星之宮先生が爆弾をBクラスに落としてから放課後まで、クラスのみんなはそれぞれで話し合っていた。クラスポイントの存在とAクラスのみが受けることの出来る恩恵。そして何よりこのクラスでは……いや他のクラスでも、『退学』という言葉が重くのしかかった。
冷静に考えて赤点取ったら退学ってやべぇな。取らんけど。今回の中間テストは満点続出だろう。だって過去問のまんまだし。だが、そのことを知っているのは恐らくこのクラスでは俺だけ。
放課後になって教卓に立った帆波がまずしたことはプライベートポイントをクラスで管理すること。ポイントの付与額が下がり無駄遣いが出来なくなり、何よりこの先必要になってくるかもしれないポイントを有効的に使うためのものだ。意外とみんなは反対意見は出しておらず、積極的に金を出していた。隠れて不満がってたの見逃してないからね、姫野。やっぱあの子はこのクラスが勝ち上がるためのキーだな。
そうなってくると誰が管理するかというものだが、真っ先に帆波が集めることがクラスの総意となった。おいおい1ヶ月だけでこの信仰はすごいな。帆波教?帆波銀行?信用銀行じゃなくて宗教銀行じゃん。
半分のプライベートポイントを出す者もいれば、大半のプライベートポイントを笑顔で渡す狂信者もチラホラ。その中の一人は白波ちゃんなんですけどね。そばにいる俺に毎回殺気向けないでもらっていい?俺も自分から帆波の横に立ってるんじゃないから。なんかそういう流れになっちゃっただけだから。帆波気づいてないけど見られたら確実に引かれるくらいやべぇ顔だぞ。鏡あげようか?ポイントなら困ってないから。
俺は10万渡した。「こんなに出しちゃっていいの!?」って言われたけど、俺3902500ポイント残ってるんだよね。割合で言ったら俺が最下位だ。でもそんなこと言えないし「信用してるから」と帆波銀行のクラス評価を言ったらなんか無言で俯いたんですけど。そしてお前は今まで以上にやばい顔だぞ白波。
早速勉強会を開くと思いきや今日は解散。ほとんどの生徒が教室をあとにした。
さて、どうしたものかと考えていたら作戦会議のお時間です。何故か俺を中心にして集まってきてた。クラスの人気者の休み時間かよ。この指止〜まれ!まあ集まったと言っても俺と帆波と隆二、あとは浜口哲也こと浜口くんの四人だけだが。なんで浜口くんは名前呼びじゃないか?だって浜口くんじゃん。
「じゃあ、どうしよっか」
帆波の第一声から会議はスタート。みんな真剣に今後の方針を悩んでいるところすまないが隆二の立ち方がイケメンすぎてそれどころではない。高一が腕組んで机に腰掛けるか普通。そこに椅子あるよ?座らないの?痔?
「小テストの結果が悪かった生徒は明日からでも勉強会を開くべきだろう」
喋り方カッコよ!!
「僕も同意見です」
浜口くん和むわ〜。
そんなどうでもいいことを考えながら並行して思考する。俺としても退学者をクラスから出すべきではないし、出したくない。テストで赤点を取って退学者を出すのは最悪のパターンだ。それは単純な実力不足によるものだから。
俺は仲間は大切にする方だと思ってる。仲良くなったやつが消えるのは惜しい。帆波はそれが顕著だ。仲間を助けることを当たり前だと素で思っている。帆波が率いるこのクラスは徐々にその色に染まっていく。そうなればこのクラスは普通の学校では最高のクラス。誰もが憧れる場所になる。しかし、この学校では別だ。
この先、特別試験は厳しいものになってくる。上級生のクラスを覗けばどのクラスも人数が足りていない。各クラスから退学者が出ている。退学者が出ればクラスポイントも下がる。救済に必要な2000万ポイントは痛いものがあるが、必要経費と言えるだろう。
もし、この先の試験でプライベートポイントによる救済が出来ない、あるいはポイントが足りない事態が起きれば。はたまた、ポイントを出せば負けてしまうという事態に陥れば。
救済可能なら帆波は何がなんでも救うだろう。そして、もし不可能であれば自分から退学しようとするはずだ。それはダメだ。
