PSYCHO-PASS Sinners of the System[case.4 再会の白] ーReunited with White 作:鈴夢
「さてと、お嬢さん方
待たせて悪かったな」
2人がそれぞれ縛り付けられている椅子の前に
椅子を置く男。
クスクスと不気味に笑みを浮かべながら
跨るように椅子に腰をかける。
「自己紹介がまだだったな
俺の名前はアブドルラーマン、ここのリーダーだ
…日本人のお前はシモツキ…ミカ、
白銀の女…マシロ…お前も日本人だったんだな?
流暢な中国語にウイグル語を話すもんだから
こっちの人間かと思ったよ」
2人の持ち物から名前を割出せば男はスラスラと言葉を発す。
「…なんて言ってるのアイツ…」
「私たちが日本人って事、
それと名前、私たちは身元も全部バレたみたいね」
男は霜月に赤い薬の入った小袋をチラつかせる。
タバコの煙を吐き出せば、霜月は激しく咳き込む。
「ケホッケホッ…何なのよ……」
「恐らくお前の目的はこの薬品だろう?
日本の警察がついに嗅ぎつけたとは
…まあ、不幸を被るのは製薬会社だから関係ないが」
薬品を懐に仕舞うと、
今度は舞白に視線を向ける。
「…お前の目的は……
そうだな…俺の暗殺か?この組織の壊滅?
この国の連中に何を吹き込まれた?」
「組織の壊滅、この収容所の破壊と人々の解放
それと、アンタを倒すこと」
「ハハハハッ!そりゃ立派な事だ
日本人のお前が命の危険まで犯して何が目的何だ
…英雄にでも憧れてるのか?」
男の手が舞白の頬へ伸びる。
厭らしく撫でるその手を気味悪く感じ睨みつける。
「気の強い女は嫌いじゃない
特にお前みたい戦闘慣れしている奴は役に立つ
…どうだ?俺たちの仲間になれば悪い様にはしない
俺の女になってもいいんだぞ?」
唇に指を這わせる男、
その瞬間、舞白は思いっきり指に噛み付けば
アブドルは顔を歪め慌てて指を引き抜く。
「…ッ…お前…」
「気持ち悪いこと言わないでくれる?
誰があんたの仲間になってやるか
…あんたの女なんて虫唾が走る」
ぽたぽたと男の手から血が滴る。
人差し指の肉が抉れ、まるで狼のような舞白を睨みつければ
その態度と物言いに怒りを滲み出す、
「アブドル様!すぐに手当を…」
「…このクソ野郎が
……その強気な態度、すぐに後悔させてやる」
男は暖炉へ向かうと、あの焼きごてを手にする。
"攒"の文字に鎖の装飾
先端は熱で真っ赤に染まり、微かに熱波を感じるほどだった。
「…ちょっと…まずいじゃない…」
目の前で繰り広げられた光景に霜月はやっと口を開く。
男が持っているものが何なのか、だいたい想像できれば
平然としている舞白に目を向ける。
「それを刻んで、私が怯むと思うの?」
傭兵の1人が舞白の着ている服を雑に破れば
露になる白い肌、
しかしその白い肌に痛々しい傷が刻まれていれば
霜月が目を見開く。
「その傷……何それ…」
舞白の体には様々な痛々しい傷が大量に刻まれていた。
親友に刺された跡、肩には銃創の跡、
その傷は全て、過去の事件によって刻まれたものだった。
「痛々しいでしょ?
だから大丈夫、あんなの怖くない」
心配する霜月を横目で見れば微かに口角を上げる。
アブドルは舞白の髪の毛を上へと引っ張れば
焼きごてを目の前にチラつかせる。
「さてと、どこに刻んでやるか…」
体を舐めまわすように観察する。
「いい場所を見つけたよ、
これからお前は、この印を見る度この苦痛を思い出す
……ッ!」
刹那、肉が焼ける音と独特な臭いが立ち込める
左胸の上、ちょうど鎖骨の下あたり、
まるで心臓の上に被せるように押し当てられると
さすがの熱さと痛みに歯を食いしばり体に力が入る。
「…ッ…く…ぅ…」
普通ならもっと悲鳴を上げるか気を失うか
しかし舞白は、焼印を押し込むアブドルを睨みつける。
「その焼印は一生消えない、一生ここの奴隷として
その印とともに生きていく…」
「……っ…悪趣味ね…」
冷や汗が額から滑り落ちる
その様子を心配そうに霜月は見ていた。
「だからって私は絶対に屈さない
暴力に恐怖、そんなもので簡単に降参するだなんて容易なことを考えないことね」
「…ならば分からせてやる、
そんな口が聞けなくなるまで」
焼きごてを体から離せば
そのままその棒を頭目掛けて振りかぶる。
椅子ごと体を倒されれば
先程の岩壁で傷ついた頭部の傷が開き再び鮮血が流れる。
悲惨すぎる状況に霜月も黙っていられず、
アブドルに止めるように必死に訴える。
「いい加減止めなさい!
…このままじゃ…死んじゃう…
やめて!!!!」
舞白の頭を踏みつける。
しかし口角を上げて笑みを浮かべ続ける舞白に、
ついには不気味さを覚えると男は表情を歪ませる、
「…狂ってるぞ、この女…」
「ふふふ…
……こんな事で、私は死なないよ…」
決して弱音も、屈する気配もない
そんな相手にアブドルは自分の過去を思い出せば
更に憤怒し体に蹴りを入れる。
昔、迫害を受けていた時、
相手の暴力に屈し、惨めな少年時代を過ごしてきたアブドル。
家族も友人も全員が惨殺され
故郷の言葉も失い、洗脳される日々。
強さが、暴力が、
人々を屈する事が出来る力その力がものをいう世界。
いつか、自分がそっち側に君臨してやろうと死ぬ気でここまで生きてきた。
しかし目の前の女は表情一つ曇らせず
鋭い目付きで、獲物を捉えるような目つきで睨み続ける。
「このクソ野郎が!!
お前ら日本人に何が分かる?ぬくぬくと平和ボケしてきたお前らが、
…この俺に屈さないのは許せねぇ!!」
何度も何度も舞白の体にめり込む男の硬いブーツ。
気づけば舞白は目を閉じ、生きているのかも分からない。
「やめて…っ…あんた!!やめてよ!!」
叫ぶ霜月、男にその声は届くはずもなかった。
「フー…ッ…フーッ…」
ピクリとも動かなくなった舞白を満足気に見下ろす
白銀の髪の毛は血に染まり
体には無数の痣が滲み出る。
「…そこの斧、持ってこい」
「は、はい!」
酷い光景に怯える傭兵達。
1人の傭兵がテーブルの上の斧を手に取ると
男に手渡す。
「その細い手脚を切り落としてやる!
もう二度と俺に楯突く事も出来ない…
…一生俺に跪け!!」
斧を大きく振りかぶる
霜月は恐怖に怯え無意識に涙を零す。
「やめてーーーーーっ!!!!」
室内に悲痛な叫び声が響く。