の方がいいだろうし、シャワーがあれば汗や菌を流すことが出来る。サバイバルにおいて、清潔に過ごすことは大切だ。

 

 それに、帆波はポイントを残すことを考えてはいるものの、第一にストレスが少なく過ごせるように考慮してある。高一でサバイバルなんて馴染みのない環境に放り込まれたらパニックになることなんて当たり前だ。クラス全体のことを考えている帆波はみんなにとって頼もしいだろう。本人の意図しないところで株が上がったな。

 

 水は井戸水を使うことでポイント削減を図っている。まあ流石に初めから全員で飲んでお腹壊しましたでは笑うことも出来ないため、とりあえず俺が飲んで今は時間経過を待っている。まあ大丈夫だろう。

 俺が被検体になることを提案した時に帆波はすごく心配してくれたが、サバイバル知識は少しかじっていたし俺が適任だと言うことを伝えると渋々承諾してくれた。

 

 そして現在。薪用の木の枝や山菜、魚などの調達を数班に別れて行うこととなり、俺は隆二と二人で山菜を探すことになった。俺は食べれる山菜をある程度知っているため、隆二は体力あるからという理由だ。本当なら颯も来る予定だったが「釣りがしたい」という強い希望で二人で捜索することになった。

 

 俺の他にもキャンプなどに詳しい子がいたりと、かなりいいスタートをきれているとおもう。

 

「水野、調子はどうだ?」

 

 他愛もない話の中で、隆二がそう尋ねてくる。井戸水の件だろう。飲んでから数時間はたってるからな。しかし俺はいたって健康だ。

 

「全然大丈夫だよ。この調子なら飲水として問題ないな。帰ったらみんなに伝えよう」

 

「そうか、良かった」とあまり表情には出ていないが安心したような声色で告げる。なんやこの子、めっちゃいい子やん。

 

 大した会話こそしていないが、気まずいと思ったこともない。それは相手も同じことを思ってるだろう……と思う。同級生の男子の中で一番仲がいいのは隆二だろう。なんだかんだで一緒に過ごす時間が長いからな。

 

 そんなことを考えながら、俺は辺りを軽く見渡す。一見ただの森。しかし、俺たちが歩いているのは()だ。けもの道では無い、明らかに人の手が加えられている道。

 そして、今のところ蛇などの危険な生き物を目撃していない。原作にも書いていた通り、そういった危険は排除されているのだろう。

 このことには、隆二も気づいているようだ。Bクラスの中で、やはり隆二の観察眼は頭一つ抜けている印象がある。帆波と隆二、二人でクラスを支えていけるだろう。俺要る?

 

 散策し始めてから一時間と少し程が経過した。山菜や野菜など、かなり豊富に育っていたことから、もう俺たちの籠の中はかなりの量で埋まっていた。ん?

 

「これだけあれば十分だな。結構離れたし、そろそろ戻ろう」

 

「ん……そうだな」

 

 意図的に植えられているであろうきゅうりを取ったところで俺は帰ることを提案した。隆二もそれに同意し、来た道をそのまま戻っていく。

 この声、Aクラスか?葛城の声がこんなのだった気がする。

 

『────ットを押さえられた以上長居は────』

 

 目を軽く瞑り、耳を研ぎ澄ませる。聞こえてきたのは葛城の声。それにモブの声が少し聞こえた。これはあれか。パイセンが佐倉とAのスポット見ちゃった時のやつか。こちらとの距離はかなりあるから向こうからは気づかれていないはず。

 にしてもAクラスの領域にまで足を伸ばしていたか。結構野菜取りに熱中していたようだ。端末を没収されている以上娯楽は存在しない。だからかもしれないな。

 

 瞼を開けて、隆二と共にBクラスのスポットへと戻って行った。

 

 俺たちが占領しているスポットまでの道はもちろん覚えているため時間もあまりかからずに戻ることが出来た。

 近づくにつれて多くの人の気配が感じられる。同時に、ザワザワとしているのも見て取れた。

 

 ああ、そういえばそろそろだったな、と記憶の中にある原作の知識と照らし合わせながらチラリと隆二の方を見る。

 異変に気づいたのか、眉をひそめて考える素振りをしたあと、警戒の色を滲ませながら「行こう」と言った。俺も軽く頷き、何やら話し合っている集団の元へと辿り着いた。

 

 小石を踏みつける音で気づいたのか、その集団の中にいた帆波がこちらに振り向くと、途端に笑顔を咲かせて腕を大きく振ってくる。それに応えるように俺は軽く手を挙げた。隆二は何故か手を振り返さずに俺と帆波のことを見ていた。

 

「二人ともお疲れ様っ」

 

「結構取れたぞ。夕食全員分はいけると思う」

 

「おお〜!凄いね!ありがとうっ!」

 

 満面の笑みを浮かべる彼女を前に、俺は平常心を保つ。落ち着け、巨峰が揺れたとこなんて見ていない。相手の目だけを見ていれば落ち着く。目だけ……は?なんで帆波の瞳こんな綺麗なん?どこ見てもアウトじゃん。

 

 俺たちの取ってきた食料を見た帆波の声を聞き、数人の生徒が集まってきた。その量を見て感嘆の声をこぼしている皆から視線を外し、俺たちのスポットに目を向ける。

 魚釣りに行っているメンバーはまだ帰ってきていないようだが、俺とは別のルートで野菜を探していた生徒は既に帰ってきており、一箇所に纏められていた。あれと俺達が採ってきたものを合わせたらなかなかの量になるだろう。

 さらに、薪用に使うであろう枝やビニール袋に詰められた枯葉も多く、火を起こすのは問題ないだろう。

 購入したテントなども組み立てられており、寝ようと思えばいつでも寝られる環境だ。協調性ならばやはり俺たちのクラスが群を抜いているだろう。まあ別の問題はあるが。

 

 ある程度の作業は終わっているだろう。見れば談笑している奴らもちらほら。中には男女二人で喋っているやつも。チッッ!