彼女は選べない。選べないから自分を選んでしまう。ならば、俺が選ぶ。たとえ恨まれても、嫌われても。俺が無慈悲な選択をする。そんな時が来るかは分からない。だが、本当にそんな状況が来たとしたら、帆波は崩れるかもしれない。そうなれば、このクラスは隆二に任せて、俺はクラスを出る。クラスを崩壊させた俺という敵の打倒のためにこのクラスが復帰できるように。クラス一丸となり動くことになれば、帆波も立ち上がるだろう。
ま、そんな事態来るはずもない。この学校のコンセプトは実力至上主義。退学者を出したい訳じゃない。もしそんなことがあるとすれば綾小路パッパが息子の肌を恋しくなって「おねがぁい」と理事長に頼み込んでその表情に吐いた理事長が回らない頭で新試験を作る時ぐらいだろう。それか生理先輩の発案か。
生理先輩のニヤリ顔を拝む回数が増えるのは心底きついがやはり生徒会には入るべきか。とりあえず入る方針で考えた方が良さそうだな。俺の事認めてるっぽいお兄様の推薦があるから入るのは容易いが、もし俺に興味無くしたらどうなろうか。面と向かってお前に興味あるなんて言われたら警察ものだが。せいぜい会長様の期待に添えるようにクラスの平均点底上げしますかね。
そうなってくるとやはり過去問の入手がシンプルかつ一番効果的だ。上級生とのパイプはいくつか作ったから入手自体は楽勝だろうが。ま、策はいくつか考えてるしなんとかなるっしょ。失敗してもドラゴンボールで生き返るから。
その間にも会議は進んでいた。相変わらずイケメンな隆二と帆波が中心となって浜口くんがたまに口を挟み俺が傍観している。俺仕事しろよ。
「水野はどう思う?」
ほら。あんま喋らなかったから会話というボールが飛んできたじゃないか。会話はキャッチボールしてなんぼだが、返さずに一方的に集めて7個になったらなにか起きるのでは?
すぐさまその思考をゴミ箱に捨てる。まあ今までの会話で勉強会の開催は確定となったようなものだ。問題はその勉強方法だが、シンプルに上位のものが下位の生徒に付いて教える。妥当だな。何故かその上位の生徒に俺が含まれていたのは謎だが、ちょうどいいしここら辺でぶっ込んどくか。
「それでいいと思う。後、俺の案があるんだけど」
「なんだ?」
「俺たちが受けたのは小テストだけで、定期試験の出題形式はあまり分からないし、小テストと同じ出方とは限らない。だから、過去問とかを使ったら効率よく勉強出来ると思う」
嘘は言っていない。実際この思考になる人は他にもいるだろう。そこから数年分の過去問を照らし合わせて「は?一緒じゃん。カモ」という考えに至る者も少なくないだろうな。
幸いにも3人には怪しまれずにそれどころか感心したような目をこちらに見せてきて若干の罪悪感を覚えた。
「それは思いつかなかったな……」
「私も……すごいね、悠くん」
やめてっ。そんな目で見ないでっ。俺普通の生徒だからっ。一之瀬クラスの生徒その3とかだからっ。
「どうやって過去問を入手するんですか?上級生が全員持っているとは限らないでしょうし」
浜口くん良い着眼点だね。でも多分大体の生徒は持ってると思う。だって金になるし。それは上のクラスであればあるほど中間テストの本質を理解してるが故に過去問を所持してるだろう。
「何人かの先輩とは話したことがあるから、その人達に当たってみるよ」
3年生部門はお兄様でいいか。2年生部門はチェス部のとこにまた道場破りでも行こうかな?あの時は3年の人しかいなかったけどまあ2年生もいるだろな。どちらも俺に金を落としてくれた優しいATMだ。
いやまて。2年は生理先輩の息がかかってる。変に俺の情報を回されたら面倒だ。それに今回は赤点=退学ということを理解してから初めてのテスト。皆のテストへの意識は高い。死に物狂いで勉強するはずだ。これは今後の学力向上のいい機会なのでは?
過去問が通用するのは今回だけ。その甘い蜜を啜った生徒が次のテストに慢心しては困る。あくまで過去問は過去問。そういう意識で一度解かせればいいか。よし、お兄様だけにしよう。仕返しに気配消して背後に立ってやる。肩の痛みは忘れないぜ。
というかなんで俺この集まりに参加してるんだ?隆二と浜口くんは頭いいから参謀なのは納得。俺別に頭いいところ見せてないけど?小テスト10位って言ったって俺と一緒の点数何人もいたから実質もっと下だぞ?帆波の横の席だからか?俺もしかして付録なの?食玩なの?
