PSYCHO-PASS Sinners of the System[case.4 再会の白] ーReunited with White 作:鈴夢
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「どこにも見当たらないぞ、あの女……どうやって逃げた……」
傭兵達が忙しなく辺りを捜索する。
その中でやたら身長が高く、大柄な男。
顔には大きな切り傷の痕が痛々しく残っており、
その男を傭兵達は恐れているように感じる。
男は飛び降りたであろう窓の下から部屋を見上げていた。
「…………」
あの状況で、あの女が1人で脱出など不可能。
そして地下と2階の警備を行っていた傭兵が気を失った状態で
見つかっていた。
部屋に落ちていた真っ白な髪の毛。
男はタバコの煙を吐き出し眉を顰める。
「ご報告です
近隣に兵を向かわせ調査をしておりますが
未だにそれらしき人物の姿はなく……」
「お前ら、あの女が外に逃げたと思ってるのか?」
「へ?
……ですが、窓を突き破られて……」
刹那、男は懐から小銃を取り出すと
目の前の男の頭を躊躇なく撃ち抜く。
周りの傭兵たちがその様子を目撃すると、恐れるように
身を震わせていた。
「ふぅー……」
タバコの吸殻を死体に落とし
足で踏み付けると、無表情で空へと目線を向ける。
「侵入者はあの白い髪の女だ、
恐らくそいつがあの女とどこかに潜んでる
……まだこの中にな」
その男は昨夜、舞白と遭遇した男だった。
突然の奇襲に逃走したものの
舞白の姿はしっかり捉えていた。
「…いかがなさいますか、アブドル様」
身長は2mを越え、スキンヘッド姿
見た目だけで十分その男の恐ろしさが分かる。
男の名はアブドルラーマン、歳は40を越えていた。
中東では"慈悲深い神の奴隷"という意味をなす。
この収容所の最高責任者であり、恐ろしい独裁者。
目的のためなら手段を選ばず、いとも簡単に命を奪う。
そして彼もまた
大昔に迫害を受けてきた過去を持っていた。
「徹底的に中を捜索しろ、寝ている傭兵達を叩き起こせ
見つけるまで休む間も与えん」
「は、……はっ!」
「見つけた者には褒美も与える
…金でも女でも薬でも、望むものをな」
指示を促された男はアブドルに怯えながらも敬礼をすれば
そそくさと目の前から立ち去る。
「……とっ捕まえてどうしてやろうか…
強気な女ほど弄び甲斐がある……」
不気味に笑みを浮かべると、再びタバコを吸い始める
久しぶりにワクワクと昂っていた。
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通気口の隙間からあたりの様子を伺う舞白と霜月。
明らかに先程より傭兵の数は増え
まるで中にいることがバレているように感じていた。
「……さっきまで外に出払ってた奴らが
戻ってきてる……」
舞白は異変に気づくと隣の霜月に視線を移す。
「もしかして、私たちがここにいるって……」
「多分だけどね、外に逃げず中に留まってって勘づいてる
…ここの収容所の傭兵、頭が弱そうな奴らばかりだと思ってたけど意外と頭がキレる奴がいるみたいね」
霜月は舞白の言葉に何かピンとくるものがあったのか、
一瞬悩んだような表情を浮かべ、舞白に視線を移す。
「ここのリーダーっぽい奴を見たんだけど……
そいつがやたら他の人間とは違うって言うか、
…もし指示を出してる人物がいるとすればアイツな気がする」
「どんな奴?」
霜月は傭兵に蹴りを入れられ気を失う寸前に、
やたら大柄な男が傍で傍観していた光景を思い出す。
「暗くてハッキリは見えなかったんだけど
とにかく巨体でスキンヘッドの男だった
…あとは顔に大きな切り傷……」
「…………巨体で、顔に傷……」
昨夜、やたら巨体な男がいたのを思い出した舞白。
顔をマスクで覆われていたため目元しか確認はできなかったが
他の傭兵に護衛されながら、逃げていく姿からして
重要な人物だと予想していた。
「ていうか、あなた、何でこんな所にいるわけ?
お兄さんと一緒じゃなかったの?」
通気口から出ることがまだ難しく
2人はうつ伏せ状態で肘を立てたまま
会話を続ける。
「まあ、色々合って単独行動する事にしたの」
「……日本以外の国なんて危険しかないのに
本当に変わり者ね」
「へへへ……」
「……何笑ってんの、しかもこの危険な状況なのに…
宜野座さんの言う通りだわ、あなた」
宜野座、というワードを久しぶりに聞くと
舞白は若干切なそうに、哀しそうな表情を浮かべた。
「彼は元気にしてますか?」
「元気も何も、毎日煩いくらい説教してくるわよ」
霜月の言い方から、宜野座は変わっていないんだなと安心する。
その様子を、霜月も感じ取ればため息を漏らしていた。
「……あんたの経歴、見させてもらった
なんでエリート街道まっしぐらだったのに日本を抜け出したの?」
教育課程考査も兄の狡噛慎也と同じく、ポイント700越えの全国1位。
現在は空白の職能適性結果も聞いた話によれば、13省庁6公司に全てA判定。
そして霜月と同じく、最年少で公安局刑事課の監視官に適正が出ていた。
「頭脳も身体能力も圧倒的なのに…
なにか理由があるの?」
「……うーん……
…最初はただ日本から出て、兄を助けたいとか
兄と一緒に行動したい、なんて考えてた」
「……ただのブラコンじゃない」
霜月の発言に呑気に笑みを浮かべるも
ふと、真剣な顔つきになる。
「でも…世界を見て、紛争地を駆け巡って、
言語も容姿も生きる環境も違う人々に出会って
きっと私にしか出来ない事があるって思ったの
そうすれば本当の私の姿、人生……
この世界に生まれた意味が見つかるんじゃないかなって」
「…………」
呑気で何を考えているのか傍から見ると分からなかったが、
真剣な目付きを見て、霜月は常守の姿を何となく重ねる。
「この収容所に来た理由もね
とあるスラム街で知り合った女の子が理由なの
その子の家族を見つけるために、
そしてまた他の町で出会った人々の話を聞いて
余計この場所を見離せなくなった
……なんとかここを破壊して、奴隷のように扱われている人々を解放したいの」
"って感じかな〜"と再び呑気に笑みを浮かべる舞白
宜野座が言っていた、まさに天真爛漫な姿に
そして掴みきれない、不思議な人物像
「霜月さんは日本からの輸送機に乗ってここに来たんでしょう?
