PSYCHO-PASS Sinners of the System[case.4 再会の白] ーReunited with White 作:鈴夢
・・・・・・・・・・
「ぐぁぁっ!!」
地下から1階へ繋がる階段を警備していた傭兵が静かに声を上げ、その場へ倒れ込む。
首の頚部をめがけて手刀を落とし、一時的ではあるが気を失わせる。
だらりと力をなくした男を物陰に隠すと、再び当たりを警戒し血なまぐさい地下から脱出する。
1階は地下に比べると傭兵の数も多い。
しかし同時に、死角が多くなんとか避けて通れそうだった。
岩で作られた壁を伝って天井へと移動し
上から様子を伺う。
「お願いだぁ……ここから出してくれ!」
「子供の意識がないんです!お願い!この子を病院に!」
「……ぅ……あぁ……ぁうあ……」
そして1階には牢に入れらた人間たちで溢れていた
数は数百人以上だろうか?
窮屈な複数の牢に無理やり押し込められ
環境も劣悪で最悪だった。
出してくれと叫ぶ男、ぐったりとした子供を抱き抱える母親。
口からだらりと涎を溢れさせ、焦点の合っていない青年。
死体や汚物が辺りに転がっている異常な状況。
今はまだ冬という季節だからいいものの
夏の暑い時期になればもっと酷い状況だろう。
監視役の武装した傭兵が複数人、
時たま牢に向けて発砲したり、罵声を浴びさせていた。
「この中から探し出すのはかなり困難かもね
…待っててね……」
友人の顔や、テソン達の顔を思い浮かべる
今はとにかく2階に囚われている日本人を救うのを第1優先に、
あわよくばその人物の協力を促せられれば
この施設をなんとかできるだろうと考える。
予想以上の規模に劣悪な収容所。
なかなか一筋縄ではいかなそうな状況に
舞白も久しぶりに苦戦を強いられる。
何にせよ今回はいつもと状況が違いすぎる。
下手な行動をすれば民間人が大量に命を落としかねない。
「……2階には……
あの階段から行けそうね」
2階へと続くであろう場所を見つけると
音をさせないように、慎重に天井の柱を伝っていく。
恐らく照明が照らされている下からは
天井は見えないはず。
恐る恐る進み続け、巡回している傭兵の動きのパターンの隙を見計らえば一気に2階へと駆け上がる。
まだ舞白が目にした収容所内はほんの一部に過ぎない。
恐らくは見た場所の4、5倍の広さを持っているこの収容所。
そんな場所から、囚われている日本人へたどり着けるのかが鬼門だった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
2階は1階に比べてそこまで劣悪な環境ではなかった。
恐らくは傭兵達の居住区域になっているようで
部屋をいくつか覗き込むと
眠りにつく傭兵の姿が目につく。
夜が明ければさらに傭兵の数は増えるだろう。
できるだけそれは避けたかった。
1部屋1部屋慎重に確認していき
時たま現れる傭兵を警戒しながら
順調に奥へと進んでいた。
そしてとある扉の前に
他の部屋と若干扉の形状が違い、扉の前には銃を手に持った
傭兵が1人立っていた。
((あの部屋だけ警備されてる
……明らかに怪しい……))
距離は約5m先
部屋の中に仲間がいるとすれば、騒がれると危険。
一瞬で仕留め、無人だった近くの部屋に隠し
どうにか中へ入ろうと、
頭の中で先の動きを想像すれば早速行動に出る。
パッと死角から姿を現せば、ナイフを相手の傭兵目掛けて投げ込むと
男は突然の事に驚き怯む。
舞白は一気に間合いまで駆け込み、
声をあげられる前に頚部へ力を加え気を失わせる。
焦らずゆっくりと男を引き摺り、
空き部屋へと投げ込むと、見張りの居なくなった部屋の扉を見据える。
警備をしなければならない理由、
何かがあるはずだった。
そっとドアノブに手をかけて
音をさせないように覗き込む。
人の気配を感じることはなく安全だと分かれば
サッと内部への侵入に成功。
扉にロックをかければ部屋を見渡す。
