綾小路に憧れた男の実力至上主義生活   作:ラトソル

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水野がAクラスに配属されていたら、早い段階で坂柳に才能を見抜かれて相棒になり無双します。


人の不幸は蜜の味

 高度育成高等学校。その敷地内にあるカラオケ店。その一室、数十人が入れるほどのビッグルームに何人もの男女が集まっていた。その誰もがジュースの入ったグラスを片手にしていた。

 

「それじゃあ、無事中間テストを乗り越えたことを祝して、乾杯!」

 

「「「乾杯ッ!」」」

 

 号令とともに近くの人達とグラスをコツリと当て合う。目の前には様々な料理、菓子などつまめるものが用意されており、それらに手をつけながら仲間同士で談笑していた。

 

 一之瀬率いるBクラスは、平均点学年2位という成績とともに、赤点、つまり退学者を出さずに試験を乗り越えた。勉強が苦手な人も、そうでない生徒も今回に限っては点差は開いてはいない。

 

「まさか過去問と同じ問題が出るとはな〜」

 

 どこかからそんな言葉が聞こえる。この学校のテスト形式に慣れるために使用された過去問。それを軸にして勉強をしていた彼らは、テスト本番を迎えた時、既視感を覚えた。

 

 テストの内容が全く一緒だったのだ。そのおかげもあり、ペンが止まることはなく、皆満点に近い高得点をあげることができた。

 

 今後に備えてポイントは極力節約しなくてはならない。しかし、今日だけは特別だということで、打ち上げを行っていた。

 

 誰もが盛り上がり、そして安心したためか深く息を吐き、そして騒ぐ。そんな中。

 

「水野が過去問を手に入れてくれたおかげだな」

 

「ほんと、悠くんのおかげだよ!」

 

 イケメン神崎と美少女一之瀬に挟まれて両方から賞賛の声が飛んでくる。そして周りにいた生徒達も感謝の言葉を告げていた。多数の生徒から感謝を伝えられた本人は。

 

「ア、ウン。アリガト」

 

 罪悪感で胸が締め付けられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 感謝されすぎて辛い。

 

 だって俺がしたことって過去問貰っただけだし。お兄様に膝カックンしたことは褒めてもらってもいい事だと思うよ?誰も知らないけど。でも今回は原作知識使ったから頭空っぽだったしな。言うなればカンニングだ。なんかずるいことした感じが凄い。

 

 このクラスには純粋なやつしかいないのかっ!なんでそんなに疑うこともせず俺をキラキラした目で見るんだよ!!今の俺からしたらこのクラスでの癒しは姫野、お前だけだ!クラスに付き合わされてる感満載のお前を見てるとホッとするのは病気だろうか、いやそうではない。その口だけの感謝が染みるぅ!!

 

 落ち着け、ここはあの子のことを思い出すんだ……天使が降臨しました。やはり幼馴染は最強。異論は認めない。どうなってんだ俺やばいな。

 

 頭壊れそう。さっさと七巻越えろや。今すぐパイセンが龍園ボコしたら八巻始まるのでは?今の俺大分やばいな。カルピス飲んで落ち着こう。うまっ。

 

 状況の整理といこう。

 俺たち一之瀬クラスは退学者ゼロで試験を乗り越えた。まあここまでは妥当だな。そして今の俺の立ち位置。隆二と同じくらいの立ち位置に俺はいる。ただ、他クラスからは参謀と言うよりもボディーガードくらいに思われているはずだ。俺の実力は正確じゃないにしろ世間に広まってるからな。誠に遺憾であります。

 

 しかし、龍園が突っかかってこないのが不思議だ。あいつなら俺という実力者を見つけたら「クックック、いい身体してんじゃねぇか。ちょっと味見させろや」くらいには食いついてくると思っていたが。姿だけは確認したが相変わらず胸元がん開けだった。

 

 Aクラスは今頃内部抗争バチバチだろう。今回の試験も勝負だったのかは知らんが、どうせ坂柳の勝ちだ。あそこは気にしてもしょうがない。今は何もしかけてこないだろう。

 