傭兵達がそんなこと言ってた」
「まあね、調査してて色々と
それで運悪く巻き込まれてここに来たって感じ
……ていうか、あなたここの人達が話してる言語聞き取れるの?」
「一応は……」
「……あなた、ぶっ飛んでるわよ本当に……」
計り知れない舞白の有能さに引くほど驚く霜月。
こんな奴がもし本当に自分の同期だったらと想像すると、
恐ろしくて堪らなかった、同時に同期じゃなくて良かったと安堵する。
「そういえば、確認したくて
あの輸送機に入っているものは何だったの?」
「あれはトランスペアレント製薬会社からの薬品よ
残念ながら中身まで確認はできてないんだけど」
「やっぱり、何か見たことあるマークだと思った」
「?
あなた、どこかで見たの?」
舞白は地下にあった大量の臓器入りのケースを思い出す
「この施設の地下に酷いスプラッター部屋があって
その部屋に大量の臓器が入ったケースがあったの
しかもその会社のマークの入った箱
……あと、日本に人を移送するとか
怪しい会話も聞いたの」
舞白の言葉に目を見開く霜月。
まさに欲しかった情報を目にしていた舞白、
どうにかその証拠を手にしたいと考えていた。
「やっぱりあの会社胡散臭いと思った
……ここの収容所と何らかの取引をしてるのは間違いないわね」
「恐らく、あの輸送機にその人たちを乗せて
日本にまた向かうはずなの
…霜月さん、あなたはその機体に乗って
証拠とともに日本に戻れば良いと思う」
怪しい書類も地下にあった。
なんとかそれを手にして持ち帰らせれば
霜月の身も安全だと舞白は言い放つ。
「ここは私が何とかするし、
恐らく外務省も何らかの力を貸して……」
「……外務省?」
「ここに来る前に日本の外務省に所属している人物に遭遇したの
狙いは恐らく霜月さんと同じだと思うけど……」
「外務省に先を越されてる……」
何故か絶望する霜月。
その様子を不思議に思うと
これ以上その事は話さない方が良さそうと判断すれば
適当に話を逸らしていく。
「とにかく、どうにか薬品やら証拠になりそうなものを探しましょう
…それで、あなたをあの機体に乗せる
収容所の解放はその後でもきっと大丈夫だから」
「あなた一人でこの規模の施設を解放しようって
本当に考えてるの?」
「勿論」
「…………とんでもない奴ね、あなた」
舞白は不意にウエストポーチから拳銃とナイフを取り出せば
霜月に手渡す。
「これ、さすがに丸腰は危険すぎるから
使ってください」
「……リボルバー銃……サバイバルナイフ…
私扱い慣れてないんだけど……研修でしか……」
手渡したリボルバー銃は舞白が槙島を撃ち殺した時に使用したものだった。
さすがにそれを言うと、彼女の犯罪係数が大いに濁りそうだと思い、口にはしなかった。
「それ、大事な銃なので無くさないでくださいね?
あと、私の名前は舞白
私と同い年でしょ?霜月さん
あなた呼びはなんか慣れないし……」
「……こんな状況下でそんな話をする?普通
どうでもいいでしょそんなこと……」
振り回されっぱなしの霜月もさすがに呆れ尽くす。
そして騒がしかった通路が静かになると
通気口の蓋に触れる舞白。
その手を不意に掴む霜月。
「…あなた」
「あなたじゃないよ、霜月美佳さん」
クスっと笑う舞白
軽々しく躊躇なく名前を呼ばれると
同い年なのに余裕のある舞白に対して、何故か対抗心を燃やしていた。
「ま、舞白さんにはまだ聞きたいことがあるの
…だから絶対に死ぬんじゃないわよ」
意外な言葉に舞白は笑みを向け続ける。
生意気で強がりな霜月とここまで短時間で語り尽くし
距離が縮まったとお互い感じていた。
やけにウマが合う、一緒にいて信頼できる存在だった。
「大丈夫、私強いから」
勢いよく通気口から飛び出し
霜月の腕を引っ張れば2人は目を見合う
そして入り組んだ収容所内を2人は駆け巡る
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