綾小路に憧れた男の実力至上主義生活   作:ラトソル

9 / 11
みんな!オラに文書力を分けてくれぃー


バカンス(笑)

 照りつける太陽、心地よい風。そして耳を澄ませば聞こえてくるのは波の音。潮の香りが鼻孔をくすぐり、生徒達のテンションは最高潮になっていた。

 

 高度育成高等学校の校舎の中で、一年生の教室だけがぽっかりと空いていた。それもそのはず。俺たち一年生は数ヶ月ぶりに外に出ている。今いるのは豪華客船だ。巨大な鉄の塊が海の上を進むとは先人の知恵は素晴らしい。

 

 太陽の光が反射して海の水がキラキラと輝いている。晴天な事も加味されて、どれだけ見ても飽きない景色だ。

 まだ出発してからそれほど時間は経っていないため、多くの生徒が高級デッキに足を運び、芸術的風景を目に焼き付けている。その中にこれから無人島でのサバイバルが始まることを予想している者はどれだけいるのだろうか。

 

 客船の中には様々な娯楽施設が用意されており、長い船旅を飽きさせないようになっていた。プールも用意されているため、何人かの生徒達は水着に着替えて楽しんでいることだろう。この時間に部屋に篭っている人は少ない筈だ。

 

 ちなみに俺は少数派だ。おっとそんなとこ置いて良いんですかい?チェックメイト。

 

 俺は隆二と同じ部屋だ。あいつにも外に行くことを誘われたが、生憎とやることがある。【Alice】とのチェスだ。

 だって、無人島着いたら一週間拘束されて触れないじゃん?さすがにリタイアするのはやばいし、龍園が取るであろう作戦はこのクラスには合っていないから提案する気にもならない。

 

 このチェスアプリ、というかこの端末にはメッセージ機能のあるアプリは無い。つまり、向こう側からすれば一週間音信不通でオンラインすら確認できないのだ。暇さえあれば毎日のようにマッチしていたのに、急にログインしないことが向こうが気づけば、「辞めたのでは?」という考えになるかもしれない。それは非常に困る。

 

 今のうちにできる限り対戦し、「俺、飽きてないっすから!」ということを主張することが大切だ。対戦よろしくお願いします。

 

 今回俺は後手。基本的にチェスは先手が有利だ。単純に手数が多く、自分の形を作ることができるからだ。実力が拮抗している場合、先手か後手かによって勝負が決まると言ってもいい。必然的に俺が後手の時は前半の盤面は【Alice】優勢で進んでいく。

 チェスは超高度な頭脳戦だ。何手も先を読み最適解をだすということを最速で行う必要がある。そして相手がそのパターン通りに動かす保証はなく、数パターン用意しなければならないし、盤面によってはその都度更新しなければならない。それが長時間行われるため体力の消耗は激しい。下手に運動するよりも痩せられるからダイエットにおすすめだ。

 

 俺たちは一手に十秒とかけない早指しで行っている。指し合わせている訳では無いが、自然とそうなった。相手が駒を動かし、俺はノータイムで駒を動かす。すると今まで超スピードで展開されていた盤面が止まる。予想外の一手だったのか、長考に入ったらしい。俺が後手の時は毎回ギリギリだ。一手ミスをすれば簡単に負ける。今は勝つか負けるかの岐路だと言ってもいい。

 先の一手で形勢は五分になった。これから一手も間違うことなく最適解を出していけば勝てる。まじでしんどい。

 

 数十秒程してから【Alice】が駒を動かす。やはりミスの無い一手だ。この盤面なら最適解にも見える。でも、予想通りだ。次の一手で戦局は大きく変わる。相手有利だったのが一転し、俺優勢な場面になるだろう。よぉし、よろしくお願いしま〜すっ!

 

「悠〜っ!!プール行こうぜっ!!」

 

 バァンと勢いよく扉を開けて入ってきたのは颯だった。その後ろにも何人かの男子が笑顔で待ち構えており、颯はそのまま走ってベッドに座っている俺に目掛けて飛びついてきた。

 

 まあ不意打ちと言っても余裕で対処出来る。俺は余裕を持って一度スマホから目を離し、完全に宙を舞っている颯を立ち上がって避ける。「ぐえっ」という声が聞こえた。顔面から落ちていた気もするが、今はトドメの一手を打つために端末に再度目を向ける。すると、既に俺の番は終わっており【Alice】の番になっていた。え、なんで!?