 残るはDクラス。須藤の退学は阻止したみたいだ。流石っすパイセン。堀北から俺の実力をある程度聞いたっぽいしな。若干警戒されてるか。ってか、お兄様との戦闘シーン見逃したんだが。くっそ、「っぶね」を生で見るチャンスが……!!いや待て。今のパイセンは感情がバグってる貴重な時期……めっちゃ見たい。でも関わる機会壊滅的にないし、そもそも積極的に関わって警戒されたら元も子もないからな。

 

 そういえばもうちょいで7月。つまりポイント支給だが、一日には配られないだろうな。暴力事件が起こるはずだ。確か帆波が協力していく筈。それに付いていけばパイセンと喋れる……でもそれはやりすぎか?今回は見逃すべきか。多分帆波は俺を頼ってくる。何故かは分からんが俺に絶対の信頼を向けてるんだよなあの子。しかし今回は正直悩む。

 

 選択肢は2つ。1つは頭を空っぽにして帆波を手伝う。行き当たりばったり最高じゃん作戦。2つ目は「そっちが暴力事件ならこっちも暴力事件じゃ」作戦。簡単に言えば、家で大乱闘のレート上げようぜ。VIPムズいんよ。しかもこの学校ほんと凄い。オンライン対戦できるくせにチャット機能だけ使えないと言う仕様。国が運営していると言うことが如実に分かる。それならゲーム禁止した方が早いだろ。

 

 それは起こってから考えるとして。

 

 俺が前世で友達にネタバレされたのは二つある。一つはお兄様極度のシスコン。この情報を知ってる俺からしたら眼鏡を光らせているお兄様は可愛いものだ。膝カックンも余裕でできる。問題なのは二つ目。

 

 入学してからずっと情報を集めてきたが、未だに尻尾を掴ませてはくれない。すれ違う生徒を観察しても違和感が無い。本当に居るのかどうかすら疑問に思ってくるが、絵瀬くんが言うのなら本当だろう。

 

 綾小路清隆はホワイトルームの最高傑作。彼に匹敵する奴はこの学校には可能性として高円寺のみ……と思っていたが。

 

 ホワイトルームと敵対している、才能育成機構────ブラックルーム。その最高傑作が居るという情報を絵瀬くんから聞いた。調べたらそれ以上のネタバレになるから前世ではそれ以上の追求はしなかったが、なんでもパイセンを超える存在らしい。警戒せねば。

 

「水野くん!水野くんも歌おうよ!」

 

 あくまで楽しんでいる表情を崩さずに内心は神妙に考えていると、クラスの子がマイクを持ってこちらへと駆け寄ってきた。そういえばカラオケだなここ。差し出されたマイクを受け取り立ち上がる。しかしカラオケか。正直自信はない。95点を超えたことは無いんだよな。絶対音感持ってるくせに何故か点が出ない。幼馴染からは「上手い」と絶賛だったが……まあなるようになるか。幼馴染補正が入ってて過剰な評価だったら恥ずかしいが。

 

 やる気十分で曲を選ぼうとしたらマイクを渡してくれた子とのデュエット曲が既に入ってました。ちなみに93点。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんなおはよう〜。早速だけど今月のポイントを発表するね」

 

 7月1日のホームルーム。星之宮先生がポスターを持って教室へと入ってくる。先月も見たのでクラスメイト達はそれが何なのかが分かっていた。

 

 丸められたポスターを開き、磁石を使ってホワイトボードに貼り付ける。そこには各クラスの現在のクラスポイントが書かれていた。

 

 Aクラス 1004cp

 

 Bクラス 704cp

 

 Cクラス 492cp

 

 Dクラス 87cp

 

 その数字を見て、ある者は増えていることに喜び、そしてある者はAクラスとの大差に萎縮、あるいは奮い立っていた。そして同時に多数の生徒は疑問を抱く。

 

「それともう一点なんだけど、ちょっとトラブルがあって1年生のポイント支給が遅れてるの。すぐに解決すると思うから少し待ってね」

 

 一日になると、生徒のほとんどは朝起きてすぐに所持プライベートポイントを確認する。いつもならすぐに入っていることが分かるが、今回はポイント変動が見られなかったため、少なくない生徒がクラスポイントが無くなったのではないかと不安を抱いていた。その疑問を口にする前に星之宮先生が説明してくれたため、それ以上生徒の口から質問が飛ぶことは無かった。

 

 ホームルームが終わり、次の授業の準備の合間にトラブルについて考察するような会話がちらほらと飛び交っていた。

 

「トラブルか……なんだろうね」

 

 そんな中、隣の席である一之瀬からそんな疑問を口にされた男は。

 

(ちょっとポイント上がってるぅぅぅぅ!!)

