PSYCHO-PASS Sinners of the System[case.4 再会の白] ーReunited with White 作:鈴夢
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歩き続けて数時間、辺りは真っ暗に。
真っ白な地面が月明かりに照らされてキラキラと光っていた。
「やっと…着いた……」
物々しい雰囲気を醸し出す大昔からの収容所。
それはかなり巨大で、頑丈なコンクリート製の建物。
四方八方を鉄格子で囲まれ、恐らくは電力が流れているであろう有刺鉄線が巻き付けられていた。
監視塔らしきものや、脱走者を逃がさないように。
そこら中に電灯が照らされており、
侵入するのにも一苦労しそうだった。
脱走を試みたのだろうか、
有刺鉄線の柵には死体がぶら下がっており悪臭を放つ。
舞白は木陰に身を隠し
侵入準備を始める。
できるだけ身軽に、上着やマスクを脱ぎ捨てるも不思議と寒さを感じない。
黒の無地の長袖のTシャツに、防弾ベスト、
黒の細身のパンツに軍用ブーツ、
背にはいつものスナイパーライフルにスコープ
小銃やナイフを懐に入れると、ブーツの紐を結い直す。
小さなウエストポーチには弾を
そして気休め程度に鎮痛剤の入った注射器を入れておく。
「ふぅーー……」
深呼吸をすると冷気が体に一気に入り込む。
監視塔から辺りを警戒する監視員、照らされる照明。
巡回している傭兵の動きのタイミングを上手く計算し、
白い息を吐ききったと同時に鉄格子に向けて駆け出す。
舞白の背丈の倍以上はある鉄格子をサクッと登り。
電流が流れる有刺鉄線を上手く交わすと、難なく侵入することに成功。
すぐに建物内の木陰に身を隠せば
スナイパーライフルを握り締める。
「……傭兵の数、結構いる割には警備はガバガバ
雑魚は大したことなさそうね」
スコープで敵の数を確認する
同時に内部に入れそうな場所を探し始めていた。
そしてその瞬間、段々と大きく、何かがこちらに向かっている音
同時に強く風が吹き荒れ上空を見上げる。
「何あれ、軍用の航空機…?」
舞白の頭上を通りすぎる巨大な軍用機。
さらに奥の敷地内へと着陸するのか
続々と傭兵達が集まり始める。
残念ながら何が輸送されたのかは見ることが出来ないが
複数の傭兵達が軍用機へと向かったおかげで
周辺の警備は皆無状態。
侵入のチャンスだと判断すると
身を隠しながら収容所へと近づく。
正面突破は現実的ではない。
他に入口がないか探していると、
地下へと繋がるような通気口を見つける。
それに、そこそこ大きくギリギリ人が入れそうなサイズ。
舞白は再びスナイパーライフルを背に戻せば人が戻る前に
侵入することに成功した。
まずはここのボスが誰なのか、
収容されている人々から、話をなんとか聞き出す必要もある。
そして、混乱を起こし一気に人々を逃がす。
目標は明け方までに
寒さも落ち着けば、人々は逃亡もしやすくなるだろう。
「あとは、捜さないと……
生きているか、死んでいるか分からないけど……」
テソンやタッカ、
そしてここに向かうきっかけとなった友人の家族を
消息を確かめる、それが元の目的だ。
通気口を進んでいくと人の気配を感じるように。
「……ッ……何、この臭い……」
そして進むたびに濃くなる異臭。
血なのか、排泄物なのか、死臭なのか、
全てか混じったような異様な臭い。
思わず顔を顰め、手で口と鼻を覆う
紛争地でも嗅いできた臭いだが、少し違っていた。
ズリズリとほふく前進をしながら更に進むと
何やら騒ぎ声が聞こえてきた。
「お願い!やめて……ッ……やめてえええええっ!!」
女性が何かを必死に止めるようにと訴える声。
通気口からその部屋の内部が微かに見えると、
格子の隙間から様子を伺う。
