PSYCHO-PASS Sinners of the System[case.4 再会の白] ーReunited with White   作:鈴夢

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強情な女

 

 

・・・・・・・・・・・

 

 

 

「……っクソ!!

通信も何も出来ないなんて…」

 

離陸して数時間、

機体の中をウロウロと歩き回り、どこかで電波を拾えないか試す霜月。

 

しかしデバイスは全く役に立たず

使い物にならない。

どうやら、この航空機自体も遠隔操作なのか

そもそも何か組み込まれているのか、緊急停止もドアを開けることさえ

何も出来ない。

 

下手をして墜落させる訳にもいかず

貨物室などを捜索しながら

航空機が目的地にたどり着くのを待つしかない。

 

 

「外は真っ暗だし、今どこを飛んでるのかも分からない……」

 

行き先も目的も不明、

さすがに霜月も不安に駆られていた。

 

どうにか、仲間たちが行き先を突き止めて

助けに来てくれないかと、心の底から願っていた。

 

「手元にあるのは使えないデバイスとドミネーター…

…もし行先が国外だったら一貫の終わり…」

 

ドミネーターを握りじっと見つめる

通信外のエリアに行けばもちろん作動しない。

 

「とりあえず着陸するのを待つしかないわね

どこかで体を休めよう…」

 

慌てても仕方がないと冷静になれば

貨物室の物陰に座り、ゆっくり瞼を閉じる。

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

 

 

「「全く……美佳ちゃんったら

また無茶して……」」

 

霜月の腕を引くのは常守

困ったようにしゃがみこむ霜月に笑みを向ける。

 

「……あれ…、私……」

 

「「監視官、もう大丈夫ですよ」」

 

続いて六合塚も現れれば

霜月の表情が明るくなっていく。

 

 

「もしかして、来てくれたんですか?」

 

「「困った監視官だよ、あなたは

無茶ばかり

1人で突っ走ってないで俺達も頼れ」」

 

「……宜野座さん…… 」

 

 

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

 

うとうとと頭を揺らす。

しかし、次の瞬間一気に降下する感覚が体に襲いかかると

霜月は目を見開き慌てて立ち上がる。

 

 

 

 

 

 

「……なんて夢を見てるの私…

あの人たちが出てくるなんて……」

 

眉間を指で摘み顔を顰める。

何を夢見ているんだ、と自負していると

更に機体が揺れ出す。

 

もちろん、シートベルトも何もしていない霜月。

再びコックピットまで向かい、座席に掴みかかると

微かに地上の様子が見える。

 

 

東京の景色とは打って変わって真っ暗闇。

だがよく目を凝らして見てみると、ほんのひと区画だけ

ぼんやりと灯りが見える。

 

 

「どう見ても日本じゃない……

どこよここ……」

 

だんだんと地上に近づく

すると徐々に全容が明らかになっていく。

 

 

かなり巨大なコンクリートの施設。

その周りを柵で囲まれ、何やら監視塔のようなものも見受けられる。

 

 

「悪趣味な建物、

まるで大昔の収容所じゃない

…文献でしか見たことないけど……」

 

着陸体制に入る機体。

霜月は再び貨物室に向かうと、身を隠そうと

積み重なる薬品の入った箱の裏に息を潜める。

 

 

 

ふわっとした浮遊感を一瞬感じると

完全に機体が着陸。

それと同時に、今までビクともしなかった扉が自動的に開き

冷風が機内に入り込む。

 

ここは、雪国だろうか?

 

 

 

 

((……っ……寒い……))

 

上下スカートスーツのセットアップに公安局のジャケット

足元はストッキングにパンプスのみ、

さすがにこの寒さに耐えられるような服装ではない。

暫くすると、口から吐き出される息が白く染っていく。

 

そしてその直後、貨物室の後部の1番大きな扉が開けば

ぞろぞろと人の姿が現れる。

 

全員同じような身なりだった。

厚手の防寒着を羽織り、マスクのようなものを被っているため

目元しか確認はできない。

体の大きさからして全員男だろう

かなりガタイもよく、鍛えられているような印象。

 

そして目元の雰囲気を見る限り

アジア人である事はすぐに分かった。

 

((時間が分からないけどそんなに長くあの機体には乗っていないはず

……この寒さ、浅黒い肌の人の姿

恐らくはアジア圏なのは間違いない))

 

物陰からじっと様子を伺う。

彼らは何かを喋っているようだが、

聞き取れない言語に霜月は眉を顰める。

 

通信はできないにしても、オフラインで

翻訳機能は使えるはず、

こっそりとデバイスに触れ、翻訳機能をオンにすると

彼らの言語をこっそりと拾う。

 

「……中国語…

でも上手く翻訳できない、

何?この言語………」

 

中国語とウイグル語が飛び交っていた。

ウイグル語のみ、上手く翻訳機能が働かず

霜月も完全にお手上げだった。

 

 

「ほら!さっさと運び出せ!

