PSYCHO-PASS Sinners of the System[case.4 再会の白] ーReunited with White 作:鈴夢
「この薬、
やっぱりこの地下施設でのみ作られていた」
研究所の傍らに置かれていた薬品の製造機の一部に
赤い薬の製造形跡が残っていた。
明らかに表には出せない違法薬物
だから地下で作り続けていた。
「…あとはこの施設で働いている研究員…
そいつらの色相と犯罪係数はどれ程のものか…」
宜野座は拘束具を床に投げ捨て常守を見据える。
確かに、ここで働いている研究員が必ず居るはず
そしてその人物たちは、恐らく色相も犯罪係数も普通ではないはずだった。
「ここの職員は全員色相管理されてます
異常がある場合、出勤停止や休職指示、
そもそもサイマティックスキャンに引っかかるはずなんです」
「だとしたら…」
「この地下に潜んでいるはずです
ここに潜んでいればスキャンも何もされませんからね」
移民たちは雛河に任せて2人は部屋を出る。
すると、とある扉の前でロック解除を進める六合塚の姿が。
「六合塚さん、この部屋は?」
「この先、多数の生命反応があります
恐らく中に人が…」
手際よくデバイスを操作すると解除される扉
その部屋の中には研究員らしき人物達が、連なっている2段ベッドで眠っている様子が伺えた。
ドアの開閉音と人の気配に気づいた1人の男が体を起こすと
常守達を見て怯え始める。
「だ、誰だ!お前ら!!」
その声に反応する他の研究員達
怯えるように全員が声を上げる。
宜野座はドミネーターを男に向けると目を見開いた。
『犯罪係数オーバー258 執行対象です…』
同じく六合塚と常守もドミネーターを向けると
全員がオーバー100を超え
中には300超えの対象者の姿も。
「この人たち、過去にこの会社に解雇されてます
…犯罪係数の上昇、最終定期検診も数年前に受けたのが最後の人ばかり…」
六合塚が一人一人のデータを見ていく。
この部屋にいた研究員は全員で16人、
いずれも犯罪係数の上昇などでデータ上では解雇された者ばかり
捜索届けが出ている人物も中には混じっていた。
「潜在犯として矯正施設に入るか、もしくはここで違法薬物や人体実験をするか」
「それを知らないままこの地下に入れられ何年もここで生活を強いられていた、口封じの為にもな」
野蛮な手口にそれ以上何も言葉が出てこない。
常守は再び一宮の元へ戻ると
項垂れる相手の前にしゃがみこむ。
「…ここまでの事をして…人の弱みを利用して
あなたは何がしたかったの?
国民に更に良い薬?多額の献金?」
常守がそう言い放つと一宮は呑気に笑い出す
更に犯罪係数が跳ね上がる。
「ただの興味本位だよ
…人の体を使って実験をして、さらに高度な薬品を作れる
そして国民から感謝され、呑気にその薬を口にする国民…
楽しみだなぁ…この真実を知った国民たちは
一体何を思うだろうなぁ…」
まるで人格が入れ替わったかのように狂い出す一宮
須郷もその男の様子に表情を歪める。
「このクソみたいなシステムに抗うためにも
更に強い薬を作らなければならない
…犯罪係数?色相?馬鹿馬鹿しい…
それが薬品で打ち勝てるなら、それこそ国民が待ち望んだ新薬!
そうだろう刑事さん?そうすればあんた達ももっと楽になるさ…」
「…薬品なんかで人々の精神を真っ向に変えられるわけが無いでしょう?」
「現に、新薬の開発は進んでる
見ただろう?あの赤い薬を
…もっと改良すれば更に脳神経、精神に作用し、システムにさえ計り知れない精神状態を作り出すことも可能なんだ!」
常守はドミネーターをゆっくり向ける。
『犯罪係数オーバー486 執行対象です
セーフティを解除します
執行モード、リーサル・エリミネーター
慎重に照準を定め、対象を排除して下さい』
形状が変わるドミネーターに驚きを隠せない一宮。
「ひっ…ひいいいいい!!
薬だ、あの薬を…」
須郷と常守を押し退け
一心不乱に薬品製造機械へと駆け抜ける。
あの落ち着きのある一宮の姿からは全く想像できない無様な姿、
2人は止めることも無く、ただ見据える。
「これを飲めば…ハハハッ…
…」
ボリボリと錠剤を噛み砕く音。
すると、研究員には見えないが、研究員たちが身を隠していた部屋から少年が一宮に向かって走り出す。
「ちょっと!あなた!」
六合塚の制止を振りほどき無我夢中に駆け抜ける少年。
少年は焦ったあまりに足をもつれさせ倒れ込む。
「父さん!!やめろよ!!」
そしてその少年は確かに一宮の事を"父さん"と呼んだ
須郷がすかさずIDを調べると、
ドミネーターを構える常守にそのデータを見せる。
「一宮 健太郎 14歳
…数年前に捜索願いが出されています
6歳の時に潜在犯認定…
血縁者は父親の一宮 祥太郎
母親は既に死んでいるようです」
「そんな…」
須郷が少年にドミネーターを向けると
濁った色相にオーバー158の犯罪係数が表示される。
「やめろよ!父さん…ッ…」
何とか立ち上がり父親へと掴みかかる息子
しかし父親は既に理性を失っており、口に薬品を放り込んでいた。
「執行しますか?常守監視官」
常守は向けていたドミネーターを下ろし、首を振る
無言で2人の様子を伺っていた。
「父さん…もうやめてよ…
…いいから、もういいんだ…僕は……」
荒れ狂う父親の体に、しがみつくように抱きつく。
すると一宮は少しずつ呼吸が落ち着き、薬を手にしていた手をだらりと落とす。
「……もうそれ以上おかしくならないで…
それは僕だけでよかったんだ、僕が潜在犯だから…
…ッ……」
「あ……ぁ…あ…」
再び常守はドミネーターを構える。
『犯罪係数オーバー299 執行対象です
セーフティを解除します
執行モード、ノンリーサル・パラライザー
落ち着いて照準を定め、対象を制圧して下さい』
執行モードが切り替わる
そっとトリガーに指をかける常守。
「……すまない……健太郎…」
その瞬間、ガクッと体を仰け反らせれば
倒れ込む一宮。
「父さん…父さん!!」
泣き崩れる少年、
その光景を見ていた宜野座達、そして研究員に外国人達。
常守の表情は段々と哀しみに包まれていく。
この人たちもシステムに翻弄され、このような結果に。
「…例の赤い薬物が彼の精神状態を緩和させたのか…」
須郷が横で呟く
しかし常守は首を振るう。
「それは違うと信じたいです
……きっとそれは…」
倒れる父親を抱きしめ続ける息子
常守はそれから何も言わずドミネーターをしまう。
「二係がすぐにこの現場に到着します
あとは彼らに任せて私たちはすぐに新疆ウイグル自治区へ
急いで霜月監視官の救出に向かいます
局長にはすぐに私が報告に行くわ
……都知事の逮捕はその後よ」
違法薬物に人体実験、外国人、行方不明だった研究員達
政治も他国も絡んだこの大きな事件。
休む間もなく常守達はすぐに新疆ウイグル自治区へと向かう。
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