PSYCHO-PASS Sinners of the System[case.4 再会の白] ーReunited with White 作:鈴夢
健全な会社 健全な薬品
・・・・・・・・・・
2118年 2月1日 午前10時
港区 トランスペアレント本社前。
常守、霜月、六合塚、雛河の姿があった。
霜月は、休んでいた分の資料に一通り目を通し、
本社ビルの入口にて、担当者が現れるのを待っていた。
「気を遣って非番だからと一切連絡がないと思っていたら
まさかこんな事になっていたなんて本当にビックリです」
休み明けに出勤後、まさか直ぐに大企業への捜査……
しかもデータの中には都知事の名前や、薬物情報
目を通すのもやっとだった。
「ごめんね、美佳ちゃん…
非番明けに激務を…」
「別に大したことないんで大丈夫ですけど…
にしても、この報告書が全て本当ならかなりマズイですよね
トランスペアレント社の薬品を使ったことがない人なんてこの日本に絶対いないですし」
「監視官がいつも口にしてるサプリメントも
確かトランスペアレント製ですよね」
霜月がいつもポケットに入れている、
まるでお菓子のような見た目のケース。
中身はサプリメント、まるでラムネ菓子のようにボリボリと食べている姿は全員が見ていた。
「……服用し過ぎ…です…」
「激務に耐えるためにも服用しないといけないの
…って…あの人たち…」
本社ビルの入口の立派なガラス扉が開く。
白衣に身を包んだ男性と女性が姿を表せば
霜月達は話すのをやめ、2人を見据える。
「すみません、会議が少し長引いてしまって
お待たせしてしまいましたね」
清潔感があり薬品会社の管理者、
という言葉がまさにピッタリな容姿の男性が申し訳なさそうな表情を浮かべ4人へと近づく。
その後ろに立っていたのは息を飲むほど美しい女性。
ID写真より遥かにはっきりとした顔立ちで、微かに浮かべる笑みに落ちない男はいないだろう。
「いえ、私達もたった今到着したところですから
こちらこそ急な捜査に御協力頂けてありがとうございます」
常守は深々と頭を下げて礼を述べる。
そして警察手帳を掲げれば自己紹介を始める。
「公安局刑事課 監視官の常守朱です」
「同じく監視官の霜月美佳です」
常守と霜月の背後にはそれぞれ六合塚と雛河が、
2人も頭を下げると常守が口を開く。
「本日は執行官2名も同行させて頂きます
もし不都合があれば…」
「いえいえ、そんな事ありませんよ?
私達も自己紹介を…」
男性職員も社内のIDを4人に掲げると
穏やかな笑みを浮かべる。
「薬品開発部門及び薬品管理の統括をしております
一宮祥太郎です」
「私は広報の最高責任者
舟橋 明美と申します
…公安局の刑事さんとお話できるなんてとても嬉しいです」
2人とも第一印象は特に問題なく
むしろとても好印象だった。
まさに、経歴通りの肩書きが相応しい人達。
「ささ!外は冷えますし早速中へどうぞ
前もって調査をされたい内容は確認済ですので
どうぞ何でも言ってください」
「本当に突然の捜査協力依頼にも関わらず
ご親切にありがとうございます」
常守と一宮が先頭を歩き、何やら色々と話を進めているようだった。
トランスペアレント本社…メインエントランスは異常に広く
天井は一面ガラス張り、
白衣をまとった職員たちも活き活きとしている様子で
まさに日本を代表する大企業だった
「天井、すごいですね全部ガラスで…」
霜月が隣を歩く舟橋に声をかけると
彼女は柔らかな笑みを向ける。
「ホログラムも使わず全て本物なんです」
「すごい技術ですね…、
それに職員一人一人の胸についてる名札
あれって…色相…?」
すれ違う職員全員、首から提げているID証のようなものに色がついていた。
「はい
ここの職員全員、常に色相があのように表示されるんです
色相状態によっては勤務ができなくなったり、特定の部屋に立ち入ることが出来なかったり」
「すごい管理体制…」
「私たちは国民の皆さんの命を守るための薬品を扱っていますから
造り手側の色相を第一に考えていますよ」
「まさにホワイト企業の代表、ね…」
あまりにも整いすぎている環境に、驚きを隠せない。
後ろを着いて歩く六合塚と雛河もかなり衝撃を受けているようだった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
4人は各施設へと案内される。
薬品の企画室から製造工場まで、ありとあらゆる施設を確認していく。
どこも完璧な管理体制で、怪しい部分は見つからない。
「一宮さん、質問してもよろしいでしょうか?」
「はい、答えられることでしたら何でも」
「…製造された薬品がPTP包装されることなく
どこかへ届けられることはありますか?」
大量に無造作に袋に入れられていた薬品を思い出す霜月。
わざわざプラスチックの包装から1錠ずつ出す事も可能だが
さすがにあの量の薬品をわざわざ出す必要性もない…
だとしたら、製造過程で包装されず、どこかに輸送している可能性しか無かった。
「それは有り得ません、PTP包装の目的は
薬が大気に触れるのを防ぐことで吸湿、紫外線などによる変質を防ぎ、清潔な状態を保つこと、破損を防ぐ効果もありますから」
「薬品の製造工場はこちらの本社直結の工場のみですか?」
「はい、その通りです
この敷地内で全て完結できるようになっていますからね」
確かに、製造工程も確認したが
全て包装されているのも確認済。
六合塚が建造物のデータを密かに照らし合わせながら確認しているが
今のところ、怪しげな場所は見つかっていない。
「他に、なにかご質問は?」
一宮の言葉に雛河がそっと手を挙げる。
「どうぞ、雛河執行官、お答えしますよ?」
ぶっ飛んだ質問をしないかヒヤヒヤしつつも
霜月は雛河に視線を送る。
「この会社…、なにか脳神経に直接作用するような
そんな薬を開発してたりしますか…?」
「脳神経薬なら数種類、既に世に出回っていますが…」
「もっと強力な、抗うつ薬よりもっと神経を麻痺させるような…
過激で強りょ」
「雛河執行官!
…すみません、彼は元々ドラッグバイヤーをしてた者で…
薬品に人一倍興味があって…」
霜月が雛河の腕を掴み、なんとか話を止めさせる。
恐らくあの赤い薬について情報を掴もうと
ついつい興奮してしまったのか、あと少しで
かなりの不信感を抱かれてしまうところだった。
「そうだったんですね!
それなら気になって仕方ないはずですよね」
一宮はとくに怪しんでいる様子は無く
むしろ嬉しそうに会話を弾ませていた。
しかし彼はそれ以上"脳神経に作用する過激な薬"について何も言葉を発さなかった。
「では次が最後ですね…
超巨大物流倉庫にご案内します
ここから少し距離があるので車で移動しましょう」
「もう車は中庭に待たせておりますので、皆さんこちらへ」
テキパキと、まるで指摘するような所もなく
全て隙なく準備されているとしか思えなかった。
「…六合塚さん、準備は」
「大丈夫です
霜月監視官、雛河君にも既に渡しています」
超小型発信機
4人はそれぞれ数十個ずつ懐へと隠し持っていた。
「では皆さん、どうぞこちらの車へ」
舟橋が車内へと4人を誘導する
ここからが一番の勝負処だった
そして6人を乗せた車両は物流倉庫へと向かう
・・・・・・・・・・・・・