 

 原作よりもポイントが上がったことに少しテンションが上がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 その後何事もなく授業が終わり、放課後となる。まあ1日目はまだトラブルの原因とかもわかってないしな。まだ噂にもなってないし動きようはないだろう。動くとしても明後日くらいか。まだ動くか決めてないけど。

 

 今日はひっさしぶりに一人で帰宅している。テスト期間中は教師役やったり自習の振りで図書館に何人かと行ったり、帆波と一緒に帰ったりとしていたからなんか静かなのが新鮮だ。さすがにスキップはしないよ?

 

 今日は暇だし帰って大乱闘するかアプリゲームするかだな。最近はチェスにハマってる。もちろんチャット機能がないから黙々と駒を進めるだけだが普通に面白い。頭使うからね。オンライン対戦が基本だが、このアプリにはフレンド登録という機能が存在する。フレンド限定の部屋をつくり対戦することも可能という優れものだ。割とどこでもありそうな設定である。

 

 対戦終了後にフレンド申請ができるが、未だに俺のフレンド枠には1人しかいない。プレイヤーネームは【Alice】。よく居るんだよな、おとぎ話やらアニメキャラから名前取るやつ。この人も典型的なパターンだと思うが、フレンドになった理由はこの人はレベチで強い。展開も早いから普通に楽しい。初めてマッチングした時は感動した。フレンド申請しようとしたら向こうから先に申請が来たのですぐに承認した。

 

 このアプリはフレンドがオンラインかどうかが分かるので、相手がオンラインなら部屋を作るというのがいつもの流れのようになっていた。今まで20戦以上している。全部勝ってるけど、かなりの手数になるため長期戦となる。ちなみに俺のユーザーネームは【囲碁】。チェスでもなければ将棋ですらない。

 

 ちらっと確認するがオンラインにはなっていなかった。大乱闘が確定したところで学生証をポケットにしまって寮までの道を歩く。

 

「ん?水野じゃないか、奇遇だな」

 

 おっと、変人に声をかけられてしまった。気にせず速度を上げて歩く。

 

「おいおい、私を無視するのか?それとも恥ずかしいのか?可愛い奴だな」

 

「不審者からの呼び掛けは無視するっていう偉大なる母からの教えなんですよ」

 

「不審者だと?そんな奴がいたのか。どこだ?私が通報しておこう」

 

 アンタだよ。なんでそんなに心底不思議そうな顔できるんだよ。

 

 肩に腕を回されてガチりと体を密着された。あんた女なんだからもうちょい距離感大事にした方がいいと思うよ?色々柔らかいしいい匂いです。しかし相手に色気が微塵も感じられないため何も思わないが。

 

 デジャブかな?と思いながら隣にいる存在に顔を向ける。白銀の長髪に鋭い目付きでありながら整った顔を持っている女性。

 

「……どうも、鬼龍院先輩」

 

 そう、ミス高円寺だ。ポイントを文化部から荒稼ぎしている時に目をつけられ何故か気に入られて以来何かと突っかかってくる自由人である。めっちゃキャラ濃いなこの人は。原作では見たことがないが間違いなく主要キャラにしか見えない。これでモブだったらやばいだろ。実力も相当なものだろうし。

 

 疲れたように目を細めながら鬼龍院先輩の方を向くと何が可笑しいのか笑いながらさらに腕に力を入れた。だから近いっつの。

 

「どうした?やはり照れているのか?ん?」

 

「照れてるんで離れてもらっても?」

 

「ハッ、相変わらず可愛げのないやつだな」

 

 ニヤニヤした顔はデフォルトなのか、その表情を一切崩さない彼女はとても愉快な様子だった。ようやく離れてくれたが着いてくることは確定しているようで、俺の傍からは離れようとはしない。高円寺とは話したことがないが、もし話す機会があるのなら多分今と同じぐらい疲れるだろうな。むしろこっちの方がしんどいまである。

 

 しかし、この人は二年では珍しい生理先輩に従っていない生徒。人心掌握以外ならば生理先輩を超えたスペックの持ち主だ。学校単位で見てもトップクラスのポテンシャルがあるだろう。顔もスタイルもトップクラスなのだが、性格で全てが無に還ってしまっている。そしていつも1人だ。

