少しこの作品の内容に触れます。現段階でのオリ主は別段『勝利』を求めてはいません。また、従来の性格によって、手段を選ばないような残虐性は薄く、その点において、オリ主は綾小路に劣っています。少し先の話でこの内容に触れます。
ポイント支給が行われないまま数日が経つが、俺達は無駄なポイントを使っていないため生活に支障は特に出ていなかった。帆波は銀行として作用しているし、支給が再開されるまではストレスは無く生活していけるだろう。大して変わらない日々を過ごしているが、俺達の耳にはとある噂が流れてきた。
『DとCがトラブルを起こしている』というものだ。
そのせいで俺達のポイントが支給されていないということが認知されるのは当然の流れだった。しかし、特に動こうとする生徒は現れず、解決されるまで静観しよう……と普通の生徒ならなるのだが。
やはりと言うべきか、帆波が動こうとしていた。今回は利益なんて考えていない慈善活動だろう。自分の行動に周りを巻き込もうとはしない帆波だが、隆二が自分から協力することを申し出ている。うんうん、二人で行ってらっしゃい。
「よければ水野も手伝ってはくれないか?」
でしょうね。知ってましたよ。帰りの支度をしている俺の席に隆二とその後ろに帆波がいた。帆波は申し訳なさそうな、それでいて期待を抱いた目でこちらを見つめている。そんな目されたら断れんて。断るけど。
「悪い。ちょっと予定があるんだ」
「そうか……いや、こちらこそすまん」
相変わらずイケメンだな。「じゃあね」とこちらに手を振り帆波と隆二は教室を出ていった。現場視察にでも行ったんだろうな。そしてそこにはパイセンがいる、と。正直行きたい気持ちはある。すっごいある。でも静観すると決めた。7巻までは、龍園タコ殴り事件までは原作遵守で行きたい。既にクラスポイントバグったが、それは会長の期待のせいだということにしよう。無人島試験も、干支試験も、ペーパーシャッフルも。問題作成くらいなら手伝うが、ポイントに直結するようなことはしないと決めたから。
パイセンと話すのは、大分先になってしまうのか。それは悔しいが、今は耐えの時期だ。だから、それまでは。
お兄様の膝を攻撃しようと決めた。あと【Alice】とのチェス。
『気まずい』、と思うことはあるだろうか。友達の友達、という関係の相手と一対一になった時、自分が喋った時に周りがシンと静まり返った時、鼻歌を聞かれた時。人と関わっていればふと気まずいと思う瞬間は出てくるだろう。
かく言う俺も気まずいと思ったことは何度かある。しかし、今日ほど気まずいと思ったことはないだろう。
高級料理店の個室。その場には俺が立っており、そして俺の目の前には。
真顔で俺の膝目掛けて膝カックンを仕掛けようとして失敗したお兄様が固まっていた。
事の発端は一時間ほど遡る。帆波達と別れたあと、まっすぐ自室に帰り、いつも通りチェスアプリを開くと、フレンドがオンラインであることを表す緑色の光が灯っていたため、ルームを探すと案の定【Alice】が部屋を作っていたため対戦した。相変わらずの長丁場だったが、俺が先手であったこともあり終始俺が優勢で対局は続き。
『チェックメイトっと……ん?』
最後の一手をうち、相手がリザインしたことで俺の画面に【WINNER】の文字がでかでかと表示される。いつもならそのままもう1戦となるのだが、ピロンッという音と共にメッセージが表示された。なんと珍しい会長様からのメッセージだった。向こうからは初めてじゃね?と思いながらメッセージを開く。内容は、『一時間後にここに来いやщ(゜Д゜щ)』といったものだ。拒否権も無さそうだし、呼び出し場所が高級料理店だったのですぐに『あざす』と返信した。人の金で食う飯は美味いんじゃ。
【再戦しますか?】と表示されているところを【NO】を押し、パパっと私服に着替えて外に出た。ちょうど買い物とかもしたかったので、ケヤキモールに寄ってから集合場所である店へと向かった。