女性は椅子に縛り付けられ
上半身は身ぐるみ剥がされ剥き出しに。
周りには傭兵が4人、
じゅううううう……と何かが熱を帯びた音が聞こえてくる。
「この焼印を刻まれた者は一生、ここから出られない
例え出られたとしても…この印を見る度に
自分が奴隷だと思い出させてくれるさ」
「お願い!お願い……いやっ……」
暴れる女性を抑え込む男2人
そしてその瞬間、焼印が背中に押されると
鼓膜が破れそうなほど鋭い悲鳴が響き渡る。
「ギャアアアアアァァァァァァァァアアアアアッ!!!!」
同時に肉が焼ける音、臭い
ハッキリと顔は見えないものの
叫び声からどのような形相なのか想像がつく。
そして暫く悶える女性、
ガクッと体が動かなくなれば気絶したようだった。
「牢に戻して薬でも飲ませとけ、
ちょうどさっき補給分が届いたからな
……ほら、次連れてこい」
引き摺られながらその女性は部屋から出ていくと、また違う人物が部屋へと入る
恐らくここはあの焼印の焼き場だろう
舞白は険しい表情を浮かべ更に通気口を進んで行く。
「……ここからなら出られそう」
恐らく廊下らしき場所へ出る出口にたどり着けば
物音や人影を確認し、そっと通気口から抜け出す。
夜遅いことや地下だからなのか、関係しているのかは不明だが
そこまで人影は見らない。
当たりを警戒しつつ、時たま物陰に隠れながら
収容所内を散策して行く。
「さっきのこの臭い……、この部屋から……?」
通気口で途中に嗅いだとてつもない臭い
とある部屋から臭ってくるのが分かると
そっと扉に手をかける。
銃を握り、ゆっくり扉を開けると
そこにはとんでもない光景が広がっていた。
「……ッ……酷い……これ……」
血塗れた床、ハエや蛆が目につく。
袋を被せられた人間が
無数に並んだ調理台のようなものの上に並べられていた。
部屋に傭兵が居ないと分かれば扉を閉めて
室内を探索する。
パッと袋を捲れば内臓を全て抜かれた死体、そして中には首から上が無い死体など。
「…体の部位を抜かれた死体……
そういえば、縫い跡があったって……」
タッカの言葉を思い出す。
以前脱走したと思われる人物の体について、
縫い跡、そして生殖器が無くなっていたとか。
奥へ奥へと進むと袋を被っていない人間が。
しかも、胸が動いていた、生きている人間がいる。
ゆっくりその人が乗っている台へと近づき確認すると
腹部あたりに縫い跡が、
上半身のみ裸でまだ若そうな男性だった。
「……ねぇ、……ねぇ?聞こえる……?
……聞こえ……」
刹那、パッと目を見開き舞白の声に反応する男、
パクパクと口を動かすも思うように声が出ないのか
恐怖で体が突如震えだしていた。
「あ……っ……ぁう……あ!」
「大丈夫!落ち着いて!
……私はアイツらの仲間じゃない……ね?
…大丈夫だから……」
ぶるぶると体を震わせる男、
舞白がギュッと手を握ると徐々に安心したのか落ち着いていく。
「……これ、縫われた跡
何をされたの?」
「っ……臓器……取られた
さっき、ここで……」
やけに雑な縫い跡
恐らく麻酔も何もされないまま
そのまま取られたとしか思えない、
生きているのが奇跡だった。
「仲間が!……上に……
アンタ、助けに来たのか!?
他に誰か!」
「落ち着いて!しーーっ……」
助けが来たと思った男は興奮し声を荒あげる
外に聞こえるとマズいと思い、必死に落ち着かせる。
「俺の兄が……移送される、日本に
日本に移送されるって!
お願い助けて!……父も帰ってこないんだ……
……ッ頼む!頼む!!」
舞白の服の襟を掴むと必死に懇願する男。
そしてなにか気配を察知すれば、
舞白は手を振り払い男の腕を掴む。
「誰か来る……お願い、落ち着いて……
後で話をまた聞くから!」
すぐさま近くの棚の裏に身を隠し
入ってきた扉に目を向ける。