運び出したら次はこの機体にすぐに

奴らを移送しなければならんからな!」

 

1人の男が大声で叫び散らす。

続々と箱が運び出されていくと、

霜月も身を潜める場所をなんとか探さなければと

キョロキョロと辺りを見回す。

 

((彼らが何者か分からない以上、接触するのは危険

……全員武装してるし……))

 

本物の銃を手にしている男達。

丸腰の霜月には危険すぎる、

 

 

最悪ここに残ることも可能だが

積み下ろされていく薬品を目の前に

霜月は逃げるという選択肢は既に無かった。

 

((逃がしてたまるかっての……))

 

隙を見てもう1つ開いている扉へ向かうと

外へ飛び出す。

 

上手く闇に溶け込む。

足場は悪いが、なんとか駆けることができた。

 

 

「とりあえず……この中に入らないと

凍死……」

 

 

刹那、目の前に飛び出す人の姿。

その姿はサーチライトのようなものに照らされると

同時に銃声が響き渡る。

 

 

霜月の2mほど先で

頭を撃ち抜かれた髪の長い少女が、地面の雪を真っ赤に染めあげ

倒れ込む。

 

 

「ひっ!!」

 

 

突然すぎる出来事に霜月は思わず尻もちを着く。

ジワジワと赤い血が、真っ白な雪に染み渡っていく光景。

 

 

完全にサーチライトの存在を忘れ、

霜月は倒れる少女の体に触れる。

 

 

「ちょっと!ちょっとあなた!」

 

死んでいるというのに無我夢中で声をかけ続ける。

ゴロンと体を仰向けにさせ顔を確認する。

 

恐らくは霜月と同じくらいか、もしくは若いか

美しい女性の顔が一気に青白くなっていくのだった。

 

 

「何なの……一体……、ここは……」

 

霜月の背後でカチャッと銃の弾が装填される音が鳴る。

 

 

ゆっくり振り向くと5人の傭兵が銃を霜月へと向けていた。

 

 

「なんだこの女、どこから来た?」

 

「この辺りの人間じゃない」

 

霜月は少女の体に手を添えたまま

男たちを睨みつける。

 

「…あなた達、何をしてるの!」

 

もちろん日本語は通じるはずもなく、

男たちは戸惑ったように、互いを見合っていた。

 

「日本語……?こいつ

日本人か?」

 

「もしかして、あの機体に乗っていたんじゃないのか?」

 

ざわつく男たち

目の前で人が死んでいるというのに

まるでいつもの事のように何も反応なければ

彼らにとっては当たり前の事のように感じていた。

 

「私は日本の公安局刑事課の人間よ!

……英語も通じないの!?」

 

胸元から警察手帳を取り出し掲げるも

男たちは無反応、

英語で話したものの通じていない。

 

 

 

「日本人の女なんてレア物だよ

さっさとボスに連れて行くぞ」

 

 

1人の男がそう呟くと

霜月の体を押さえつける男たち。

突然の事に霜月は体を捻じるも、

相手の力が強すぎて全く意味をなさなかった。

 

 

「ちょっと!離しなさいよ!!」

 

バタバタと暴れ、何とか逃げようとする

落ち着かない霜月に男たちもさらに力を込める。

 

「あなたたちこんな事して……政府が黙ってな、」

 

再び鳴らされる銃声。

ツーっと霜月の左頬から生暖かい血液が垂れると

ぽたぽたと、白い雪が積もる地面に落ちていく。

 

 

「…………っ……」

 

男たちを睨みつけるものの

容赦ない相手の行動に怯む霜月

 

「強情な女だ、こういう奴は体で分からせてやらないと」

 

翻訳機能で内容を少し聞き取れた霜月は

さらに相手を睨みつける。

 

 

刹那

男の蹴りが霜月の頭に命中すれば

その場にグラりと倒れると

視界が歪んでいく。

 

 

((……マズイ……))

 

衝撃で意識を完全に手放す。

 

そのまま霜月は引き摺られながら

収容所内へと運び込まれるのであった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

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