 

 記憶を辿り、今目の前に写っている盤面と過去の盤面を比べる。すると、本来俺が打とうとしていた場所とはかけ離れたところに関係の無い駒が動かされていた。

 思わず固まってしまう。立ったままピクリとも動かずにスマホを見ている俺を不思議に思ったように「悠?」と颯が声をかけてくるが反応できない。

 

 さっきの俺の一手の時よりも長い時間が経過する。相手は相当考えているようだ。余程予想外の一手だったんだろうな〜。だって俺も予想外だし。敵を騙すなら味方からとは言うが自分を騙したら何も出来んて。

 もうすぐ一分経つだろう、というところで相手はついに駒を動かす。うーん、いい場所に動かしたね!勝ち筋見えないよっ!!こんな時に言うべきセリフがある。

 

 ────詰みました。

 

 初敗北は、押し間違えでした。

 

 両腕をだらんと垂れ下げ、天井を見上げる。知ってる天井ですね、はい。「どした〜?」と後ろから声をかけてくる颯に文句を言う気力もない。別に切れてないっすから。押し間違えた俺がしょーがないっすから!

 

「……行こうぜプール!!」

 

「おっ!そう来なくっちゃな!!」

 

 チェスなんてしーらねっ。たった一回の敗北気になるなんてことないっすよ。ゲームゲーム!!

 

 それはそうとビーチボールある?ちょっとドッジボールでもしない?もちろん顔面セーフね。遠慮なく当てられてくれや。

 

 

『生徒の皆様にお知らせします。お時間がありましたら、是非デッキにお集まりください。まもなく島が見えて参ります。暫くの間、非常に意義ある景色をご覧頂けるでしょう』

 

 屋外プールに行ってから少しして、全体へのアナウンスが流れた。チッ!!まだ20回しか当てれてねぇのに!!まあ俺もいい歳した大人だ(15歳)、このくらいで許して差しあげ仕りますよ。

「鼻折れた……絶対折れた……」という声が聞こえた気がするが、妖精でも通ったんだろうな、うん。次々と移動していく周りの生徒に紛れ込み俺はデッキへと歩いていく。思っていたより多くの生徒が既に居た。元々海を眺めてた奴らもいるだろう。楽しみなんだろうな〜、無人島。試験だけどね。

 

 何処か空いている場所はないかと周りを見渡す。お、パイセン御一行発見。静かに距離をとる。だってまだそんな仲良くないし。今絡みに行ったら絶対変な目で見られるし。干支試験で一緒になったりしないかな〜。

 少し離れると比較的空いている場所があった。しかも帆波いるじゃん。話そっと。後ろから肩を軽く叩く。

 

「うにゃっ!!?」

 

 え、可愛い。

 

 今猫耳としっぽが幻視できたぞ。どうゆうトリック?

 勢いよく振り返った帆波の顔は見てわかるほどに紅潮していた。そんなにびっくりしたの?ごめんね。

 

「ゆ、悠くん……びっくりしたぁ……」

 

 余程驚いたのか、胸に手をやり深く荒い呼吸をしていた。当然ながらそれに応じて胸が上下に動く。俺の目は帆波の目に固定された。視野広いからくっきり見えるんですけどね。そんな揺れんの?すごいなビッグサンダーマウンテン。

 すると帆波は何やら体をモジモジさせて視線を泳がせた後に、「にゃはは……」と手を頭の後ろにやりながら笑った。なんだこの小動物は。可愛いすぎんだろうがよ。一部小動物じゃないところあるけども。

 

「悠くんも無人島を見に来たの?」

 

「そうそう。どんな感じか興味あるし」

 

 二人横に並んで柵に手を置く。すると遠くの方に島がぽつりとひとつあるのが見えた。お、洞窟っぽいの発見。マークしとこっと。

 

「あっ、あれじゃない?」

 

「そうみたいだな」

 

 遠くにある無人島を見ようと帆波が身を乗り出す。角度的に俺の方に体を寄せてきた。やわらかっ。

 

「ん〜……あんまりまだ見えないね」

 

「この距離だからね。すぐに見えるようになるだろ」

 

 俺はもう見えてるんですけどね。島とビッグサンダーマウンテンが。こらっ、そんなに体を寄せるんじゃありません。そういうのはパイセンに……あの人じゃ喜ばないな、うん。

 

 ふと、帆波の表情が視界に入った。無人島が楽しみであり、景色を楽しんでいるようであり、そして不安な顔だ。

 

「どうした?」

 

「ん〜……どんな試験なのかなぁ、って」

 

 流石はリーダー。気づいてるな。

 

「無人島だし……サバイバルとかかな?」

 

 大正解です。

 

「まあそこらだろうな」

 

「……うん」

 