お兄様は予約していてくれたようで、更には既に着いているらしい。受付の方に案内された個室は、なんかすごい豪華な部屋だった。ピッカピカの椅子も、なんか凄い(語彙力)。
二人席だったので、やはりお兄様以外は誰も来ないのだろう。俺が座るであろう席の対面にはカバンが置かれていたが、肝心のお兄様がどこにもいなかった。ま、トイレだろうな。考えてもどうにもならないし、席につこうと思った時に、僅かにだが背後に気配を感じた。気配が近いが弱い。また気配消して近づこうとしているのか、それとも癖なのかは分からないがこの前みたいに肩をにぎにぎされても困るしな。
「どうもです会長。今日はどういう────」
体ごと後ろへ振り向こうと脚を回すと、何かが膝に当たった。横からだったためなんの支障もなかったが問題なのは目の前に広がる光景だ。
目線は俺の膝裏に向けられ、膝を折り曲げた状態で堀北会長が停止していた。しかもめっちゃ距離が近い。実に難解な問題だ。答え、膝カックンに失敗したお兄様。めっちゃ簡単でした。
なんとも言えない空気が漂う。広いとはいえ、それは二人用にしてはの話だ。こんな個室で流れていい空気ではない。こんなに気まずいと思ったのはいつぶりだろうか。それと同時に吹き出しそうでやばい。やっぱ負けず嫌いなんだねぇ〜。
しかも見下ろす形になっているためか、堀北会長のメガネが光り輝いていて目が見えない。今内心どう思っているのか非常に興味深いが、まずはあちらの行動を待つしかないな。
あ、立ち上がった。そのまま無言で俺の横を通り過ぎ、自分の荷物を置いている席まで歩き、静かに席につきこちらを見た。
「何をしている。席に着かないのか?」
「無理があるでしょ」
いやいや、そんなクールキャラはもう通用しないっすよ。お茶目なところ全開だったじゃん。もうこれからはお兄様がキリッとした度に吹き出すのを我慢しなくてはならないのかよ。「なんのことだ?」みたいな表情やめてもろても。もう直前までの記憶無くなっちゃってるよこの人。それと同時に「触れるな」的な圧を感じる。まあそこまで言うんだったら触れないけども。会長の対面の席に腰掛ける。テーブルに置かれたメニュー表をこちらへと差し出してきた。
「呼んだのはこちらだ。好きに頼むといい」
「ありがとうございます。会長ってお茶目なんですね、イメージ変わりましたよ。頭撫でていいですか?」
「さっさと頼め」
すみませんね、会長。もう俺の目には3歳児しか映りませんよ。やっぱ原作だけじゃ内面なんかわかんねぇよな!会長がパイセンのヒロイン候補になってしまった。それはそうと何でも頼んで良いらしいので、とりあえず値段だけ見て注文した。何を頼んだのかは全然分かってない。
数分経ち、店員が持ってきたのはパスタだった。トリュフがめっちゃかかってるやつ。そういえばトリュフ食ったことねぇな〜と呑気なことを考えながらパスタを見つめる。会長はちっさいステーキを頼んでいたようだ。0.1人前くらいの量だ。
「DクラスとCクラスがトラブルを起こしているようだな」
不意に会長が話題を振ってきた。
「さすがに耳が早いですね」
「今回の騒動は生徒会で審議することが決まっているからな」
「なるほど」
ただでさえ小さい肉をナイフでさらに刻み、フォークを使って散らばっているソースに付けて口に運ぶ。これだけでも絵になるなこの人。違和感ないわ。この人が膝カックンしてたんだよな〜。信じられん。
「今回の騒動、どう見る?」
ナイフとフォークを置き、口元を拭いてからこちらを見つめてくる。そんなことを聞くために俺を呼んだのか?いや、この人がそんなことで呼ぶはずが無いとは思うが、もしかして結構俺お気に入りになってたりするのか?
暴力事件がどうなるかか。この人にはある程度俺の実力見抜かれてるし、下手に誤魔化さない方がいいな。なんなら素で話せるから楽だ。
フォークで器用にパスタを巻き上げる。
「Dが勝つでしょうね」
「──ほう」
パスタを口に運びながら対面を見ると会長は期待通りの返答を得ることが出来たような息を吐く。結局妹を信じてるのかこの人。いや、パイセンと接触したのならそっちに期待してるのか?