 込み上げてきた妬みを押し込めて辺りを見渡す。孤立している人はいないみたいだ。が、それはうちのクラスの話であって。

 

 俺たちから少し離れた木の根元。そこに一人の生徒がポツリと佇んでいた。殴られたような傷跡が顔に着いている彼は、静かに待つように立っている。

 そう、Cクラスの眼鏡代表でお馴染み、金田だ。椎名が眼鏡をつけてしまえばその座は簡単に瓦解するだろう。しかしCクラスには彼以外の眼鏡が思いつかない。暫定1位だおめでとう。

 

「あれは……Cクラスの生徒か」

 

「……みたいだな」

 

 俺の耳元で囁く隆二に俺も今知って疑問を抱いていますという風な声で呟く。まあ知ってたんですが。スパイが来るって事前に知られてたら彼の面目丸潰れだな。ごめんね。

 

 隆二は金田の方に目だけを向けていた。少しばかり細まっている目は明らかに警戒の表れだ。

 よく見れば周りで談笑している生徒の内の何人かは偶に金田の方を見て疑いの目を向けている。しかしそれは少数。

 帆波がリーダーだからなのか、帆波教に入団しているからなのか。帆波のお人好しな部分が伝染しているように見える。これは重症ですね、はい。

 

「……あの子、Cクラスの子なんだけどね。龍園くんに追い出されたんだって」

 

 俺と隆二の様子を見た帆波がボソリと呟く。隆二は「龍園……」と考えるように復唱した。

 

 龍園翔。高一ながら、クラスの王を自称する痛いヤツ。多分そのうち「アイアムゴッド」とかいうであろう存在だが、実際にトップに立つ器ではあるのだろう。まだ喋ったことないけど。

 俺には原作知識での龍園しかあまり知らないが、噂としても龍園の暴虐性は聞こえてくる。二人もそのことは知っているだろう。そしてなんとパイセンと誕生日が同じ。

 

 俺はあくまでも龍園のことは詳しくないということで話を進めなければならない。俺は隣の隆二に今の状況をどう考えているか聞く。

 

「本当に金田が龍園に反抗したのだとするなら、龍園はその存在を許すことは無いだろう。暴力に出ることに躊躇いも無いはずだ」

 

「……そうだね」

 

 帆波の顔が曇る。友好的に物事を進めたい帆波からすれば、暴力で支配している絶対王権の龍園のやり方は思うところがあるのだろう。

 それはそうとそんな顔で俯かないで欲しい。お前のそんな様子を見たら何故か心臓がキュッとする。居心地が悪い。

 

「帆波はどうしたい?」

 

「……受け入れたい」

 

「それは」

 

「分かってるよ、神崎くん」

 

「分かっているのか」という意味合いの籠った隆二の言葉。それはもちろん、「金田がCクラスからのスパイの可能性がある」という疑いだ。それは全くもって大正解である訳だが、それは俺しか知らない。いや、知っているのはおかしいことなので俺からは何も言えない。あくまでも「可能性がある」だけ。それは帆波も承知の上だ。

 

「神崎くんの思ってる通りかもしれない。でも、本当にただ追い出されただけだとしたら、って……」

 

 悲しげな顔をする彼女に、隆二は思わず息を呑む。

 そうだ、これだ。この、善性。裏なんてない、帆波の純粋な心。悪く言えばお人好し、でも、その思いやりにBクラスは心惹かれた。だから彼等は帆波がクラスのリーダーであることを疑わない。

 この学年で、誰にも劣らない帆波の力。坂柳や龍園のように「従える」のではなく、「共に歩く」。決して驕ることの無い彼女の心は、美しく、尊いものだ。

 

 俺はその気持ちを尊重したい。それは壊してはいけないもの。そして壊れやすいもの。

 

 隆二も帆波の善性に惹かれたのだろう。だから彼は帆波のサポートについている。ここで俺が妥協案を出すのは簡単だ。でも、俺は隆二に結論を出して欲しい。なぜなら俺はこの試験で特に何かしようとは思わない。

 リーダーを任されたのは想定外だ。カードの隠蔽は協力しよう。しかし俺からなにかに働きかけることは無い。

 

 難しい表情をした隆二がこちらを一瞥する。でも、俺は何も言わない。「任せる」。そう目で訴えかける。

 俺から視線を外し、悩むこと数秒。

 

「……受け入れることには賛成だ。しかし、スパイの可能性は捨てきれない。監視……といっても、傍に一人はつけるべきだろう」

 

「うん……ありがとう」

 

 お互いの納得いく結論が出た。帆波はこちらに手を振ってから、金田のいる方へと駆け寄っていく。俺達が受け入れることを伝えに行ったのだろう。

 これから俺は、金田の視線を常に警戒しなければならない。まあそれはさほど難しいものでは無いだろう。探るような視線を感知することは容易だ。だからそれはいい。

 

 何かが足りないと思っていた。そして、今気づいた。

 いつもなら放課後の時間だ。もう既に部屋に戻っている。

 思わず頭を抱えそうになる。俺はここまで染まってしまったのか、と。

 空を見上げる。いくつかの雲が見られ、様々な形をしている。その中の四角い雲に目が奪われた。

 

 嗚呼。やはり俺は現代っ子なのか。

 

 ────携帯触りたい。チェスしたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




戸塚弥彦
 
モブ。
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