という訳で会議は終了。理由は謎だったがこの会議に参加できて良かった。三人の現時点での能力がだいたい分かったし。そして隆二は終始イケメンだった。俺にもイケメン成分分けてケロ〜。小耳に挟んだが一年生のイケメンランキング一位が水野悠と言う奴らしい。誰そいつ?隆二の方がカッコイイだろうがよ。
勉強会は明日の放課後から2時間ほど開くということで決まった。まあ妥当だな。初めから飛ばしすぎても体力持たねぇし。俺は一度見たものは忘れないから復習とかはあんま必要ないんだけど、何もしないのはソワソワするからたまに参考書やら論文なりを一冊一気に読む。30秒で。俺速読出来るんだわ。だから小説とかは頭を使う系のものでかつ面白いものじゃないと秒で読めてしまうから探すのきついんだよな。Cクラスの天使にいいのないか聞こうかな。話したことないけど。
解散となり、各自帰宅の用意をし、隆二と浜口くんは一瞬で出ていった。早っ。そんなに急いでんの?バーゲンセールかよ。
過去問も早い段階で取っとくか。あの人はどうせ生徒会室に居るだろうし。生理先輩がいないタイミングで会いにいくか。いや、連絡先貰ってるし合流するか。そっちのが楽だな。そうと決まれば今からでも連絡して会おっと。
「悠くん……よ、良かったら、一緒に帰らない……?」
自分の服をつまみながらうるうると潤んだ瞳を下から覗き込むように見せて帆波が寄ってくる。紅潮した顔とモジモジとする体も破壊力は抜群だった。こんなん悟空でも勝てんやん。戦闘力無量大数だろ。即決でOKしました。過去問なんて後回しだよ!!
後日、メールで呼び出したお兄様の背後に気配を消して立ち、膝カックンをした。ビクッとなっててめっちゃ面白かった。無表情で蹴りが飛んできたけど。しっかり避けました。過去問あざすー。
in the tosyokan!!
何気に初めてかもしれないな。俺たちBクラスは図書館にて勉強会を開くことになった。今日は教え合うと言うよりも黙々と過去問を解いてもらう感じだからあんま喋らないしね。分からなかったら教えるけど。
まじでなんで俺が教師役なのかは分からんが、あの上目遣いを前にすればどんな嫌な役割でもこなしちゃうだろ。別に嫌な訳じゃないけども。
帆波、俺、隆二がそれぞれ小グループを受け持ち教えるという感じになった。俺のグループはビックリするくらい女の子しかいない。なんで?帆波と隆二は男女比半々だけど?当然のように白波ちゃんは帆波のグループだった。
「ねぇねぇ、一之瀬さんと付き合ってるの?」
「付き合ってないよ」
「えー意外ー。あんなに仲良いのに」
「じゃあ、水野くんは好きな子とかいるの?気になってる子とかは?」
「全然全く」
「「「よしっ」」」
なんかガッツポーズ取ってるんですけど。後ろの君も気づいてないと思った?俺視野広いし気配でもわかるから丸見えだぞ。スケスケだぜっ。そんなに俺に彼女がいないのが嬉しいのか。人の不幸は蜜の味ってことか。
帆波さん、こっち見ないでそっち集中しなさい。食べ盛りのリスみたいな顔になってるわよ。
「……分からないところあったら教えるから。それまでは頑張って自力で解いてね」
過去問を解いてもらってる間に俺が何もしないのはあれだから必要ないけどとりあえず勉強してるフリするか。てれててっててー、恋愛小説〜。これで心情理解、つまり国語の勉強だぜ!!