「なぜだ?はっきり言ってCが有利に見えるが」
「何もDクラスの勝利条件が無実を証明することだけじゃないですから。それならやりようは幾らでも出てくる」
「そこまで分かっているのか。だが、Dクラスは例年欠陥品と呼ばれるもの達が集まる。奴らにその解答に辿り着けるものがいると?」
「居るでしょうね。例えばあなたの妹さんとかはどうですか?」
「鈴音か……今のあいつなら無理だろう」
だろうな。ノーヒントで今の堀北が『訴えを取り下げる』という解に辿り着けるかは怪しいところだ。思いついたとしてもその方法が分からないだろう。一人ならの話だが。パイセンがヒント出してくれるからどうせ解決するだろう。
「お前は動かないのか?掲示板でお前のクラスもDに協力するような動きを見せているが」
「動きませんよ。どうせ勝つとわかっているのに力を貸すのは意味が無いでしょう。あんま目立ちたくないし」
静観するって決めちゃったし。
「会長はどうお考えで?」
「断言は出来ない。あくまで俺は公平な立場だからな。だが……Dには期待している」
「どうしてですか?」
「……Dクラスの生徒で面白い奴と出会ってな」
「へぇ。誰ですか?」
「個人名は控えさせてもらう。どうやら奴もお前と同じく実力を隠しているようだからな」
じゃあ俺が公開しときます。【綾小路清隆!!】。パイセンですね。パイセンの話になった途端楽しそうに話してるなこの人。やはりヒロインか。いつも動かない表情筋が機能していやがる。笑ってるはずなのに怖いなこの顔。あ、戻った。
「話を変える。生徒会へは入る気になったか?」
先程よりも真剣な目を向けてくる。こちらが今回呼び出した理由か。しかし釈然としないな。ここまで催促するような人か?俺から言うまでは待ち続けると思っていたが……焦りが見えるな。
「二年から退学者が出たんですか?」
「────」
瞳が揺れていないのは凄いな。流石は生徒会長、ポーカーフェイスが上手い。ただ手に力が入っている。当たりだな。生理先輩がやらかしたってことか。あの独裁笑顔が多くの退学者を出したのだろう。退学した人達は何をやらかしたのだろうか。あの笑顔を見て吐いたのか?
冗談は置いておくとして。会長の表情は依然変化がないが、圧が増えた。警戒してるのか?もしかして俺が生理先輩と繋がってると思ってるのか?あ、あんな笑顔見せる男、好きじゃないんだからね!(ガチ)
「……何故今二年生の話が出てくる」
「先に言っておきますが、俺は南雲先輩とは繋がっていません」
むしろ嫌いです。繋がりたくないです。
俺が生理先輩の名前を出した途端先程までの警戒が若干薄れた。何かを納得しているような感じだ。ちょっと笑ってるし。
「南雲?どういうことだ?」
笑いながらシラを切らないでもらっても?俺の推測聞きたくてしょうがないのかこの人は。
「堀北会長は南雲先輩の行き過ぎた思想に基づく行動を止めるための抑止力として俺を生徒会に勧誘しているのでは?」
「──ふっ」
あ、笑った。マジでその笑顔を妹さんに見せてあげて欲しい。
会長の警戒は完全に消えていた。組んでいた腕も解いたから心を開いてくれたか。
「お前のことは高く評価していたつもりだったが……まだ過小評価だったようだな」
自嘲気味な息を吐き、面白そうにこちらを見てくる。そして振り返るように語る。
「南雲は危険だ。奴の学年の退学者は異常と言っていい。今は俺が抑えているが、俺が会長の席を降り、そして卒業すればもう手がつけられん。次期生徒会長は間違いなく南雲だ。奴のターゲットは学校全体になるだろう。そうなれば、来年にはどうなるのか計り知れない」
悔しそうに、そして自分の力不足を嘆くように両手を握る。
「そこで俺に抑止力になれ、と」
「そうだ。お前なら南雲に負けることは無い。やつと同じ生徒会という近い位置で南雲の動向を読み、阻止してもらいたい。席は空いている。俺の推薦なら誰も文句は言わん……頼む」