部屋の隅に仮設で作られたような牢。
硬い床に転ばされている人物を見つけるとゆっくりと近寄る。
「……このマーク、日本の公安局…
お兄ちゃんが監視官の時に着てたジャケット……」
顔は見えないが、その人物が着ていたジャケットに見覚えがあった。
宜野座も確か着ていた記憶。
ということは、公安局刑事課の監視官だと理解した。
((スカート…、女性だけど恐らく朱さんじゃない
少し骨格も違うし……))
牢の鍵をナイフのハンドル部分で力技で破壊し
難なく開けることに成功。
頑丈な作りのはずなのに、甘い鍵の管理で詰めが甘いと呟く。
監視官に近づき顔を確認する。
何となく見覚えのある顔に記憶を呼び起こす。
1つまとめに髪を結って、
…確かシーアンで朱さんと話しをしていた……
「……シモツキ……確かそんな名前だったような…」
うーん、と顬を指でトントントンと叩き
何とかその時の状況を思い出していた。
その瞬間、もぞもぞと霜月の体が動けば
舞白は傍らにしゃがみこむ。
「…っ……痛……
…あれ……ここ……どこ…っ……ひっ!誰よあんた!」
体を起こし、目を覚ましたと思えば、
舞白の姿を目にすると小さく悲鳴を上げ
体をビクつかせていた。
「私は敵じゃない、
…あなた、日本の公安局の人よね?」
そんな霜月をよそに、冷静に声をかける舞白。
霜月もやっと目が覚めてきたのか、相手の顔を目を細めながらじっと見つめる。
白髪にトレードマークのホクロ。
見覚えのある顔だと思えば、パッと目を見開く。
「狡噛……舞白?
……何でここに!?
もしかして、あんたがこの組織を……?」
「しーっ!声が大きい!
助けに来たんです、あなたを」
「どういうこと?
ちょっと……説明しなさい!」
霜月の手首に巻かれていた縄を解くと
迫り来る物音に気づいた舞白は、
しゃべり続ける霜月の口を手で塞ぐ。
「……まずい、バレてる
扉を突破される前にとりあえず逃げないと」
ドンドンと扉を激しく強打する音
出れるとするならば窓しかない。、
しかし、やっと警備をかいくぐってここまで入れた
それを無駄にはしたくなかった。
「ちょ、ちょっと!なんとかしなさいよ!」
「…………」
「ねぇ!聞いてるの?狡噛舞白!」
部屋の隅に通気口を見つけると、
中を確認し、入れると分かれば蓋をこじ開ける。
そして同時に、部屋の窓を置かれていた椅子で思いっきり割れば
そのまま椅子も外に放り投げる。
「まさか、窓から出るつもり?」
「そんな事しないですよ
……そんな薄着で外に出れば凍死するし
何より、また侵入する経路を探すのはゴメンだから」
窓はフェイク、
外に逃げたと思わせれば少しは時間稼ぎができるだろう。
「こっちの通気口にとりあえず入ってください
絶対どこかに繋がってる……」
「わ、私が先に入るの?」
扉が割れる音が聞こえる
もう時間が無い。
「ほら!さっさと入る!」
舞白は強引に霜月の腕を引くと、通気口に入るように促す。
仕方ないと諦めた霜月は中へと進むと、舞白も追うように通気口へ体を入れ込む。
蓋を閉めたと同時に、部屋に扉が完全破壊される音が聞こえ
まさに危機一髪だった。
「窓が割られてる!外に傭兵達を集めろ!」
思惑通り、外に逃げたと勘違いする傭兵達
その言葉を確認すると舞白はニヤリと笑みを浮かべた。
「とりあえず何とかなりましたよ
…適当に進んでいってください
様子を見て通気口から抜け出さないと」
「………」
「ほら、早く前に……」
「……とりあえず礼は言っておくわ
助けてくれたことに対してね」
ぶっきらぼうに話す霜月
冷静に物事を判断し、極限状態でも落ち着いていた舞白に
どことなく悔しさを滲み出す。
「霜月監視官ですよね
シーアンで、あなたを見たのを覚えてます」
「あんたはさっさと姿を消したの、忘れもしないわよ」
ほふく前進を始める霜月。
2人はなんとか敵の目を欺く事に成功し
協力関係へとなった。
・・・・・・・・・・・・・・・・