 

 ベンチを一人で独占するような座り方をしていたことを見てもこの人の性格が分かるだろう。流石の生理先輩も相手をするだけ無駄だと諦めたのだろう。ざまぁ。

 

「それで、どうしたんですか?俺を呼び止めて」

 

「なに。見知った顔を見たから声をかけただけだ」

 

「そうですか。では」

 

「まあ待て。せっかくだ、少し話そうじゃないか」

 

 しれっと帰ろう作戦が通じないだと!?お兄様とかが少し話があると言ってきたら面倒臭い内容なのが確定するが、この人の場合まじで世間話なんだよな。完全に暇つぶしである。

 

 鬼龍院先輩と近くの人通りの少ないベンチへ向かった。この人と喋ってたらすんごい注目されるんだよな。1年と3年は鬼龍院先輩の顔に目がいったり俺のこと知ってる人は変な噂流れる可能性あるし、そして何より2年生が俺たちを見たら3度見してくる。その様子は面白いが生理先輩に変な情報を流されたらたまったもんじゃない。生徒会に入るまであの人と話したくないんだよ。つまり入らなかったら永遠に話さない。

 

「こんな人目のつかない場所に連れてきて、一体ナニをするつもりだ?」

 

「先輩が喋ろうって言ったんでしょうが」

 

 まじでこの人の思考回路どうなってんだ?ニヤニヤが止まんねぇぞこの人。でも気色悪くはないんだよな。不思議だ。生理先輩もこの人のニヤニヤを見習って欲しい。あの人がニヤニヤしたら顔面を潰してしまうが。

 

 ベンチに腰を下ろすと途端に先輩がじっと俺の顔を見つめてくる。まじで行動パターンがわからん。普通に顔が綺麗だから恥ずいんだが。

 

「……やはりお前は面白いな」

 

「先輩には負けますよ」

 

「そんなに褒めるな。照れるだろう?」

 

 皮肉だよ。アイロニーだよ。冗談が通用しない人だったわこの人。

 

「自慢じゃないが、私の顔はかなり整っている」

 

「自慢ですね」

 

「そんな私の顔が目と鼻の先にあれば、多少は動揺する。整っていなくてもな。しかしお前は一切乱れた様子を見せない」

 

 やっぱこの人すげぇわ。観察眼が人並外れている。心音も感じているのではないだろうか。

 

「ポーカーフェイスかもしれませんよ?内心バックバクかも」

 

「私は人を見る目は自信がある。私に声をかけられた時も、お前は一切動揺していなかった」

 

 怖い。めっちゃ見られてんじゃん。まあ分かってたけども。分かってないふりも見抜かれてるっぽいな。天才だこの人。この人に気に入られてるのは嬉しいと思っていいのか?生徒会長にも興味なさげだったし。先輩が味方?についてくれるのは心強いが。

 

 数秒見つめ合い無言の時間が流れると、「ふっ」と笑った先輩は顔を離して背もたれに体重を任せた。やっぱ笑った顔は絵になるなこの人。映像化してはダメだが。

 

「私が何を言ってもお前は平然とした顔で躱すだろうからな。詮索はしないでおこう」

 

 絶対してくるなこの人。

 

「では、私の暇つぶしに付き合ってくれ」

 

 やっぱ暇つぶしなんですね。天気の話でもする?アリの行列?カフェの新商品?鬼龍院先輩と話すのは疲れるが楽しいのは事実だが、世間話じゃあ長続きしないだろうし、申し訳ないが俺の興味が惹かれるものもないだろうな。生返事になるかもしれないけど許してくださいね。

 

「そうだな……そういえば今日南雲雅が何も無いところでつまづいていてな」

 

 何それ詳しく!!!!

 

 なんだかんだで一時間ほど語り合った。

 

 




堀北鈴音
 
キリッ系女子。ブラコン。オリ主のことはお兄様に常勝している相手ということもあり知っていた。そしてブラコン。

鬼龍院楓花
 
ニヤニヤしながら近づいてくる系女子。突然オリ主に興味を持ち、何度か交流を重ねる。一之瀬が嫉妬する。なお、恋愛感情は欠片も無い。
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