会長の声は真剣そのものだ。俺に、入学したての一年にこんなことを頼むのは会長としても不甲斐ないと思っているはずだ。それでも俺に頼み込むというのは、南雲というこの学校における毒の脅威を、それに対応し得る存在を見てしまったからだ。
差し出された右手をじっと見つめる。期待と信頼が込められた手を。ここまで信頼されているとは思っていなかった。会長……堀北先輩には、というより俺は全力を他者に見せたことがない。入試の筆記試験も低い点で遊んだし、面接は馬鹿みたいな顔で乗り切った。全てをさらけ出してないのに、ここまで信頼しているところに嬉しさを感じると同時に、危うさを感じる。
本当にこの人は南雲の危険性をわかっているのだろうか。鬼龍院先輩に話を聞く限りでは、南雲は手段を選ばない人だ。残虐性があるとかでは無い、勝つための手段だから当然のことだと割り切っている。あいつの脳みそは多分3歳児だ。賢い3歳児。
しかしそれは後で考えるべき問題。俺自身、生徒会に入るメリットは考えていた。答えはもう決まっている。決めるのが早いか遅いかの違いでしかないだろう。
「分かりました。生徒会に入ります」
堀北先輩の手を握り了承の意を見せると、安心したように目を閉じた。互いに握る手に力を入れる。強い繋がりを作るように。
「でも、CとDのいざこざが終わってからでお願いしますね」
会議の場に出たくないし。
残ったパスタを一気にすすり、その日は解散となった。俺が先に出て、その後10分後に堀北先輩が出ていくという具合で。
それから少し経った日、いつも通りの学校生活を過ごしていたが、少し変わったことがあった。
帆波と白波ちゃんが若干よそよそしい。てことは告白したってことか。原作通りパイセンに代役頼んで断られたって感じか。ワンチャン俺に来るかもと思ってたけどそんなことなくて一安心だ。でもせっかく勇気をだして告白したんだから振られたことが原因で関係が破綻するのは勿体ない。むしろさらけ出したのだから前より仲良くなって欲しい。
結局俺は最後まで手を貸すことなく帆波から問題が解決したことを聞いた。めっちゃ嬉しそうな帆波の顔は録画するべきだったな。控えめに言って天使だった。
もうすぐ夏休み、つまり無人島試験だ。一週間学生証没収、つまり携帯が触れないことに若干の不満を覚えるのは現代っ子ということの証明になるようで嫌だがチェスとかが出来ないのは普通に残念だ。この期間が原因で【Alice】にフレンド解消されたらキツイ。相手がいなくなるのは嫌だな。
しかし、その前にやることがある。暴力事件が終わった次の日の放課後。俺はとある一室の前まで足を運んだ。もうここまで来たら戻れない。普通の生徒を演じることは難しい。でも、やると決めたならとことんだ。あの害悪の影に潜んで妨害してやる。
ノックを3回。「入れ」という声が扉の奥から聞こえてきた。これでノックしたのが教師だったらどうすんの?気配で分かるんだろうけど。無駄にデカ目の扉を開き中に足を踏み入れる。相変わらずちっさい先輩、見たことの無い上級生、会長席には堀北先輩、そしてその横には諸悪の根源。
「よく来た、水野悠。我々生徒会はお前を歓迎する」
それならもうちょい高めのテンションで言ってくれませんかね?
これからはある程度の力は見せなければ逆に怪しまれる。でも後悔はない。一般生徒ではなく、Bクラスの出来る男という立ち位置になろう。
さあ、始めよう。
橘茜
ちっさい系女子。大好きな会長君がご執心なオリ主に少し嫉妬するも、彼の人の良さに触れて許す。ただし、毎回私のことを子供扱いするのは許さん。
綾小路清隆
俺の事葬ってくれ系男子。原作主人公。ホワイトルームでは外の情報が一切入ってこなかったため、オリ主のことは知らなかったが、一部生徒からオリ主の強さを知り、興味が湧く。