 島が近づいてくる。かなり大きいから、他クラスと場所取りで争うなんてことにはならないだろう。流石は国と直結してる高校なだけはある。

 無人島の方を見ていると、帆波がこちらをじっと見ていたのでそちらへと顔を向ける。「どうした?」と声をかけると、彼女は無邪気な笑顔を見せてきた。

 

「頑張ろうねっ!」

 

 彼女の笑顔は、太陽の光に照らされたことも相まって、キラキラと輝いて見えた。

 誰かっ、写真撮って!!!盗撮は潰す。

 

 今回の特別試験では単独行動はしないし、助言も極力しない。指示されたらちゃんと動くけど。だから、頑張ってくれよ帆波。お前のやりたいようにすればいい。道は俺が作るから。

 

 笑顔が輝いていた帆波は、改めて俺の方を見ると何故か固まった。時間が経つにつれてみるみると頬が紅潮していき、今では真っ赤になっている。そんな暑い?

 

「大丈夫か?」

 

「ぇ、ぁ、あっ、まま、またね!?」

 

 突然慌てだし、挙動がおかしくなった帆波は早口をたてて船内に繋がる扉まで走っていった。えぇ、なんでぇ?行動パターンが全くわからん。走っていく帆波の後ろ姿を見て、軽く手を振った。

 

「……からだ、すごっ……」

 

 帆波さんや、呟き声でも余裕で俺は聞こえるんですよ。そういえば俺今上裸だったわ。イヤン。ていうか水泳の時に見てるだろ。何を今更。とりあえず今のやり取りを見ていた周りからの視線……主に男子……の視線が痛いため俺も部屋に戻った。パイセンもこっち見んなて。あんたの視線は種類違うんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ではこれより────本年度最初の特別試験を行いたいと思う」

 

 全クラスが無人島に上陸し、前に立ったスマート真嶋先生からそんな宣告がされた。まあ一名参加出来ないお姫様がいるが、そいつも間接的に関わっているし参加しているようなもんだろ。葛城派閥崩壊のお知らせです。

 

 それはそうと、今の真嶋先生からの一言で、全クラスから大なり小なり反応が見られた。やはり普通のバカンスだと思っていた生徒が多かった。特にD。うちのクラスも、事前に試験があるだろうという推測を伝えてなかったため、一部で困惑の声が上がる。

 顔を動かさずに各クラスの様子を観察すれば、Aクラスは橋本達坂柳派閥であろう生徒はあまり動揺していない。Cは相変わらず龍園が楽しそうに笑っていた。Dはパイセンの表情がピクリとも動かないから怖い。他は阿鼻叫喚だ。池くん騒ぎすぎよ。

 

 そんな生徒の困惑を横に置き、真嶋先生は淡々と試験の内容に触れていく。一週間頑張って生きなさい、若人たちよ。という内容だ。その内容を強調するように、池くんが叫び声をあげていた。前から聞こえてくる波の音に負けないほどの声量だ。それを冷静に、冷酷に宥める茶柱先生。

 先生方も今回はいつものようなスーツや私服ではなくジャージ姿だ。うちの担任と茶柱先生は現役の学生と言ってもいいほどに若く見える。これで三十路は反則ですいません睨まないでください星之宮先生。

 なんで睨むんですか。むしろ褒めてるでしょうに。三十近いババすいません殺気収めてください帳簿を握りつぶさないでぇ!

 

 いつもクールな茶柱先生が軽く引くほどの怖い笑顔がこちらに向けられた。女の勘は馬鹿にできないな。流石は歳を重ねてるだけはあry

 

 そこからの記憶はあまりないが、この無人島試験のルールはだいたいこんな感じ。

 

 1.各クラスにこの試験専用のポイントが300支給される。このポイントは0を下回ることは無い。

 

 2.そのポイントで水や食料、テントなどが購入出来る。

 

 3.リタイアは一人につきマイナス30ポイント、環境汚染はマイナス20ポイント、点呼不在は一人につきマイナス5ポイント。

 

 4.スポットを占領すれば1ポイント。

 

 5,残ったポイントは試験後クラスポイントに反映されるから頑張って生き残れ。

 

 まあいい感じに過ごしてたらある程度のポイントは貰えるようにはなってる。笑顔で何やらブツブツ零しながら俺の首を片手で鷲掴みにする星之宮先生にどこかへ連れていかれながら今回のルールについて考える。

 一見今回の試験で重要なのは『どれだけポイントを残すことが出来るか』だ。普通ならそう考える。しかし重要なのは2点。

 

『他クラスのリーダーを当てる』、そして『正当な理由無くリーダーを変更することは出来ない』ということだ。

 

