PSYCHO-PASS Sinners of the System[case.4 再会の白] ーReunited with White 作:鈴夢
「煩いと思えば……
なんだ、お前死ななかったんだな
運が良い……」
1人の傭兵が室内にスタスタと足を踏み入れると
一直線に青年の元へと歩み寄る。
「……っ……」
酷く脅えている様子の青年。
腹部を押さえ、入ってきた男へと視線を向ける。
「言われた通りアンタらに貢献した
兄を助けてくれるんだよな?な?」
どうやら青年は
臓器と引き換えに、兄の移送を止めるという取引をしたのだろうか。
位置からして恐らく腎臓を抜かれているはず。
実際ひとつ抜かれたところで死ぬことは無い。
舞白は息を潜めて様子を伺う。
まだこの建物の構造も、一体傭兵が何人いるのかも不明
安易に動く訳には行かなかった。
「あぁ……そうだったなぁ……」
男は不気味に笑いながら
弄ぶように青年を見下ろす。
「そうだ、良いことを思いついた
お前も兄と一緒に移送してやろう」
「本当!?
……だったら、俺もっ……」
青年が喜びを浮かべたのも束の間
男の持っていたナイフが青年の首に突き刺さる。
ドバっと吹き出す血液
青年は声を上げる隙もなく、ダラりと首を落とせば即死だったようだ。
「お前の臓器と一緒に
送ってやろう、本望だろう?」
((……狂ってる……
躊躇せず一突きで……))
その男はぐちゃぐちゃと音を鳴らしながら
青年の体を開いていく。
表情をひとつも変えず、無心でナイフを突き刺していく男は
まさにただのスプラッター、イカれた奴だった。
「なーんて、お前の他の臓器なんて要らねぇんだよ
腎臓だけで十分だ……
これでまた金が手に入るんだからな……」
暫く青年の体を弄んだ後、飽きた様子でナイフを床に投げ捨てると男は意味深なことを口にしていた。
"金が手に入る"
そして青年の口からは
日本に移送される、とか
花城が言っていた日本との繋がり
恐らくこの事だろうと、そして本当の話だった。
詳しく青年から話を聞くことが出来ず、むしろ自分のせいで見殺しにしてしまった
舞白は悔しそうに表情を歪め、息を潜め続けた。
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男が部屋を出ていくと再び部屋を捜索。
この収容所の、どんな事でもいい
何かないかひたすらに物色する。
そして目をつけたのは、室内の隅に何台も置かれている
冷凍庫のような大きな箱。
中を開けると、この古く汚れた収容所には似つかわしくない近代的な箱が所狭しと収められていた。
ステンレス、銀製、触っただけでは分からないが
やけに手入れもされている様子で
管理されているのが分かる。
中から1つ箱を取り出せば
ロックを解除し、蓋を開ける。
「取り出した臓器を冷凍保存、
まさかこれであの話が本当なら
……奴らは日本にこれを輸送してる」
中には特殊な容器に入れられた臓器。
ひとつひとつの箱にタイマーのような物も取り付けられており、
間違いなく、ここの技術で作られたものでは無いと分かる。
そして箱の隅に小さく刻まれたマーク
どこかで目にしたことがある、と
記憶を引っ張り出し思い出そうとする。
「……確か、トランス……ナントカ製薬会社
テレビで見たこともある気がする……」
傍らには無造作に紙媒体の書類も置かれており
目を通す。
全て中国語で書かれているものだった。
その書類にも同じマークが隅に印字されており、
関連性があるのは間違いなかった。
「提供臓器……、必要数
……実験……?」
羅列されている単語に眉を顰める。
更に詳しく見ようとペラペラと書類を捲るも、
部屋の外がやけに騒がしくなると、
書類を元の位置に戻し、再び物陰にかくれながら
外の様子を伺う。
入口の扉に耳を当て、
何やら部屋の外で会話をしている傭兵達に耳をすませる。
「輸送機から日本人の女が現れたって」
「で?そいつは?」
「あぁ、酷く暴れたらしいが
すぐとっ捕まえて2階の牢に放り込んでる」
「何で輸送機に日本人が?
今までこんなこと無かっただろう?」
「噂じゃあ、日本のスパイだとか
日本の警察のマークが付いた服を着てるらしいぜ
とにかく拷問して吐かせるって」
ここに侵入する前に上空を飛んでいた軍用機
あれはどうやら日本からのものらしい。
"警察" "日本人の女"
飛び交う予想だにしていなかったワード。
少なくとも、その女性がこれから危険な目に合うと分かれば
じっとしていられなかった。
((……さて、2階までどうやって行くか……))
男達が立ち去るのを確認すると、扉から顔を出しキョロキョロと見回す。
ただでさえこの髪色のせいで嫌でも目立ってしまう。
しかし、ここで立ち止まる訳にもいかないと、
舞白は部屋から飛び出せば、足早に施設を駆け巡るのであった。
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