小説を読みつつ、問題に詰まってる子がいたらその都度声をかけてヒントをあげる。さすがはBクラスと言うべきか、かなり集中してくれるので静かだ。どこかの三バカとは違うな。と思ってたら端の方から声が聞こえた。
「上等だ!かかって来いよ!!」
さっきから話し声は聞こえていたがここまで叫んだら嫌でも視線を集める。そちらへと目を向ければやはりと言うべきか、須藤が拳を握り立ち上がろうとしていた。その前にいるのはCクラスの生徒だな。
そして須藤がいるということはDクラスの勉強会、つまり堀北妹と哀れなイカロス(笑)ことパイセンが居た。キャー、オーラ半端ねぇ〜!と、そんなことを考えていたら帆波が同じグループの子たちに断りを入れてから立ち上がり騒動が起こっている方へと歩いていく。原作通りだがさすがに危険だ。俺も行くか。
帆波に追いつくべく俺も席を立とうとすると何人かの女子は怯えて震えている子も居た。そらそうだな。あいつら見た目ヤンキーで言動もヤンキーだし。しかも場所は図書館。こんなこと予想もしてなかっただろうな。ペンを持つ手が震えている子の手を軽く握る。突然触られたからかその子はピクリと肩を揺らしてこちらを見てくる。俺は安心できるように微笑んだ。
「大丈夫。ちょっと行ってくる」
俺の言葉に安心したのか、青く血の気が引いていた顔色は赤色に染まり、震えていた体も止まった。その様子に安心し、席を立ってその子の頭を軽く撫でた後に帆波の元まで歩く。既に帆波は仲裁に入っていた。相変わらず正義感が強いな。あの行動を当たり前だと思い動けるところが帆波の強みだ。
帆波が両者に一言ずつ言うとCクラス側は逃げの体勢に入っていた。流石は帆波。俺は要らなかったかな。
「おい行こうぜ。こんなところで勉強してたらバカが移るしよ」
三下みたいな捨て台詞言う奴初めて見たわ。てかそんな挑発に乗る奴居るのか?さすがの須藤でも乗らんだろ。
「んだとこら!」
乗っちゃったよ。こんな場面原作にあったか?バタフライエフェクト……いや、そんな大層なものでは無いな。普通にキレてるだけか。三下の捨て台詞にキレた須藤が間に入った帆波を押しのけて三下に詰め寄ろうとしている。おいおいそれは流石にやりすぎだ。お前は退学になるべきじゃないんだよ。ちょっと脅かしとくか。
「動くな」
「「「ッ!?」」」
お遊び程度に殺気を混ぜて低い声を出す。決して大きくない、しかしその場にいるものには聞こえる声量。あとは勝手に向こうがビクッとしてくれるはず。この前のお兄様みたいに。踏み出そうとした須藤の一歩が止まる。殺気を向けられた須藤は少し震えていた。そんなに殺気出てないはずだけどな。僕悪い人間じゃないよ。
「ここ図書館な。静かに勉強しろよ」
殺気を消して柔らかい声でそう告げると圧が消えた須藤は軽く後ずさる。堀北妹めっちゃこっち見てる。そんな目を開きながらこっち見んなて。「どうしてあなたがここに……」みたいな顔だな。
「どうしてあなたがここに……」
言っちゃったよこの子。こんな分かりやすいのか。パイセンも見てきてるな。観察してると言うべきか。俺は全体を俯瞰するように見た。
それにしても、堀北妹はお兄様に似てるな……いや、似てない……やっぱ似てるわ。なんか雰囲気が似てる。ブラコンだし。相思相愛じゃねぇか。
「悠くんありがとう。助かったよ」
「それはいいんだけど、行く時は俺とか隆二に声掛けてくれよ?」
「うんっ」
さて、帆波と話してる間に堀北妹……もう堀北でいいや。堀北が何やらパイセンに伝えていた。パイセンが俺の事聞いてたっぽいから俺の経歴バラしたな。パイセンの視線の種類変わったし。標的にされたか?いや、戦闘能力は公のものだししょうがない。公式戦で本気は出したことないからまあいいだろう。
Dクラスが居る机に近づき、視線を堀北に向ける。
「やっぱあの人にそっくりだね……初めまして?かな」
「っ、やっぱり……」
めっちゃ睨まれた。この子は威圧することしかコミュニケーション手段が無いのか。それより、周りの注目を集めすぎたか。そろそろ退散した方が良さそうだな。
「帆波。そろそろ戻ろう」
「うん。君達もここで勉強続けるなら、大人しくやろうね」
颯爽と戻っていく帆波の背中を見ながら俺は思い出したようにパイセン達の方に振り返る。さっきの殺気が効いていたからか、三バカ達は若干俺に怖気付いて……いや嫉妬混じってるなコレ。イケメンランキング知ってんのかこいつら。
「まだ何かあるのかしら、水野悠くん?」
この兄妹は俺の事フルネームで呼ばないと気が済まないのか?
「いや、用と言うか────そこ、テスト範囲じゃないよ?」
「……は?」
「じゃあね」
後ろから声が掛けられるもあえて無視し、自席へと戻る。何故かキラキラした目と拍手で迎え入れられた。何人かの視線がすごい熱を帯びているのは気の所為だろうか。
さてさて、ちょっと面白くなってきた恋愛小説の続きだぜ!!
堀北学
メガネ系男子。しれっと強化された人。綾小路との初邂逅時にて、攻撃を掠らせたことから綾小路から強いやつ認定される。オリ主とは何度も公式戦で当たり、その度に負けている。勝ちたい。シスコン。生徒会、カモーンヌ!!そしてシスコン。