 まずは前者。最終日に他クラスのリーダーを当てる時間が設けられ、その時に他クラスのリーダーを的中させることが出来れば1クラスにつき50ポイント貰え、逆に当てられれば50マイナスとなる。また、当てられたクラスは今までのボーナスポイントが全て無効となり、リーダーを外した場合はマイナス50ポイントとなる。これは非常に大きい。

 仮に他クラスを全て当て、逆に自クラスは当てられなかったらプラスで150ポイント。これ程のポイントが得られる試験はそうそう無い。

 そうなってきた時に大切になるのは後者だ。

 

 七日間ボロを出さずにリーダーを務めるのはきつい。だからこその学校側が用意した抜け穴。頑張って風邪にでもなれば最終日直前にリーダーを変更することが出来、他クラスの指名を外すことが出来る。

 

 分かればシンプルなものだが、突然のサバイバルで混乱している状況で導き出すのは容易ではない。それを難なく閃くのが我らが最高傑作様である。坂柳も気づいてんじゃね?知らんけど。

 これに帆波か隆二が気づけるかどうかだな。無理か。隆二がワンチャンって感じかな。俺からはヒントは出さないっすよ。

 

 ていうかどこまで引きづられればいいんだ?Bクラスどこに集まってんの?

 

「先生、どこまで行くんですか?ていうか首しんどい」

 

「私まだ20代私まだ20代私まだ20代……」

 

 こっわっ。呪われてますやん。悪霊退散ッ!!

 魔法の言葉でも言えば調子取り戻すかなぁ……。

 

「大丈夫ですよ先生。十分若く見えますから」

 

「若作りって言いたいのかなぁ……?」

 

 いだだだだだだだッ。いやいや褒めてるんですけどっ。

 ハイライト戻ってっ!お願い!感情が仕事してないって!!

 

「いや、でも実際先生めっちゃ若いっすよ」

 

 これは本心。ところどころ痛いところはあるけど、見た目で言えばもっと若く見られてもおかしくない。流石にセーラー服を着ていたら鼻で大爆笑するが。

 

 俺の言葉(本心)を聞いた先生は今まで止めなかった歩みをピタリと止め、さらに首を鷲掴みにする握りをゆるめる。お、許してくださるのか!

 

「んもうっ!そんなに褒めても何も出ないんだからっ!」

 

 満面の笑みを浮かべ、片手を頬に当てて喜びを露わにする先生はさらに握る手に力を込めた。締まってるって!!そこは解放しろよっ!

「あ!サエちゃんだっ!」と言い走って向かう。一歩踏む度に俺の首を掴む手が上下し極めてくる。

 

 何やら言い争っている声が聞こえる方へと近づいていく。あー、そういえば今頃Dはトイレで男女が争ってるくらいか。トイレくらい買ってやれよ。ストレス凄いんだぞ?

 

「やっほ〜」

 

 そんなバチバチに争ってる剣呑な空気の中には似合わない気の抜けた声が上から聞こえた。その声で周りの注目がこちらに向いて来ているのを感じているが、俺は首根っこを掴まれているため上を向けない。恥ずかしい。

 

「……何してる」

 

「何って、スキンシップ?どうしてるかなーって思ったから」

 

「じゃあ俺のこれもスキンシップなんですかね?」

 

「あっ、ごめんねぇ〜。なんかイラッてしたから!」

 

「こわっ。めっちゃ締まってるんで離してもらってもいいですかね」

 

「そんなに強かった?」

 

「正直驚きましたよ。これが俗に言う年の功ってやヅッッ!?」

 

「本当に何をやってるんだ……」

 

 今まででいちばん強く握りしめられ、そのまま地面へと放り投げられた。これ体罰じゃね?まあ半分は俺が悪いんですけどね。

 茶柱先生からドン引きしている声が聞こえた。いやまじですいません。変なの見せました。Dの面々もめっちゃ引いてるし。顔上げたくないよっ。

 

「……大丈夫か?」

 

「ん?ああ、ありがと……」

 

 周りがドン引きしている中で、一人がこちらに近づき手を差しのべてくれた。神様かな?と思っていたらその声はめっちゃ聞いたことのある声で。

 差し出された手を掴んでから顔を上げるとそこにはセンター分けのイケメンが……。

 

 パイセンやないかい。

 

 うおおおおおおおっ!!生綾小路ッッ!!めっちゃ嬉しいけどこんなファーストコンタクト嫌なんだけど。

 てか優しっ!こんな状況で手を差し伸べてくれるとか神かよ!その品定めするような目線がなければ崇拝してたわ。

 

「自己紹介がまだだったな。オレは綾小路清隆だ。よろしく」

 

「俺は水野悠。よろしく、綾小路」

 

 呼び捨てにしてしまった……でもパイセンって綾小路くんってキャラじゃないし。他クラスから急に名前で呼ばれたらなんか仲良いみたいになるし。むずっ。

 服に付いた砂を手で払いながらパイセンと話そうとすると横からキリッとした女子が入ってきた。

 

「敵情視察かしら?」

 

「え?全然違うけど?」

 

「じゃあどうしてここに来たの?Bクラスは向こうよ」

 

「俺が聞きたいまであるな。気づいたら首根っこ掴まれて連行されてた」

 

「何をやったんだお前は……」

 

 パイセンが珍しく純粋に引いていた。いやー、武術は鍛えてたつもりなんだけどね。結局切れた女がいちばん強い。

 しかもさっきから堀北が俺の事睨んでくる。そんなに俺の事嫌い?敵クラスだからって言うのとお兄様の格上って言うのが混ざっているのか?

 

「堀北。お前凄い顔だぞ」

 

「喧嘩を売ってるのかしら綾小路くん。彼はBクラスの、それもリーダー格なのよ?警戒しない理由がないわ」

 

 え?俺そんな立ち位置で定着してんの?隠れた参謀とかじゃないの?

 

「うちのリーダーは一之瀬だけど?」

 

「あなたはその一之瀬さんの右腕、相棒でしょ?付き合ってるって噂もあるし」

 

「付き合ってないわ」

 

 どっから流れてんだよその情報。変な勘ぐりされるからやめてくれ。

 

 それはそうと、と俺はじっと堀北の方を見る。見られてる本人は不快な表情を隠さない。いや隠せよ。

 

「何かしら?」

 

「いや……やっぱ会長に似てるなー、と思って」

 

「っ、あなたやっぱり……」

 

 俺の言葉に合点がいったという顔でさらに警戒心をむき出しにする。猫かよ。俺の顔見てなかったのか?それとも確信には至っていなかっただけか。

 

「堀北の兄を知ってるのか?」

 

 パイセンからそんな質問が飛んできた。探ってるなーこの人。

 

「そりゃもちろん。生徒会長だし。大会でも何度も当たってるし」

 

「そういえば、水野は空手で全国優勝しているらしいな」

 

「まあね」

 

「凄いな。オレは武道は経験がないからあまり分からないが」

 

 嘘つけ。軍人とかバッサバッサ倒してるんでしょどうせ。埒外の英才教育受けてんでしょうがあなた。

 

「どうして堀北の兄のことを会長と呼んでいるんだ?」

 

 先程より鋭い……まあずっと鋭いが、さらに探るような視線を向けてパイセンが聞いてくる。

 ん〜どうするか。とぼけるのは別に容易だが、どうせ試験が終われば分かる事だし。それに俺は今回は何もしないと決めたから変に警戒された方がいいまである。

 俺はなんでもないように軽く口にした。

 

「俺、生徒会入ったんだよ」

 

「なっ────」

 

 一気に警戒心が強くなった。同時に、信じられないという感情も見える。生徒会に入るだけでこんなに警戒されるのはこの学校くらいだろうな。生きにくい。

 パイセンからも僅かな驚き、そして納得したという気持ちが見える。納得?なにかあったのか?

 

「……どうやって────」

 

「あっ。綾小路くんじゃない。久しぶり〜」

 

 何かを聞こうとした堀北の声を遮り入ってきたのは気の抜けた緩い声。うちの担任に手を振られたパイセンは軽い会釈で応える。うわ、面倒くさそう。ズカズカと間に入り込みパイセンの側へと近づいていく。

 

「夏は恋の季節。好きな子に告白するなら、こういう綺麗な海の前が効果的かもよ〜?水野くんもねっ!」

 

「海は綺麗でも、クラスにそんな余裕ないんで」

 

「先生。自分にそんなチャンスがなかったからって生徒に強要するのはどうかと────」

 

「あははっ、面白いこと言うね〜。じゃあまたね綾小路くんっ」

 

「学習しろよ……」

 

 目の前が、真っ暗になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という訳で、リーダーを頼んだぞ、水野」

 

 どういう訳?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




龍園翔
 
常に高みの見物系男子。オリ主のことは雑誌などで見かけたこともあり、要注意人物。ククク、おめぇら、あいつには絶対に手を出すなよ。一之瀬を戦略で崩そうとするも、陰で暗躍するオリ主にことごとく阻止される。おいおい、楽しくなってきたz


山田アルベルト
 
SP系男子。aitu,tuyoi!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。